殺人は容易だ バトル警視 |
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作家 | アガサ・クリスティー |
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出版日 | 1957年01月 |
平均点 | 6.11点 |
書評数 | 9人 |
No.9 | 6点 | 虫暮部 | |
(2021/07/18 13:18登録) ラスト4分の1くらいで表面化する、某氏の異様な自己認識(『 DEATH NOTE 』みたい)について、もっと読みたかった。 因みに私は、真犯人は秘かに某氏を愛していて、某氏の視線から“この者を殺せ”とのメッセージを(勝手に)読み取って実行しているのかな、ディープなラヴ・ストーリーだな、と推理したのだが……。 |
No.8 | 5点 | レッドキング | |
(2020/08/17 21:50登録) 車内に居合わせた老女から「連続殺人」の逸話を聞いた元警官。単なる偶然の事故と眉に唾つけて聞き流した話だったが、後日、老女の予言した人物が死に、さらに老女自身も死んだことを知る。好奇心から探求に乗り出すのだが・・・ なんか気だるくピリっとしないフー・ホワイダニットミステリが、終盤でグッとミステリアスに盛り上がり、サイコなサスペンスにひと捻りし・・操りネタをおまけに付けて決着する。 「自尊心を傷つけられた女の復讐心ほど怖いものはありません」「好きだということは、愛しているということよりもずっと大切・・」相変わらずミステリ小説で人生を教えてくれるアガサさん。 |
No.7 | 6点 | 蟷螂の斧 | |
(2018/05/15 15:20登録) ノンシリーズもので、元警察官ルークによる私立探偵風な物語です。ノンシリーズで男の主人公は珍しいかも?。ミッシングリンクとミスディレクションのお手本のような作品でした。主人公のルークは、卿の秘書かつ婚約者であるブリジェットに一目ぼれしてしまいます。二人の会話(「あなたは冷酷な悪魔だ」等々)は結構楽しめました。物語は『一瞬の狂気』が主題になっているような気がしました。老婦人の話にある犯人の一瞬の目つきや、インコの首を一瞬に絞めたなど。 |
No.6 | 6点 | nukkam | |
(2016/08/11 12:19登録) (ネタバレなしです) 1939年に発表されたバトル警視登場の本格派推理小説です。もっともバトル警視は脇役的存在ですが。本書と同年にあの「そして誰もいなくなった」が発表されているのが興味深いどころです。どちらも大量殺人を扱っているのですが雰囲気がまるで違いますね。本書は舞台を田舎の村にしているせいかどこかのんびりした雰囲気が漂っていていかにもクリスティーらしい作品と言えるでしょうし、裏を返せば孤島を舞台にした「そして誰もいなくなった」はクリスティー作品としては異色で孤高の存在だったと言えるでしょう。十分に面白い内容なのですが「そして誰もいなくなった」と同時期の作品だったのがある意味不幸、シリーズ探偵が登場しないこともあって知名度が低いのはやむなしでしょうか。 |
No.5 | 6点 | 了然和尚 | |
(2016/03/24 13:03登録) ちょっと派手に殺されすぎていると思いますが、クリスティーのサービス精神でしょうか。真相から考えれば、一人死んで、特定人物に疑いがかかればいいのですが、うまくいかないので次々と。。。というのはシニカルです。倒叙でも面白い味になりそう。 他作品(特にマープルもので)でも出てきますが、犯罪者の異常な眼差しにふと気がつくシーンがありますが、結構怖いですよね、クリスティーの実体験から来てるのでしょうか? |
No.4 | 6点 | makomako | |
(2015/10/04 08:29登録) ポアロやミスマープルが出てこないが、マープル物に近いイギリスの田舎のお話。嫌味のない人物が多くゆったりと読めました。 解説にもあったが、名探偵マープルおばあさんが出てきてはこの話は成り立たない。読者をミスリードしていく手法はさすがであるが、この話だけだと物的証拠やありばいなどの証明がほとんどなく、ほかの人が犯人であるように書き換えても不都合はないように思えました。 最後のシーンも急に犯人がべらべらと犯行理由をしゃべらせて(相手は睡眠薬を飲まされて眠る寸前のふりをして聞いている。なかなか寝ないで聞いているのも不自然だよね。)つじつまを合わせようとしているのですが。そのあたりの詰めがもう一つの感じがしました。 |
No.3 | 5点 | クリスティ再読 | |
(2015/09/21 23:51登録) バトル警視その2。 バトル警視ものに共通するのは、作品の形式的な狙い(これがどういう小説か?)が「謎」になっているところだと思う。表面的な話の進行は、ホイットフィールド卿を指し示す方に強く流れていくけども、まあ読者はダレもそんな流れを信用したり、あるいは実は別の人が犯人とダマされて満足、という風に素直に決着しないのを期待してしまう。なので、読んでいるうちに「作者の狙いはいったいどこに??」というのを探すようになる... まあポアロだったら本格ミステリのフォーマット重視を期待されるから、クセモノ小説だとポアロの居場所はないわけだ。透明な器のようなバトル警視ならば、こういう狙いの特殊なクセモノ小説用の脇役的探偵としてうまく使える...ということだろう。 とはいえ、本作はこの流れがABCとか「ゼロ時間へ」とか「死との約束」で扱われる心理操作に行き着くようなんだが、しっかり流れ着いていないためにどうも中途半端な印象を受けてしまう...これが作者の狙いとしてのどんでん返しとして狙われているようなんだが、あまり効果的には感じない。 どちらか言えば本作で一番印象的なのは「ネコの耳の××...」というような、ひんやりした即物的な気色のワルさだ(実は筆者この手の気持ち悪さがクリスティのオリジナリティのように秘かに思ってる)。そういうあたりでまさに「殺人は容易」であり、一番成功しているのがそういうリアリティだろうね。あとヒロイン、クリスティでは珍しい若干ツンデレ(苦笑)。 まあ本作の要素は後の「動く指」とか「蒼ざめた馬」に転用されて、そっちがうまく出来ていると思うから本作よりオススメ。 |
No.2 | 8点 | あびびび | |
(2011/06/17 11:36登録) 「そして誰もいなくなった」とか「オリエント急行の殺人」のように大がかりなトリックではない。それゆえに知名度はないのだろうが、よく出来ている。傑作だ。 外国勤務を終えた元警官が、ロンドン行きの列車に乗る。途中、アクシデントから老婆と向い合せになるが、その老婆はある村で連続して起こった死亡事故が実はある者による殺人だと言う。しかも次の犠牲者も分かっており、地元警察では心もとないから、ロンドン警視庁へ相談しに行くのだという。 その時は話を合わせていただけの元警官は、次の日、その老婆が交通事故で死んだことを知り、しかもその後、その村で老婆が言った名前の男が事故で死んだという記事を見てしまった……。 半分くらい読んだころに、そういえばこの作品はミステリチャンネルで見た覚えが…と思い出し、だいたい犯人も見当をつけて、物語もそんな流れになったが、さすがクリスティ、最後の最後でどんでん返しを食らった。元警官が推理する容疑者がすべて犯人だと思わせる組み立ては実に巧妙だ。 素直にミステリを堪能できるお薦めの一冊だと思う。 |
No.1 | 7点 | 空 | |
(2008/12/08 22:26登録) 作者がどういう方向に読者の疑いを持って行こうとしているかは簡単にわかってしまったのですが(似たパターンをクリスティーは後の作品でさらに巧妙に使っていて、そっちを先に読んでいましたので)、それでもやはりおもしろく読めるのは、さすがに小説技巧のうまさですね。わかっていながら、誘導に乗りそうになってしまいます。 バトル警視(『ひらいたトランプ』等)が、ほんのちょい役でゲスト出演。 |