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ミステリの祭典

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妖精鬼殺人事件
氷室想介シリーズ 魔界百物語(新)

作家 吉村達也
出版日2011年09月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 6点 メルカトル
(2025/09/18 22:40登録)
精神分析医・氷室想介の女性患者の息子が転落死した。その原因を調査する氷室だったが、その背後にはQAZの影が……悪魔の書『陰陽大観』を携え殺人者を生み出す狂気の伝道師QAZとの対決が幕を開ける!
Amazon内容紹介より。

サブタイトルに『魔界百物語』とある様に、あとがきによれば元々シリーズとして百の長編を書く予定だったらしいです。そこには込み入った事情があり、取り敢えずseason1として5作で一応完結させるつもりだった様です。これだけ壮大な構想なので、作者のライフワークとなる筈だったのですが、ご存じの通りご逝去されて早々に打ち切りとなった訳です。とは言え、一話完結としても読めますので支障はありませんが、肝心のQAZの正体などが判らず仕舞いなのは残念な限りです。

後に文庫版として角川ホラー文庫から刊行されていますが、ホラーと言うよりは本格ミステリだと思います。マンションから転落した少年の事件の背後に潜んでいた人物の正体には唖然としました。その動機にはいささか問題がある感じがします、というかどうにも腑に落ちません。事件としては地味ではあるものの、様々な角度から真相に迫る氷室想介の推理には納得でしたが。
物語全体としてやはり序章的な役割が大きく、これから本格的にストーリーが動き出すだろうという予感がして、吉村氏が生きていたらさぞ面白い物が読めただろうなと思うと、悔しくてなりません。

No.1 8点 北浦透
(2012/04/29 11:01登録)
「魔界百物語」という大プロジェクト第1弾。

実は一度この企画は始動したものの、途中で時代や社会環境の変化により頓挫してしまっている。

新たに発表された本作は、設定こそ踏襲しているものの、本格ミステリの色が強くなっており、内容もスッキリと読みやすくなっている。

気軽に読んでいるうちに、中身の充実度に気付き、そしてミステリの世界に迷い込む。

今の時代に必要な作品ではないだろうか。

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