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ミステリの祭典

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江守森江さんの登録情報
平均点:5.00点 書評数:1256件

プロフィール| 書評

No.916 4点 名探偵もどき
都筑道夫
(2010/07/03 21:59登録)
設定の楽しさを活かしきれない残念なシリーズと云えるのだが、一種のパスティーシュとして、元ネタをあたってセットで読めば違う方向で楽しめる。
さらには、この作品のパスティーシュと云える霧舎巧「新本格もどき」もセットに加えれば楽しさ三倍増な「お買い得品」かもしれない。
ついでに西村京太郎の「名探偵シリーズ」まで読めば、この作品を最大限に活用したと納得出来るだろう。
作品レベルは4点だが、読書の広がりに対する活用レベルは高い。


No.915 4点 グラン・ギニョール城
芦辺拓
(2010/07/02 18:48登録)
パチンコ屋の開店前の並ぶ時間の暇つぶしに読んだのが間違いだった。
影の薄い名探偵・森江春策に対して、作者の作品は何でこうも脂っこいのだろう。
作中作やらメタな構成やら相変わらずの詰め込み過ぎに、理解する事(&パチンコの利益追求)に追われて楽しめなかったのが正直な感想だろう。
もう少しアッサリ風味なら普通に再読すれば良いだけなのだが・・・・それにも躊躇いがある。
パチンコを含めた賭博を控え目にし、読書体力も鍛えられた今なら理解に追われずに楽しめるのだろうか?
※ボヤキ
森江春策に愛着を持ってしまったのが、そもそも間違いの始まりだったのかもしれない。


No.914 5点 歴史街道殺人事件
芦辺拓
(2010/07/02 18:33登録)
この作品で、掴み所がない名探偵・森江春策が友人の江守君に似ていると感じた事に加え、後の推理クイズ作品でのトリックとアナグラムからHNを江守森江にした。
その意味で愛着のある作品なのだがミステリとしての内容がハッキリと思い出せない作品でもある。
よって、採点はミステリ3点に愛着2点で合計して5点。
再読してガッカリしたくない気持ちが、再読を躊躇わせる。


No.913 6点 真説ルパン対ホームズ
芦辺拓
(2010/07/02 18:18登録)
作者は、博覧強記を売り物にしている為なのか、オリジナル設定な作品は脂っこくクドい欠点が目立ち、緩めなミステリ・ファンから敬遠されがちで多くの読者を逃している。
しかし、ミステリの先人に対する‘愛’は本物で、その意味で独自性を抑え込んだパスティーシュ作品に限っては弱点を解消している。
しかも、パスティーシュ作品に絶対必要な各・名探偵に対しての中立姿勢も堅持し万人が楽しめる。
あとは、読者の側が元ネタ共々楽しめばよいだけだろう。
※元ネタとセット収録した作品集だったら出版姿勢に敬意を込めて満点にしただろう。


No.912 5点 バスカヴィル家の犬
アーサー・コナン・ドイル
(2010/07/02 04:15登録)
先にドラマ版を観てネタは知っていたが、名探偵コナンでネタバラシをしながらのアレンジ作品を先週まで連載していた。
それを読んだついでに原作もオサライした。
子供の頃に犬に咬まれたトラウマで犬恐怖症な嫁の気持ちが少し理解出来たのは良かった(嫁と一緒に良くドラマを観るが、この作品は観ようとしなかった)
いつも感じる事だがホームズはジェレミー・ブレッド、ポワロはデビッド・スーシェが演じるドラマ版を観るのが一番楽しめる。


No.911 4点 悪意銀行
都筑道夫
(2010/07/02 03:47登録)
前作よりコンビとしての連携は良くなったが、前作でも感じた笑いの古臭さが強まってしまった。
スラプスティック・コメディに徹する筈の作品だがミステリとしての気付きや展開が、それを阻害していると感じてしまう。
ナンセンスな笑いに徹してミステリ色を極力排除するには都筑の本質がミステリ作家過ぎるのだろう。
それでも、作品の展開に関係なく挟まる下ネタは楽しい。
※光文社文庫の都筑道夫コレクション《ユーモア編》で読んだので、同シリーズの短編「NG作戦」「ギャング予備校」の他、ショートショート2編に落語4題も収録されている。
都筑道夫コレクションでミステリーとは関係無い《下ネタ編》を出版してほしかった。


No.910 2点 灰色の美神
高山聖史
(2010/07/02 03:17登録)
前作に引き続いた選挙サスペンスか、作者が「このミス」で書くと宣言していた前作の主役の一人を主人公にしたハードボイルドだろうと図書館から借りて来た。
想像していた物とは全く違う美容業界でのゴタゴタを描いたミステリーの範疇外作品だった。
そもそも、宝島社の考えるミステリーの範囲に疑問を感じている。
「このミス大賞」受賞者レーベル故に、受賞者の作品であればミステリーの範疇外でも構わず出版するのは如何なものか。
世評は高くないが前作が楽しめ期待していただけに残念でもある。
作者も腹を括って選挙サスペンス専門作家になってしまえば良かった気がする。


No.909 2点 女系家族
山崎豊子
(2010/07/01 23:53登録)
これが山崎豊子作品で一番ミステリーと一般小説の境界線を明確に示している作品だろう。
読み方次第で充分ミステリーなのだが私的なミステリーの範疇外なのでポリシー通り2点。
代々女系の家筋で養子婿を迎える大阪・船場の老舗・矢島家で、先代当主の死亡により遺言書が読まれ、三人の娘に婿や親族、更に愛人や番頭まで加わった遺産相続争いが描かれる。
ドロドロした設定自体は大横溝に同じだが描く手法は全く違う。
遺産を巡る権謀術数の数々は、殺人の起こる本格ミステリよりも人間の醜さや恐ろしさを浮き彫りにしていて、かえってミステリー的ではある。
家族小説として山崎豊子では一押しの面白さだろう(一般小説としての採点は8点)
※TBS系で放送された連続ドラマもドロドロしていて面白かった。


No.908 2点 不毛地帯
山崎豊子
(2010/07/01 23:30登録)
これもミステリーの境界線の基準として書評する。
唐沢寿明主演でドラマ化もされ、その時に読んだ方も多数いるだろう。
これもミステリーの範疇外扱いでポリシー通り2点。
商社での場面から突如シベリア抑留の話に転じる前半部は、戦争絡みで好きではないし読むのが苦痛だったが、一転して商社内外での権謀術数部分はスリリングで面白い、よって一般小説としては7点に留まる。
皮肉にも前半の読み辛さがミステリーに通じている。
商社部分の描写は実在のモデル(田中角栄や小佐野賢治)までイメージ出来て、非常に面白かった。
権謀術数を、どう処理して描くかが、ミステリーと一般小説の別れ道で、一般小説側のお手本と云える作品だろう。


No.907 2点 沈まぬ太陽
山崎豊子
(2010/07/01 22:59登録)
これもミステリーの境界線の基準として書評する。
私的なミステリーの範疇外なのでポリシー通り2点。
まさに超大作(全5巻)で、約40年前から20年前頃の日航をモデルにしたノンフィクションの如きフィクション小説で、一般小説での採点なら7点。
利益追求から安全性を蔑ろにし墜落事故を起こす日航がモデルなだけに、政・官・民の癒着や腐敗も描かれ、今の日本の疲弊を暗示していた。
日航が破綻し再建中の今が新たな読み頃とも思える。
ちょっと超大作(同じ事故を描いた横山秀夫「クライマーズ・ハイ」が途中の一巻に相当する感じ)過ぎて読み出しを躊躇わせるのが玉に瑕かもしれない。


No.906 2点 華麗なる一族
山崎豊子
(2010/07/01 22:43登録)
ミステリーの境界線の基準作品として書評する。
私的にはミステリーの範疇外なのでポリシー通り2点。
銀行や財閥の権謀術数には病院ほど馴染めなかったので一般小説としても7点程度としておく。
メガバンク誕生以前の中位ランク銀行を牛耳る財閥一族の野望と陰謀を描いている。
キムタク主演でドラマ化もされている。
昨今流行りの経済ミステリーに通じる部分は多いので、読み方次第なのかもしれない。
山崎豊子作品のオススメ一番手は「白い巨塔」だが、それで気に入れば、この作品も読んで損はないだろう。


No.905 2点 白い巨塔
山崎豊子
(2010/07/01 22:30登録)
私的に、ミステリーの境界線を考える為に書評する事にした。
基本的に山崎豊子作品は全てミステリーの範疇外だと思っている(よってポリシー通り2点)
その一方で、一般社会小説では最強の作家の一人とも思っている。
この作品は、その中でも代表作の一つで一般小説としての採点なら思い入れ込みの10点になる。
先日、無性に田宮二郎版ドラマが観たくなりトランク・ルームからビデオを引っ張り出して一気に観た(ついでに再読もした)
前半は大学病院内での後継教授争いの権謀術数、後半は「誤診」の医療裁判と背後の駆け引きを描いた骨太社会派小説で一気に読ませる。
全くミステリー寄りに書かれてはいないが、テーマはミステリーに通じるし、読み方次第な感もあり、私的にミステリーの境界線を引く上での基準作品にしている。
そんな些細な事は関係なく、素晴らしい作品なので万人にススメられる一編だろう。


No.904 5点 向日葵の咲かない夏
道尾秀介
(2010/07/01 19:01登録)
※要注意!!!
他作家の諸作を挙げて構成に触れていますので一部ネタバレになります。
読み始めて、真っ先に山口雅也「生ける屍の死」のルールを明記しないバージョン(その意味で本格ミステリから外れる)だと思い、次に叙述部分について中西智明「消失」が思い浮かぶ。
更に、流れる作風に乙一や我孫子「殺戮に〜」等が浮かび、解決は「アクロイドの技法」の亜流で終わる。
これだけ書いても読まねば解説不能な作品で、評価は各自の嗜好に委ねられる。
トリックの為に感じる違和感は論理的に解決されるが、設定その物から感じる違和感は解消されない(この辺りが設定ルールを明示しない作品の弱点だろう)
先々の作品で開花する技巧的素質とリーダビリティの高さは評価しても、モヤモヤした読後感は好きではないので相殺して水準点にしておく。


No.903 4点 花と流れ星
道尾秀介
(2010/07/01 18:34登録)
「流れ星のつくり方」のみが突出した感があり、それを他のアンソロジーで先に読んでしまっていた。
本来なら一冊に纏まった短編集に重点を置いて評価するのだが、その意味で微妙に評価を下げている。
長編での技巧(騙し)を作者には期待しているので、短編で正統派本格を書かれても普通(平凡)な印象しか感じないのは贅沢なのだろうか?
わざわざ一冊読まずとも色々なアンソロジーに収録された「流れ星〜」だけを拾って読めば充分な気がする残念な短編集。


No.902 6点 天から声あり
清水一行
(2010/07/01 18:18登録)
「‘某’大手企業」株主総会出席記念・書評パート2。
三流総会屋が主人公だが、株主総会や株式の不正取引が主題ではなく、甘い汁を吸うべくゴルフ場経営に乗り出し、大量発行により二束三文となったゴルフ会員権を売りさばき、金を持ってトンズラするコン・ゲーム(詐欺)小説。
シリアスなドキュメント・タッチ作品からコミカルなエロ小説まで幅広い作風を誇った作者の後者の作風での代表作と云える。
人間の色と欲がコミカルに描かれ面白い。
※余談
以前友人が、この作品同様な手口のゴルフ会員権を売りつけられた(←今でも仲間内では語り草)
私も誘われたが(女性営業の肉体攻勢は激しい)何とか振り切った(独身の頃で良かった。ホッ)


No.901 5点 みんな黙れ
梶山季之
(2010/07/01 17:57登録)
「‘某’大手企業」株主総会出席記念・書評。
週刊誌連載時のタイトルは「小説 総会屋」だった。
裏社会との繋がりを断つ意味でも、今では総会屋対策がなされていて、実際の株主総会も随分とおとなしい。
総会屋がはびこっていた頃の経済ピカレスク小説だが、裏社会が一般社会に食い込む手法の本質は今でも変わっていないと、相撲界の野球賭博問題などからも解る。
その意味で古さも感じず、実にタイムリーな一冊だと思えた(再読感想)


No.900 8点 谷崎潤一郎 犯罪小説集
谷崎潤一郎
(2010/06/29 19:06登録)
日本探偵小説の原点と云うべき、この作品集を区切りの900番目の書評にするべく、並べ替え改めた。
江戸川乱歩が日本探偵小説の父なら谷崎潤一郎は祖父であろう。
その事を示す、我が国に於ける先駆的探偵小説として満点(8点)を献上する。
川端康成でなく谷崎潤一郎がノーベル文学賞を受賞していれば、日本発信でミステリーでもノーベル賞が狙える事を示せただけに残念でならない。
※途中に余談
最近の‘島荘’のアジアから世界にミステリを逆流させる活動と方向性は、ノーベル文学賞を狙った遠大な計画なのだろうか?※
全4編からなるが「柳湯の事件」は、さほどの作品ではない。
乱歩「赤い部屋」に影響を与えた「途上」はプロバビリティの犯罪を論理的に暴く傑作。
クリスティーに5年先駆け《アクロイドの技法》を用いた「私」
覗き趣味小説に見せながら二段仕掛けの芝居オチが炸裂する「白昼鬼語」
上記3編の技巧と先駆性には驚嘆を禁じ得ない。
文庫で200ページ程度で時間も要さないので、是非とも国内ミステリの原点を覗いてみては如何だろう!!


No.899 6点 餌食
清水一行
(2010/06/29 03:00登録)
クリスティー・カー(ミステリ的には凄い名前)全米女子プロ制覇&大嶽親方相撲界追放記念・書評。
企業ミステリー短編集で7編収録。
表題作は企業ミステリーと賭けゴルフ小説の融合に成功した埋もれた名作。
賭博に絡めとられる過程と賭けゴルフの結末が実にミステリー的で面白い。
表題作だけ読めば充分なので入手の困難さを考えれば、タイトルは忘れたが結城信孝のギャンブル・アンソロジーを図書館で、あたる方が読める可能性は高い。


No.898 6点 小説 選挙参謀
豊田行二
(2010/06/29 02:03登録)
国会議員定数削減キャンペーン!!書評。
選挙戦の裏側を描けば普通にミステリーやサスペンスになる事を示した短編集。
「選挙に落ちたら唯の人」なんてフレーズからタレント候補や株の政治銘柄まで選挙に纏わるいかがわしい話(一般人には謎)がタップリ描かれ、しかも古さを感じない。
つまり、選挙や政治が旧態依然としている現実を突きつけられる。
そんな事は関係なく選挙エンターテインメントとして非常に面白い。


No.897 2点 怪物大統領
豊田行二
(2010/06/29 01:04登録)
消費税率アップ&夫婦別姓反対キャンペーン!!書評。
私的にミステリーの範疇外な作品なのでポリシー通りに2点。
書かれた当時には近未来政治パロディ小説だったが、今ではノストラダムスの大予言と同じで過去の遺物になってしまった。
それでも、政治パロディとしては楽しく読める。
日本も憲法改正し、大統領制にして皇室も平民になってもらい、国有財産(皇居や新宿御苑など)を民間に売って赤字国債の穴埋めをしてから消費税率アップの議論に進んでほしいものだ!なんて暴論が思い浮かんでしまった。
ちなみに、私は共産党員ではない(単なる無党派層の一人)

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