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ミステリの祭典

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クリスマスの朝に
キャンピオン氏の事件簿3

作家 マージェリー・アリンガム
出版日2016年11月
平均点5.33点
書評数3人

No.3 5点 ボナンザ
(2023/02/18 21:52登録)
埋もれていた良作。豚野郎の方は結構凝っていて驚いた。

No.2 6点 人並由真
(2017/03/05 16:10登録)
(ネタバレなし)
 アリンガムは、個人的に現状のところ<本は何冊か購入しながらも、何故かほとんど読んでなかった作家>の筆頭格である。それでもHMMや日本語版EQMM掲載の短編はそこそこ楽しんでるハズで、現在の創元の新編纂短編集もこれで3冊とも読んだことになる。

 今回は(クリスティーからのお悔やみエッセイを別にすれば)長めの中編と短編一本のみのカップリングという「短編集」を謳うにしてはかなり変則的な構成。中編「今は亡き豚野郎の事件」は大きめの活字ながら約230ページの分量があり、これならnukkamさんのおっしゃるように短めの長編扱いして、昔の創元文庫のシムノンかアルレーみたいに、薄めの一冊で出せば、とも思った。まあ翻訳の契約問題とか、なんかあるのかもしれないが。

 とまれ「豚野郎」は、地方の村での連続殺人? 人間の入れ替わり? 死体の消失? 謎の手紙? と短い紙幅の中にミステリギミックがふんだんに詰め込まれ、話の展開もスピーディで予想以上に面白かった。殺人トリックも古めかしいが、これはこれで味がある。小説としてもキャンピオンとヒロインの微妙な距離感、脇役の連中との関係の変遷など、キャラクター作品として楽しめた。

 短編「クリスマスの朝に」は<十字路の周辺で死んだ郵便配達人が、その日そこまで歩いて行ったはずのない向こうの家に郵便を届けていた!?>という<状況的にそれは起こりえないはず>という明確な謎の提示がかの傑作『ボーダー・ライン事件』(大好きである)を思わせ、とても心惹かれた。解決は魅力的な謎に比してシンプルだが、その落差が妙に味を感じさせる一編でもある。

 個人的にはこの短編集3冊目で、ようやくキャンピオンの魅力が改めて見えてきた気もする。そのうち長編も読んでみよう。 

No.1 5点 nukkam
(2016/12/17 11:55登録)
(ネタバレなしです) 国内では2016年に独自に編集されたアルバート・キャンピオンシリーズ第3短編集で、収められた作品はわずか2作、17章構成で創元推理文庫版で200ページを越す「今は亡き豚野郎の事件」(1937年)と「クリスマスの朝に」(1950年」です。「今は亡き豚野郎の事件」は「判事への花束」(1936年)に次ぐシリーズ第8長編と位置づけられてもおかしくない作品なのですが英国本国でこそ単独で出版されたもののアメリカでは6つの短編と一緒に第1短編集(1937年)に収められたという微妙な中編扱いの(笑)本格派推理小説です。創元推理文庫版にはアガサ・クリスティーによる「マージェリー・アリンガムを偲んで」というエッセーも収めれてますが、そこでクリスティーがアリンガムの特徴として「幻想性と現実感の混在する味わい」を指摘していますが「今は亡き豚野郎の事件」はその特徴がよくでていると思います。ただそれは時に読みにくく、私がアリンガムに苦手意識を抱いている特徴でもあるのですが。いかにも短編らしい「クリスマスの朝に」は1種のアリバイ崩し作品で、謎解き自体は他愛もないのですがしみじみ感を残す結末が素晴らしい効果をあげています。

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