home

ミステリの祭典

login
図地反転
改題『本ボシ』

作家 曽根圭介
出版日2009年09月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 猫サーカス
(2021/10/13 18:45登録)
己の目で見たものは間違いない、と誰しも思っている。だが、見た目や先入観に惑わされる人は多い。ましてや、自分の記憶さえ、後になって都合よく改竄してしまう場合があるという。そんな人間心理の複雑なあやを扱った犯罪サスペンス。新米刑事の一杉研志は、幼児殺害事件捜査の応援で隣の署へまわされた。約二カ月たっても進展が見られなかったとき、ある目撃証言により犯人らしき男が特定された。だが前歴や言動などからも有力な容疑者とされたものの、決め手に欠けていた。実は研志は、子供の頃に妹を同じような事件で失っていた。犯人は逮捕され刑に服したが、一方で冤罪の可能性があったという。単なる犯人捜しではなく、現在と過去の犯罪を追うことによって見える真実を暴き出そうという物語。個人ばかりか、組織全体が見誤ることは、これまでも多くあったことだ。その過程を具体的に描き出すことで、奥底にある心理をあぶりだし、ドラマを劇的なものにしている。

1レコード表示中です 書評