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ミステリの祭典

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銃弾の日
タイガー・マン

作家 ミッキー・スピレイン
出版日1965年01月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 6点 人並由真
(2025/04/04 09:07登録)
(ネタバレなし)
 1960年代の半ば。「おれ」ことアメリカ政府の秘密情報部員タイガー・マンは、英国代表の国連部員のひとりで秘書兼通訳を担当する美女エディス・ケーンの正体が、第二次大戦当時の彼の恋人ロンディーン・ルントではと気づく。オーストリア人のロンディーンは欧州でタイガーと愛し合っていたはずだったが、ナチスのスパイという正体を現し、タイガーに重傷を負わせ、そして彼の仲間を殺して去った。今では39歳になっているはずのロンディーンは、高度な技術の美容整形で28歳のエディスと素性を変えているようだ。タイガーはエディスに接近し、復讐を図ろうとするが、英国情報部に忖度する米国情報部はタイガーの復讐の承認に消極的だ。一方でエディスが斡旋したらしい殺し屋たちもタイガーを狙い始め、そのなかにはかつてタイガーが重傷を負わせたヴィダー・チャーリスもいるらしかった。

 1964年のアメリカ作品。「タイガー・マン」シリーズの第一弾。
 タイガー・マンの頭の中には、元カノで裏切り者のエディス=ロンディーンに復讐することしかなく、松本零士の『男おいどん』あたりでの作中の手書き文字「ブチ殺す」という感じであった。
 まあ過去の経緯と状況からすれば、当人としてはアタリマエな行為という理屈はよくわかるが、フィクションの場合、こーゆー設定から始まった物語は、当初は復讐を決意した主人公が次第に情にほだされ、怒りや恨みを鈍化させていくものも多い。本書の場合はどーなるかは、読んでのお楽しみに!?
 
 諜報戦も何もネエ、本当に復讐のための駆け引きみたいな作品という感じで中盤以降も話が進み、ある意味でけっこう変わった物語という印象。
 それでもサービス精神旺盛なスピレインなので、終わりの方にはちゃんとサプライズの連打は用意してある(しかしそんな一方、やはりスピレインなので、意外な黒幕の正体は早期からミエミエだが。)
 でもね、最後の一行でキメるフィニッシング・ストローク。こんな落とし方のネタは初めてみた。なんかすごい、かつヒジョーにスピレインらしい(笑)。

 定食的な面白さ、という感じはあるが、直線的なプロットを考えるなら、いろいろとサービス要素は盛り込んであり、全体的に新シリーズに乗り出す作者の熱意は感じる。そこそこ~それなりに面白い。

No.1 5点
(2017/01/08 22:56登録)
タイガー・マン・シリーズの第1作で、作中で彼は「おかしな名前でしょう? でも、おやじが、そうつけたんです」と自己紹介しています。綴りはTiger Mann。『ヴェニスに死す』の作家と同じ姓なんですね。ファースト・ネームの方は、今では確かにそういう名前の有名人もいるしね、といったところです。
タイガーは諜報機関に所属していて、国連で機密情報が東側に漏れている事件が話の中心にあります。一応国際政治を背景にした作品だけに、共産主義嫌いの作者らしさはマイク・ハマーものよりもはるかに露骨に表れています。ただしどんな機密なのかの説明などは当然ながら全く無視していて、謀略スパイ小説としてのおもしろさはなく、国際政治は派手なアクション・スリラーのための方便に過ぎません。
その一方で特にラスト・シーンなど、スピレインの官能的な甘さが存分に発揮された作品でもあります。

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