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ミステリの祭典

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てのひらの闇
堀江雅之

作家 藤原伊織
出版日1999年10月
平均点7.29点
書評数7人

No.7 7点 パメル
(2025/02/26 19:29登録)
主人公の堀江雅之が勤めるのは大手飲料食品会社。商品企画や宣伝制作、マーケティングなどが丹念に描かれていて、このように戦略を立てて製品を売るのかと首肯させられるところが多くある。その堀江は自主退職を間近にしており、会長や同僚とその周辺の人々との関わりが描かれていく。またリストラが吹き荒れるサラリーマンの世界の描写が物語にリアリティを与えている。その堀江が恩義を感じている会長の自殺を機に一転してハードボイルドタッチになり、あとは終結まで息もつかせぬ展開が続く。
主人公が超人過ぎるきらいはあるが、無駄な装飾がそぎ落とされ、なんとも言えない洒落た味がある。物語は錯綜し、至るところに伏線が張ってあるから油断ならない。舞台はどんどん広がって、経済界から政界、企業舎弟、暴力団まで巻き込んでいく。それらが堀江の過去と繋がり、少しずつ解きほぐされて伏線が一本に収束されるのだが、その収束の仕方が無理にこじつけがなく、張り詰めた緊張感が持続して、リアリティを損なうことがない。ハードボイルドを基調としながらも、企業小説やミステリさらに心温まる人間ドラマと多層的な作品となっている。

No.6 7点 SU
(2023/12/12 21:10登録)
なかなか覗こうとしなかった過去が、鮮烈な形で浮かび上がり、男の生き方が問われることになる。破滅することも厭わない苛烈な精神性が緊迫感みなぎる闘いの中で屹立する。
暴力と陰謀に巻き込まれながら、高潔な姿勢を崩さない男の姿が力強く、作者らしい抒情性の中で捉えられている。

No.5 7点
(2019/07/18 23:06登録)
飲料会社の宣伝部課長堀江が六本木のバーの前の道で、酔いつぶれて寝ていたのが雨で目が覚める、というシーンから始まる作品です。その日、彼は部長と一緒に、会社の会長に呼び出されてある依頼を受けるのですが…という展開で、最初のバーがある建物も実は会長の依頼と関係を持っていることがわかってきます。このバーをやっているナミちゃんとマイクのキャラが実に楽しいのです。堀江の人物像も、彼の過去をかなり早い段階から少しずつ明かしていくことで、鮮明にしていきます。
しかし印象に残る登場人物と言えば、最初の方で会長の通夜に姿を見せた坂崎組長です。なんともクールで礼儀正しくかっこいい。もう1回、最後に彼は顔を見せなければならないはずと思っていたら、こういう登場の仕方でしたか。
しかし事件そのものは解決した後、翌日の最後の数行は、あまりにもベタに抒情的すぎるかなあ。

No.4 7点 yoneppi
(2013/05/01 20:40登録)
かっこいいとはこのことだ!

No.3 7点 E-BANKER
(2010/03/02 20:26登録)
まさに、この作者らしい作品でしょう。
やっぱり、主人公の造形がいいですね。
最初は、単なるくたびれた中年サラリーマンかと思いきや、実は深くて底知れぬ過去を持つ男・・・
主人公は、自らの体も省みず、過去に恩義のある男の死の謎を追っていくわけですが、読者の方も途中までは事件のカラクリがどうなっているのか全く分からないまま、終盤を迎えます。
ラストは、糸がほどけるように一気に解決し、読了感もスッキリします。
まぁ、惜しむらくは、ワキ役の方々があまりにも映画的なカッコいい人揃いなんで、なんかちょっとリアリティに欠けるというか、そんな感じはします。

No.2 7点 vivi
(2008/05/06 01:50登録)
『テロリストのパラソル』ほどの疾走感は無いけど、
キャラクターが等身大で非常に魅力的です。

主人公が知りたいと願っているのは、「犯人」などではなく、事件の奥にあるもの、「心」だったのですよね。
読者も次第にその1点に興味を追いやられていくので、
それが分かったときに、主人公同様「もういいや」と思いました(笑)

思うけど、ハードボイルドと言うには「甘い」のですね。
そこが私にとってはいいのですが。

No.1 9点 ガッツ
(2004/07/17 23:59登録)
「てのひらの闇」セリフが巧い。セリフ回しも巧い。
活字のチカラを再認識させてくれる。
終盤の某対決シーンでは、両手が震えた。

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