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ミステリの祭典

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makomakoさんの登録情報
平均点:6.18点 書評数:873件

プロフィール| 書評

No.93 6点 クドリャフカの順番
米澤穂信
(2009/09/30 22:18登録)
古典部シリーズはひとつずつ書き方を変えたりしてそれなりに工夫しているが、いかんせんネタが小粒。残酷なシーンやいやみな薀蓄などがないのですっきりして読後感も良く青春小説としてはまずまずだが、推理物として読むとちょっと弱い印象はぬぐえない。
 それにしても何だか小難しそうで分かりにくい題名ですねえ。この題名だと古典部シリーズをはじめから読んでいるものでないかぎりなかなか手にとってみようと思わないのでは。


No.92 9点 双月城の惨劇
加賀美雅之
(2009/09/25 20:22登録)
 これは好きです。初めて読んだときは雰囲気のみに気をとられていたが、再読してみると魅力的な謎がこれでもと提示されきちんと伏線も張ってあり、本格推理小説の本流をいく小説と思います。
 もちろん良く考えれば第2の密室は成功する確立の少ない方法がうまくいくことを前提としたトリックでありよほど楽天的な人間でなければ計画しないであろうし、最初の密室事件もじつは専門家が見ればすぐにばれるのだが、それを補って余りある壮大なトリックとしたい。


No.91 5点 愚者のエンドロール
米澤穂信
(2009/09/22 09:53登録)
 ミステリーとして読めば「氷菓」より上でしょうが、物語の設定に違和感がありました。
 以下少しネタバレ気味
 3人のクラスメートが異なった結論を述べそれを理論的に打ち砕き画期的な結論を考え出すという本格推理の王道を踏んだところは良いのですが、問題となるビデオは高校の文化祭への作品に出すためにクラスで創作したもので出来上がるまでの時間がないという設定なのです。当然クラス内での議論は尽くされたはずでしょ。どうして時間がないのにいっぺんに3人の言う事を聞かずに1日に一人ずつの意見を検討しとのでしょうかね。こうなったら結論は無いまま発表して見た人から結論を募集するという企画にしてもよさそうだ、などと思ってしまったので評価が低くなりました。
 良い材料で味付けを間違えた料理を出されたような気分です。


No.90 8点 館島
東川篤哉
(2009/09/21 09:16登録)
 久しぶりに読んだ大仕掛けなトリックでした。島田荘司の「斜め屋敷」に匹敵しそうなすごくへんてこりんな建物。絶対にこれが何かの種であることは誰でも気づくのだがこのような大トリックとは。
 東川氏はユーモアミステリーでありながら本格志向を忘れない好きな作者ですが、本格のところを冗談で済ます傾向がありやや残念に思っていました。もう少し本格にふった小説がほしかったのです。
 これはまさに私が期待していた本格志向の強いもので、本格物が好きな方は是非一読を。
 ただ本格のトリックとしては少し調べれば分かってしまうような穴はあり、他の作品では冗談で済んでいたものが傷のように感じてしまう。ユーモアと本格の両立は難しいのかもしれない。


No.89 4点 向日葵の咲かない夏
道尾秀介
(2009/09/19 14:17登録)
 読んでいて非常な違和感があり当然それに対する答えも出てくるのだが、幻想の世界のような話の理論的結論なんてありなのでしょうか。こんな話ならいくらでも結論は変えられる。
 推理小説は多かれ少なかれなんらかのうそが入るものとは思っているが、トリックにかかったというよりうそをつかれたといった感じが強い。作者の筆力はあると思うのだがこの小説はあまり好みではない。


No.88 6点 三年坂 火の夢
早瀬乱
(2009/09/14 20:14登録)
52回の江戸川乱歩症受賞作品。出だしはなかなか良い。レトロな雰囲気もある。読み進んでいくと明治の東京(江戸といったほうが良い時代)の雰囲気も味わえるのだが、物語の進行が遅く中だるみとなってしまう。東京の地理に詳しくないものにとっては、途中で掲示される地図の意味もはっきり分からない。中盤あたりからだんだんつまらなくなってきて最後はそれなりの結論で何とか持ち直しまずまずといったところ。


No.87 5点 さよなら妖精
米澤穂信
(2009/09/13 09:02登録)
 これはあまりミステリーのしての要素は強くなく、青春小説といったところでしょう。ユーゴスラビアからきた少女の話。昨年訪れたところでもあり、スロベニア、クロアチア、ボスニアヘルツェゴビナ、モンテネグロなどが懐かしく思い出され、国によって大分様相が異なることも実感しながら読んだ。ところがいかんせんこの少女が私にはあまり魅力的にうつらなかったため、妖精といった感じがせずかなり薄味の小説といった印象でした。もうちょっと味付けがほしいところ。そうしたら評価もずいぶん違うと思うのだが。


No.86 7点 学ばない探偵たちの学園
東川篤哉
(2009/09/09 21:12登録)
 なかなか面白い。
 二つの密室殺人はいずれもよほどの幸運に恵まれねば成立しないだろうが、独特のお遊び感覚にあふれている雰囲気のなかでは目くじらをたてるほうが野暮なんでしょう。
 ただ探偵側は個性あふれて生き生きと描かれているのに、犯人側が実に平坦で没個性のため謎解きが終わったときのインパクトが少ないのが残念だ。


No.85 5点 ニッポン硬貨の謎
北村薫
(2009/09/06 12:19登録)
 エラリークイーンが好きでたまらない人にとってはきっと何より面白い小説なのでしょう。本格推理作家や評論家などの評判はとてもよい。
 しかし私のように彼の小説はそこそこ読んではいるのだが登場人物の多さや分かりにくいたとえがちりばめられた話はちょっとつらいといった程度の読者にとっては、こんなおたくな話題にはとてもついていけない。
 そう思いつつ読んでいたら途中で全く同じ話の繰り返しが出てきて面食らってしまい、もう途中で止めようかと思った。
 何とか読み続けていくと最後のほうはそれなりに面白いところもあるのでこんな評価です。


No.84 7点 氷菓
米澤穂信
(2009/08/31 07:54登録)
 青春小説でもありミステリーでもある、こういった雰囲気は好きです。殺人もないしたいしたトリックも無いけど、小説の問題となっている時代に学生であった私はとても近親感を抱きました。思い出せば遠い昔同じような出来事に遭遇したこともあったな。
 ところで氷菓の意味は小説の千反田さん同様ぜんぜん分からなかった。答えを読んでも久しぶりの単語に一瞬理解できなかった。ここの学校の生徒たちはみんな優秀なんだ。
 


No.83 5点 凍える島
近藤史恵
(2009/08/30 09:08登録)
 雰囲気は詩的でカタカナの変な表現さえ我慢すればまず良いほうだと思う。孤島のなかで事件が次々と起きるというのは本格好きのものにとってありがちの話といわれてもやっぱり食指が動く。
 ただ私としてはこのどんでん返しは理解不能でした。どうして殺人までした上に心臓までとるほどの残虐なことをしたのか。真相を突きつけられているときに退屈になったりするのか。
 これが変人の集まりとして書かれていればまだ納得できるのですが、登場人物はなかなか素敵な感じの青年たちとして描かれているのが違和感を生じる原因かもしれない。普通の青年にはふとしてこんなニヒリズム風の感情を抱くことはあるとは思いますが、だからといってこんな残虐な手段で実行に移すとなるとちょっとね。
 採点は初めの部分を入れてであって、最後まで読んだときはこんなのあり?という感じが強く私としての評価はもっと悪い。


No.82 7点 密室に向かって撃て!
東川篤哉
(2009/08/28 18:44登録)
 密室といってもそれほど閉ざされた環境というわけでもない、犯人も途中で見当がついてしまったが楽しく読める小説ではある。
 いいかげん風な割にはじつはそれなりに本格しているし。
 厳格に考えると穴はいっぱいありそうだが、そこは軽いタッチの小説なのでこれで良しといった感じになってしまう。こういった感じは好みとしては結構好きです。


No.81 7点 密室の鍵貸します
東川篤哉
(2009/08/23 09:21登録)
 これはしっかりした本格推理小説なのでしょう。きちんと伏線も張ってあり複雑な推理もあってなかなか面白かった。おどろおどろしい雰囲気として本格好きをひきつけることも出来る内容なのに、ユーモア仕立てとしたところが作者の個性なのでしょう。こういった雰囲気は嫌いではない。
 登場人物が少ないのも、人の名前を覚えるのが苦手な小生には好感がもてる。ただ私は後のシリーズを読んでいたため、怪しげな人物が犯人でないことが分かっており犯人探しとしてはちょっと興ざめであった。この作者の作品を読むなら、まずこの作品からはじめるべきでしょう。
 なお違う作品に作者はプロットやトリックを考え抜いてから書き始めるのではなく書きながら作っていくほうだといっているが、この作品を読むかぎりよほど考え抜いてから書いたとしか思えないのですがね。


No.80 7点 交換殺人には向かない夜
東川篤哉
(2009/08/16 09:28登録)
 へんてこりんな地名やギャグを止めればもっと本格好きが喜ぶといった評もありますが、私はしんねりどろどろといった感じよりこちらのほうが好きです。
 ちょっとやりすぎのところもありますが、まあ許しましょう。ことにこの話に限ってはこの軽いタッチがないといくら伏線が張ってあるとしても無理を感じてしまう。
 こんな人間って本当にいるのと思うより、軽い話だからまあいいかで成り立っている本格物といったところか。
 


No.79 7点 名探偵に薔薇を
城平京
(2009/08/09 09:11登録)
 人によって評価が分かれているようですが、私は好きなほうです。
 まず登場人物が少なくてよい。しかもあまり変な人が出てこないのも好感が持てる。本格物として一応のラインを保っていると思います。こんな展開は確かに過去に読んだことのある物を流用したような気もするが、この程度なら良いのでは。
 気になるのは探偵の言葉使いで、もちろん作者は意図的にこんなしゃべり方をさせているのだが、警察と探偵の会話なんかは何様の態度であるかと思ってしまう。悲しい経歴を抱えているため名探偵でしかいられないなら、丁寧なしゃべりのほうがより悲しいと思うのだが。


No.78 6点 ロートレック荘事件
筒井康隆
(2009/08/02 09:00登録)
 こういった話は絶対映像化されない小説の世界のみで成り立つもので、ちょっと考えると登場人物たちにとっては現実にはほとんど推理することなどないことになる。
 まあそれでも見事にひっかかり犯人が分かったときにはちょっとびっくりした。
 その後実に丁寧に犯人自身の説明がある。私の読んだ文庫本では証明のためのページと行数まで記載があり、いかに作者が苦心して書いたが分かるとともに、こんなトリックはアンフェアではないかという読者に対して弁明しているようでもあるが、あまりに長くちょっとくどい。
 せっかくロートレックの写真まで沢山組み込んであるのだからもうすこしロートレックが絡んだ話となったらもっとよかったのに。


No.77 7点 カンナ 奥州の覇者
高田崇史
(2009/07/31 19:06登録)
カンナシリーズはついにアテルイの話となった。QEDシリーズより中身が薄い気がするが、今回は個人的に興味を持っている歴史の話が含まれているので面白く読めた。続きもののストーリーなのである意味ずいぶん長い話ではある。これで終了かと思ったがまだ全貌が解明されておらず次回へ持ち越しとなった。もうそろそろおしまいでもよさそうなのだが。


No.76 4点 殺戮にいたる病
我孫子武丸
(2009/07/31 18:54登録)
こういったエログロはどうも好みでない。トリックには見事に引っかかったが、そこへいくまで変体風な話を読まされるのは苦痛だ。いろいろな意見があるようだが、こういったトリックを書くのに何もこんなエログロにしなくてもいくらでも話は出来そうに思うのだが。


No.75 8点 七回死んだ男
西澤保彦
(2009/07/19 16:09登録)
 設定はSF的だがすんなりと読んでいける。SFにあまり興味ないものが読んでももともと非現実的なお話であることを忘れさせてしまうほど。作者が聖典としている「生ける屍の死」よりもこちらのほうが私は好きです。
 こういった設定だといろんな仕掛けが多方向から組み込めるため、ひとつの事件に対していろいろな角度からの「現実」が提示され、読み進むにつれてだんだん違った展開となってくるところが新鮮で面白い。読み始めたら止められなくなり一気に読んでしまった。
 ところで。
 私がこんな体質をもしも受け継いだなら、すぐに競馬に行って第9周に当たり馬券を買ったりして、なんて考えるのは下種根性でしょうね。


No.74 7点 完全犯罪に猫は何匹必要か?
東川篤哉
(2009/07/19 10:12登録)
 なかなか面白かった。ちょっとジョークがやりすぎぎみではあるが、それなりに笑わせてもらった。本格派が好きなものが読んでも結構いけると思う。ただ後の殺人の凶器はちょっと無理なんじゃないかな。
 まあナンセンスミステリーならこれでいいか。だいたいこの題名では本格好きの読者は手にとらないかも知れないし。
 好みからいえばもう少しギャグを減らして本格度を上げたような作品が良いのだが。

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