九つの解決 クリントン・ドリフィールド卿シリーズ |
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作家 | J・J・コニントン |
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出版日 | 2016年07月 |
平均点 | 5.50点 |
書評数 | 2人 |
No.2 | 6点 | nukkam | |
(2016/12/26 00:07登録) (ネタバレなしです) 1928年発表のクリントン・ドリフィールド卿シリーズ第4作の本格派推理小説です。前半で次々に発見される死体、その内2つの事件について殺人か自殺か事故死かを巡っての九通りの可能性(これがタイトルの由来です)の議論、ジャスティスと名乗る人物から送られてくる怪情報、後半には何とクリントン卿の偽者まで登場と起伏に富んだ展開ながら文章は抑制が効いて地味で、通俗スリラーの領域には踏み込みません。論創社版の訳者あとがきでも紹介されているように最終章での推理説明の重箱の隅までつつくような細かさに驚く一方で、kanamoriさんのご講評での指摘のようにどこか釈然としないところもあります。地味なのか派手なのか、緻密なのか粗いのか、読者によって受ける印象が異なる作品と言えそうです。 |
No.1 | 5点 | kanamori | |
(2016/08/30 18:20登録) 濃霧の夜、急患宅に出向いた代診医リングウッドは、間違えて入った家で銃弾を受けた男の死体に出くわし、さらに電話を借りるため赴いた隣家で女中の絞殺死体を発見する。その後、事件の一報を受け捜査に乗り出した警察本部長のクリントン卿のもとに、「バンガローを調べよ」という匿名の電報が届く-------。 警察本部長クリントン・ドリフィールド卿が探偵役をつとめるシリーズの4作目で、先に邦訳された「レイナムパーヴァの災厄」のひとつ前、1928年の作品です。 本書は、医療関係の化学研究所に所属する職員らの人間関係に起因する殺人というプロットで、細かい手掛かりにも大学の化学教授だった作者の経歴が活かされています。(あるヒントが専門的すぎて、普通の読者に分かりようがないという難点もありますが)。 多重解決ものを思わせる邦題がついていますが、さに非ず。邸宅の男とバンガローの女の2つの変死体の死因が、それぞれ他殺、自殺、事故のどれに該当するか、順列組み合わせで9通り考えられるということで、タイトルは事件に対するアプローチの多面性を現しています。ただ、序盤でクリントン卿とフランボロー警部が消去法で事件の形態をいくつかに絞り込む場面はあるのですが、その後はウヤムヤになっていて、この趣向が十分に活かしきれていない気がします。 また、発表された時代を考慮すると、ロジックを重視したパズラー志向は評価できますし、最終章のクリントン卿のノートによる丁寧な推理説明も好感が持てる一方で、匿名の情報提供の内容を暗号にする必然性や、男の死体が邸宅にあった事情など、いくつか腑に落ちない点があるのが残念なところです。 |