nukkamさんの登録情報 | |
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平均点:5.44点 | 書評数:2812件 |
No.1512 | 5点 | 殺人ファンタスティック パトリシア・モイーズ |
(2016/07/31 00:44登録) (ネタバレなしです) モイーズ代表作と評価する人も多いのが1967年発表のヘンリ・ティベットシリーズ第7作となる本書です。その理由は個性的でユーモラスな登場人物(主にマンシプル家の人々)の描写が秀逸ということで、これには私も大いに賛同します。但し読者が本書をキャラクター小説として読むか本格派推理小説として読むかによって人物への共感度もかなり違うでしょう。後者の場合はどんなに魅力的であってもやはり容疑者なので一定の距離を置いて読むでしょうから。プロット構成がちょっと変わっていて第一の事件は物語のなんと中盤で解決します。これはなかなかユニークな結末で驚かされました。一方後半に起きる事件の真相については個人的には好みでないところがあります。皮肉な幕切れが実に鮮やかな読後感を残します。 |
No.1511 | 5点 | 恐怖の研究 エラリイ・クイーン |
(2016/07/30 06:24登録) (ネタバレなしです) 1966年発表のエラリー・クイーンシリーズ第28作はクイーン単独執筆作ではありません。シャーロック・ホームズ映画(1965年)の脚本をSF作家のポール・W・フェアマン(1916-1977)が小説化し、さらにクイーンが探偵クイーン登場場面を加筆して完成させた作品だそうです。私にとっては実在の犯罪者である切り裂きジャックを初めて知ったのが本書ということでそれなりの思い出のある作品です。物語の大半が「医学博士ジョン・ワトソンの記録」で占められています。冒険スリラー風な展開でサスペンス豊かですがあまり本格派推理小説らしさは感じられません。もっともコナン・ドイルによるオリジナルのホームズシリーズにもそういう作品はありますからそれほど違和感はありません。活動的なホームズに対してエラリー・クイーンの方はエームズ3世との漫談風場面や記録を読む場面ばかりでほとんどぐうたら探偵です(笑)。クイーン場面は無理に後づけされたという印象は拭えないものの最後を本格派推理小説として締めくくることには貢献しています。 |
No.1510 | 5点 | おせっかいな潮 E・S・ガードナー |
(2016/07/30 05:36登録) (ネタバレなしです) 1941年発表の本書は探偵トリオによる謎解きという設定がこの作者らしいのですが、デュリエ地方検事とその妻ミルドレッド、そしてウィギンズじいさんという組み合わせの中でメイスンシリーズのポール・ドレイク的な存在のウィギンズじいさんに名探偵役を割り振っているのが珍しいですね。なかなか面白そうなキャラクターですが本書と「けむるランプ」(1943年)の2作品にしか登場しなかったようです。26章構成になっていますが12章までは章が変わるごとに登場人物が交代し、それぞれが駆け引きしたり何かを企んだり疑惑の行動をとるというややまとまりの悪い展開で、13章からようやくトリオによる探偵活動が活発になってばらばらの物語が少しずつ一つの流れに収束されていきます。謎解きプロットは遺産相続の問題、アリバイ崩し、手紙の謎など盛り沢山で複雑なのでじっくり読むことを勧めます。終盤は「おかま事件」で強烈なユーモアをぶつけて読者をゆさぶり、そこから一気に怒涛のクライマックスへとなだれ込みます。 |
No.1509 | 7点 | ドーヴァー1 ジョイス・ポーター |
(2016/07/30 05:25登録) (ネタバレなしです) 英国のジョイス・ポーター(1924-1990)は空軍に所属してスパイのトレーナーを担当したこともある変わったキャリアを持った女性作家です。その経験を活かしてスパイ小説も書きましたが1番有名なのは1964年発表のデビュー作である本書に始まるウィルフレッド・ドーヴァー主任警部シリーズの本格派推理小説です。その作風は強烈なユーモアと皮肉そして下品な描写もいとわない、かなりくせのあるものです。何よりもドーヴァーがデブで不細工、身だしなみはいい加減、性格も最悪とほとんどいいところのないアンチヒーロータイプに描かれています。さて本書はデビュー作でまだ作者も慎重なのか、前半のドーヴァーは多少強引ながらも意外とまともに仕事しています(あくまでも後年の作品に比べればですが)。とはいえ中盤以降は予測を越えた展開に圧倒されます。失踪事件という地味になりがちなテーマですが全く退屈しませんでした。犯人当て謎解きの伏線もしっかり張ってあります。あまりにもブラック極まりない真相で好き嫌いがはっきり分かれる作品ではあるでしょうがインパクトは強いです。 |
No.1508 | 5点 | 真珠の首飾り ロバート・ファン・ヒューリック |
(2016/07/30 05:11登録) (ネタバレなしです) ファン・ヒューリックが亡くなった1967年に発表されたディー判事シリーズ第13作です。今回は殺人もあるけどそちらの犯人はすぐ判明しており(しかも推理の要素はほとんどない)、盗難事件の実行犯もまた早々と明らかになり、真珠の隠し場所がメインの謎になっています。ここでディー判事がとった探偵法は何とG・K・チェスタトンの短編集「ブラウン神父の秘密」(1927年)を彷彿させるようなものでした。論理的ではありませんがディー判事の説明を聞くと確かにあそこしか考えられないであろう隠し場所で説得力のある推理でした。それにしても今回はディー判事が眠りにつく場面がやたら多かったような気がしますが、やはり皇族からの直々の依頼では心労も半端ではなかったのでしょうか(笑)。 |
No.1507 | 5点 | アラビアンナイトの殺人 ジョン・ディクスン・カー |
(2016/07/30 05:05登録) (ネタバレなしです) 1936年発表のフェル博士シリーズ第7作の本格派推理小説です。タイトルからアラブ風とかペルシャ風の異国情緒を期待する読者がいるかもしれませんがそういう雰囲気は全くありません。カー全作品中でも屈指の大作で、「千夜一夜物語」のように語り手(3人の捜査官のリレー形式)による説明で事件のあらましがフェル博士に伝えられます。物語の大半はこの捜査官の「語り」に終始しており、クロフツ風に捜査をじっくりと書き込んでいるのが特徴ですが伝聞形式ゆえのまわりくどさという弊害も生じていて読みにくい面もありました。謎解き手掛かりのばらまき方のバランスが悪くて無駄なページが多いという印象も強く、実際の長さ以上に冗長に感じました。 |
No.1506 | 5点 | 疑惑の霧 クリスチアナ・ブランド |
(2016/07/29 09:41登録) (ネタバレなしです) 傑作との誉れ高い1953年発表のコックリル警部シリーズ第4作ですが残念ながら私にはあまり相性がよくなかったです。何とも歯がゆい本格派推理小説で、曖昧なアリバイで誰が犯人でもおかしくないような状況を築きあげ、しかし明確な決め手がなかなか見つからないまま終盤にもつれこむのですが(それが作者のねらいにしろ)あまりにももやもや感の強いプロットは読みにくかったです。しかし法廷シーンはさすがに盛り上がり、ブランドらしい大胆などんでん返しにいい意味で翻弄されました。色々な書評で賛否両論の「最後の数行の衝撃」については、個人的には「あまり期待しないで」臨んだ方がいいと思います(私は期待し過ぎてました)。 |
No.1505 | 5点 | 誰がロバート・プレンティスを殺したか デニス・ホイートリー |
(2016/07/29 09:19登録) (ネタバレなしです) ジョー・リンクス原案、デニス・ホイートリー著という共作形式による捜査ファイル・ミステリーシリーズの1937年発表の第2作です。本書では登場人物に手記を書かせることによって「人格描写」にも力を入れているのがクリスティーの「五匹の子豚」(1942年)やマイケル・イネスの「ある詩人への挽歌」(1938年)に先駆けた新工夫です(表情や仕草を直接描写する場面がないので限界がありますが)。謎解きとしても袋とじの解決編に前作にはなかった趣向が用意されています。分量的には袋とじまでのページがわずか78ページ(中央公論社版)ですが、証拠品として挿入されている新聞記事が結構な情報量があるのであまり読み急がない方がいいと思います。この記事の中にはリンクスとホイートリー、そしてホイートリー夫人の3人がインタビューに応えて誰が犯人かについて推理を披露するというお遊びまであって、作者にも余裕が出てきたことをうかがえます。ということで前作に比べて進歩も見られる反面、解決編でシュワッブ警部補がとりあげた最初の証拠が時間が経過すると消滅してしまう種類のものであることや最後に残された謎については特に手掛かりらしい手掛かりが用意されていないなど謎解きとしての不満もいくつか散見されます。 |
No.1504 | 4点 | バーネット探偵社 モーリス・ルブラン |
(2016/07/29 09:11登録) (ネタバレなしです) 私立探偵ジム・バーネット(アルセーヌ・ルパン級のすご腕)の活躍を描く8編の短編を収めた1928年発表の短編集で、本格派推理小説風に仕上げられていますが読者が謎解き伏線をもとに自力で推理できるようにはなっていないところは「八点鐘」(1923年)と同じです。トリックのレベルは「八点鐘」に比べると特筆するものがなく、「ジョージ王の恋文」のあまりのバカトリックぶりや「金歯の男」の謎というのもおこがましいような真相が悪い意味で印象に残るでしょう。謎解きの醍醐味よりも「したたる水滴」でのブラックな仕返し計画や「白手袋......白ゲートル」で切歯扼腕するベシュー警部の姿などユーモアと皮肉を楽しむべき作品ではないかと思います。「僕」を「やつがれ」と読ませる翻訳(新潮文庫版)の古さにはもう降参です(笑)。 |
No.1503 | 5点 | スターは罠にご用心 サイモン・ブレット |
(2016/07/29 08:51登録) (ネタバレなしです) 初期の代表作と評価されることもある1977年発表のチャールズ・パリスシリーズ第3作ですが個人的には微妙な作品(笑)。なかなか大きな事件が起こりませんがそれは不満に思いません。非常に個性的な人物が登場し、その言動と周囲の反応の描写だけでも十分サスペンスに富む物語になっています。しかし謎解きとしては推理の要素がほとんどなく、本書は本格派推理小説ではなくサスペンス小説として読むべきかもしれません。となると(ネタバレ防止のためあまり詳細を書きませんが)チャールズとある人物の対決にあのひねりを加えたのはむしろ蛇足だったような気もします。物語としては十分に読ませますが本格派の謎解きを期待する読者にはあまりお勧めできません。 |
No.1502 | 7点 | 中途の家 エラリイ・クイーン |
(2016/07/29 08:40登録) (ネタバレなしです) 国名シリーズの最終作「スペイン岬の秘密」(1935年)に次いで1936年に発表された本書から「ドラゴンの歯」(1939年)に至る5作品はクイーンの第二期作品と位置づけられています(もちろん異説もあります)。もっともこの第二期の5作品は作風的に共通部分は意外と少なく、例えば本書と探偵エラリーが女性にメロメロ状態になっている「ハートの4」(1938年)では全く雰囲気が違います。どうもこの第二期はパズル・ストーリーの書き手として壁にぶちあたったクイーンが新たな作風開拓のために色々試行錯誤していた時期と言えそうです。さて本書の感想ですが人物描写が類型的ながらも人間ドラマを意識したようなところに新たな工夫を感じさせます。その一方で国名シリーズでの論理的な謎解きへのこだわりもまだ健在で「読者への挑戦状」も用意されています。過渡期の作品というとどうも半端な印象を与えそうなので国名シリーズスタイルに新たな工夫を加えた作品と誉めておきましょう(笑)。 |
No.1501 | 6点 | そして死の鐘が鳴る キャサリン・エアード |
(2016/07/28 09:56登録) (ネタバレなしです) 1973年発表のスローン警部シリーズ第5作です。教会の塔内で石像の下敷きになった死体と砕けた石像で出入口が塞がれ犯人が脱出不可能という風変わりな密室を扱い、不可能犯罪好き読者の間では有名らしいです。しかし作者はこの密室の謎解きを前面には押し出さす、被害者の足どり調査や人間関係の探求などにもたっぷりページを費やしています。そのため他のシリーズ作品と同じく地味で端正な本格派推理小説として仕上がっています。地味なのが決して悪いとは思いませんが、死体の身元確認も死亡推定時刻の確定も後半という遅い展開に加えて人物描写も個性を感じられず、何かメリハリが欲しかったです。 |
No.1500 | 6点 | 嘘は刻む エリザベス・フェラーズ |
(2016/07/28 09:24登録) (ネタバレなしです) 1954年発表の本格派推理小説です。正直こういう真相は私の好まない種類なのですが、巧妙な手掛かりと証言の矛盾の鮮やかな解き方は実に見事です。物語の雰囲気は全般的に暗く、登場人物の性格描写や彼らが織り成す人間ドラマには後年デビューするD・M・ディヴァインの作風を髣髴させるところがあります。 |
No.1499 | 6点 | 編集者を殺せ レックス・スタウト |
(2016/07/28 09:20登録) (ネタバレなしです) スタウトの個性が良くも悪くも発揮されている1951年発表のネロ・ウルフシリーズ第14作の本格派推理小説です。行動型探偵のアーチーが実によく描かれ、特に前半のディナー・パーティー編でのスマートでお洒落、そしてユーモアも豊かな手腕が大変面白いです。しかし14章以降の西海岸編では「毒蛇」(1934年)ほどではないけれど証拠を入手するために乱暴な手段も辞さないのが個人的にはあまり感心できませんでした。起伏ある物語展開でとても読みやすいです。ウルフ自身が「もう少しで出し抜かれるところだった」というほど冷血で手ごわい犯人にとって最後の一撃が思いもよらぬものだったのが印象に残る作品です。 |
No.1498 | 5点 | 森を抜ける道 コリン・デクスター |
(2016/07/28 09:14登録) (ネタバレなしです) 1992年発表のモース主任警部シリーズ第10作で1990年代の作品の中では最も評判がよく、CWA(英国推理作家協会)のゴールド・ダガー賞を獲得しています。物語が匿名人物からの詩が投稿された後から始まっているので、その前に発生していた事件やそれまでの捜査状況について把握するのがやや難しかったです。またモースによる推理が頓挫してはまた新たに推理を重ねていく従来パターンではなく、代わりに新聞紙上で色々な人が謎解きに挑戦するという展開ですが論理的な推理というよりも主観的な解釈に近いので読者によっては期待外れに感じるかもしれません(個人的には新たな試みとして評価したいです)。68章での真相には驚かされましたが、「なぜそんなことを?」という理由についてははっきりしなかったのが気になりました(まあ往々にしてある私の理解力の不足かもしれませんが)。 |
No.1497 | 6点 | 閘門の足跡 ロナルド・A・ノックス |
(2016/07/28 09:03登録) (ネタバレなしです) 1928年発表のマイルズ・ブリードンシリーズ第2作で、何とシリーズ外の作品である「陸橋殺人事件」(1925年)の登場人物の出演サービス付きです。ボート旅行者の失踪に端を発する事件を扱っていますが英国は日本よりも交通手段として川や運河が積極的に利用されているのか本書以外にもコリン・デクスターの「オックスフォード運河の殺人」(1989年)、ピーター・ラヴゼイの「絞首台までご一緒に」(1976年)、ジョセフィン・テイの「美の秘密」(1950年)などの作品が思い浮かびます。推理が丁寧な反面、細かすぎると感じることもしばしばでゆったりした展開と相まって冗長に思う読者もいるでしょう。とはいえ本格派推理小説としてしっかり作られているのは間違いありません。大胆なトリックの使い方も印象的で、個人的には「陸橋殺人事件」より上位の作品だと思います(まああちらは伝統破りが特徴の作品なので並べて比較すべきでないのかもしれませんが)。 |
No.1496 | 5点 | 殺人者はへまをする F・W・クロフツ |
(2016/07/27 16:42登録) (ネタバレなしです) 1943年から1945年にかけて放送されたラジオの脚本から小説化されたものをまとめて1947年に発表された、実質上の第一短編集です(「クロフツ短編集1」(1955年)よりも早く出版されています)。前半の12作は犯人の正体や犯行状況場面を最初から読者に明かしてその後でフレンチ警視の推理によって謎を解くという倒叙型ミステリー、後半の11作は最初から最後までフレンチ警視の視点で謎解きを行うスタイルをとっています。後者にしても登場人物が非常に限られているので犯人当てとしては他愛もなく、どの作品も犯人がどこで失敗したのかが謎の中心になっています。1つ1つは大変短くて読みやすいのですが長編作品以上に物語の要素がなくて推理クイズ的な作品なので、連続して一気に読むとその味気なさにだんだん嫌気がさすかもしれません。トリックに頼った作品も多く、特に「熱心な羊飼い」で使われたトリックとフレンチがつかんだ手掛かりはあまりにも古典的で有名です。また「盗まれた手榴弾」のように書かれた時代ならではの戦時色濃厚な作品が読めるのも特徴です。 |
No.1495 | 4点 | 猫は郵便配達をする リリアン・J・ブラウン |
(2016/07/27 16:20登録) (ネタバレなしです) 1987年発表のシャム猫ココシリーズ第6作で以降のシリーズ作品の主要舞台となるムース郡ピカックスにクィラランが引っ越すという、シリーズファンにとっては前作「猫はブラームスを演奏する」(1987年)と並んで年代記的に重要作ながらハヤカワ文庫版の出版が後年作よりも後回しになってしまいファンの顰蹙を買ったことでも知られます。前半はやや普通小説的な展開ながら中盤からはサスペンスが十分盛り上がります。とはいえ今回のクィラランは探偵役としてはぱっとせず、推理もほとんどしないままに解決してしまうので本格派の謎解きにはあまり期待しないで読んだ方がいいと思います。 |
No.1494 | 5点 | ベウラの頂 レジナルド・ヒル |
(2016/07/27 16:16登録) (ネタバレなしです) 1998年発表のダルジール警視シリーズ第15作でずっしりと重さを感じさせる大作です。本書では女刑事シャーリー・ノヴェロが第4の主役ばりに存在感を示しています。その一方でダルジールは時に言葉づかいが下品になったり皮肉屋になることはあっても全般的にはおとなしく、いつものように羽目を外すことがないのには物足りなささえ感じます。パスコーの娘ロージーの病気を心配する場面なんかは結構しみじみしますけど。謎解きはそれほど論理的ではなく、夢判断でヒントを掴んだりしていてどこかもやもやした感じですがその中に恐さや痛々しさをひしひしと感じさせます。でもさすがにこの長大さには疲れました(とはいえヒルの大作主義は本書以降も更に拍車がかかるのですが)。入門編としてはちょっと薦めにくいです。 |
No.1493 | 6点 | 殺人ア・ラ・モード パトリシア・モイーズ |
(2016/07/27 16:07登録) (ネタバレなしです) 1963年発表のヘンリ・ティベットシリーズ第4作の本格派推理小説です。モイーズは作家になる前にファッション誌出版社で約5年間働いていた実績があるためか本書でのファッション業界の描写が(多少演出過剰に思えるところもあるけれど)とても生々しく感じられます。トリックもやや専門的過ぎて私には理解しにくい面がありますがこれまた作品舞台によく合っています。だけど男の登場人物を「小母ちゃん」と呼んでいるのには混乱しました(笑)。これもファッション業界ではよくあることなのでしょうか? |