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ミステリの祭典

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エコール・ド・パリ殺人事件
芸術探偵シリーズ

作家 深水黎一郎
出版日2008年02月
平均点7.00点
書評数14人

No.14 6点 メルカトル
(2023/12/29 22:39登録)
エコール・ド・パリ―第二次大戦前のパリで、悲劇的な生涯を送った画家たち。彼らの絵に心を奪われ続けた有名画商が、密室で殺された。死の謎を解く鍵は、被害者の遺した美術書の中に潜んでいる!?芸術とミステリを融合させ知的興奮を呼び起こす、メフィスト賞受賞作家の芸術ミステリシリーズ第一作。
『BOOK』データベースより。

私だけかも知れませんが、『金田一少年の事件簿』を想起させられました。ちょっと期待外れでしたね。完璧な密室殺人だと思っていたのに、そう来たのかという変化球だったので。もっとストレートだったら評点も上がったでしょう。
途中のガセ推理もあまり誉められたものではありませんね。穴が多すぎます。まあ刑事の考える事はその程度で良いのかも知れませんけれど。

そして真相は私の思っていたのとは違い、斜め上に。確かにそれなら色んな意味で納得が行くとは思います。しかし、「読者への挑戦状」を差し挟む程ではありません。それにエコール・ド・パリの画家達の蘊蓄は余計ではなかったのかとの疑問も起こります。興味が持てたのはレオナルドフジタのくだりくらいでした。本格ミステリよりも人間ドラマと言うか、人情物として評価したい作品。ユーモアも思いの外多分に含まれています。

No.13 7点 斎藤警部
(2022/02/21 11:18登録)
目次を見たら飛び込んで来る 「第八章 事実上の真犯人」! 独特な「読者への挑戦状」、文面と言い、その機能と言い! そして直後から文字通り「急展開」。 作中作の在り様も見事に決まっています。作中作とそれ以外で文章の格調に差があり過ぎなのは、、まあいいでしょう。 安っぽい文章と退屈な設定ながら高い可読性に背中を押されて読み進めた挙句、思いもよらぬ、複雑で興味深い..奥深いとは微妙に言い難い..真相が明かされた逆転劇にはとりあえず以上のブラボーでした。ワクワクさせる冒頭部や謎提示が最後はギャフンでションボリ終わるよりずっといい。 「挑戦状」を境に、あからさまに確変してくれましたね。

被害者(大手画廊オーナー)の”最期の表情”の意味。これはヤラレた..と思ったが、考えたら別解も普通にあるんじゃないかと。 まあ言うても密室構築のアイデアはなかなかマブイんじゃないすか。 密室部分の真相暴露に於ける、人間ドラマ的感動に繋がる重い要素と、軽いというかチャラいスットコ要素との段差感というかアンバランスが、特にそれが明かされた直後は結構気になったものではありますが.. さて或る人物の「まるで二重人格」な行為の件、◯◯◯というより■■の名誉を重んじたという捉え方は無いでしょうか、作中作の内容に鑑みるに。そうだとしたら、あの豹変に纏わる何気な瑕疵感も消えるのではないかと、思ったりして。

或る人物の死んだ背景には、足元すくわれる意外性と、泣ける人情味とが共存していました。更には複数の伏線までしっかり。 捜査上の瑕疵、ちょっと看過しがたい所が諸々あるようだけど、、言っちゃなんだが安い文体のお陰で?良い意味で見逃しちゃってましたね。 ところで、スーチンの絵、夢野久作を思わせますね。

No.12 8点 パメル
(2017/04/23 01:05登録)
密室殺人の謎を解く鍵は被害者自身が執筆した「呪われた芸術家たち」の中に隠されているという構成が見事
まさに芸術と本格ミステリの融合で個性豊かなキャラも楽しめる
散りばめられた伏線を一気に回収し終盤に明かされる真相は衝撃度が高い
芸術家たちの蘊蓄や作品の特徴・数々のエピソードが語られ芸術の興味を抱かせてくれる

No.11 7点 邪魅
(2017/03/13 12:25登録)
以下ネタバレを含みます

読者への挑戦状それ自身が、ミスリードを誘うものという作者の発想は面白いです

確かにそもそも海埜の推理が間違っている、と作者自身に宣言されてしまってはそうなのだろうと結論付けるしかないでしょう
そういう意味ではこれは神様ゲームとも似た性質を持っていますね
海埜の推理を否定するだけの材料はあの時点ではありませんでしたから

しかしそれが作者によって否定されてしまった、では新しく考える必要があります
となるならば、密室を作りうる手法は一つに限定されてしまう
すなわち、被害者自身である

では自殺ということになり、第一の問の答はは宏之でしか有り得ない、と結論付けるしかなくなってしまうのです、一見すると
何故なら裏の事件は読者には巧妙に隠されているからです

しかし作中作と、宏之の体調不良から鑑みると、裏の事件に気付くことも不可能ではないでしょう

No.10 8点 amamori
(2017/02/22 14:03登録)
1年ぐらい前に読みました。
ミステリ部分は忘却していますが
実在した画家たちの情報を調べながら楽しんで読めた記憶がのこっています。

No.9 7点 tider-tiger
(2016/06/09 19:55登録)
トリックには言及しておりませんが、作品の構図についてネタバレしてます。




いやはや、相変わらず構成が凝ってます。密室殺人事件と思わせて、実は裏では別の事件が進行していた。読者への挑戦自体が実は読者を嵌める罠だった。本作の肝は裏の事件の真相。
ただ、以前に書評したトスカと同様で全体の構成は技巧が凝らされた見事なものなのにけっこう大きな瑕疵が散見されます。例えば、他の方のご指摘通り、警察の捜査がかなりいい加減で、当然みつけるべきことを平然と見落としています。ですが、私はこれはまあいいやという気持ちになれます。
気になったのは被害者暁氏の妻に対する行動が二重人格ではないかと思うくらい一貫性がないこと。事件を成立させるため、人物造型についてはかなり無理をしています。これが痛い。どうしてもここが引っかかってしまう。本当に惜しい。

それからもう一点。瑕疵ではなく疑問です。
口にしてはいけないことかもしれませんが、「本作の作中作に価値はあるのか」
暁氏の著作(作中作)を妻の小笠原龍子は斬り捨てました。あの人(暁氏)は芸術(絵画)のことをよく知っているが、芸術家(の心)を理解していない。あんなもの(作中作)を読んでも芸術家を理解することなどできない。龍子はこんなことを言いたかったのだと想像します。
事実、暁氏はモディリアーニの死を待ち望んでいた画商たちと同じようなことを自身も行っていたわけで、こうなるとスーチンを持ち上げていたのもあくまで商売のためではないのかと勘繰ってしまいます。作中作がどうにも胡散臭いものに見えてきてしまうのです。
作中作で真相解明のカギや事件の構図を提示する面白い企みですが、小笠原龍子の魂の叫びを真摯に受け止めた読者ほど暁氏の著作を否定的に見てしまうことになると思うのです。
作者自身はこの作中作を価値あるものだと考えているのでしょうか。
暁氏は本当の天才はスーチンただ一人だのなんだのと書いているくせに、実際にはスーチンの絵をろくに見ようともしていなかったと龍子は言います。こういう人が書いたスーチン論が果たして…… 
私も絵画が好きなので美術の本をたまに読むことがあります。暁氏の著作はそうした書籍などに書かれている知識(藤田画伯の白の秘密だとか)をうまくまとめており、またスーチンというあまり知られていない画家に光を当てたことは特筆すべきで無価値だとは思っておりません。
ただ、本作を龍子の視点で読むと作者自身の考えがわからなくなるのです。

No.8 7点 nukkam
(2015/12/29 19:01登録)
(ネタバレなしです) 2008年発表の芸術探偵・神泉寺瞬一郎シリーズ第1作の「読者への挑戦状」付き本格派推理小説です。エコール・ド・パリの画家たちに関する知識があちこちで紹介されていますが高尚な芸術論ではなく、画家の悲劇的な生涯を通じてその人間性を中心にした描写になっていますので美術の苦手な私でも十分に理解できる内容でした。しかもそれが単なる装飾ではなく、謎解きの伏線としても使われているのですからこれは巧妙としか言いようがありません。

No.7 4点 蟷螂の斧
(2012/02/05 19:16登録)
昔の物語なら、捜査の杜撰さは認めるものの、現在では考えられません。ナイフに軍手の痕跡の有無、死体と窓の間の血痕の有無、窓の傷の有無、死体の刺し傷の角度等々、これらに触れることもなく、まして他の要素が加わった密室の謎や真相が明らかになっても???でした。また後半まで誰が主人公なのかよく解りませんでした(描き方がよくない?)。絵画が好きなので、「シャガールの黙示」に続き本作でしたが残念な結果でした。ただ画家スーチンのことがよく解り、良としましょう。

No.6 7点 E-BANKER
(2011/07/06 23:35登録)
芸術ミステリーシリーズの第1作目。
芸術(絵画)とミステリーをうまい具合に融合させた佳作です。
~エコール・ド・パリ-第2次大戦前のパリで、悲劇的な生涯をおくった画家たち。彼らの絵に心を奪われ続けた有名画商が密室で殺された。死の謎を解く鍵は、被害者の遺した美術書のなかに潜んでいる! 芸術とミステリーを融合させ、知的興奮を呼び起こす作品~

さすがに評判どおりで、一定水準にある佳作だと思いますね。
「密室」や「作中作」、そして「読者への挑戦」など、本格ファンの心をくすぐるガジェットが目白押しで、ワクワクしながら読み進めてると・・・
「策士」ですよねぇーこの作者は!
簡単な密室講義まで挿入しながら、読者を煙にまくような密室の解法。確かにその方向しかないんですよねぇ・・・
要は、そのトリックを成立させるための「エコール・ド・パリ」であり、「作中作」なわけです。この辺りは、本格ミステリーの理想型とさえ言えるかもしれません。
ただ、フーダニットのレベルが低いのが実に惜しい!
「真犯人」らしき人物がほぼ特定されてしまうので、この辺りをもう少しうまく処理できなかったのかなぁというのが正直な感想ですね。
それにしても、「カ○○○○」ですか! 思い出しましたよ、中学の社会科の授業を。
エコール・ド・パリの画家を含め、美術関係の薀蓄もなかなか興味深く読ませていただきましたし、後の作品も必ず読んでいこうと思います。
(これだけ本格志向の作品なら、もう少し重厚な作風の方が好みなんだけどなぁ・・・その辺もちょっと残念。あと、警部のキャラの謎は後の作品で何らかのネタバラシがあるのかな?)

No.5 6点 江守森江
(2010/03/31 17:22登録)
※要注意!!
作品構成について書いているので察する方には(真相直結で)ネタバレの危険があります!
目次に「読者への挑戦状」とあり、キワモノな「ウルチモ~」から一転して正統派なロジカル・フーダニットに挑んだと思ったのだが!違っていた。
芸術論に見せ掛けた「作中作」と「未亡人の遍歴」から結末の展開(作者の真の狙い)が真っ先に透けてしまった(絵画・画商絡みなミステリーでは王道過ぎる)
更に、密室(ハウ・ダニット)及び実行犯を指摘せよとの「読者への挑戦状」で、挑戦状すら真相隠蔽の為の捨て駒だと確信した。
そこから既存トリックの組み合わせだと悟らせてしまう見せ方と構成は稚拙だと言える。
坦々としながらも読みやすく、伏線の回収も見事なだけに、あと一歩足りない感じで惜しい。
それでも、最後に残された勘平死亡の謎だけは伏線からも読み切れず楽しめた。
※ボヤキ
ミステリー以外の本で、画商の実態と経済原則について読んでいたのが、この作品を高評価出来ない一番の要因になるとは思いもしなかった。
※疑問点
ドラマ等の認識からだが、刺し傷の角度や凶器の指紋から科学捜査や解剖で自・他殺の判別をされてアッサリ真相が判明しないのだろうか?
特に、凶器の指紋・被害者の指先のルミノールは当然鑑識対象でスルーは有り得ない。

No.4 9点 makomako
(2010/01/27 23:09登録)
 面白かった。エコール・ド・パリの絵画と事件が密接に結びついていて、びっくりするような手段が用いられていたりして、そしてなによりエコール・ド・パリ派への主張のある解説にもなっていたりして、ちょっと得をしたような気分にさせられる。私は絵画が好きなのでとても楽しく読みました。

 スーチンはどうかなあ。あんなへんてこな絵を飾っていつもみていたら頭が変になりそう。佐伯も個展で沢山の作品をみたときには暗くて重い訴えが強烈でぐったりしてしまった。家に飾るならやっぱりモジリアニのほうが良いが、といういのは素人の感覚なのでしょうね。
 
 

No.3 6点 シーマスター
(2009/05/05 21:16登録)
ミステリとしては・・・・・どうなんだろう。
(コンビニエントな点はともかく、「そんな人間」が突然変異の如くそんな風にするか?という点は全く納得できない。また〇〇〇〇。〇だから△△できないとか言いながら、それ以前に遥かに・・・なことをしているではないか)

美術館は割と好きだったりするが、絵に関する知識はほぼ皆無で当然美術書なんぞ1ページも読んだことはない・・・・が、本作の美術論(各章の冒頭)を読み本当にエコール・ド・パリの絵画を見てみたくなったことには自分でも少し驚いた。
この人、ストーリーの中での寄り道のしかたなどからも「高い評価を得る作品を書きたい」とか「読者を驚かせるミステリを書いてやろう」なんていう俗欲は微塵も頭になく、まさにエコールの画家たちのように「書きたいものを書きたいように書く」と純粋に自己表現の手段として文筆しているように感じられるのは、作者が専業作家ではないという予備知識がもたらす先入観によるところも多少はあるかとは思うが、一見「受け狙い」に見える前作すらも実は内面発現願望と湧き出でる発想の結集だった・・・とのたもうてもさほど主観的な見解ではないのではないだろうか。
また趣味っぽい話や専門的な薀蓄を好き勝手に書き混ぜながらも、目線は常に「現代の一般大衆」のそれに合わせてあるところなどからは、決してインテリが片手間に興趣半分で筆を執っているわけでもないことは十二分に窺われる・・・と言ってもよかんべな
まぁ、何はともあれチョビっと教養が広がった気にさせてくれただけでも作者に感謝ですね。

No.2 10点 yoshi
(2008/06/27 00:03登録)
美術ミステリというジャンルがあるかどうか知らないが、あるとしたら本作はその最高傑作の一つに数えられるのではないでしょうか。とにかくミステリを抜きにして、普通の美術書として読んでもおつりが来るくらい面白いです。密室トリックのハウダニットは前例がないわけではないが、ホワイダニットは全く新しいもの。何より、ミステリを読んで最後涙ぐんだのは初めてでした。

No.1 6点 dei
(2008/06/26 17:41登録)
イロモノ作品でデビューした作者の第2作は王道の密室もの
途中に「読者への挑戦」がはさまれてるだけでうれしくなりましたよ

トリックにも真新しい部分は無いが、うまくひきつけられてしまった
この作者には期待したい

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