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ミステリの祭典

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深淵のガランス
佐月恭壱シリーズ

作家 北森鴻
出版日2006年03月
平均点7.50点
書評数4人

No.4 8点 ALFA
(2022/04/09 11:14登録)
表題作のみの評価

天才的な絵画修復師を主人公にしたサスペンス3編。美術や絵画修復の蘊蓄がたっぷりで独特の世界観が楽しい。(興味があれば)
画商たちによる怪しげな絵画取引や贋作問題などは松本清張の作品を思い起こさせる。
主人公のキャラや物言いはハードボイルド風でいささか非日常的だが、濃い設定のためか不自然にはならない。
お気に入りは表題作「深淵のガランス」、辛口のエンディングが効いた上質のサスペンス。サスペンスに村山槐多が出てくるなんて世の中も変わったものだ。「血色夢」はハードボイルド風味、「凍月」は薄味だが読後感すっきり。

それにしてもこれだけの知識、作者もお勉強大変だろうなあ

No.3 6点 まさむね
(2018/08/11 18:53登録)
 気品あるオトナの連作集。絵画修復師・佐月恭壱は勿論のこと、周りを囲む登場人物も魅力的です。緊張感のある展開で、殺伐とした何かを想定させながらの、何気な温かさも良かったな。

No.2 8点 ボンボン
(2017/09/04 00:25登録)
なんとも魅力的な絵画修復の手業だが、その本来の仕事の枠を大きく逸脱して、深く謎めいた世界を見せてくれる。著者がきちんとした知識と美意識を持って書き込んでいるので、あり得ないのにリアルな人物や舞台をすんなり受け入れながら、物語に集中できる。かなりの上級編。金や情で蠢く人々の間を、阿修羅像を白くしたような複雑さを持ちながらも真っすぐに進んでいく探偵役・佐月の人物造詣が素晴らしい。

No.1 8点 makomako
(2009/12/31 09:28登録)
このシリーズの探偵佐月恭壱は作者の薀蓄がたっぷりと入っているにもかかわらずいやみでなく、何となく暖かくしかも覚めて孤独な興味深いキャラクター。文庫本では表題作と血色夢の二つの中篇と凍月という短編が入っているが、深淵のガランスがことに好きだ。ストーリーもよいが雰囲気も楽しめる素敵な小説だと思う。

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