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ミステリの祭典

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ザ・ロード

作家 コーマック・マッカーシー
出版日2008年06月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 メルカトル
(2025/11/13 22:38登録)
空には暗雲がたれこめ、気温は下がりつづける。目前には、植物も死に絶え、降り積もる灰に覆われて廃墟と化した世界。そのなかを父と子は、南への道をたどる。掠奪や殺人をためらわない人間たちの手から逃れ、わずかに残った食物を探し、お互いのみを生きるよすがとして――。
世界は本当に終わってしまったのか? 現代文学の巨匠が、荒れ果てた大陸を漂流する父子の旅路を描きあげた渾身の長篇。ピュリッツァー賞受賞作。(解説:小池昌代)
Amazon内容紹介より。

死に瀕した世界。舞台は北米と思われます。「彼」と「少年」はそんな果てしなき旅の途中で出会い、親子として道行をする事になります。彼らは食料を積まれたショッピングカートを押しながら、少しでも暖かい場所を求め南に向かいます。本作は旅で出会った人々との僅かな触れ合いと、二人の何気ない会話で成り立っており、読点がほぼなく会話文の鍵括弧すらない異形の作品となっています。

雰囲気は殺伐としていて、只管食料を求めて彷徨う親子の、絶望の中に僅かな希望を抱きながら生きていく姿が映し出されていくばかり。ストーリー性や劇的な展開はありません。よって本作は読者に豊かな想像力を行使する事を強要します。私の様な想像力の欠如した読者は駄目なんですね。例えば荒廃する世界に、幾つかの並べられた生首、或いは両足を切断され止血処置されて横たわる男、これらから想像されるものは私でも結論付けられます。しかし、この作品はそれを遥かに超えるものを強いて来ますので、読者によって評価が割れるのは必然と言えるでしょう。これを読むにはある程度の覚悟が必要となると思います。

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