ブラック・リスト ヴィク |
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作家 | サラ・パレツキー |
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出版日 | 2004年09月 |
平均点 | 7.00点 |
書評数 | 2人 |
No.2 | 7点 | レッドキング | |
(2025/09/10 23:04登録) ヴィクシリーズ第十一弾。ヒロイン探偵の依頼仕事が、社会的問題を釣り上げてしまい、FBI・マスコミ・警察を巻込む騒動に発展する。黒人ジャーナリスト殺害事件のWho・Whyミステリにして、十六歳の少年少女 ( イスラム移民の少年と大富豪一族の子女・・米版「ロミオとジュリエット」 ) の逃亡劇に絡めたハードボイルド活劇、かつ、富豪一族の数世代に渡るプチ「百年の孤独」、面白かった。米国史上に度々繰り返される(のだろう)光景、自由・人権の理念と安全・保身の保守主義の相克。マッカーシズム(40~50年代の反共騒動)から、9.11後の反イスラム衝動まで貫く米国の病的ディレンマ・・リベラルにして大富豪の一族、左翼イデオロギストにして威圧的権威主義者、黒人にして共和党シンパ企業主、「かくれホモ」にして右翼愛国運動指導者・・そんな、分裂した社会精神が、今回の物語背景を成す。ヴィクの (おそらくパレツキー自身の)立場であるリベラル陣営の醜怪さも仮借なく抉り出し、敵陣営である保守右翼側への同情・理解も忘れない包括力がヨく。 そして、 齢四十を過ぎたヴィクの「老い」への思い・・「誰もがそこに行き着くのだ・・いずれはそこに行き着く・・逃れることは出来ない」・・苦い思いが、シリーズの最重低音部に澱み出し、今後、どうなってっちゃうんだろ。(だめだ、やっぱり、ミステリ部分を超えてオマケ付けざるを得ない・・どうしよ) |
No.1 | 7点 | 空 | |
(2019/07/08 22:49登録) ハメットの名前が何回か出て来る作品です。ただしハードボイルド・ミステリの始祖としてではなく、1950年台前半「赤狩り」によって投獄までされた作家として言及されるのです。 発表されたのは2002年。前年9/11の同時多発テロに対して制定された「愛国者法」の考え方が、そのかつてのマッカーシズムと同じなのではないか、というのが今回の主要テーマで、タイトルも、容疑対象者リストの意味なのです。事件関係者の多くは「赤狩り」の告発者、被告発者両サイドにいた人たちで、その時代の秘められた過去が、現在の殺人事件を引き起こすという展開です。ゴールド・ダガーを受賞したのも、二つの時代を関連付けるテーマ性のゆえでしょう。 今回はヴィクの友人の医者ロティの出番はごくわずかですし、隣人ミスタ・コントレーラスもほとんどヴィクの身を案じるだけの役割(最後には彼の人柄が役に立ちますが)なのが少しもの足らないでしょうか。 |