| メルカトルさんの登録情報 | |
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| 平均点:6.03点 | 書評数:2078件 |
| No.2078 | 5点 | トップラン&ランド完 清涼院流水 |
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(2026/09/30 22:22登録) 音羽恋子は生後間もなく連れ去られ、別の赤ん坊とすり替えられていた!?謎めいた力で人類崩壊を予言する「悪王」の誕生が、半世紀に亘る物語を最終決戦へと導く。シリーズ最終巻! Amazon内容紹介より。 『トップラン』シリーズは全巻読みましたが、本作を読んでみても全く内容が思い出せませんでした。やはり読むのが遅過ぎたのか、ちょっとだけ後悔しています。 第一部はトップ屋の藤兵侍が洞窟に監禁される話ですが、漠然とし過ぎていて何が何だかよく分からないうちに終わってしまいました。藤見子様は結局何がしたかったのか、結末もあやふやで消化不良でした。 一方兵侍の息子の笙造が活躍する第二部は、小品なのに清涼院流水らしく無駄にスケールが大きすぎてつい笑ってしまいそうになります。昭和から平成に起こった主な事件をピックアップして暗号と絡めるという、何だか知らないけど興味を惹かれるテーマとなっています。三億円事件に始まり、ノストラダムスの大予言に辿り着く道程はなかなか楽しめました。こんな事あんな事、覚えの無い事色々あった時代の変遷には、私はこんな時代を生きて来たのだと云う感慨を覚えました。特にグリコ・森永事件は他人事ではなかっただけに懐かしい思い出というか、とんでもない事件だったのだと感じました。 |
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| No.2077 | 6点 | 京都魔王殿の謎 吉村達也 |
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(2026/09/28 22:47登録) 錦の紅葉に彩られた秋の京都、「美しすぎる超能力者」鹿堂妃楚香は、自ら主宰する魔界めぐりのツアーで「猿の手首」に遭遇すると不気味な予言。だが出てきたのは人間の手首。 しかも、彼女の母親の手だった! バラバラ殺人の謎の解明に京都府警、天才聖橋博士、氷室想介が推理合戦を展開。 心理トリックと物理トリックの両面から、ついに真相が解き明かされたと誰もが思ったとき、氷室は恐るべき逆転の落とし穴に気がついた! Amazon内容紹介より。 これはトリック云々よりもストーリー性に重きを置いた作品で、物語として面白いものでした。個人的には読む前から猿の手首というワードに引き摺られて、意識し過ぎたきらいがあり、開けてみればそういう事だったのかと拍子抜けしました。しかし、それと共に発見されたのが人間の手首だったというのは驚きでした。そしてかなり過激なグロ描写には作者の本気度を感じました。 今回はサイコセラピスト氷室京介よりも、聖橋博士の方が先に真相に迫っており、氷室はあまり目立ちませんが、最後にはきっちり決めてくれました。 舞台が京都という事もあり、その雰囲気は十分に味わえます。また前作に続きQAZの存在が大きく影響を与えています。あとがきではその正体は既に作品の登場人物の中にいると書かれていて、非常に興味が持たれるところの筈でしたが、ご存じの通り作者が亡くなってしまい、残念ながらそれは永遠の謎となりました。吉村達也が生きていれば、今頃はまだまだシリーズの後半辺りか、いずれにせよ道半ばだったでしょう。 |
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| No.2076 | 6点 | 生きながら火に焼かれて スアド |
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(2026/09/26 22:59登録) 時は現代、所は中東ヨルダンのある村での話。ノンフィクションなので勿論実際に起こった出来事です。作者はその当事者で、タイトル通り生きながら火に焼かれて一命を取り止めた女性です。その女性スアドは自身によると十四人姉弟のうちの一人で、まずそれに驚かされました。 この村では簡単に言えば男社会で、女性は奴隷以下の扱いを受けます。肌を晒してはいけない、男と視線を合わせてもいけないし話をしてもならない。年中裸足で羊や山羊の世話をしながら妹達にも気を配らなくてはなりません。「正義の殺人」として女の子が生まれると母親自らが窒息死させる事も頻繁に起こるそうです。親の決めた花婿と結婚する事を定めとして、十四歳頃から十八歳くらいまでに結婚しないとオールドミスと呼ばれます。何てこった、十九でオールドミスとは。 そんなスアドが結婚相手と事前に男女の関係になってしまい、妊娠します。物語の悲惨さと中東ではいまだに残る古い因習に言葉を失って、うなだれていた私はこれが悲劇の始まりだと予感しました。こんな酷い話があっても良いのでしょうか。 第二部では「人間の土地」という福祉団体のジャックリーヌと出会い、火傷の手術を何度も受けていたスアドは再生します。それまで隠していたケロイド状の顎から下、腕を人々の前でさらけ出し自身の経験を語ります。日本でも講演が行われ、スアドは日本人の優しさ温かさ、心遣いに感動したと言います。私たちは恵まれています。只々普通の日常を送っているだけで幸せな事だと、自分の人生を生きなければいけないんだと思わされました。 |
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| No.2075 | 7点 | 少年ABCの完璧な選択 結城真一郎 |
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(2026/09/23 22:21登録) 守るべきは、今の家族か。命懸けの約束か。 2025年8月、朝。とある誘拐事件が日本全土を震撼させた。あの夏の真犯人は名乗り出よ、さもなくば諸君らの大切な"方舟ちゃん"の命を頂戴する――。 それは、かつて法の死角を突く鬼手で完全犯罪を成し遂げた三少年に対する宣戦布告だった、タイムリミットは今夜10時。3時間ごとに、少年たちの個人情報が暴かれていく。あの頃は失うものなんてなにもなかった、だけどいまは――。 Amazon内容紹介より。 第一部はやや重めの青春ミステリ。主人公は三人の男子中学生と同級生の女子。四人は自ら「本町ギャングスターズ」を名乗ります。男子ABCのうち二人は万引きの常習犯で一人は監視役。彼らの青春は自由奔放でちょいワルなものでした。そんな時紅一点の之愛の身に尋常ならざる事態が起こります。そして三人は復讐の為拷問を実行する事を決意しますが。 少年たちの家族構成やその関係性などのエピソードも描かれますが、それはオマケの様なものです。 そして第二部はそれから十五年後に起こる世間を震撼とさせるある事件を、警察対三少年の構図で描かれます。じりじりした対決は二人の刑事がなかなか過去の惨劇の核心に迫れず、読んでいる者としてはじれったい思いにイライラが募ります。心理戦や頭脳戦を核とした駆け引きが好きな方にはお薦めです。 伏線回収も良く考えられており、読み応えも十分だと思います。楽しいとか面白いというよりも、兎に角先が気になって嫌でもページを捲らされる感じです。 |
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| No.2074 | 5点 | ロコ! 思うままに 大槻ケンヂ |
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(2026/09/20 22:24登録) 絶対的に君臨する父親によってお化け屋敷に閉じこめられている少年・ロコ。独りぼっちの彼が美しい一人の少女と出会う……ほろ苦い衝動が初めてロコを突き動かす! 泣ける表題作他を収めた充実の短編集。 Amazon内容紹介より。 オーケンらしいと言えばらしいのかな。表題作は泣けません。酩酊小説か幻想小説でしょうか。お化け屋敷のフリークス達が出て来ます。他の作品にも言える事ですが、ストーリー性が薄いと感じました。紆余曲折とか起承転結とは無縁の世界です。 ジョン・レノンに似た外国人と遭遇し、少年兵が『同期の桜』に8ビートを刻む事を発見した話。キティちゃんに似せたキテーちゃんを殺してしまう話。乱歩の少年探偵団のオマージュ。赤ちゃんサイボーグが敵と激闘を繰り広げる話等一貫性のない短編が並びますが、どれもオチが弱いです。 その中、頭一つどころか身体一つ抜けているのが『モモの愛が綿いっぱい』。これは泣けますね、隠れた名作だと断言して良いと思います。UFOキャッチャーで獲ったクマのぬいぐるみモモ次郎は何と日本語が話せるのだった・・・元ヤクザの主人公は公園でモモ次郎を抱いて会話をしていると、周りの反応は冷ややかだった、しかしこの後とんでもない展開に発展するという物語で、意外性と言いオチと言い他作品とは比べものにならない奇想を発揮した傑作です。これだけでも読む価値はありました。 |
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| No.2073 | 6点 | 鹿の死んだ夜 トマス・H・クック |
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(2026/09/18 21:57登録) セントラル・パークの動物園で二頭の鹿が殺されていた。ほどなくヴィレッジで発見された二人の女の惨殺死体、その手口がそっくり Amazon内容紹介より。 まずプロットが上手いですね。子供動物園で殺された二頭の鹿事件を追う刑事リアダン。彼が子供の頃のエピソードがとても印象に残ります。グロイ表現もあったりしますが、重すぎず軽すぎず丁度良い塩梅で描かれており、無駄のない筆致と言い、言葉遣いの上手さと言い、クックは既にデビュー作から完成されています。ラストも忘れがたいものがあります。 ただ動機の面でどうしても納得の行かない点がありました。何故鹿を殺したのか、そして女性二人を狙った理由。普通に考えれば標的はそっちじゃないだろうと思ってしまうんですよね。そう考えると犯人の行動は支離滅裂というか、思考回路どうなっているんだろうと。なかなかの好篇だけに其処だけが残念な気がしました。 |
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| No.2072 | 7点 | 『石球城』殺人事件 北山猛邦 |
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(2026/09/15 22:17登録) 凍てつく世界を旅する少年・ルーサは壁で囲まれた城塞都市・石球城に迷い込む。無数の石球が散らばり、永遠に夜が明けない閉ざされた街(クローズド・サークル)は、九人の王が支配し、十三の灯台とそこに住む巫女によって保たれていた。自身の正体を知るため、ルーサは“世界の果て”を目指す少年・ロメリアと、巫女・カヮクの灯台を訪れるが、待っていたのは密室首切り死体。巫女殺しの疑いをかけられたルーサは犯人を捜索するが、今度はべつの巫女が密室首切り死体として発見されーー。 Amazon内容紹介より。 密室での首なし死体と来れば読むしかないでしょう、と意気込んで読みました。長いしややこしいと嫌だなと思いましたが、比較的解り易くて良かったー。あれこれ言いたいことはありますが、まあそれは野暮というものでしょう。しかしそれ程面白いかと問われると疑問が残ります。十三もの密室が出て来るので、次第に感覚が麻痺します。そこまでバリエーションに富んだものでもないし、どうしても又かってな感じになります。似たようなパターンが多いので。 でも力作であることには違いないです。これだけのトリックを考えるだけでも一苦労でしょう。あまり深く考えないで、様々な密室トリックを楽しめればそれで十分ですね。個人的にはシンプルですが、最初の密室に意表を突かれました。又意外な犯人という点では成程なと思いました。しかし物語がストレート過ぎるのでもう一捻りあるともっと良かったですね。 |
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| No.2071 | 5点 | 池魚の殃 椹野道流 |
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(2026/09/11 22:22登録) O医大法医学教室の大学院生・伊月崇と指導教官の伏野ミチルは、何者かによって拉致監禁された。現場にはミイラ化した腕が残されていたのだが……。誰が何の目的で監禁したのか。ミイラは誰の腕なのか? 魅力的なキャラクターとリアルな医学知識で描く、法医学教室のメディカルミステリー。 Amazon内容紹介より。 これまでは法医学教室に持ち込まれた遺体を解剖し、死因を特定したり凶器を探ったりしていたミチルと伊月が、本作では事件の当事者になるのが目新しいところです。そして何者かの右腕のミイラと云う謎が現場に残されます。警察の捜査はほとんど描かれませんが、その代わり今回は伊月とその親友で刑事の筧、それにミチルを加えた三人の共同生活がかなり克明に描かれています。他のキャラも相変わらずの個性が際立っていて共感が持てます。 ただ捜査側の描写がほぼない為、二人を監禁した犯人が唐突に告白を始めます。この辺りはじりじり犯人に迫っていくアプローチは手法として取っていないので、いささか淡白に感じますね。どうしても舞台が法医学教室なので限界があるのでしょう。探偵が活躍して、推理し解決する典型的な本格ミステリとは一線を画しています。だからでしょうか、読み易いのは良いですが、読み応えがやや足りないと感じてしまうのは私だけですかね。しかし物語としては面白いのは間違いないです、ただ見せ方がちょっとどうかなと思います。 |
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| No.2070 | 4点 | “菜々子さん”の戯曲 小悪魔と盤上の12人 高木敦史 |
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(2026/09/09 22:34登録) 高校に入学した俺は、文芸部に強制的に入るように脅されちまった。いきなりの大ピンチに颯爽と現れたのが“菜々子先輩”だった。心奪われた俺は、いつの間にか彼女の言葉に誘導されて――この恋は屈辱の味がする。 Amazon内容紹介より。 前作でも書きましたが、どうでも良い描写が多すぎるし、肝心な所の説明不足が目立ちます。特にミステリで言えば解決編が端折り過ぎで、全然納得感がありません。日常の謎が主なテーマですが、その規模が小さすぎて小説自体が矮小化されている様にすら思います。恋愛面にしても中途半端で、何とも言い様がありません。 最大の事件である美少女盗撮が物語全体に横たわります。これもトリックと呼べるほどのものではなく、これが事件の真相かと思うとかなり腹が立ちます。密室からの脱出は半ば予想通りでしたが、これはちょっと気の利いた物だったので、この点数です。これが無かったらショボい暗号の謎も含めてもっと低評価にせざるを得なかったでしょうね。 更なるシリーズ化を断念したのも頷けます。 |
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| No.2069 | 5点 | 失踪HOLIDAY 乙一 |
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(2026/09/07 22:23登録) 再婚した母が死に、裕福な義父と屋敷で暮らしていた中学2年生のナオ。 迎え入れられた意地悪な継母との喧嘩のすえ、ナオは家出を決行する。 屋敷の離れに住む使用人・クニコの部屋にむりやり居座り、 家族の様子を観察してやることにしたのだ。 ……けれど血の繋がらない家族には狼狽した様子もない。 ナオは狂言誘拐を画策し、家族に身代金を要求するが――(「失踪HOLIDAY」)。 Amazon内容紹介より。 『しあわせは子猫のかたち』は他の短編集で読みましたが、内容はさっぱり忘れていました。なので再読して良かったと心から思います。こんな秀作を忘れていたなんて考えられませんよ。自分の記憶力の無さに絶望です。これぞ乙一と言っても過言ではない切ないホラーとミステリの見事な融合。素晴らしいです。 一方中編の表題作は同じ人が書いたと思えない出来の悪さ。全編物語のテンポが悪く緩慢なペースで遅々として進まない展開と、びっしりとした文字の羅列にページがなかなか進みません。やっと辿り着いた結末にはまあ納得出来ましたが、驚く程のものではなくちょっと残念でした。主人公の少女にも感情移入出来ず、個人的にとても高評価は出来ません。 |
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| No.2068 | 5点 | 吸血鬼カーミラ シェリダン・レ・ファニュ |
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(2026/09/05 22:19登録) 幻想文学の古典、57年ぶりの完全版新訳 1872年に発表され、ブラム・ストーカー『ドラキュラ』にも影響を与えた怪奇小説。レズビアニズム色の濃密な作品でもあり、「百合族」のバイブルともされる本作が、平井呈一訳以来の完全版として美麗装幀でよみがえる!にしざかひろみによるカバー画・挿画。 Amazon内容紹介より。 『吸血鬼ドラキュラ』より若干楽しめました。しかしこちらも児童書の為か、あまり過激な表現は控えられている気がします。それでも、このカーミラの存在を知れただけでも話のネタにはなりそうなので、まあ良かったのではないかと思います。百合族がどうこうと云うのはそれほど感じさせませんが、美女たちが主役であるのは間違いありません。 ドラキュラに似ているのは確かです。ではなくて、ドラキュラがカーミラに似せた訳で、その意味で歴史的価値はあったのでしょう。本作で既に吸血鬼の弱点や生活様式なんかが確立されていたのも貴重だと思います。吸血鬼と言えばドラキュラと世間では思われていますが、実は本家では女だったというオチも個人的には面白かったです。 |
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| No.2067 | 5点 | 吸血鬼ドラキュラ ブラム・ストーカー |
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(2026/09/05 22:03登録) 中世ヨーロッパの伝説から忽然としてよみがえった恐るべき吸血鬼の跳梁か? ヨーロッパの辺境トランシルヴァニアに、無気味な謎に包まれて住む城主ドラキュラ伯爵の秘密。昼は眠り、夜は目覚め、永遠の生命とともに人血を求めてさまよう呪われた吸血鬼の宿命。現代の恐怖と怪奇を描いて百万読者の心胆を寒からしめる、名作怪異譚! Amazon内容紹介より。 最初から最後まで漫然と読みました。新訳のせいか日記や文書等が出て来なくて、かなり端折って脚色されていると思われる為、全然怖くありませんでした。雰囲気が伝わって来ず、むしろポップな読み物として翻訳されています。やはり平井呈一訳で読むべきだったかも知れません。ドラキュラ伯爵そのものは想像していた通りでしたが、あまり存在感が感じられませんでした。 全般的に平板で盛り上がりに欠けると云うか、これと言って特筆すべき点が見当たりません。まあ私の読解力などこの程度なので、これを読んでいる方は是非編集版ではなく、完全版の作品で楽しんで頂ければと思いますね。そうすれば恐らく本作の本当の魅力が分かるのではないでしょうか。 |
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| No.2066 | 6点 | 夜宵 柴村仁 |
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(2026/09/04 22:38登録) 大晦日までの僅かな期間にだけ立つ「細蟹(ささがに)の市」。そこで手に入らないものはないという。 ある者は薬を。ある者は行方不明の少女を。ある者はこの世ならぬ色を求めて、細蟹の市へと迷い込む。 異形の者たちが跋扈(ばっこ)する市で、市守りのサザが助けたのは記憶を喪った身元不明の少年・カンナだった。呪われた双子の少女は唄う。「ああ、不吉だ、不吉だ」「おまえがもたらす流れ、その循環は、混沌を呼ぶわ」…… Amazon内容紹介より。 時は現代、所は石骨地区の湖上の小島。細蟹の市に様々なものを求めて訪れる者達。しかし、ここには普通の人間が入り込むと魔に魅入られその後とんでもない目に遭うと言われている。と云う設定で完全なホラーですが、文章は飽くまで詩的で妖しく美しいです。一方でグロ表現が若干目立ち、インパクトを与えます。 個人的には単行本の二段組みで構成されている一の経、二の経、四の経がミステリ要素もあり、大変感銘を受けました。と言うと感動的なラストかと思われるかもしれませんが、そうではなく非情な結末が恐ろしかった訳です。 どこかネジの外れた双子の少女、隻脚の細蟹様、市の警備役のサザ、記憶障害を負ったカンナ、カンナに心を寄せるまことら多彩な人ならざる者や人々が織り成す奇矯なドラマに酔いしれるべき、風変わりなホラー小説の佳作だと思います。 |
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| No.2065 | 6点 | 009 RE:CYBORG 神山健治 福島直浩 |
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(2026/09/01 22:38登録) 名作「サイボーグ009」を現代に甦らせた劇場アニメ「009 RE:CYBORG」。神山健治監督によるオリジナルストーリーを完全ノベライズ! 小説ならではの描写力で、ストーリーとキャラの心情をさらに深く描き出す!! Amazon内容紹介より。 これは子供の読む本ではないですね。正直舐めてました、もっと娯楽性の高い大人も子供も楽しめる作品かと思っていましたが、意外とハードで小難しいです。“彼の声”を聞いた者はテロを計画すると言われていて、他にも“天使の化石”や“思考する脳”など曰くありげなパーツが出て来ます。勿論バトルシーンやアクションにも力を入れていますが、どちらかと言うと、正義とは何か、人間が生きるとはどういう事なのか等を問いかけている様です。 サイボーグ戦士の中ではやはり009の島村ジョーが主役です。人間関係としては彼と002のジェット・リンクとの確執が露わになって、しかし最後には二人の友情とサイボーグ戦士たちの結束の強さが克明に描かれて感銘を受けました。アニメを観て育った人にとっては違和感を覚えるかもしれません。まあ、ゼロゼロナンバーサイボーグが解散した後の物語なので新味を出したかったのはあるでしょうね。 |
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| No.2064 | 5点 | 古い骨 アーロン・エルキンズ |
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(2026/08/31 22:18登録) 導入部は大した説明もなく登場人物が出て来て、それもかなりの人数に上る為初手から誰が誰だか分らない状況に陥りました。どうでもいい会話が続き、とてもミステリとは思えません。このゴタゴタが落ち着くのはスケルトン探偵であるギデオンが登場してからでした。やっと興味が湧いてきました。 それにしても展開が地味で、これと言ったトリックもなく、本格ミステリとしての魅力に欠ける印象を受けます。 解決編ではまずまずのロジックを披露しています。ただバラバラだったはずの古い骨の理由が曖昧になっているのが気になりました。これがアメリカ探偵作家クラブ賞受賞作とはねえ。アメリカの本格ミステリもこの程度かと思わざるを得ません。国内の本格ミステリの新作をボチボチ読んでいる身にとっては、いささか物足りないと感じました。余計な描写も結構ありますし、お世辞にもテンポ良く読めたとは言えませんね。 |
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| No.2063 | 7点 | 楽園 夕木春央 |
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(2026/08/29 22:11登録) 亡き両親から不動産を譲り受けた康之は、失踪した賃借人・海原の遺留品整理の際に、群馬の山奥の謎の物件の存在を知る。そこは、切り立った岩壁に囲まれた、「楽園」と呼ばれる奇妙な場所だった。恋人の沙織と一緒にそこを訪ね、探索をはじめた康之たちは、すぐに六人の“住人”に拿捕された。脱出のための条件はーー Amazon内容紹介より。 三部作の最後とあってか、夕木春央力が入り過ぎじゃない?読むこちらまで肩に力が入ってしまったではありませんか。前二作に比べて何だか読み難くなっているのは気のせいでしょうか。特に序盤がヌルくてこれってそんなに面白いのかなあと思いながら読みました。これじゃせいぜい6点止まりだなって感じでしたね。本格ミステリとしても、二つのトリックは斬新さがなく平凡であまり感心しません。 しかし、終盤と言うかラストの畳み掛ける展開に唖然呆然。そうだったのかと、あれこれ腑に落ちる思いがしました。結局騙された私は作者の掌の上で踊らされていただけだったとは、はぁ。これは受ける筈だと深く納得しました。評点ももしかしたら今後考え直して8点にするかも知れません。無論傑作『方舟』には及ばないものの、『十戒』よりも面白かった気はします。 |
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| No.2062 | 7点 | 少女は殺人の夢を見る 阿津川辰海 |
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(2026/08/27 22:16登録) サークル<月夜のお茶の会>の読書会に参加した俺・獏田格は課題本のミステリー小説に酷似した「事件」に巻き込まれる。そこは二年生の先輩・夢見灯が作り出した「夢の世界」で、謎を解かなければ俺は現実に戻れない⁉ カー、クリスティー、クイーン、そして……。本格ミステリー界の若き旗手が先人たちを徹底オマージュ。 Amazon内容紹介より。 あとがきを含めて、この小説に載っている本を全て読んだ人は、正真正銘のミステリマニアに認定されるべきでしょう。それ程本格ミステリに淫した作品です。各名作のオマージュである夢の中の事件は勿論注目に値しますが、そこに至るまでに<月夜のお茶の会>で交わされるミステリ談議が楽しく、マニア度の高い人程より楽しめる事は間違いありません。 最初は現実に起こる事件ではない為、ある種の緊張感に欠けると感じましたが、読むごとに慣れました。私の一押しは法月綸太郎の『死刑囚パズル』をもどいた『女死刑囚パズル』です。本家を超える勢いのホワイダニットには唸らされました。趣向を変えた『三階の窓』もリレー小説のぎこちなさを再現しながらも、その仕掛けに深く肯きました。ただクリスティーの『そして誰もいなくなった』へのオマージュは正直ややこし過ぎて、私の頭では付いて行けませんでした。情けないことです。 |
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| No.2061 | 8点 | 完全密室のマトリョーシカ ミステリ・イン・ザ・ミステリ 黒田研二 |
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(2026/08/24 22:23登録) ミステリ作家・猪龍錠を父に持つ「朔史」が悪夢から目覚めた時、そこはエッシャーの絵画が無数に飾られた父の別荘だった。父のミステリ作品を愛する縁者たちと、予期せぬ訪問者を前に猪龍錠が語り始めたのは、新作小説のプロットーー 謎解きを迫る父の挑発と、繰り返し襲い来る悪夢のうちに谺する母の断末魔の「迷宮」の果てで、朔史が辿り着いた驚きの真実とは!? Amazon内容紹介より。 黒田研二の十五年ぶりの新作ミステリ。うーん、実に面白い。しかし、飽くまで個人の感想です。高評価を信用して、裏切られたーとなる可能性もあります、責任は取れませんので悪しからず。まず問題は語り手の「僕」こと朔史の存在。多くは語りませんが、読み始めれば直ぐにああ、あれねと頭にインプットされると思います。次に朔史の父親で超人気ミステリ作家の父親猪龍錠が語る新作のプロット。物理トリックを中心にした三作品ですが、これが余り世評が宜しくないです。子供騙しとかの意見もある位です。しかし私には、特に最後の作品が刺さりました。トリックは兎も角物語自体が面白いのです。これも好き嫌いがかなりはっきりするものと思われますが。尚、本人によるらしき図解が挿入されていますが、絵が上手いしそれ以上に字が達筆です。まるでお手本のような美しい字で吃驚しましたね。 そして終盤の荒唐無稽な展開。この真相を予想出来た読者は恐らくいないでしょう。しかし、ここが賛否両論を生む最大の原因となり得ます。果たして、素晴らしいと拍手するのか、壁に叩き付けたくなるのか、それはあなた次第です。ただ言えるのは本書が問題作であるのは間違いないこと。無茶苦茶な話が好きな私は勿論賛成派ですが。 |
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| No.2060 | 7点 | 処刑館殺人事件 西式豊 |
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(2026/08/22 22:21登録) 群馬県北部の山奥に建つ豪奢な洋館「岨景館」に招かれた、ミステリ作家養成講座出身の男女6人。恩師である宇宿部彬の招集に応じて、売れっ子から新人、デビューできていない者まで、久しぶりに同期全員が集まった。宇宿部の到着を待たずに彼らが敷地へ入ると、入口の跳ね橋が上がり外界から隔絶した閉鎖空間となってしまう。やがて〈黒衣の処刑人〉により、ミステリ作家たちは自身の著作を彷彿とさせるやり方で、一人また一人と殺害されてゆく――。 Amazon内容紹介より。 又してもクローズドサークルもの。しかし、閉じ込められたミステリ作家達6人はよく書き分けられており、読み応えもあります。どこか違和感を覚える部分はありました。しかしいつもの館ものね、と思ったら大間違いです。連続殺人事件が完成され、一応の終結を見てからが本番です。まだまだページ数が残っていますからね。 目新しいトリックはありませんが、解決編ではかなり入り組んだ仕掛けが施されており、瞠目させられました。一見典型的な館ミステリですが実は・・・。という訳でこれは巷に溢れる本格ミステリに一石を投じる、新たな挑戦と受け止めるべき作品なのだと思いました。いやー、それにしてもネタバレせずに書評を書くのがこれほど難しいミステリもなかなかないですよ。 あとどうでも良いですが、作中で「他ありません」と言う表現が多用されていますが、「他なりません」の間違いではないでしょうか。 |
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| No.2059 | 6点 | さよなら、ムッシュ 片岡翔 |
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(2026/08/18 22:30登録) 小さな出版社で校正の仕事をしている森星太朗は、幼いころ他界した作家で母の文子が残してくれたコアラのぬいぐるみを大事にしていた。 ムッシュ、と名付けられたそのぬいぐるみは、母が亡くなったその日、なんと突然しゃべりだし、以来、無二の親友になっていた(もちろん、世間には内緒のままにして)。 そんなある日、しゃっくりがとまらなくなった星太朗は、自分が母と同じ死に至る病に罹っていることを知ってしまう。ムッシュは、星太朗に思いがけないある提案をした。 温かで、名付けようのない思いに満たされる感動作。 Amazon内容紹介より。 面白かったけれど、残念ながら泣けませんでした。感受性の強い読者ならまず泣くでしょう。感動はしましたし勉強にもなりました、こんなんで宜しいでしょうか。それにしてもしゃっくりっていうのは厄介な上に、死に至る病が隠れているサインの場合があったとは、怖いですねえ。 本作は幼くして母を亡くした森星太朗と、喋ったり動いたりするコアラのぬいぐるみの一種の友情を描いています。この二人の掛け合いが楽しくも切ない、心温まるストーリーです。チョイ役として登場する女子達にもそれぞれ味があり、印象に残ります。その中でも夢子と看護師の花本さんが名バイプレイヤーぶりを発揮していたりします。 しかし、もう途中からムッシュの存在がぬいぐるみとは思えなくなってくるのが何とも言えません。完全に人間としての人格を持っているとしか考えられなくなりますね。勿論感情移入するのはやはり星太朗でしょうけど。死の病に冒されながら目標に向かって前に進もうとする姿が、痛々しくなく描かれているので、ある意味安心して読み進められます。 |
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