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ミステリの祭典

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抹殺ゴスゴッズ

作家 飛鳥部勝則
出版日2025年08月
平均点8.20点
書評数5人

No.5 9点 HORNET
(2025/12/04 23:22登録)
 令和元年、高校生の詩郎は、同級生の西郷寺桜が荒くれ者どもに暴行されるのを目撃した。助けに入るも詩郎もリンチを受けて死を覚悟した時、親友の聖夜と空想で話していた怪神・ゴスゴッズが出現し、荒くれ者たちを蹴散らした―
 遡ること30年の平成元年、詩郎の父・正也は、地元名士の元医者が脅迫状を受け取ったのを知る。地元の金山を観光用に整えた施設を開く日に市が訪れるという。当日、式典が開催される中、突如「怪人」の声が鳴り響き、見世物の人形に見立てた死体が...。


 「令和の詩郎(息子)」と、「平成の正也(父)」のくだりが交互に描かれ、それぞれにボリューミーではあるものの、どちらのストーリーからも目が離せない。個人的には父・正也の平成のストーリーのほうが、乱歩の「少年探偵団シリーズ」を思い起こさせるような雰囲気で惹かれるものがあった。


<ネタバレ>
 「ゴスゴッズ」という正体不明の「怪神」がピンチになると現れ、悪党どもをなぎ倒していく、という冒頭からは特殊設定ミステリかのように見えるものの…最後まで読めば特濃の「本格ミステリ」であることが分かる。
 終盤に差し掛かったあたりで、真相が見えたかのような段に入り、読み手が「だと思った…。厚みのある作品だけど、真相はオーソドックスだな…」なんて思おうものなら―そこからが怒涛。真犯人だけでなく、さまざまな真実が明らかになっていく展開は圧巻だった。
 ラストの桜との場面…切ないながら、美しい。
 読後は満足感に浸れた…

No.4 7点 みりん
(2025/11/19 17:56登録)
15年ぶりの電撃復活!私は去年出会った作家なのでそこまで感慨はありませんが、この日を待ち侘びた方もいらっしゃるでしょう。お祭りに便乗して最新作を先読み。

読んですぐに厨二感「嗚呼、此れぞ飛鳥部勝則也」 この作風は20年経っても消えないのか。丸みを帯びるどころか独特の尖りが更に研ぎ澄まされたように熟成された一冊。それこそ、雅号で出版してもすぐにバレただろうな(笑)

怪人・蠱毒王が地下洞窟に棲みつく「平成」と2人の少年が怪神・コドクオを召喚する「令和」のカットバック形式で物語は進行する。好きなのは令和のコドクオよりも平成の蠱毒王。乱歩作品のような残虐趣味・変態嗜好と紳士さを持ち合わせている芸術家の鑑である。このキャラクターが本作で1番魅力的だった。殺人事件も怪奇要素も興味を唆るのは平成の方で、密室状況からの犯人消失もの。平成と令和が交錯する最終章は意外な真相がいくつも明かされ、本格ミステリーとしての威厳を保ちつつ、高校生の青春小説に着地した。
骨格はやや弱いと思うが、飛鳥部ワールドが堪能できて実に面白かった。

No.3 8点 メルカトル
(2025/11/04 22:24登録)
ゴッドが好きな高校生の詩郎が出逢った、自分が空想で創ったはずの神の正体とは……? 地元の名士が殺害され、脅迫していたという謎の怪人・蠱毒王とは何者か……? 二つの迷宮的な事件が複雑怪奇に絡み合い、恐ろしいカタストロフィが待ち受ける本格超大作!
Amazon内容紹介より。

短編を挟みながら遂に大長編を引っ提げ復活したかと思われたのですが、昨年『フィフス』という同人誌で既にこっそり復活を遂げていた飛鳥部勝則。いずれにしても有志と共に祝いたいですね。
本作は令和と平成の二部構成で交互に配置されています。勿論登場人物もそれぞれ違います。令和パートは冒険譚を挟みながらの青春小説の様相で、名画をモチーフにした辺りはらしさが出ています。平成パートは乱歩さながらの雰囲気満点で陰鬱な空気が漂っています。

流石に長かったとの印象は否めませんが、最終盤の畳み掛けるような展開は圧巻で、感動しました。又不思議な高揚感に包まれました。永きに亘って待った甲斐があったというものです。ただそれまでがやや地味で所謂鈍器本なので、今年のベスト10に入って欲しいと思っていますが、難しいかな~。

No.2 7点 レッドキング
(2025/10/19 20:21登録)
なんと久しゅう*飛鳥部勝則、新作ミステリ。ゴス・ゴッズ=ゴシックなゴッド達=奇怪な神々。十五年ぶり長編ミステリは、「大乱歩」オマージュと、十八番アートねた物の接合「大作」で、飛鳥部風の変態悪趣味**満載(それも、またよし)。本格具合は・・うーん、合格点はクリアかなぁ・・点数、復活ご祝儀相場。

* 近年、突然に短編出て来て、 嗚呼、無事に生きてたんだ(なんたる無礼 な "(-""-)" )と詠嘆。
** 二十歳そこそこで小説書いた麻耶雄嵩レベルの、「翼ある闇」超俗的とり澄ましと、「夏と冬の奏鳴曲」の眼を背けたくなる程の生臭い情感を、還暦過ぎに至るまで、払拭できない(であろう)感性。坂口安吾が書いてたな ” 青春二度と帰らず、は美しいが、青春未だ去らず、は情けない ”って。あと、誰だっけ? ” 十八歳でドストエフスキーに夢中にならない奴は見込み無いが、四十過ぎても夢中になってる奴はどうしようもない” とか。ま、いいや、これからも「本格」書き続けてチョ、門前典之とあんた(どーも麻耶はダメっぽく)にはキタイしてるヨ(ー_ー)!! 

No.1 10点 虫暮部
(2025/10/04 13:05登録)
 “あの頃僕は神を愛していた。”

 何て素晴らしいイントロ。或る種の小説は、文体によって成立している。或る種の小説は、物語性よりも世界観の構築によって成立している。
 その中でもこれは驚嘆すべき存在だ。だから、その “世界” の濃度に圧倒されて、相対的にミステリ的な謎解きが卑小に感じられても構わないのである。そもそも作中の仕掛けの多くは普通に読めばバカミスだろう。ところが、その全てをアリにする世界が、言葉の力によって私の眼前に立ち現れたのだから、抵抗しようが無いじゃないか。
 いい加減長かったけど、まだ終わるなと願いながら読んだ。ズブズブ分け入った彼岸から、最後に一歩こちら側へ戻って来る終章も完璧。あ、でも正直に懺悔すると、桜とカナヨの区別がイマイチ付かなかったな。

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