歴史街道殺人事件 森江春策シリーズ |
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作家 | 芦辺拓 |
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出版日 | 1995年08月 |
平均点 | 6.86点 |
書評数 | 7人 |
No.7 | 7点 | Tetchy | |
(2023/02/14 00:25登録) 本書は1995年、つまり平成7年に刊行された作品だが、この題名『歴史街道殺人事件』とはなんとも古めかしく昭和のノベルス全盛期に刊行された推理小説群を彷彿させる。 本書も最初はトクマ・ノベルスの版型で刊行されたことから、恐らくはかつての島田荘司氏がそうであったように、当時新本格ブームで続々とデビューする新米作家たちに少しでも固定読者を付けようと敢えて俗っぽい『〇〇殺人事件』の名をつけ、そしてトラベルミステリ風に味付けしたものを版元が要求したように思われる。そしてあとがきではまさにそのことが書かれていた。このベタな題名が生んだ功罪についても。 本書は宝塚、天王山、奈良、伊勢でバラバラに切断された死体が発見されるショッキングな内容でこの殺人ルートを解明するミステリである。 本書にはいくつか物理的なトリックが登場するが令和の今では懐かしさを感じさせる。ダイヤル式の電話やワープロの特徴を活かした文章トリックはまさにそうだ。 あとパソコン通信も歴史を感じさせるが、これはまだ親近感を覚えるが、さすがにワープロ通信には驚いた。私もこれは知らなかった。既に歴史の遺物と化しているようだが。 しかし読んでてて真相は何とも背筋が寒くなる思いがした。上に書いたように本書はサラリーマンが通勤中に読むようなノベルスで刊行された推理小説だが、この犯行内容は通勤中に読むにはショッキングすぎるではないか。 しかし事件の真相から立ち上るのは味原恭二、白崎潤、稲荷克利、本庄静夫という4人の男の中心にこの事件の最初の被害者川越理奈という女性がいたことだ。そして彼女は非の打ちどころのない、知り合えば魅了されてしまうほどの魅力を備えた女性だったということだ。 歴史街道を軸に1人の女性に魅せられた男たちと1人の男性の才能に魅せられた1人の女性の物語であったのだ。 |
No.6 | 8点 | ロマン | |
(2015/10/20 20:20登録) 弁護士となった森江春策が、歴史街道上の各地を舞台とした、バラバラ死体遺棄と連続殺人の謎に挑む。とにかくトリックが衝撃的。このトリックはエグい。 |
No.5 | 7点 | nukkam | |
(2011/09/06 18:50登録) (ネタバレなしです) 1995年発表の森江春策シリーズ第2作の本格派推理小説で、冒頭のバラバラ殺人こそ派手な出だしですが、中盤は複雑な人間関係描写とアリバイ捜査が中心の地味な展開となり、やや中だるみ気味に感じました。しかし解決編で森江が明かすトリックは破壊的なまでに衝撃的、これには意表を衝かれました。作者は後年、「普通のトラベルミステリーかと思わせてその裏をかく」つもりだったというコメントを残していますが、西村京太郎や内田康夫のコピー商品みたいなタイトルではそもそも売れなかったのもごもっともで、せっかく充実した内容なのにこの題名では明らかに作戦失敗でしょう(笑)。 |
No.4 | 5点 | 江守森江 | |
(2010/07/02 18:33登録) この作品で、掴み所がない名探偵・森江春策が友人の江守君に似ていると感じた事に加え、後の推理クイズ作品でのトリックとアナグラムからHNを江守森江にした。 その意味で愛着のある作品なのだがミステリとしての内容がハッキリと思い出せない作品でもある。 よって、採点はミステリ3点に愛着2点で合計して5点。 再読してガッカリしたくない気持ちが、再読を躊躇わせる。 |
No.3 | 7点 | ギザじゅう | |
(2003/10/26 11:47登録) 一見トラベルミステリー(実際トラベルミステリーだけど) しかし、大胆にして悪魔的なトリックのあるまさに本格! バラバラ事件と他の事件が混ざってよく分からなくなってしまいがちなので、じっくり読む必要があるかも。 探偵としての個性も少なくエゴ丸出しでないのは、それはそれで気にならないし、そこが森江春策だと思った。 |
No.2 | 7点 | 由良小三郎 | |
(2002/12/09 21:10登録) 森江探偵に名探偵らしさがないのが、難点でしょうか。必要以上に、犯罪を「いらって」いる感じです。つまり、バラバラ死体をアリバイ造りのためにばらまかなければいけなかったかどうか、真面目に検証する気力がわきませんが、直感的にはやりすぎのような気がしました。 |
No.1 | 7点 | テツロー | |
(2002/04/25 23:48登録) 被害者の身体を道具として使って、密室なりアリバイなり、トリックを作り上げる。古典で言えば「チャイナ橙」、「妖魔の森の家」もそうかな。それらの作では、被害者はミステリ成立のため本当に単なる道具として扱われ、探偵も犯人を逮捕はするが、被害者の受けた扱いに対し何かを思う描写は無い(と思う)。我々読者も、特に本格マニアなどは、その探偵に違和感無くシンクロしている(と思う、憶測ではあるが)。 本作では被害者の身体を道具として使ったアリバイトリックが描かれているが、その点について森江春策に「最大の罪悪」「陵辱」「おぞましい」と言わせている。実際、おぞましいトリック・犯人像ではある。ただ、前記のように、探偵にそれを言わせるのって、珍しい気がして。良し悪しを言うのでも無いけど、そこが最後気になった。 この「タイトル・展開ともありがちの旅情トラベルミステリだが、中身は新本格ばりの奇想トリックミステリ」シリーズ(笑)、第二弾として「三都物語殺人事件」が出ると予告されてた記憶があるが、まだかな? 記憶違い、ってこたないと思うが。 |