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ミステリの祭典

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空さんの登録情報
平均点:6.12点 書評数:1515件

プロフィール| 書評

No.1075 7点 殺しのデュエット
エリオット・ウェスト
(2019/02/12 23:54登録)
まず意外だったのが、1976年発表作、つまり完全にネオ・ハードボイルド時代の作品だったことです。なんとなくもっと昔の作品かと思っていました。訳者あとがきによれば、作者は「重厚な国際陰謀小説作家として確固たる地位をもつ」そうですが、検索してみると1966年の『夜は耳をすます時』しか翻訳はありません。英語のWikiにもこの作家の記載はなく、フランス語のWikiで他に2作あることは確認できましたが…
プロローグ的部分の後、高価な宝石の奪回依頼を受け、私立探偵ブレイニーが秘書、助手と策をめぐらすあたりは、ハードボイルドよりルパン・タイプみたいだとも思ったのです。しかしトラブルはあったものの、奪回作戦は1/3程度のところで成功してしまい、その後がよりハードな展開になってきます。
結末は予想できましたが、構成に工夫を凝らしていて、かなり楽しめました。


No.1074 4点 かぐや姫連続殺人事件
矢口敦子
(2019/02/08 23:53登録)
谷口と書いて「やぐち」と読ませたペンネームで発表された、作者のデビュー作です。
タイトルにもかかわらず、メインの殺人1件に、ラストに話の締めくくりとしてそれと直接のつながりはない殺人が1件起こるだけです。犯人も別々ですし、後の方は犯罪小説的な書き方です。
かぐや姫に例えられる美女とか、クローズド・サークルを作り出すための安易な設定とか、登場人物たちの行動とか、すべての面においてリアリティがありません。途中で発見される白骨についても、扱いがあまりに中途半端です。冒頭部分の仕掛けについては、その仕掛け自体は悪くないと思うのですが、いかにも「さあ、仕掛けがありますよ」的な書き方には感心できません。
メインの殺人の真相はそこそこの出来だと思うのですが、全体的に見てどうもばらばらな印象がありました。


No.1073 6点 追憶のローズマリー
ジューン・トムスン
(2019/02/04 23:47登録)
社会人を対象とした文学・演劇の夏期講習会で起こる殺人事件。あらすじに目を通さずに読み始めたら、しばらくは誰が殺されるのだろうと疑問に思ってしまいました。講師たちの人間関係やある受講生や、問題はありながらも講習会が始まるあたり、あまりミステリらしくありませんが、86ページに至って突然不吉な文が挿入され、さらに殺人を予想させるシーン(「何の用だ?」)がすぐ後に続きます。
次作『時のかたみ』ほど真相が見え見えではなく、それでもこの手かあの手かといくつか候補は挙げられるのですが、パトリシア・モイーズとも共通するような英国女性作家ミステリらしい雰囲気を楽しんでいたのです。ところが終盤近くなって、さらに殺人が起こる展開には驚かされました。フィンチ主席警部はその時点で既に真相に気づいているのですが、この最後の殺人で名探偵でなくても誰でも事件を解決できる展開になるのには疑問を感じてしまいました。


No.1072 8点 さむけ
ロス・マクドナルド
(2019/01/28 22:33登録)
ロス・マクの中でも断トツの人気を誇る本作ですが、最初に読んだ時は結末には驚かされたものの、『人の死に行く道』以降の他作品と比べて、特別に優れているとは思えなかったのです。今回久々に読み返してみると、最初の方はこの作家にしては意外に軽いノリだなと思えました。アレックスの父親については、ストーリー展開上からも登場する必要がないでしょう。しかし後半3つの事件の関連性が明らかになってくる展開はさすがです。
ただ、リュウが最終章(たった5ページほど!)になって真相に気づく重要手がかりについては、それをわざわざ持ってきてそこに置いていたことが不自然だと思いました。その直前までで、事件のほとんどの部分は解明されているのですが、それでも読者をその最終章だけで驚かせる手際が非常に鮮やかなだけに、もっと不自然でない手がかりにできなかったかなと、その点少々残念でした。


No.1071 6点 無貌伝 ~人形姫(ガラテア)の産声~
望月守宮
(2019/01/18 23:38登録)
ヒトデナシと呼ばれる、特異な能力を持つ精霊的存在の一体である「無貌」のシリーズ第3作です。島で起こる連続「殺人」事件の顛末ですが、断絶と水のヒトデナシである踏果(ふみはて)によって、その島が外界から隔離されているためクローズド・サークルになっているという設定です。しかし、これは評価に困る作品でした。
ファンタジーとしては、命をふきこまれた人形たちがなかなか魅力的ですし、クライマックスなどほとんど『デビルマン』をも思わせるような迫力で、おもしろかったのです。しかしミステリとしては、あまりにご都合主義で論理的欠陥も多いのです。ダミー解決を示した後の第2部の仕掛けは意外ではあるものの、なぜそんなことをという点の説明が全くついていません。落とした紙がなくなっている理由だけはなるほどと思えましたが。
とりあえずファンタジーとしての出来を考慮して、この点数。


No.1070 5点 アドレナリンの匂う女
ジェームス・ケイン
(2019/01/14 10:26登録)
Tider-tigerさんの『郵便配達は二度ベルを鳴らす』評の中で、チャンドラーはケインが汚いものを「汚く書く」から嫌いだと言っていることが紹介されていて、なるほどと思ったのですが、個人的にはケインは、そのデビュー作や『殺人保険』を読んだ限りでは、まさにチャンドラーの言葉どおり汚く書いているところが気に入っていたのです。
そういう観点から見ると、本作は既読2作に比べると、描き方の汚さが薄れてしまっていて、確かに主人公は「汚い」人間ではないことは確かで、描き方もそれに合わせたのだと言えないことはないでしょうが、その分迫力がなく通俗的になってしまっているように感じました。
ミステリ的には、これは表面に現れたもの以上の企みが隠されているかもしれないと勘ぐったりもしていたのですが、これは思い違いでした。ペリー・メイスンを引き合いに出したりしている後半の裁判シーンは、楽しめましたが。


No.1069 7点 沈んだ船員
パトリシア・モイーズ
(2019/01/05 18:59登録)
休暇を友人のヨットで楽しむために港町にやってきたティベット夫妻。冒頭、酒場でビールを飲みながら、町の住人や都会から来た人たちに紹介されていくのですが、さすがに多すぎて誰が誰やらわからなくなってきます。
2年前に座礁したヨットで起こった事故死として片づけられた事件、さらにそれ以前に起こった宝石盗難事件について、ティベット主任警部が関係者たちから折に触れて少しずつ話を聞いていくストーリーは、ゆったりとしています。巻半ばには、これは推理小説なのだから4日間の楽しい航海の詳細を述べるのは「読者にたいして不誠実でさえあるだろう」なんてことまで書かれています。しかし後半になると新たな殺人事件が起こり、さらにちょっとサスペンスのある展開にもなってきます。
ティベット主任警部がかなり早い段階から犯人の目星を付けていたことが意外でした。


No.1068 6点 破断界
釣巻礼公
(2018/12/25 23:49登録)
以前に読んだ『奇術師のパズル』も、またnukkamさんによればデビュー作『蛹たちは校庭で』も、学校が舞台でしたが、その2作の間に書かれた本作は、いかにも通信機器メーカーに勤務していた作者らしい理工系の作品です。プリント基板の開発をめぐるプロットは、あまりに専門的になりすぎて、歯が立たないという人もかなりいそうです。文系のわりに理系にアレルギーを持たない自分も、正直なところ「事故」を起こす仕組みが理解できたとはとうてい言えませんし、最後のデータ切り替え方法については、具体的な技術がさっぱりわかりません。しかし真相解明部分にイマイチ説得力がないのは、専門的すぎるからでなく説明不足だからです。
それでも、堀河と翔子との視点を細かく切り替えていく構成はなかなかおもしろいですし、何か仕掛けているだろうなと予想できる部分のクライマックスでの明かし方も効果的でした。


No.1067 7点 カフェ・コメディの悲劇
マーシャ・マラー
(2018/12/17 22:56登録)
シャロン・マコーンのシリーズとしては、夫君ビル・プロンジーニとの合作『ダブル』を含めれば第10作ですが、その合作を除けば、第4作『安楽死病棟殺人事件』の後の3冊は邦訳がありません。第9作は翻訳されていますが、未読。そんなわけで久々のシャロンは、チョコレート好きで鳥恐怖症という初期設定が完全に無視されるようになっていました。第4作で出会ったDJとも別れたことは、クライマックス直前に彼の放送をカー・ラジオで聴くシーンで語られます。
2年前に起こった死体が見つからないままの殺人事件裁判で死刑判決を受けた黒人青年の上訴にあたって、シャロンが捜査をすることになるのですが、二転三転するストーリーはなかなかよくできています。発見された死体については状況から見て予測はつくのですが、最後はカフェ・コメディで予想を超える派手なことも起こり、最後まで楽しませてくれました。


No.1066 6点 寝台車の殺人者
セバスチアン・ジャプリゾ
(2018/12/13 18:27登録)
訳者あとがきで、本作が原作の映画が傑作であったと書かれていたので、気になって調べてみたら、『Z』等社会派映画で有名なコスタ=ガヴラス監督のデビュー作で、『七人目に賭ける男』の邦題で公開されたそうです。
邦題は直訳ですが、原題は実は多少のネタバレになっています。フランス語の知識がなくても、よく見れば気づくはず。ただし作中でも2/3あたりで、そのことはほのめかされます。
久しぶりの再読なのですが、内容は全く覚えていませんでした。基本的なアイディアはある英国有名作のヴァリエーションなので、そのことは初読の時も気づいたはずなのですが。原案に加えたひねりはいいのですが、真相解明部分で効果的に説明されていないのが残念です。しかしそれよりも、途中に入れた「時間の交錯」(カットバック)の扱いが中途半端な点、会話が気取りすぎで説明不足な部分がある点の方が不満でした。


No.1065 5点 天使の葬列
三好徹
(2018/12/07 23:13登録)
このシリーズを読むのは初めてですが、1969年に桃源社から出版された本作は、天使シリーズでも初期に属する6編を収録しています。大手新聞社の横浜支支局の記者である「私」には、コンチネンタル・オプの例に倣って名前がありません。しかし、ハードボイルドっぽい雰囲気はあっても、ハメットのドライさとは違い、どの作品も思いっきり情感的です。またこの新聞記者は一応正義漢ではあるのですが、一方ずいぶんだらしないところもあります。
最初の表題作では最初から殺人事件が起こり、犯人は誰でなぜ殺したのかという話ですが、次の『幻の天使』では交通事故で死んだ若い女にまつわる秘密、第3話『天使の唄』では歌手の自殺の理由、といった謎が解き明かされることになり、必ずしも犯罪がらみというわけではありません。全体的にあっさりしすぎている感じがしますが、競馬好きにはとんでもない出来事の『天使の賭け』が一番楽しめました。


No.1064 4点 埋められた時計
E・S・ガードナー
(2018/12/03 00:03登録)
最初の3章はメイスンが登場せず、さらに途中第14章もメイスンの視点から書かれていない作品です。まあ、ストーリー上からはその方がわかりやすいとは言えるのですが、なんだか中途半端な感じがします。その4つの章は、太平洋戦争で負傷して復員してきた青年の視点から描かれているのですが、彼のその経歴が特に意味を持ってくるわけでもなく、作中での役割があやふやなのです。
冒頭から登場する、ブリキ容器に入れて埋められた目覚まし時計の意味が最大の謎になっていて、メイスンもずいぶん悩むのですが、最後に明かされてみるとなんだかねえという感じでした。時計をあらかじめ埋めておく必要もないように思えますし、実際にはどうやったらそれがうまくいくのか不明です。拳銃と薬物に関する部分は、複雑にしすぎていますし、第14~15章の医師の行動もほとんど無意味としか思えず、不満点の多い作品でした。


No.1063 7点 鉄の枷
ミネット・ウォルターズ
(2018/11/26 23:53登録)
Nukkamさんや蟷螂の斧さんも書かれているとおり、謎解きミステリ要素はあるものの、作者の狙いはそれとは全く別のところにあると感じました。田舎の裕福な一族の陰惨な女家系図と、一応主役の女医およびその画家である夫の夫婦関係を描いた小説として読めば、非常に読み応えのある作品です。犯人が指摘されてから後も、かなりのページ数が残っていて、実はかなり早い段階で真相の予測はついていたのですが、ひょっとしてダミー解決ではないかとさえ思ってしまったほどです。
最初のうちは、実に人情味のある部長刑事を除けば、登場人物の誰にも好感が持てず、不愉快になりながらも読み進んでいったのですが、いつの間にか彼等の考え方、態度が納得できるように思えてくるのは、この作者の手腕でしょう。
なお、被害者の顔にかぶせられていた鉄の枷は、作中では原題のスコウルズ・ブライドルと表記されています。


No.1062 7点 能登・金沢30秒の逆転
深谷忠記
(2018/11/22 19:19登録)
カバー(カッパ・ノベルズ版)の鮎川哲也による推薦文で「北陸一帯の描写は克明をきわめ、読者のみは書斎にありながら、現地に身をおいているような錯覚を生じる」と書かれていますが、それは荘&美緒シリーズでは毎度のことで、個人的にはトラベル・ミステリらしい作品を読みたいならまずこの作者と思っています。
一方作者自身は「二作ほどトリッキィーな小説から離れていたら、無性にアリバイ崩しが書きたくなった」と言っているだけあって、トリックの発想はなかなかのものです。実際の地方を舞台にしたトラベル・ミステリだからこそのアイディアとも言えますし、逆にその「らしさ」が盲点になっているとも言えます。特に難しいわけではないのに気づかなかったなあ。
フーダニットの要素も入れ、半ばで意外な容疑者が浮上する構成にもなっていて、楽しめました。


No.1061 6点 真紅の輪
エドガー・ウォーレス
(2018/11/18 22:41登録)
『キングコング』の脚本でも知られるだけに、通俗スリラーの多作家ウォーレスはSFも書いていたそうで、だったら巻末解説に当時としては革新的だと書かれていた、イエール探偵がサイコメトリー能力者だという設定も、それほど意外でもないでしょう。問題なのはその設定がどのように使われるかということで、その能力で犯人を突き止めたというだけでは、話になりません。事件解決段階になって明らかにされるその意味は、説得力があります。説明の仕方にあいまいなところがあるのは残念ですが。
乱歩の通俗長編に似ているとの評もあるようで、確かに全体的なストーリー展開はそうなのですが、乱歩のような大げさな表現や演出は押さえられ、文学性はなくても理知的な感じです。
クリムゾン・サークル首謀者の見当は早い段階でついたのですが、その真相解明後に明かされるある秘密にはかなり驚かされました。


No.1060 5点 つながれた山羊
ジェレマイア・ヒーリイ
(2018/11/13 23:26登録)
ボストンの私立探偵ジョン・カディのシリーズ第2作。シェイマス賞を受賞していますが、個人的にはむしろ前作の方が好みでした。私立探偵小説としては珍しい試みを入れようとしたのが、かえって少々統一性を欠く結果になったように思えるからです。テーマも理解はできるのですが、不明瞭さが残るように感じました。
ベトナム戦争時代のカディの戦友だった男が殺された事件がメインですが、それに放火犯逮捕に続く事件が並行して描かれる構成になっています。2つの事件に直接の繋がりはないのですが、小説のテーマ的にはカディが反省的に比較していますし、特にラストで結びつくことになります。しかし、犯人の正体にカディが気づいた後、彼のやっていることは複雑過ぎるように思えます。
タイトルについては、途中カディのベトナム戦争回想の中で、虎狩のための囮の山羊が出てきて、さらに後半でそれが比喩的に語られます。


No.1059 6点 幽霊男
横溝正史
(2018/11/09 23:25登録)
最後の金田一耕助による謎解き部分を除くと、ほとんど乱歩の『蜘蛛男』系通俗猟奇サスペンスといった感じの作品です。それをかなり論理的に辻褄合わせしてくれるところが、最も意外だったかな…ただ、りゅうさんが<若干のネタバレ>として書かれている部分も、最後の推理の中で言及してくれると、もっと説得力を増したのだがと思えます。作者自身、伏線とするつもりだったのをうっかり忘れていたのでしょうか。
謎解き的には、クイーンの某過渡期作品とも共通する犯人隠匿のアイディア、第2の殺人における犯人が仕掛けたトリックがメインになり、さらに後者における偶然の出来事が重要な手がかりにもなっています。
途中マダムXが登場する活劇部分やストリップ劇場での殺人演出など、ご都合主義も目立ちますが、あまり知られていない正史作品中では佳作と言えます。


No.1058 7点 灰色の女
A・M・ウィリアムスン
(2018/11/04 17:06登録)
涙香の『幽霊塔』の原作。ちなみに乱歩版は未読ですが、乱歩は原作不明で直接参照できなかったわけですから、この評も逆に乱歩版は参照せずということで。
この原作を読んでみて、涙香の翻案が乱歩の『緑衣の鬼』みたいなのではなく、原作に非常に忠実であったことには驚かされました。文章こそ涙香独自のものですし、ところどころ改変はありますが、重要な会話の内容に至るまで、意味はそのままを伝えている部分が多いのです。ちなみに、涙香版で虎井夫人の飼っている狐猿とは、マングースでした。小森健太朗氏の巻末解説で特に興味深かったのが、原作判明のきっかけが本作を原作とする映画であったということです。
現代日本語訳で読むと、蜘蛛農園のシーンは、涙香版の養蟲園の方が得体のしれない気持ち悪さがありますし、読みやすい文章であるためかえって偶然の多用が目立ってしまいますが、波乱に富んだストーリーはやはりおもしろかったです。


No.1057 5点 ハワード・ヒューズ事件
スチュアート・カミンスキー
(2018/10/31 20:12登録)
20世紀半ばのハリウッドを舞台にして実在の俳優なども登場するトビー・ピーターズ・シリーズの第4作はタイトルからして、ホークス監督の『暗黒街の顔役』など映画製作にも携わった大実業家の名前で、彼が事件の依頼者です。
真珠湾攻撃の直前という設定で、事件はスパイもの的な要素を含んでいます。今回トビーを助ける有名人は、ベイジル・ラスボーン、この人の名前は知らなかったのですが、ホームズ役が有名な俳優で、ホームズっぽい推理(それもかなり的を射た)を披露して楽しませてくれます。
事件のクライマックスを冒頭に置いた後、過去に遡る構成ですが、殺人犯を待ち伏せていて、足裏がかゆくなってきたため、靴だけでなく靴下まで脱いでいて、不意を突かれるという間抜けぶりは、さすがにばかばかしくなります。また最後に明かされる歯科診療室殺人の真相は、拍子抜けでした。


No.1056 6点 賢者はベンチで思索する
近藤史恵
(2018/10/27 10:08登録)
3編の連作中編集というべきでしょうし、明らかに別作品だからこその重複表現も見られますが、目次では第一章~第三章となっています。
服飾関係の専門学校を卒業後近くのファミレスでアルバイトをしている久里子と、そのファミレスの常連である国枝老人の物語で、もちろん国枝老人が一応は名探偵役約。一応と言うのは、第三章を読み始めてすぐ、これは高木彬光も長編でひねって使っていた海外古典本格派短編シリーズの発想を下敷きにしているなと思ったからです。こちらも、その古典のアイディアをそのまま使うはずはありません。
ただし、謎解き的要素はたいしたことはありません。第二章ではハウダニット要素もありますが、ホワイダニット中心で、犬殺し、食品への異物混入、営利目的と思えない誘拐が扱われています。久里子の家族生活や恋など、ほのぼのした感じが心地よい作品でした。

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