空さんの登録情報 | |
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平均点:6.12点 | 書評数:1505件 |
No.1085 | 6点 | 深夜特捜隊 デイヴィッド・グーディス |
(2019/04/13 08:44登録) グーディス後期(1961年)の作品で、本作後には作者死去の1967年に出版されたものが1冊あるだけのようです。しかし邦訳は本書が最初で、ある程度知られた作家のように思える割には、この後に邦訳されたのは映画化されたことのある3冊だけです。他にも映画化原作としてタイトルだけは知っている未訳作品がいくつかあります。 さて、本作ですが、主役の元刑事コーリーが、町のはきだめの顔役から信頼されるようになって、という話だけ見るといかにもハードボイルドで、巻末ノートにも「警察小説とハードボイルド調をミックスした」とされています。しかし、文体は既読2作と同じようにコーリーの内面的葛藤をたっぷり描いたものになっていて、基本的に冷たく突き放すようなハードボイルド調とは全く異なります。特に本作では警察バッジが彼に語りかけてくるというシーンが繰り返し出てくるのですが、ちょっとわざとらしい感じもするほどです。 |
No.1084 | 5点 | やっつけ仕事で八方ふさがり ジャネット・イヴァノヴィッチ |
(2019/04/07 13:27登録) 保釈保証会社の逃亡者逮捕請負人ステファニー・プラム・シリーズは、第6作から第9作までは原題だけでなく邦題にも第何作かを示す言葉が使われていて、本作が第8作ということは、すぐわかるようになっています。 で、その内容ですが、今回はかなり不満もありました。同業のレンジャー、モレリ刑事の2人との関係だとか、新登場のクラウン弁護士のキャラとか、楽しませてくれる要素はいろいろあるのです。悪役が早い段階から明らかになっているのも、作品のタイプからすれば全く問題ありません。しかし、イーヴリンが逃亡(保釈とは関係なく)した理由の解明や、事件の最終決着が、ステファニーの知らない間にレンジャーがやってしまっていて、詳細が全く説明されないというのでは、安易としか言えません。笑いのネタも、既読作に比べると、ウサギ男のセリフ部分を除くと、ちょっと無理やり感があります。 |
No.1083 | 7点 | 憎悪の化石 鮎川哲也 |
(2019/03/31 22:33登録) 久々の再読ですが、2つのシンプルな原理のアリバイトリックのみが印象に残っていた作品です。 最初に読んだ時には、2つのトリックが重なるのが、ご都合主義に思えたのでしたが、読み返してみると確かに時刻まで重なるのは偶然ですが、殺人動機が、ほぼ同じ日にそのことが起こる必然性のある設定にはなっています。そのあたりが、似たことをやっても偶然の扱いに安易なところのある森村誠一とは異なる点です。 しかしアリバイトリックだけの作品というわけではありません。前半の鬼貫警部登場以前の部分では、11人の動機を持ち得る人物たちについて調査が進められていきます。さらに12人目の容疑者については、鮎川作品には珍しく(クロフツには意外にあるのですが)捜査過程にサスペンス要素まで多少取り入れています。後半では、過去に起こったはずの殺人事件探求があり、捜査小説として読みごたえがあります。 |
No.1082 | 7点 | 硝煙に消える ジョージ・P・ペレケーノス |
(2019/03/28 23:32登録) ギリシャ系のアメリカ作家ペレケーノスのデビュー作。 エルロイやヴァクスと比較されることが多いそうですが、エルロイとの接点は1996年に始まる「D.C.カルテット」シリーズにあるのでしょう。1992年の本作は、ヴァクスとの共通点をある程度感じさせます。ある程度ぐらいにとどまるのは、ヴァクスのハードなアウトロー世界とは全く違うからで、クライマックスになるまで、激しいヴァイオレンスはありません。しかしミステリとしてのプロット自体はシンプルで、本筋とは関係ない部分が多く、それでいてその脇道が決して無駄でなく小説の魅力となっているところが共通しています。後、ロックを中心とした音楽がずっと流れているのがこの作家の特徴でしょうか。言及されるミュージシャンではエルヴィス・コステロ等ごく一部しか聴いたことがないのですが。 最後の犯人の「意外性」だけは、あまり感心しませんでした。 |
No.1081 | 4点 | SAS/鄧小平の密命 ジェラール・ド・ヴィリエ |
(2019/03/21 23:31登録) ド・ヴィリエ初読です。 邦訳のタイトルをざっと眺めただけでも、21世紀に入ってからならビン・ラディン、アルカイダ等時事的なネタが多い、プリンス・マルコ・シリーズの1979年作品です。フランス語版Wikiを見てみたら、1965年から年に3~4冊の割合で、2013年までちょうど200冊。邦訳されたのはそのうち1980年までの60冊と、2000年以後の3冊だけのようです。 その量産ぶりからしても、ガードナー並みに気軽に読めるのだろうと思っていたのですが、これが最初のうち北京の街の様子が延々と書かれていて意外に読みづらい感じでした。ただし、本作は訳者あとがきによれば、作者が中国旅行記と同時に刊行したものだそうなので、ちょっと特殊なのかもしれません。マルコの中国の街に対する感想は、作者自身の意見でもあるのでしょう。しかし最後近くなるまで旅行記的で退屈なのでは、娯楽スリラー系としてはダメでしょう。 |
No.1080 | 6点 | 神話の島 久綱さざれ |
(2019/03/17 09:40登録) 「犯人が人間でないミステリーという意味でのミステリー・ホラーを目指しています」という作者の第3作ですが、本作ではマラリア(と思われる病気)の発生の他、死亡原因に疑問のある事件が2件起き、どちらの死も人間による殺人なのかどうかが問題として提起されることになります。 舞台となるのは、イザナミノミコト、イザナギノミコトによる国生み神話に出て来るオノゴロ島を思わせる名前のどこか南の方にある御乃呂島(おのろとう)です。神話・伝説と現実の事件とを組み合わせているわけですが、いくら辺鄙な島(携帯電話の電波がつながらない場所)とは言え、現代とは思えない島の老人たちの迷信にとらわれた旧弊さは、ちょっとどうかとも思えます。また船は自動車などと違って基本を知らなければ操縦が絶対無理なものなのかとか、疑問な点はいくつかありますが、ストーリーはなかなかおもしろくできています。 |
No.1079 | 7点 | 季節の終り マイクル・Z・リューイン |
(2019/03/11 23:51登録) このシリーズを読むのは久しぶりで、アルバート・サムスンってこんな感じだったかなと思ってしまいました。巻末解説で原尞が書いているとおり、特異なキャラクター設定のない私立探偵であることは確かなのですが。ジョン・ラッツのアロー・ナジャーほど特別臆病ではないにしても、かなり心配性なところもあったように思うのですが、本作では態度はあくまで穏やかではありながら断固として捜査を進めていきます。 1984年作、サムスンは過去の事件や人物を調べるのに、自分で古い新聞を読んだりせず、友人のミラー警部補や新聞記者にデータ検索を頼んでいるのには、コンピュータ時代になってきていることを感じさせられます。最後に突き止めた何十年も前に姿を消した母親の行方の真相は、意外というかなんというか… ところで、原題 "Out of Season" は「季節外れ」の意味ですが、原題も邦題も、内容との関連が今一つピンときません。 |
No.1078 | 6点 | スピレーン傑作集2/ヴェールをつけた女 ミッキー・スピレイン |
(2019/02/27 23:41登録) 1950年台に発表されたスピレインの中短編4編を収録。 『立ちあがって死ね!』は最後の方ご都合主義なところもありますが、そんなところもまた楽しめる娯楽アクション・ハードボイルド中編です。 次の表題作中編については、訳者でもある小鷹信光の詳しい巻末解説に、なんとジョン・エヴァンズによる代作であるという、本作掲載誌に後年書かれた記事(編集前記)が紹介されています。SF設定を背景に持っていても、いかにもスピレインらしい語り口で、小鷹氏は初期マイク・ハマーもののパロディと主張しています。スピレイン自身が創作にどの程度関与していたにせよ、他の人が書いたからこそのあまりの「らしさ」かなとは思えます。 短い『殺しは二人で』と『性はわが復讐』はミステリとは言い難い作品で、特に後者は性と社会についての作者の哲学を小説の形で書いたものといった趣です。 |
No.1077 | 5点 | ベネチアングラスの謎 太田忠司 |
(2019/02/23 09:43登録) 8編が収録された霞田兄妹シリーズの短編集。 表題作を始め、最初の4編は、作り物めいた印象があまり好きになれません。作者の好きなクイーンだって作り物ではないかと言われそうですが、この作者の場合、軽い文章がその感じを強めているのではないかと思われます。割れたベネチアングラスなど手がかりの出し方も、もっと精密な描写で、その意味を読者に考えさせるようにした方が、謎解きのコクが増すのではないでしょうか。 気に入ったのは『マリッジ・ブルー』と『四角い悪夢』で、変に容疑者を増やしたりせず短編らしいシンプルな謎になっているのがいいと思いました。『紫陽花の家』はトリックがめんどくさいのが難。『ウィザウト・ユー』は「日記」を読んで、これは叙述トリックではないかと勘違いしてしまいました。霞田志郎のリアクションは大げさすぎです。これ、殺人罪で起訴できないでしょう。 |
No.1076 | 5点 | 欺しのD スー・グラフトン |
(2019/02/19 23:47登録) 欺し(普通「だまし」は「騙」の字を書き、「欺」は「あざむき」と読みますが)だから、DはDeceptionかと思っていたのですが、Deadbeat(のらくら者)だったんですね。確かに、依頼人が怪しげであることはあまりに明らかで、キンジーはその依頼人に欺されたというほどでもありません。 しかしこの依頼人が、当然すぐにばれる嘘をついてまでキンジーに人探しを依頼したのはなぜかという謎に対して何の解答もないのは不満でした。また訳者あとがきでは、彼が「根っからの悪人だったのか、それともなんらかの形で遺族のひとりである少年に償いをしようとしたのか、キンジーとともに読者みずからがそれぞれの結論を出さなくてはならない」としていますが、この小説構成ならこの点には明確な解答を与えるべきだと思います。 本作の真相説明部分は、褒める人も多いだけのことはあるのですが、それを考慮しても、この点数でしょうか。 |
No.1075 | 7点 | 殺しのデュエット エリオット・ウェスト |
(2019/02/12 23:54登録) まず意外だったのが、1976年発表作、つまり完全にネオ・ハードボイルド時代の作品だったことです。なんとなくもっと昔の作品かと思っていました。訳者あとがきによれば、作者は「重厚な国際陰謀小説作家として確固たる地位をもつ」そうですが、検索してみると1966年の『夜は耳をすます時』しか翻訳はありません。英語のWikiにもこの作家の記載はなく、フランス語のWikiで他に2作あることは確認できましたが… プロローグ的部分の後、高価な宝石の奪回依頼を受け、私立探偵ブレイニーが秘書、助手と策をめぐらすあたりは、ハードボイルドよりルパン・タイプみたいだとも思ったのです。しかしトラブルはあったものの、奪回作戦は1/3程度のところで成功してしまい、その後がよりハードな展開になってきます。 結末は予想できましたが、構成に工夫を凝らしていて、かなり楽しめました。 |
No.1074 | 4点 | かぐや姫連続殺人事件 矢口敦子 |
(2019/02/08 23:53登録) 谷口と書いて「やぐち」と読ませたペンネームで発表された、作者のデビュー作です。 タイトルにもかかわらず、メインの殺人1件に、ラストに話の締めくくりとしてそれと直接のつながりはない殺人が1件起こるだけです。犯人も別々ですし、後の方は犯罪小説的な書き方です。 かぐや姫に例えられる美女とか、クローズド・サークルを作り出すための安易な設定とか、登場人物たちの行動とか、すべての面においてリアリティがありません。途中で発見される白骨についても、扱いがあまりに中途半端です。冒頭部分の仕掛けについては、その仕掛け自体は悪くないと思うのですが、いかにも「さあ、仕掛けがありますよ」的な書き方には感心できません。 メインの殺人の真相はそこそこの出来だと思うのですが、全体的に見てどうもばらばらな印象がありました。 |
No.1073 | 6点 | 追憶のローズマリー ジューン・トムスン |
(2019/02/04 23:47登録) 社会人を対象とした文学・演劇の夏期講習会で起こる殺人事件。あらすじに目を通さずに読み始めたら、しばらくは誰が殺されるのだろうと疑問に思ってしまいました。講師たちの人間関係やある受講生や、問題はありながらも講習会が始まるあたり、あまりミステリらしくありませんが、86ページに至って突然不吉な文が挿入され、さらに殺人を予想させるシーン(「何の用だ?」)がすぐ後に続きます。 次作『時のかたみ』ほど真相が見え見えではなく、それでもこの手かあの手かといくつか候補は挙げられるのですが、パトリシア・モイーズとも共通するような英国女性作家ミステリらしい雰囲気を楽しんでいたのです。ところが終盤近くなって、さらに殺人が起こる展開には驚かされました。フィンチ主席警部はその時点で既に真相に気づいているのですが、この最後の殺人で名探偵でなくても誰でも事件を解決できる展開になるのには疑問を感じてしまいました。 |
No.1072 | 8点 | さむけ ロス・マクドナルド |
(2019/01/28 22:33登録) ロス・マクの中でも断トツの人気を誇る本作ですが、最初に読んだ時は結末には驚かされたものの、『人の死に行く道』以降の他作品と比べて、特別に優れているとは思えなかったのです。今回久々に読み返してみると、最初の方はこの作家にしては意外に軽いノリだなと思えました。アレックスの父親については、ストーリー展開上からも登場する必要がないでしょう。しかし後半3つの事件の関連性が明らかになってくる展開はさすがです。 ただ、リュウが最終章(たった5ページほど!)になって真相に気づく重要手がかりについては、それをわざわざ持ってきてそこに置いていたことが不自然だと思いました。その直前までで、事件のほとんどの部分は解明されているのですが、それでも読者をその最終章だけで驚かせる手際が非常に鮮やかなだけに、もっと不自然でない手がかりにできなかったかなと、その点少々残念でした。 |
No.1071 | 6点 | 無貌伝 ~人形姫(ガラテア)の産声~ 望月守宮 |
(2019/01/18 23:38登録) ヒトデナシと呼ばれる、特異な能力を持つ精霊的存在の一体である「無貌」のシリーズ第3作です。島で起こる連続「殺人」事件の顛末ですが、断絶と水のヒトデナシである踏果(ふみはて)によって、その島が外界から隔離されているためクローズド・サークルになっているという設定です。しかし、これは評価に困る作品でした。 ファンタジーとしては、命をふきこまれた人形たちがなかなか魅力的ですし、クライマックスなどほとんど『デビルマン』をも思わせるような迫力で、おもしろかったのです。しかしミステリとしては、あまりにご都合主義で論理的欠陥も多いのです。ダミー解決を示した後の第2部の仕掛けは意外ではあるものの、なぜそんなことをという点の説明が全くついていません。落とした紙がなくなっている理由だけはなるほどと思えましたが。 とりあえずファンタジーとしての出来を考慮して、この点数。 |
No.1070 | 5点 | アドレナリンの匂う女 ジェームス・ケイン |
(2019/01/14 10:26登録) Tider-tigerさんの『郵便配達は二度ベルを鳴らす』評の中で、チャンドラーはケインが汚いものを「汚く書く」から嫌いだと言っていることが紹介されていて、なるほどと思ったのですが、個人的にはケインは、そのデビュー作や『殺人保険』を読んだ限りでは、まさにチャンドラーの言葉どおり汚く書いているところが気に入っていたのです。 そういう観点から見ると、本作は既読2作に比べると、描き方の汚さが薄れてしまっていて、確かに主人公は「汚い」人間ではないことは確かで、描き方もそれに合わせたのだと言えないことはないでしょうが、その分迫力がなく通俗的になってしまっているように感じました。 ミステリ的には、これは表面に現れたもの以上の企みが隠されているかもしれないと勘ぐったりもしていたのですが、これは思い違いでした。ペリー・メイスンを引き合いに出したりしている後半の裁判シーンは、楽しめましたが。 |
No.1069 | 7点 | 沈んだ船員 パトリシア・モイーズ |
(2019/01/05 18:59登録) 休暇を友人のヨットで楽しむために港町にやってきたティベット夫妻。冒頭、酒場でビールを飲みながら、町の住人や都会から来た人たちに紹介されていくのですが、さすがに多すぎて誰が誰やらわからなくなってきます。 2年前に座礁したヨットで起こった事故死として片づけられた事件、さらにそれ以前に起こった宝石盗難事件について、ティベット主任警部が関係者たちから折に触れて少しずつ話を聞いていくストーリーは、ゆったりとしています。巻半ばには、これは推理小説なのだから4日間の楽しい航海の詳細を述べるのは「読者にたいして不誠実でさえあるだろう」なんてことまで書かれています。しかし後半になると新たな殺人事件が起こり、さらにちょっとサスペンスのある展開にもなってきます。 ティベット主任警部がかなり早い段階から犯人の目星を付けていたことが意外でした。 |
No.1068 | 6点 | 破断界 釣巻礼公 |
(2018/12/25 23:49登録) 以前に読んだ『奇術師のパズル』も、またnukkamさんによればデビュー作『蛹たちは校庭で』も、学校が舞台でしたが、その2作の間に書かれた本作は、いかにも通信機器メーカーに勤務していた作者らしい理工系の作品です。プリント基板の開発をめぐるプロットは、あまりに専門的になりすぎて、歯が立たないという人もかなりいそうです。文系のわりに理系にアレルギーを持たない自分も、正直なところ「事故」を起こす仕組みが理解できたとはとうてい言えませんし、最後のデータ切り替え方法については、具体的な技術がさっぱりわかりません。しかし真相解明部分にイマイチ説得力がないのは、専門的すぎるからでなく説明不足だからです。 それでも、堀河と翔子との視点を細かく切り替えていく構成はなかなかおもしろいですし、何か仕掛けているだろうなと予想できる部分のクライマックスでの明かし方も効果的でした。 |
No.1067 | 7点 | カフェ・コメディの悲劇 マーシャ・マラー |
(2018/12/17 22:56登録) シャロン・マコーンのシリーズとしては、夫君ビル・プロンジーニとの合作『ダブル』を含めれば第10作ですが、その合作を除けば、第4作『安楽死病棟殺人事件』の後の3冊は邦訳がありません。第9作は翻訳されていますが、未読。そんなわけで久々のシャロンは、チョコレート好きで鳥恐怖症という初期設定が完全に無視されるようになっていました。第4作で出会ったDJとも別れたことは、クライマックス直前に彼の放送をカー・ラジオで聴くシーンで語られます。 2年前に起こった死体が見つからないままの殺人事件裁判で死刑判決を受けた黒人青年の上訴にあたって、シャロンが捜査をすることになるのですが、二転三転するストーリーはなかなかよくできています。発見された死体については状況から見て予測はつくのですが、最後はカフェ・コメディで予想を超える派手なことも起こり、最後まで楽しませてくれました。 |
No.1066 | 6点 | 寝台車の殺人者 セバスチアン・ジャプリゾ |
(2018/12/13 18:27登録) 訳者あとがきで、本作が原作の映画が傑作であったと書かれていたので、気になって調べてみたら、『Z』等社会派映画で有名なコスタ=ガヴラス監督のデビュー作で、『七人目に賭ける男』の邦題で公開されたそうです。 邦題は直訳ですが、原題は実は多少のネタバレになっています。フランス語の知識がなくても、よく見れば気づくはず。ただし作中でも2/3あたりで、そのことはほのめかされます。 久しぶりの再読なのですが、内容は全く覚えていませんでした。基本的なアイディアはある英国有名作のヴァリエーションなので、そのことは初読の時も気づいたはずなのですが。原案に加えたひねりはいいのですが、真相解明部分で効果的に説明されていないのが残念です。しかしそれよりも、途中に入れた「時間の交錯」(カットバック)の扱いが中途半端な点、会話が気取りすぎで説明不足な部分がある点の方が不満でした。 |