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ミステリの祭典

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ぼくと、ぼくらの夏

作家 樋口有介
出版日1988年07月
平均点6.50点
書評数8人

No.8 5点 ボナンザ
(2024/01/15 23:26登録)
デビュー作ということで気合が入っている。やるせない結末は見事ながら肝心のヒロインがフェードアウトしてしまうのは詰め込みすぎたか。

No.7 6点 ねここねこ男爵
(2021/11/30 19:28登録)
面白いかつまらないかで言えば、面白い。ただミステリとして読むものではないかも。
作者はもともと純文学志望だったそうで、確かにそれが窺い知れる文章と内容。人物の設定や言動、人間関係がミステリ的な伏線ではなく「作者が作中に漂わせたい雰囲気」のためだけに存在しており、ああなるほどねと思う。例えばヒロインの設定とか、父親母親と主人公の関係とか。

謎は滞りなく解決するし手がかりも各所に置かれている。真相はなんとなく赤川次郎っぽく、怪しい人物がしっかり悪い人なのでさしたる意外性はない。ただ前述の通りこの作品の魅力はそこではなく、それがツボにハマる人にはハマると思う。
個人的には主人公の異常なモテ方の不自然さと言うか、「物語の前から好きになるように決められていました」的な台本臭さが気になってしまった。10代の恋愛ってそういうものではあるけれども。

No.6 6点 モグラの対義語はモゲラ
(2021/11/20 04:57登録)
読んだのは文庫本版。
主人公のキャラおよび周りのキャラや雰囲気が人を選ぶだろうなというのが、序盤を読んでいる最中の印象であった。今日日流行らないような情景や設定が頻出し、どちらかというと悪い意味で古臭く感じるのだが、実際古い作品なので仕方がない。でもここまで来ると正直ファンタジーに片足を突っ込むようなレベルなのだが、実際昭和の先っぽや平成初期はこういう高校生たちがいたのだろうか?
作品の内容は綺麗にまとまっている。出てきた登場人物たちがちゃんと回収されていき、最初の事件の犯人の指名の根拠も分かりやすい。
青春小説としてはあまりリアリティが無いが、まあ何というか、ライトハードボイルドみたいなジャンルだと思って読んでいて面白いと感じたので、そういう姿勢で読むのが正解なのかもしれない。
つまらなかったわけではないのだが、ミステリとしてはこじんまりとしていて、ベタな展開といえばベタな展開だったのでこの点数。

No.5 8点
(2013/05/24 11:48登録)
第6回(1988年)サントリーミステリー大賞受賞作品。
本書は、高校生が殺人事件の謎を解く青春本格ミステリーではなく、青春群像をミステリー風味をきかせながら描いた青春ドラマでもなく、どちらかといえば、クラスメートの死の謎を追う高校生、戸川春一(ぼく)の夏の何日間かを描いた、私小説風・ハードボイルド風・青春ミステリーといったほうがいいでしょう。

戸川とその友人、酒井麻子の会話や戸川親子の会話などの、説明文を挟まない、長々と続く軽快な会話文はけっこう好みです。ストーリーは、だらだらとしていて平板で(悪い意味ではなく個人的には好ましい)、純文学を目指していたという作者の思いが滲み出ているように思います。
途中からはミステリーを意識せずに、伏線なども気にせずに、ほろ苦さあり、ユーモアありの高校生の風俗描写や会話を、学生気分を味わいながら楽しむことができました。

いちおうはミステリーなので、ラストはそれなりに締めくくられています。事件の背景は青春ものとしてはありがちです。でも、いつの時代もこれしかない、だからこそ面白い、という気がします。
初めはゆるめの雰囲気だったのが、徐々にハードボイルド風に引き締まっていくのを奇異にも感じましたが、実はそういう雰囲気に変化のあるスタイルも嗜好にマッチしていました。
悪いところがみんな良く見えてしまう、そんな作品でした。

No.4 6点 蟷螂の斧
(2012/11/05 08:30登録)
同級生が自殺したことに無反応・無関心な主人公。この点には違和感を覚えました。その後、心の変化は良く解らないのですが、自殺の調査に乗り出します。どうも主人公の性質を把握することができませんでしたが、ユーモアもあり青春ミステリーとして楽しめました。

No.3 6点 メルカトル
(2012/06/07 22:06登録)
ミステリよりも青春小説の色が濃い。
何よりも素晴らしいのは、小粋な台詞回しにある。
高校生が主役なのだが、まるでハードボイルドそのものの雰囲気とセリフ、こうしたミステリもたまにはいいだろう。
ただ、プロット、ストーリーがいかにも平板で、起伏が足りないのはマイナス点だと思う。
せっかくこのタイトルなのだから、もっと夏を感じさせるような、強烈な描写ももう少し欲しかった気がする。
しかし、全体としてはまずまずの作品ではないだろうか。

No.2 7点 nobiinu
(2010/03/23 01:40登録)
おもしろい。推理の余地はあまりなく、本格ミステリではないが、犯人を当てることは可能。
だが、この作品の魅力は犯人当てよりも、青春真っ只中の主人公やヒロインが作り出す雰囲気だろう。人が死んでいるのでそれなりの影を作りつつも、青春の爽やかな、甘酸っぱい描写も盛り込み、さらに青春を生きる学生ならではの暗い部分も作品に描いている。
なによりも、私とは全然違う時代の話なのに、古さを感じなかった。文庫の書評にもあったが、色褪せていない。今の学生さんにも自身を持って薦められる作品。

No.1 8点 makomako
(2010/01/20 21:07登録)
こういった青春春推理小説は何といっても爽快さと若さゆえのほろ苦さにどれだけ共感できるかが私にとって大切なところ。そういった観点からするとこの小説はとても共感できる。読み始めるとなかなか止まらず久しぶりに深夜まで読みふけってしまった。作者が同世代でもありそういった共感度が高いこともあるかもしれない。
 多少の違和感は高校生でみんながタバコを吸うは酒は飲むわといったところと主人公が高校生なのに恋人に対して実にさめた冗談をしばしば口にするところ。こんなかっこいい表現はもう少し経験をつまないと出来ないような気がするのだが(まあできるひともいるかもしれない。きっとそんな子はもてたんだろうなあ)。

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