| ネズミとキリンの金字塔 蜘蛛手啓司シリーズ |
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| 作家 | 門前典之 |
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| 出版日 | 2025年09月 |
| 平均点 | 6.80点 |
| 書評数 | 5人 |
| No.5 | 6点 | 虫暮部 | |
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(2025/12/19 16:08登録) また見事に馬鹿みたいなアイデア(褒め言葉)。 それは良いけれど話が未整理で、そういう演出だと言うことを差し引いても判りづらい。“精神病院の闇” は何処かで読んだような内容も多く目新しさは無いが、まぁしょうがない。 また、不老不死研究について深く掘り下げずに、ただその結果だけ取り込んでいる点が、ブラック・ボックスを手探りしても空っぽだったような読後感で物足りなかった。 |
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| No.4 | 7点 | みりん | |
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(2025/11/30 19:09登録) 本サイトで始めて知りましたが、こんなにも新本格な作家がいたのですね。ここまで建築!建築ゥ!なミステリーを読んだのは周木律以来です。 ピラミッドを模した精神病棟で起こる奇怪な密室殺人と崩落事故。ネズミとキリンの童話から始まり、精神病院に流れる黒い噂とアンデッドの目撃情報。これが詩美性のある謎? 蜘蛛手さん、容疑者の1人かと思っていたらシリーズものの探偵だったのね。正直言うとなんか嫌なやつだったなあ… 「堅牢な建築学的不可能犯罪」は確かに魅力的ですが、それ以上に動機が秀逸です。蜘蛛手探偵の言うとおり、ホワイを推理するのは難しく、登場する図に真摯に向き合わないと不可能でしょう。そんなことでここまで大掛かりで時間のかかることをするだろうかという突っ込みは野暮ですね。こんなにも精緻な金字塔を竣工した作者にあっぱれです しかし肝心の見取り図の中の文字が不鮮明で読みにくいのは改訂しといてね |
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| No.3 | 8点 | メルカトル | |
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(2025/11/17 22:45登録) 地方都市を支配する一族が営む総合病院に隠された深淵なる闇。続発する怪事件に立ち向かう偏屈探偵・蜘蛛手啓司は、過去から連綿と受け継がれる“負の歴史”に終止符を打つ事ができるのか……。第11回鮎川哲也賞受賞の実力派作家が放つ渾身の書下ろし長編本格ミステリ! 作家・二階堂黎人氏推薦「奇想ミステリーの詩美性のある謎と、堅牢な建築学的不可能犯罪が、火花を散らして融合した希有な作品である。」 Amazon内容紹介より。 うーむ、実に面白い。例え蜘蛛手が掴み所が無かろうが、密室トリックがバカミスだろうが、それすらも愛おしく思えます。こうした凝りに凝った本格ミステリを読むと、又してもこれが言いたくなります。日本のミステリは世界一だ、と。細部まで神経が行き届いた本作は建築に関して非常にデリケートであり、作者の得意分野として面目躍如しています。 本年の国内作品の収穫の一つであるのは間違いないですが、何せ知名度が低いせいか認知され難くランキングには縁がないかも知れません。それでも私は本作を推します。 犯人の目処が付きやすいのが難点ですが、それでも次から次へと開示される真実には目を瞠るものがあります。タイトルすら奇を衒った訳ではありません、ちゃんと意味があります。そこまでするかと、門前の読者へのサービス精神には頭が下がります。作者の新たなる代表作と言っても過言ではないと思います。 |
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| No.2 | 6点 | レッドキング | |
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(2025/11/08 22:36登録) 門前典之第九作。冒頭に建築図面が何枚も付いていて、うーん、「エンデンジャード」良かったな「建築屍材」はツマランかったなぁ、と読み始めた。「社会派」文法・・リアリズム描写ではなく、不正糾弾ジャーナリズム文法・・が、ダマになって混入しててイタダケない、島荘同様、読んでて鼻白む悪い要素だな、ジュンスイに「本格」を楽しませてくれい、と文句を呟きながら読み進めていったら・・・なんと素晴らしき本格ドンデン返し! タイトルと何枚もの図面の伏線回収も鮮やかで、期待どおりの門前典之であった。( 密室は大きくズッコケだけどね ^^; ) |
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| No.1 | 7点 | nukkam | |
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(2025/10/30 23:10登録) (ネタバレなしです) 2025年発表の蜘蛛手啓司シリーズ第8作です。シリーズ前作の「友が消えた夏」(2023年)の締め括りの後日談はどうなったんだろうと気になっていましたが、まるで何事もなかったかのように蜘蛛手たちが振舞っています(こちらは消化不良の気分になりました)。さて配置図、平面図、断面図、俯瞰図と豊富な資料を揃えているのはこの作者らしいですが(論創ノベルス版の字が小さくてじじい読者の私はルーペが必要でした)、印象的だったのは精神医療問題をとりあげた社会派推理小説要素があったことで、新たな試みとして評価してもいいかも。しかしながら解決編ではページをめくる手が一瞬止まってしまうほどのとてつもない秘密が明かされ、奇想の本格派推理小説らしさ爆発です。とても沢山の謎解き伏線を回収しての推理説明が披露されるのですが、某国内作家の1980年代前半の本格派をもっと非現実的にしたような真相は毛嫌いしてしまう読者もいるかもしれません。「屍の命題」(別題「死の命題」)(1997年)に並ぶ怪作と思います。 |
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