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ミステリの祭典

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死体置場で会おう

作家 ロス・マクドナルド
出版日1956年01月
平均点6.33点
書評数3人

No.3 6点 クリスティ再読
(2018/10/06 22:33登録)
アーチャー初登場の「動く標的」はガチ誘拐物だったけど、それ以降ロスマクは「誘拐?」とはなっても、「誘拐かそうでないかビミョー」という「なんちゃって誘拐」な事件が多いんだね。私立探偵にはガチ誘拐は荷が重すぎるから、わからないでもないが、本作の主人公はアーチャーではなくて、執行猶予中の犯罪者を管理する「地方監察官」である。日本の保護司は名ばかりの公務員でボランティアみたいなものだが、「地方監察官」だと捜査権もあるようで、警察でも邪険にはされない。けどね、誘拐犯の前科者が、その誘拐被害者と一緒に、誘拐直前に主人公のオフィスを訪れるとこから、話が始まるんだよ....「なんちゃって誘拐」というものだ。
身代金要求は届くから、主人公は半信半疑のまま身代金を追って、死体と出くわす。なんか善意からズルズルと事件に介入して...という感じ。だからタイトルがいかにもハードボイルド、な雰囲気を醸していても、カウンセラーみたいな後期アーチャーっぽさがありこそすれ、ハードボイルドらしさは薄い。それでも身元確認のために「死体置場で」落ち合っているので、看板に偽りはない。
アーチャー物でもよかった気がするが、まだこの時期はアクションもこなすハードボイルドな探偵だったからね、そこらへんを差別化したかったのかな。そう悪い作品ではないが、内容的には今ひとつ押しきれない。というわけで、中期のポケミスのみの作品では、
運命>犠牲者は誰だ>ギャルトン事件>本作
になるけど、まあどれも「何で文庫にならなかったかな?」と不思議に感じるくらいの粒揃いではある。

No.2 7点 人並由真
(2017/08/08 18:20登録)
(ネタバレなし)
リュウ・アーチャーものが一皮剥ける少し前の時期に書かれたノンシリーズだが、最後まで読んでひときわ際立ってくるそれぞれの登場人物の陰影と、その一方であくまでハイテンポに進むストーリーの弾み。これは隠れた秀作ではないだろうか。

のちのロスマク作品の全面に開花する人間関係の錯綜ぶりや、その核となる内面のコンプレックスなどは本書でも地味に重要な要素となるが、ミステリとしてはこのくらいの弁えた扱いでも良いのかな 、という気もちょっと。そういう意味でバランス感も良い。

法の正義と過ちを犯した人間 、その双方の間に立つ身を自認する主人公ハワード・クロスにはアーチャーとまた一味違う魅力があり、彼の主役編をもう何冊か読みたかったな。まあ本書のラストの完結感、決着感は頗る心地よいものなんだけど。

No.1 6点
(2016/11/14 22:39登録)
『人の死に行く道』の後に書かれた、リュウ・アーチャーものでない作品です。一人称の主役ハワード・クロスは地方監察官、執行猶予になった者の監督官です。したがって本作は私立探偵小説ではありません。しかし犯罪に関係する公的機関に属してはいても、本来捜査官ではない彼が、警察やFBIをいわば出し抜いて、誘拐とそれに続く殺人事件の捜査をほとんど一人で進めていくという(なぜそこまで一人でやるかという気もしますが)話ですから、一応ハードボイルドとしていいでしょう。真相はいかにも作者らしいものになっています。
しかし、まさかロス・マクで文章が下手と批判しなければならない作品に出会うとは思いもよりませんでした。しゃれた比喩を使っているのに、文がぎくしゃくした感じで、時には主語と述語が対応していなかったりしているのです。同じ訳者でも前作はそんなことはなかったのですがねえ…

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