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ミステリの祭典

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迷路荘の惨劇
金田一耕助シリーズ

作家 横溝正史
出版日1975年01月
平均点5.69点
書評数13人

No.13 6点
(2019/07/03 20:03登録)
原型の中編『迷路荘の怪人』を読んでいないので、どこをどのように膨らませたのかはわかりませんが、確かに最初の殺人のアイディアを中心にして、さらに様々な要素を継ぎ足していったという感じのする作品でした。いかにも作者らしい要素の詰め込み方は、なんとなく自己模倣的にも思えます。それでも抜け穴や自然にできた洞窟の探検など、やはりおもしろく読ませてくれるからいいのですが。
時代設定は1950年秋。作中ではフルートに絡んで『悪魔が来りて笛を吹く』が何度か言及されています。本作でもフルートの音が「重要な決め手」になることは予告されていて、最後の「大団円」章でその所以が明かされます。
前半、殺人が起こった後は関係者からの事情聴取が延々続くところが、その手順で状況を少しずつ明らかにしていく手際のうまいクイーンやクリスティーに比べると、退屈でした。

No.12 6点 makomako
(2018/03/31 19:57登録)
 久しぶりに横溝氏の作品を読みました。私の若い頃には氏はまだ存命で「病院坂」などはリアルタイムで読んだ世代です。
 何十年ぶりに読むとやっぱり時代を感じますねえ。でも古き良き時代といった感じもしないでもない。
 物語には八つ墓村のような地下の洞窟が出てくるは、死体がネズミにかじられるはなかなかおどろおどろしい。
 さらに密室も出てくるし。密室トリックはちょっとしょぼいが、現実的トリックでこれは本当にやれそうです。
 こういった風にサービスてんこ盛り風ですが、やや無駄に長いところは否めません。切れ味がちょっと悪いが、でも結構面白いですよ。

No.11 5点 ボナンザ
(2018/02/16 22:59登録)
入り組んだ真相など、見どころも多いが、いかんせん話の運びが微妙で全盛期と比べると・・・。

No.10 4点 HORNET
(2017/08/20 16:48登録)
没落した華族が盛期に建てた、抜け道やからくりが仕掛けられた通称「迷路荘」に、関係者が一堂に集まる機会がもたれ、そこで連続殺人の惨劇が起こる。
 客人が来る前日に、怪しげな片腕の来訪者があり、そのことに不穏さを感じた館の主人は金田一を呼び寄せるが、案の定、ついたその日から殺人劇が繰り広げられる。

 横溝らしい舞台設定ではあるのだが、何故か期待するおどろおどろしい雰囲気に欠けた。なぜかなぁと考えてみると、関係者一人一人を呼んでの事情聴取があまりに冗長でちょっとうんざりしてくる上に、そこでやけにアリバイが検討される割には、結構真相ではそのへんはざっくりしていたから、余計に無駄に感じたことかなぁ。
 事件自体も、第一の殺人は不可解な謎が多くあり、「らしい」感じがしたが、第二以降はそうでもなく、お決まりの洞窟やらなんやらでごちゃごちゃしてきて、何となく尻すぼみの展開に感じた。(結局、抜け道のはしごにやすりをかける細工をしたのは誰だったの???)
 一言で言えば「無駄に長い」印象があり、読み進めるのがちょっと面倒になった。
 ただラストは好きなタイプのひっくり返し方だった。

No.9 6点 nukkam
(2016/02/03 14:17登録)
(ネタバレなしです) 中編「迷路荘の怪人」(1956年)を長編にリメイクして1975年に発表した金田一耕助シリーズ第28作の本格派推理小説です。元となった中編の方は私は未読ですが本書はだらだら感もなく、この長編化は成功と言ってもいいのではないでしょうか。作中時代が1950年ということもあって前時代的な雰囲気が濃厚ですが、横溝の作風はこの古さがよく似合っていると思います。密室トリックまで前時代的なのはまあご愛嬌ということで(笑)。

No.8 4点 TON2
(2012/12/04 20:42登録)
角川文庫
 設定は昭和26年で、金田一は名探偵として知られ、警察にも知人が多く、先生と呼ばれています。
 富士山麓に建つ、抜け道やどんでん返しを駆使していることから「迷路荘」と呼ばれる建物で起こる連続殺人事件。合計5人もの死人が出ますが、金田一はあいかわらず最初から現場にいながら事件を止めることができません。むしろ金田一が捜査を始めた頃から、事件の進行が加速された感があります。
 そつなくトリックを使い、人間関係も描いていますが、「犬神家」や「獄門島」のような血の怨念が背後にあるというようなおどろおどろしさに欠けます。金田一ものは、この点が背筋をぞくぞくさせてくれるのに・・・。 

No.7 6点 りゅう
(2011/09/27 20:37登録)
 再読です。過去の殺人事件とのつながり、片腕の怪人の登場、抜け穴や洞穴の探検など、横溝作品らしい仕掛けが詰め込まれた作品です。
 抜け穴のある館での連続殺人事件を扱った作品ですが、抜け穴が密室トリックの言い訳になっているのではなく、犯行経路やアリバイの条件として、うまく活かされています。複雑な真相で、ひねりすぎのあまり、逆にまとまりが悪くなっている印象を受けます。密室トリックも出てきますが、大したものではなく、この作品の枝葉に過ぎません。登場人物それぞれが不可解な行動を取った結果の総和として、複雑な謎が形成されており、その謎を推理するのが主眼の作品です。しかしながら、各人が取った行為には合理性、必然性に欠けているように感じられるものもあり、また、手掛かりが不足していて、この真相を読者が言い当てるのは困難だと思います。
 最後に犯人は壮絶、悲惨な死を迎えますが、「罪を憎んで人を憎まず」の金田一耕助にしては珍しく、この犯人に対しては嫌悪と侮蔑の言葉を吐いているのが印象的です。

No.6 6点 大泉耕作
(2011/04/29 21:02登録)
密室の殺人については単なるトリックのネタバレにしかならなかった。金田一が述べたようにトリックはいたってに単純なもの。
シリーズの集大成だと思います。
洞窟での描写は『八つ墓村』、フルートの描写は『悪魔が来りて笛を吹く』、存在感を放つ片腕の男は『犬神家の一族』のスケキヨ。
親と思っている人の家だけに、金田一さんもリラックスしたためかなんとなく普段の金田一さんのお里がよく出ていて、それが裏目に出たためか老刑事から後半で文句をブツクサ言われていました。
推理は不可能ですが、様々な角度から照らし合わせてみると本当に面白い小説です。横溝のおどろおどろしさ全開です。

No.5 7点 CRYSTAL
(2010/04/22 13:31登録)
久しぶりに横溝作品を読んだ。
何だかんだでやっぱり面白いや。

金田一耕助って何て愛すべき男なんでしょう。

No.4 7点 E
(2009/03/20 11:43登録)
事件の裏に隠されたのは、謎よりも人間の「憎悪」だと印象深かった作品。人の「思い」は本当に深く根付いている。
最後の金田一耕助の温かさが際立った。

No.3 7点 シュウ
(2008/09/24 22:15登録)
何気に好きな作品です。片手の男とかその名前が静馬だったりとか往年の名作を連想させるものが多いからでしょうか。あと迷路ってのがなんかいいです。
それにしても70年代の横溝作品はなんかグロい場面が出てくるのでちょっと引いてしまうところがありますが、
この作品ではネズミに食い荒らされた死体が2体も出てきます。このおかげでネズミが嫌いになり、トムとジェリーもトム派になりました。

No.2 4点 マニア
(2008/09/23 21:45登録)
ストーリーも真相もゴテゴテとしていて分かりづらい。無駄な装飾を物語に付け加え過ぎた感じ。
なので、魑魅魍魎の巣食う迷路荘の「抜け穴」や「洞窟」の魅力的な冒険譚も心から楽しむことはできなかった。残念だけど、横溝作品の中では質の低い部類だと思う。

でも、ラストは好きだな。金田一の優しく人情味のある人柄が描かれていて、読後感は良い。

No.1 6点 vivi
(2008/05/02 19:16登録)
久しぶりに読み返してみましたが、
中村青司ですか!というくらい、抜け穴などのある設定。
密室のトリックなども金田一耕助自ら言うように、子供だまし。
じゃあ何かといえば、そういう設定そのものが「煙幕」なのかな~。

結末も含めて、ちょっといいとこ取りしようとしすぎた感もありますが、
横溝ワールドの盛り合わせと思えば、楽しいです♪

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