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ミステリの祭典

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空さんの登録情報
平均点:6.12点 書評数:1515件

プロフィール| 書評

No.915 6点 札幌・仙台48秒の逆転
深谷忠記
(2016/11/08 22:19登録)
壮と美緒のシリーズでも初期のものだからでしょうか、後年ほど旅情たっぷりなトラベル・ミステリという感じではありません。タイトルにもかかわらず、むしろ函館の方が多少紹介されているぐらいで、特に仙台はほとんど通過するだけです。
カッパ・ノヴェルズ版の巻末解説や、森村誠一による紹介文ではアリバイ・トリックを褒めていますが、個人的にはむしろプロローグと殺人事件の関連性に関するアイディアの方に感心しました。どこかで結び付くことだけは最初からにおわせているのですが、自動車の扱いと絡めて、うまくまとめられています。その部分解明以前の勝部長刑事たちの捜査過程もなかなかのものです。
アリバイはというとかなり複雑なことをしていて、細かい部分では作中で壮も言っているように他にいくつか方法がありそうなのですが、中心アイディアとなっているある道具の意外な使い方がすっきりできています。


No.914 6点 煙に消えた男
マイ・シューヴァル&ペール・ヴァールー
(2016/11/01 22:16登録)
北欧警察小説の創始者である夫婦の第2作は、第1章(7ページ程度)こそいかにも警察小説的な感じですが、その後ブダペストで消えた男について、休暇に入ったばかりのマルティン・ベックが呼び出されて、当時のいわゆる「鉄のカーテンの向こう」の国で調査することになるという本筋は、最初のうちエスピオナージュかと思わせられます。実際そのように読者に誤解させるところは作者の狙いでしょう。あらかじめ007映画をちらりと話題にしています。まあ、ベックが襲われるというアクション・シーンもあるのですが。
全体の半分ぐらいはハンガリーが舞台で、トラベル・ミステリといった趣もあります。ハンガリー警察のスルカ少佐がなかなかいい味を出しています。後半スウェーデンに戻ってからの真相解明部分は、一度に紹介される容疑者の数が多すぎて、誰が誰やら分からなくなるのが難点とは言えますが。


No.913 7点 容疑者
ロバート・クレイス
(2016/10/28 21:32登録)
私立探偵エルヴィス・コールのハードボイルド・シリーズが知られている作家ですが、まず手に取ってみたのはパトロール中に銃撃事件で相棒を失った警官スコットが主役の本作。それにもう一人…じゃなかった一匹、牝ジャーマン・シェパードのマギーがその相棒として活躍します。プロローグで語られるのはマギーが軍用犬だった時、ハンドラー(指導手)を失った事件です。
となるとまあ、似た境遇のその一人と一匹の新たな絆、トラウマの克服といったところがテーマになるのは当然のことです。中心となる銃撃事件の真相もよくあるパターンで、つまり作者は新奇なアイディアで読者を惹き付けることは最初から考えていません。細部の描きこみで読ませるタイプであり、そういうものとしてよくできています。登場人物の中では警察犬隊主任指導官のリーランドが特に魅力的です。またマギーの視点から書かれた部分もところどころ出てきます。


No.912 6点 追憶の殺意
中町信
(2016/10/24 22:38登録)
当時は『新人賞殺人事件』のタイトルだった『模倣の殺意』を鮎川哲也が絶賛していたので気になっていた作家の新作が出版されたというので、期待して読んだのでした。
章題にも使われている「密室」については、実は通常の意味での密室ではありません。脱出可能な出口はありましたし、しかもそれは犯人の策略であったにもかかわらず、章題で読者にだけはヒントを与えているところが、マニアックさを示しています。しかも解き明かされてみると、かなり危ういうえバカバカしいような発想なのですが、そこがチェスタトン的とも思えて、トリックに対するセンスのよさを感じたのでした。
後半のアリバイの方はいったん解けたと思わせた後、さらに複雑なのを用意しているという二段構えの凝ったものになっています。動機の意外性もありますし、全体構成もていねいにできていますが、事件解明きっかけ部分の盛り上げは今一つ。


No.911 6点 殺しあい
ドナルド・E・ウェストレイク
(2016/10/20 20:57登録)
久しぶりの再読です。ウェストレイク名義というと、1960年台後半以降はユーモラスな作品が多いようですが、実はそれらは読んだことがありません。本作は作者の第2作で、いかにもなハードボイルド、それも『赤い収穫』以来の大量殺人と宣伝されていたものです。それで期待して読み始めたら、主役の私立探偵が命を狙われる普通のハードボイルドじゃないか…と思っていたら、最後になって一気にやってくれたという作品でした。実際のところ、覚えていたのもこの最後のまさに殺しあい部分の派手さだけ。
なるほど、そこは確かに凄絶なものがありますし、クライマックスのお膳立て発想には『赤い収穫』と似たところもあります。しかし一方の陣営が実は悪玉じゃないというのは気になるところです。また、ハメットと比較するには文章表現に深みが欠けますし、謎解き要素もそれなりに論理的ではあるもののハメットほどではありません。


No.910 5点 迷路
ビル・プロンジーニ
(2016/10/16 07:45登録)
要するに3つの中編をつなぎあわせてテーマ的に統一し、長編に仕立てた作品です。原題 "Scattershot" の本作、訳者あとがきには、「あえて『迷路』と名づけた。シリーズ第五作の『死角』の原題名 "Labyrinth" と混同なさらぬように」と書かれていますが、直訳の「散弾」でもよかったのではないかと思えました。
その3つの話の内容ですが、かなり本格派寄りだけれども、とりあえずハードボイルドかなあ、という感じです。密室好きには喜ばれるかもしれません。監視された自動車の中からの被害者消失、ラティマーの『処刑6日前』と同じく他人を犯人に仕立て上げるための密室殺人および密室からの宝石盗難と、不可能犯罪ばかりなのです。トリックはまあそんなところかなといった程度です。ただ自動車の事件はもう一ひねりあるんじゃないかとも思ったのですが、それだと名無しの探偵さんざんな一週間というテーマが逆転してしまうかな。


No.909 7点 煙の殺意
泡坂妻夫
(2016/10/12 23:15登録)
全8編中基本的には謎解きミステリが多いですけれども、ノン・シリーズだけに様々な趣向を凝らしています。
最初の『赤の追想』は長編『湖底のまつり』をも思わせるような雰囲気があります。次の『椛山訪雪図』は紋章上絵師であり美術に造詣の深い作者ならではの作品で、殺人事件の真相自体よりも手がかりとなる絵の秘密の方に驚かされます。本作の冒頭で言及されるダリも個人的に好きな画家だけに、集中で最も気に入っている作品です。『閏の花嫁』は島の位置が「北緯三十七度、東経十七度」なんて細かい大ぼらが作者らしいところでしょうか。『歯と胴』は犯罪小説ですが、殺人計画の途中で一ひねりあります。『狐の面』に出てくる稲荷魔術については、阿部徳蔵の『奇術随筆』(1936)に詳しく解説されています。『開橋式次第』は『DL2号機事件』的なロジックですが、その勘違いをする人は他にもいそうなところが決め手としては弱いですね。


No.908 6点 サリーは謎解き名人
ジャネット・イヴァノヴィッチ
(2016/10/08 09:06登録)
保釈契約強制執行人、通称バウンティ・ハンターであるステファニー・プラム・シリーズの第4作です。邦題のサリーという名前は女性みたいですが、サルヴァトーレという女装の男性ミュージシャンで、謎解きというより暗号パズル解読の名人です。
同棲していた男から自動車を盗んだということで訴えられた女が出頭日に出てこなかったため〈お尋ね者〉になった事件で、その男の家に投げ込まれた手紙が暗号だったため、ステファニーは人伝にパズルが得意だと聞いたサリーに解読してもらうことにするのです。ただしどんな暗号かは作中では全く示されません。
前作よりハードボイルドっぽい仕上がりになった本作、事件の裏はよくできていますし、本筋とは別のステファニーのアパートが放火される事件との絡み具合もなかなかのものです。ただし、サリー登場の契機となる手紙はわざわざ暗号にする必要がないという点だけは不満でした。


No.907 5点 遺留品
パトリシア・コーンウェル
(2016/10/04 00:01登録)
コーンウェルを読むのはこれが2冊目です。主人公は検屍官ですが、個人的にはやはり警察小説に分類すべきだろうなと思えました。あるいは検事やFBIであっても、公的捜査機関の活躍を描いたものは、結局同じタイプと言えるでしょう。逆に犯人が警察官だろうが検事だろうが、結末の意外性のパターンは変わらないのと同じようなものです。
前作『証拠死体』が謎解き的にも様々な要素を手際よくまとめ上げてくれていておもしろかったので、本作でもそこを期待したのですが、伏線の妙は今回ほとんど感じられませんでした。容疑者はかなり後の方になって浮かんできて、同一犯の最初の殺人と思われる事件に結び付きそうになるまではよかったのですが、その後が、どうも冴えません。最後に派手な展開にして、後味の悪い結末をつけてくれてはいるのですが、読者を納得させ損なっているという気がしました。


No.906 5点 炎の終り
結城昌治
(2016/09/30 22:46登録)
私立探偵真木シリーズの長編第3作です。この探偵役の名前からして、ロス・「マク」が元になっているのではとも思われます。またただ姓だけしか明かされないのもトマス・B・デューイの探偵マックと似た感覚で、もちろん遡ればハメットを想起させます。
今回の真木はずいぶん酒(主にウィスキー)を飲んでいますが、これは依頼人の影響でしょうか。その依頼人である元女優は、立派な(?)アル中です。彼女がアルコールに溺れるようになった理由が本作のテーマとなるのですが、結末のつけ方がシリーズの前2作に比べると安易な感じがしますし、少々説明的になってしまっているようにも思えます。ラスト・シーンの雰囲気はなかなかいいですけど。
また、彼の警察組織に対する反感がかなり露骨に表現されている作品でもあり、黒島部長刑事が「警察という権力組織が別の人間に変える」ことになった人物の典型例として描かれています。


No.905 6点 伯母殺人事件
リチャード・ハル
(2016/09/26 22:30登録)
久々に再読してみると、意外に倒叙していたんだなと思いました。ここで「倒叙」というのは、もちろんただ犯人の視点から書かれた小説ということではありません。それだけなら、たとえば本作の前年1934年に発表された『郵便配達は二度ベルを鳴らす』だってそうですし、その手の犯罪者の肖像を描いた小説はJ・ケイン以前にもずいぶんあります。ジャンルとしての「倒叙」は謎解きミステリを通常とは逆の犯罪者の立場から描いたものということなわけですが、ただ本作では、最終章で主人公がどんな犯行の証跡を残していたかということを語るのはソーンダイク博士やコロンボのような名探偵ではありません。読者にその結末を悟られにくくするためには、目次はない方がよかったでしょうね。
主人公のエドワードだけでなく、伯母もまたあまりお近づきにはなりたくない人物ですが、巻末解説によれば、そのような人物を描くのが作者の好みだそうです。


No.904 4点 餌のついた釣針
E・S・ガードナー
(2016/09/22 09:41登録)
ペリー・メイスンにはさまざまな依頼人がありますが、本作の依頼人は仮面をつけていて一言もしゃべらず、正体が全く不明という状態(実際に話をするのはその仮面の女に付き添う男ですが、彼もまた最初は偽名でメイスンを真夜中に呼び出します)、さらに依頼内容さえ明かされないままの依頼なんていう、とんでもない話です。メイスンがそれを受諾したのも、怪しげなところに興味を持ったからでしょう。
で、当然のごとく殺人が起こるわけですが、今回はなかなか逮捕者が出ません。そのうち謎の依頼人が誰であるかも判明し、8割近くになって、やっと逮捕が行われます。その後が目まぐるしい展開になり、恒例の法廷場面はないまま決着を迎えるのですが、さすがに急ぎすぎ、詰め込みすぎで、全体のバランスを崩しているとしか思えません。メイスンが逮捕されそうになる証言は省いた方がすっきりしてよかったのではないでしょうか。


No.903 5点 ハンプティ・ダンプティは塀の中
蒼井上鷹
(2016/09/18 13:05登録)
塀の中と言っても刑務所ではなく留置場、つまり起訴前の人が入れられる所です。ハンプティ・ダンプティはもちろん、『僧正殺人事件』以来ミステリには縁の深いマザー・グースからの引用で、一応の探偵役マサカさんのこと。この人、他の被留置者からはゆでたまごみたいと言われているのです。
5編からなる連作短編集で、レギュラーは4人、そこへ他の人が同じ留置室に入ってきて、というのが第4話までのパターンです。最初の『古書蒐集狂は罠の中』は4人目のレギュラー(「おれ」)と前の人との交代ということになるのですが。
第4話が特に意表を突く結末でおもしろく、第2話の叙述形式も全編読み終えてからなるほどと思える構成で、なかなか楽しく読めたのです。しかし最終話は、その冒頭で明かされる設定もあまり好きになれませんでしたし、推理がごちゃごちゃしすぎで断定に論理的欠陥もあり、がっかりでした。


No.902 4点 大いなる賭け
ロジャー・L・サイモン
(2016/09/14 22:54登録)
ユダヤ人私立探偵モウゼズ・ワインのシリーズ第1作。
最後の方、事件全体の整理がよくできていないと思いました。事件を決着させるある人物の登場など唐突すぎますし、そこにいた経緯も不明瞭です。黒い影になっていたその人物の名前はすぐに書かれますが、彼の顔を、ワインは知らないはずですしね。その後の警察での収拾も、結局事件をどう取り扱うことになるのかあいまいなままです。砂漠の中の緑地にまで行ってくる部分も、そこを読んでいる間はハードボイルドらしい雰囲気でおもしろかったのですが、後から振り返ってみると、そんな遠くに設定する必要はなかったのではないかと思えます。だいたい、悪役もその動機なら重罪の犯罪などしなくても、効果的な手段はあったでしょう。
複雑な事件を手際よくまとめ上げる緻密さはなさそうな作家なので、むしろパーカーみたいに事件をシンプルにした方がいいのではないでしょうか。


No.901 5点 人形の夜
マーシャ・マラー
(2016/09/10 09:33登録)
1977年に発表された、シャロン・マコーン・シリーズの第1作です。講談社文庫では作者名がマーシァ・ミュラーとなっていますが、たぶんこれが本来の発音には近いのではないでしょうか。
真相への伏線を張るためにかなり無理やりなことをしていて、その部分を読みながら、シャロンのこの行動は後で何か意味を持ってくるのだろうかと疑問を持ったものでした。しかしグレッグ・マーカス警部補に妙な場所で出会うところは、ご都合主義的な偶然だなと思ったのが、これまたクライマックスである事実が明かされるための伏線になっていたのは、意外でした。そんなわけで、不自然さがあるという意味では完成度は決して高くないのですが、瑞々しさは感じられ、それなりに楽しめました。
それにしてもどちらも頑固なシャロンとグレッグ、キスはしたものの、今後つきあっていくのは大変そうだな…


No.900 8点 悪魔の手毬唄
横溝正史
(2016/09/06 21:54登録)
言わずと知れた横溝正史の代表作のひとつ。久々に再読したところ、最初に読んだ時以上に楽しめました。いや、楽しめたというより、じっくり味わえたという感じがします。
プロローグで放庵による「鬼首村手毬唄考」を紹介し、読者にだけは連続殺人の見立ての意味をあらかじめ知らせておくという構成がとられています。以下、少々乱暴な私見ですが…その古い唄に出てくる3人の娘がちょうど犯人が殺したかった3人に一致したというのは、あまりに偶然すぎるように思えます。しかし、これは放庵が書いたものですから、途中で五百子婆さんが歌うものと違った部分があることを考えると、3番は実は1・2番で歌われる娘の偶然を利用した、放庵の創作かもしれず、だとすると偶然性はかなり軽減されます。五百子婆さんは実際には放庵の文章全体を自分では読んでいないのですから、この説も否定できないと思われます。


No.899 6点 検屍官の領分
マージェリー・アリンガム
(2016/09/02 21:44登録)
タイトルにもかかわらず(原題 "Coroner' s Pidgin"。pidginは仕事のこと)、検屍官が登場する場面は最後の方5ページもないぐらいです。
本作ではキャンピオンが最初から活躍しています。彼が風呂に入っている時、偶然彼の家に死体が持ち込まれるという冗談みたいな冒頭から、話はもつれていき、戦時下、ドイツが裏で糸を引いている大規模な連続文化財盗難事件も絡んできて、検屍官が登場する最終章の前までは、実におもしろかったのです。
しかしその最終章での解決はあっけなく、もうちょっと盛り上げられなかったのかなという気もしました。その検屍官のセリフによる解決はキャンピオンが演出したはずですが、それも前章の終りからそうであると推測できるだけで、直接的な描写は全くないというさりげなさです。事件解決後に明かされるカラドス侯爵の不可解に思えた行動の理由については、なるほどと思わせられました。


No.898 6点 水晶の鼓動
麻見和史
(2016/08/29 23:07登録)
殺人の起こった家の各部屋の壁や床がラッカースプレーで赤く塗りつぶされていたという発端の謎は、なかなか魅力的ですが、その解決はというと、犯人の条件に着目した点は評価したいものの、これでは犯人が警察の鑑識能力を見くびりすぎです。その他にも「麻布図書館2北」の手がかりは、被害者が単なるメモに自分がよく心得ていることをそんなに詳しく書くはずがない(「麻布」だけでも十分)ですし、「T→K」も当人たちには当然のことなので、これらは警察にわざと見せるために残されたものではないかと疑ったのですが、普通に本当の手がかりでした。
そんなわけで、論理的精密さには不満もありますし、決定的手がかりを読者に明示していないのですが、連続殺人と連続爆弾テロ事件とを組み合わせた(モジュラー型ではない)派手な警察小説としては、ユーモラスなところもあり、なかなか楽しめました。


No.897 6点 ミッドナイト・ブルー
ロス・マクドナルド
(2016/08/25 18:13登録)
『ロス・マクドナルド傑作集』のタイトルで出ていた時に買って読んだのを、このたび再読しました。中短編5編の他に、評論『主人公(ヒーロー)としての探偵と作家』、さらに訳者の小鷹信光による20ページ以上もの解説が付いています。
ロスマクはハードボイルドの中でも本格派っぽいとされることが多いようで、実際真相は論理的に構築されていて意外性もあります。しかしハメットが、真相を示唆する手掛かりをあらかじめ用意しているのに対して、ロスマクは捜査を進めていくうちにもつれた謎が自然にほぐれてくるという構成になっています。このほぐし方が、長編の場合だと最後の方で鮮やかに決まるのですが、短い作品だと性急な感じになってしまうのです。
収録作品の中でも、特に『追いつめられたブロンド』はこの欠点が目立つ作品で、当然逆に中編の『運命の裁き』(長編『運命』の原型)が最もよくできていると思いました。


No.896 6点 ウィッチフォード連続殺人
ポーラ・ゴズリング
(2016/08/21 14:24登録)
初期はスリラー、サスペンス系を書いていたゴズリングですが、本作はイギリスの田舎町を舞台にした連続殺人を警察が捜査するという、いかにもイギリス謎解きミステリらしい作品です。
登場人物の一人がミステリ・ファンという設定ですが、ポアロとかH・M卿の名前がちょっと出てくるくらいです。ミッシング・リンク・タイプとも言えますが、ABC理論を引き合いに出すような読者への目配せもありません。アボット主任警部も、犯人はすべて同一人物なのか、模倣犯なのか決めかねています。
実のところ、真犯人を示す伏線は不足していますし、最後はジェニファーが犯人に襲われて辛くも助かり、そこで犯人の正体がわかる推理不要の段取りになっています。しかし、コージーやサスペンスに分類するには警察による捜査が主ですし、犯人の意外性、トリックにも気を配っているので、とりあえず本格派ということで。

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