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ミステリの祭典

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nukkamさんの登録情報
平均点:5.44点 書評数:2901件

プロフィール| 書評

No.1841 6点 厚かましいアリバイ
C・デイリー・キング
(2017/02/05 06:27登録)
(ネタバレなしです) 1938年に発表されたABC三部作の第2弾で、英語原題は「Arrogant Alibi」です。アリバイ崩しではありますが容疑者全員にアリバイが成立しているので犯人探しの面白さも両立しており終盤のどんでん返しが鮮やかです。このアリバイ、論創社版の巻末解説で紹介されているように「とうてい読者に解明できるとは思えない」のが弱点ではありますが、トリックが「実行不可能では」と思わせた前作の「いい加減な遺骸」(1937年)と比べるとかなり改善されていて、トリック成立のための伏線が(私は十分に理解できませんでしたけど)細か過ぎるぐらいに用意してあります。人並由真さんのご講評で「ほほえましい」と述べられているのに私も賛同します。もし同時代に山村美沙が活躍していたらきっと自作にアイデアを採用しただろうなと想像しました。


No.1840 5点 灰の迷宮
島田荘司
(2017/02/04 22:40登録)
(ネタバレなしです) 1987年発表の吉敷竹史シリーズ第7作で本格派推理小説と社会派推理小説のジャンルミックス型ですが事故死した人間の不思議な行動の謎解きという、とらえどころのないプロットで引っ張ります。吉敷の推理は論理的な組み立てが乏しく、「みんなあいつにやられた」の「あいつ」の正体なんかあまりにも飛躍し過ぎの真相にしか感じられませんでした。大胆なトリックを用意してはいるもののトリックの効果がインパクト不足なのも惜しまれます。シリーズ前作の「Yの構図」(1986年)のような社会問題描写の息苦しさがないのは個人的には好みですけど、その分特徴の見えにくい地味な作品になってしまったような気もします。


No.1839 7点 聖エセルドレダ女学院の殺人
ジュリー・ベリー
(2017/02/01 13:27登録)
(ネタバレなしです) 子供向け或いはヤングアダルト向けの作品を得意とする米国の女性作家ジュリー・ベリーが2014年に発表した本格派推理小説です。時代は1890年、舞台は英国の聖エセルドレダ女学院(寄宿学校です)、主人公は7人の女生徒(最年少は12歳)です。彼女たちの目の前で校長先生とその弟が毒死するのですが家に戻りたくない少女たちが死体を隠してしまうことから事件隠蔽と犯人探しが複雑に絡み合う、ユーモアとスリル溢れるプロットになりました。活躍が目立つのは気転のキティ、たくましいアリス、あばたのルイーズですが他の少女たちもなかなかに個性的です。大人読者が読んでも十分楽しめる内容です。


No.1838 4点 FBIの殺人
マーガレット・トルーマン
(2017/01/25 13:05登録)
(ネタバレなしです) ドナルド・ベイン代作による1985年発表の警察小説で、FBIで起きた殺人事件(被害者もFBI局員です)をFBI捜査官が調べていくプロットです。捜査担当の男女が実は恋人同士(組織ルールではご法度らしいです)というのが物語としてのアクセントになっており、後半になるとこの関係がややこしくなるのですが主人公に共感できるかは微妙な気がします。読者が推理に参加できる要素はなく、組織の都合に左右される捜査を地味に描いています。結末もやはり組織の論理優先的なところがあってどうもすっきりしませんが、こういうのが現実的なのかなと思わせる結末です。


No.1837 5点 首なし男と踊る生首
門前典之
(2017/01/19 08:38登録)
(ネタバレなしです) 2015年発表の蜘蛛手啓司シリーズ 第4作の本格派推理小説です。トリックメーカーの作者らしくトリックは複雑かつ豊富です。生首描写がそれほど生々しくないのはありがたいのですが全般的にもやもや感の強い展開で、一体どういう順番で何回首が出現したのか私の読解力レベルではなかなか理解できませんでした。26章の終わりでの自白も中途半端な印象です。


No.1836 6点 誰もがポオを読んでいた
アメリア・レイノルズ・ロング
(2017/01/16 04:58登録)
(ネタバレなしです) 1944年発表の犯罪心理学者トリローニーシリーズの本格派推理小説で、ミステリー作家キャサリン・パイパーも登場しています。エドガー・アラン・ポオの作品に見立てたような連続殺人という派手な設定の事件を扱ってはいますが、抑制の効いた文章表現のためか「安っぽい」とか「パルプ調の」とかの通俗スリラー色はそれほど強くありません。同時代のセオドア・ロスコーやハリー・スティーヴン・キーラーやアンソニー・アボットらの典型的なB級ミステリーに比べれば端正な本格派推理小説です。それでも後半になるほど不気味な雰囲気は盛り上がりますし、推理に次ぐ推理(その中には巧妙なミスリーディングもあります)が楽しめます。


No.1835 5点 函館五稜郭の闇
長井彬
(2017/01/14 22:20登録)
(ネタバレなしです) 1986年発表の本格派推理小説です。主人公のカメラマンが崖から男が海に落下するのを目撃するが、後に死体は山中で発見された上に墜落死や水死の特徴が全くなかったというユニークな謎が提供されます。この作者らしくプロットは凝っており、第6章で主人公が「ひとつのナゾを解けばさらに大きなナゾが奥に隠れている」と語るほど複雑な展開で、全11章なのに第10章のタイトルが「10の謎が残った」という始末です。最終章で明らかになる真相はそれなりの衝撃はあるのものの読者に対して謎解き手掛かりが事前に十分に与えられてたと感じられないのが残念です(自白頼りの説明になっているからかも)。


No.1834 6点 駆け出し探偵フランシス・ベアードの冒険
レジナルド・ライト・カウフマン
(2017/01/13 09:16登録)
(ネタバレなしです) 米国のレジナルド・ライト・カウフマン(1877-1959)は小説家、映画作家として活躍していますがミステリー作品はわずかに2作のみです。1906年発表の本書は女性探偵フランシス・ベアードの1人称形式の本格派推理小説です。冒頭では数々の事件を解決していて名探偵らしいことが紹介されています。しかし本書で描かれているのは探偵社で働くようになって2年ほど経過した時期のフランシスで、失敗続きで解雇される危機を迎えており最初から名探偵というわけではなかったようです。宝石の警備の任務を与えられますが何者かに盗まれてしまう上に殺人事件にも巻き込まれます。フランシスは感情の起伏が大きくてプロの探偵らしさがありませんし、推理も直感的に過ぎますがかなりの回り道をしながらもこの時代の本格派としてはまずまずの出来映えではないでしょうか。なおカウフマンは1910年にフランシスを主役にした2作目を発表していますがそちらはスパイ・スリラー系のミステリーのようです。


No.1833 6点 探偵宣言
芦辺拓
(2017/01/10 01:36登録)
(ネタバレなしです) 「殺人喜劇の」で始まるタイトルを付けた7作品を収めた1998年発表の森江春策シリーズ第1短編集です。森江の高校生時代から弁護士時代までの年代記的な要素があり、最後の「殺人喜劇の森江春策」では短編集全体にまたがる趣向が用意されている連作短編集でもあります。講談社文庫版のあとがきによると当時は連作短編集が次々に発表されていたらしく、後発ゆえの挑戦意欲がにじみ出ている力作です。過去の古典的ミステリーの懐古或いは発展を意識しているのではと思わせる作品があるのはこの作者ならでは。「殺人喜劇の時計塔」は高木彬光の「わが一高時代の犯罪」、「殺人喜劇の迷い家伝説」は泡坂妻夫の「砂蛾家の消失」を連想させます。もっとも「殺人喜劇のニトロベンゼン」あたりになるとアントニイ・バークリーの「毒入りチョコレート事件」(1929年)のパロディー趣向が楽しいものの、バークリー作品を読んでいない読者だと置き去りにされてしまいそうです。中編の「殺人喜劇のXY」も大胆な仕掛けはなかなか印象的なのに難解なダイイング・メッセージの謎解きが蛇足に感じられてしまうなど、作者の意欲が時に空回りしています。


No.1832 5点 震える石
ピエール・ボアロー
(2017/01/06 12:00登録)
(ネタバレなしです) ピエール・ボアロー(1906-1989)はフランスでは数少ない本格派推理小説の書き手です。1934年発表のアンドレ・ブリュネルシリーズ第1作の本書でデビューしました。作家として大きな転機を迎えたのがサスペンス小説家のトーマ・ナルスジャック(1908-1998)との出会いです。意気投合した2人は1952年から1970年代まで合作でミステリーを発表しますが、ほとんどが心理サスペンスに分類される作品だそうです(他に子供向けミステリーやアルセーヌ・ルパンシリーズのパスティッシュもあるようです)。さて本書は本格派の謎解きのあるスリラー小説か、スリラー色の濃い本格派か分類に悩みそうな作品です。列車の中で謎の男に襲撃される若い女性をブリュネルが救うのですが、その後も彼女の周辺に謎の男は出没してついに殺人事件まで発生します。ボアローは不可能犯罪作品を得意としましたが本書でも密室からの人間消失を扱っています。第17章で語られる事件背景が「探偵だけが知っていて読者にはヒントさえ与えられない」ものなので本格派推理小説として評価しようとするとアンフェア感が気になってしまいますけど物語のテンポは速くて読みやすく、さりげないですが風景描写は意外とよかったです。


No.1831 6点 悪夢街の殺人
篠田秀幸
(2017/01/01 23:10登録)
(ネタバレなしです) 2003年発表の弥生原公彦シリーズ第7作です。これまでの作品でも色々な要素を盛り込んでいますが、本書ではサイコキラー連続殺人を起こして犯罪プロファイリングによる犯人像分析に加えて音響分析や映像解析なども織り込んだ、いかにも現代的な犯罪と捜査を描いていますがその一方で呪いのビデオや古代の犬神伝承なども絡ませて「怖い小説」も意識しているようです。とはいえ小学生女子ばかり次々に殺されるという異常事件を扱いながらも被害者側の恐怖描写や生々しい残虐描写の類はなく、ホラー小説を期待する読者には物足りないと思います。あくまでも捜査側の描写に重点を置いて「読者への挑戦状」を挿入した王道的な本格派推理小説として鑑賞すべき作品であり、このシリーズはそれでいいと思っています(私がホラー小説が苦手というのも理由ではありますけど)。第3部第3章での弥生原レポートで実に複雑に入り組んだ事件であることが要約されていますがその割には意外と読みやすく、ごった煮気味な印象だった初期作品に比べるとプロット整理に進歩を感じます。


No.1830 4点 午前零時のフーガ
レジナルド・ヒル
(2017/01/01 02:29登録)
(ネタバレなしです) 2009年発表のダルジールシリーズ第22作でヒル(1936-2012)の最後の作品です。本格派推理小説ではなくスリラー小説に分類されるべき作品でしょう。周囲の反対を押し切って職場復帰したダルジールですが仕事をすると3、4時間でくたくたに疲れてしまうなどまだ本調子ではありません。そんな彼が元警部の妻から7年前に失踪した夫のことで相談を受けるのですが、その彼女を暴力的手段を辞さない悪の手先が監視しています。犠牲者を出してしまい、何も知らされていなかったパスコーは激怒します(どっちが上司かわかりませんね)。でも終盤のクライマックス直前では「二人は廊下を走っていった、パーティーへ向かう大きな子供って感じでな」と名コンビ復活です。わずか1日の出来事の中で7年前に何があったのかまでさかのぼる複雑なプロットですがヒルとしては意外と読みやすいです。下品な会話がちょっと多すぎるのが好みに合いませんでしたが。


No.1829 6点 諏訪湖マジック
二階堂黎人
(2017/01/01 01:44登録)
(ネタバレなしです) 1999年発表の水乃サトルシリーズ第3作(社会人水乃サトルとしては第2作)の本格派推理小説です。アリバイ崩しに挑んでおり、犯人の正体は早い段階で絞り込まれています。「崩せないアリバイ・トリックなんてものは、この世の中には一つも存在しないんです」と豪語するサトルですがそう簡単にはトリックを見破れません。第14章で馬田警部補が「最初の内は変なことや馬鹿げたことをたくさん言いますが、だんだんにまともな意見も多くなり。最後に事件の本筋に近づきます」と述べている通り、突拍子もないのまで含めて様々な可能性を次々に検証していく過程はまさに典型的なアリバイ崩し本格派ならではですが、まさむねさんのご講評で指摘されているように少々冗長に感じられるかもしれません。トリックはなかなか大胆で印象的、しかもなぜ警察がこれを思いつかなかったのかの理由まで説明されています。


No.1828 5点 盗まれた指
S=A・ステーマン
(2016/12/28 10:38登録)
(ネタバレなしです) ベルギーの本格派推理小説作家S・A・ステーマン(1908-1970)は新聞記者時代から同僚と合作でミステリーを書いたりしていましたが後に新聞社を退社して単独作家として成功しています。大胆なアイデアが光る作品をいくつも書いていますが一方で仕上げが雑に感じられることも少なくないのが欠点でしょう。初期作品である1930年発表のマレイズ警部シリーズ第1作の本書でもその特徴が顕著で、論創社版の充実した巻末解説(ネタバレになってますので事前には読まないように注意下さい)でも紹介されていますがジョン・ディクスン・カーの某作品を先取りしたような真相に驚く一方で十分な謎解き伏線があるとは感じにくいのが惜しまれます。死体の指を切り落とした理由が他愛もなかったりマレイズ警部がヒロイン風の容疑者を無実と判断する根拠がはっきりしないなど、緻密な謎解きを期待して読むとがっかりするでしょう。


No.1827 6点 九つの解決
J・J・コニントン
(2016/12/26 00:07登録)
(ネタバレなしです) 1928年発表のクリントン・ドリフィールド卿シリーズ第4作の本格派推理小説です。前半で次々に発見される死体、その内2つの事件について殺人か自殺か事故死かを巡っての九通りの可能性(これがタイトルの由来です)の議論、ジャスティスと名乗る人物から送られてくる怪情報、後半には何とクリントン卿の偽者まで登場と起伏に富んだ展開ながら文章は抑制が効いて地味で、通俗スリラーの領域には踏み込みません。論創社版の訳者あとがきでも紹介されているように最終章での推理説明の重箱の隅までつつくような細かさに驚く一方で、kanamoriさんのご講評での指摘のようにどこか釈然としないところもあります。地味なのか派手なのか、緻密なのか粗いのか、読者によって受ける印象が異なる作品と言えそうです。


No.1826 5点 毒だあ・すとっぷ
筑波耕一郎
(2016/12/25 01:00登録)
(ネタバレなしです) 1976年から1977年にかけて(筑波孔一郎名義で)雑誌に発表された横松部長刑事を探偵役にした本格派推理小説の短編4作をまとめて(筑波耕一郎名義で)1982年に出版された短編集です(連作長編と紹介されていますが作品間の相互関連は全くなく、普通の短編集です)。どの作品も軽妙な作品ながら真っ向から謎解きに取り組んでいますが、8つの謎を丁寧に解き明かす「アリバイあげます」とトリックがなかなか印象的な「箱入り娘」がまずまずの出来栄えでしょうか。「毒だあ・すとっぷ」は肝心の毒殺トリックが某海外ミステリー作品で非現実的として否定された没トリックをそのまま使っています。失敗の可能性が高く、成功しても痕跡を(証拠として)残しそうで個人的にはやはり没です(笑)。


No.1825 5点 反逆者の財布
マージェリー・アリンガム
(2016/12/25 00:33登録)
(ネタバレなしです) 1941年発表のアルバート・キャンピオンシリーズ第10作は記憶を失った上に警官殺しの容疑をかけられたキャンピオンが描かれた冒険スリラーです。キャンピオンが少しずつ記憶を取り戻しながら捜査と逃亡を繰り返すプロットで、ラッグやアマンダといったシリーズ常連キャラが謎の人物として記憶喪失中のキャンピオンの前に登場するのがなかなか新鮮です。第15章でキャンピオンが「どんな絵ができるのかを知らずにはめ絵合わせをやろうとしているのだ」と語っているように冒険スリラーにしてはもやもや感を長く引きずるストーリー展開ですが、最後にキャンピオンが明らかにした悪人たちのねらいはなかなか印象的です。


No.1824 5点 白妖鬼
高木彬光
(2016/12/23 06:22登録)
(ネタバレなしです) 1952年発表の神津恭介シリーズ第4作の本格派推理小説です。神出鬼没の毛皮の女とか行方知れずの共産主義者とか元子爵の一族とか怪しげな人物を数多く登場させていますが被害者も含めて互いの関係が曖昧な状態が続きます。謎を深めるために意図的に曖昧にしているのでしょうけど、どこか散漫なプロットになってしまったような印象を受けました。タイトルに使われている白妖鬼の存在感も埋もれ気味です(殺人予告をしたり神津恭介を挑発したりと実は結構アピールしているのですけど)。後年の名作「人形はなぜ殺される」(1955年)を連想させるところがありますがプロットの整理と謎解きの切れ味で劣るのが惜しまれます。


No.1823 5点 クリスマスの朝に
マージェリー・アリンガム
(2016/12/17 11:55登録)
(ネタバレなしです) 国内では2016年に独自に編集されたアルバート・キャンピオンシリーズ第3短編集で、収められた作品はわずか2作、17章構成で創元推理文庫版で200ページを越す「今は亡き豚野郎の事件」(1937年)と「クリスマスの朝に」(1950年」です。「今は亡き豚野郎の事件」は「判事への花束」(1936年)に次ぐシリーズ第8長編と位置づけられてもおかしくない作品なのですが英国本国でこそ単独で出版されたもののアメリカでは6つの短編と一緒に第1短編集(1937年)に収められたという微妙な中編扱いの(笑)本格派推理小説です。創元推理文庫版にはアガサ・クリスティーによる「マージェリー・アリンガムを偲んで」というエッセーも収めれてますが、そこでクリスティーがアリンガムの特徴として「幻想性と現実感の混在する味わい」を指摘していますが「今は亡き豚野郎の事件」はその特徴がよくでていると思います。ただそれは時に読みにくく、私がアリンガムに苦手意識を抱いている特徴でもあるのですが。いかにも短編らしい「クリスマスの朝に」は1種のアリバイ崩し作品で、謎解き自体は他愛もないのですがしみじみ感を残す結末が素晴らしい効果をあげています。


No.1822 5点 悪魔の水槽密室 「金子みすヾ」殺人事件
司凍季
(2016/12/11 21:23登録)
(ネタバレなしです) 1996年発表の一尺屋遙シリーズ第5作の本格派推理小説です。どちらかといえばサブタイトルの「金子みすゞ殺人事件」の方が作品内容に合っているような気がしますが「水槽密室」の謎もなかなか魅力的です。トリックの着想も悪くないと思いますし密室にする理由も一応は考えられています。人物描写の弱さは相変わらずですが本書の場合は深刻に受け止めると気分が悪くなりそうな事件背景があり、深みのない文章はかえって正解だったように思います。これは賛否の分かれそうなところで、悲劇ドラマとしての重苦しさをもっと求める読者もいるでしょうけれど。

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