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ミステリの祭典

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makomakoさんの登録情報
平均点:6.17点 書評数:887件

プロフィール| 書評

No.127 8点 二島縁起
多島斗志之
(2010/03/26 21:50登録)
はじめは海洋冒険小説のようだが途中から推理小説の様相となる。冒険小説としても本格物としても中途半端ともなりかねないのだが、それがバランスよく進行するためなかなか興味深く楽しい。舞台となった島に行ってみたくなる素敵な小説。作者が行方をくらましたようなことが新聞に出ていたがその後どうなったのだろうか。ぜひ復帰してこんな小説を読ましていただきたいものだが。


No.126 4点 湯煙りの密室
中町信
(2010/03/23 18:53登録)
殺人事件が次々と起き、伏線が張ってあり、どんでんがえしで意外な(すぐ分かってしまうが)犯人と犯行があり、と何だか面白そうなのだがそれがあんまり面白くない。テシピどうりに作ったこくのない料理を老舗の味ですといっているようなもので、なんとも物足りないのだ。すぐに読めてまあ無茶苦茶の話ではないので時間つぶしぐらいにはなるかも。


No.125 7点 花窗玻璃 シャガールの黙示
深水黎一郎
(2010/03/22 10:40登録)
 作者らしい斬新なトリックときちんとした伏線がちりばめられたなかなかのお話。当て字の感じがやたら多くこれがこの話のひとつの要素でもあるが気を入れてまともに読んでいると作者が意図した?読者が被害者となりかねない。私だけかもしれないが欧米の名前を漢字で書いてそれをルビで読むとどうも印象が残りにくく、登場人物が多くないのにどの人物だったかがよく分からなくなって時々読み返す必要があった(これも作者の狙いかもしれない)。
 作者はヨーロッパの芸術や文化に深い教養と理解があるようで今回は教会がテーマ。前作のイタリアオペラよりはまだましだが教会は苦手のほう。ヨーロッパを回るとどの国にも町ごとに自慢の教会があり、途方もない労力をかけて建てた陰鬱でごてごての(失礼!)ところへ必ず案内される。キリスト教徒でない私などは日本の寺院のほうがはるかに美しく見えるのだが。作者のようなヨーロッパに対する理解の深い人にはやはり特別なものなのだろう。教会の話と分かりにくい文章が減点だがそれでも楽しませるだけの力量には感服。


No.124 6点 トスカの接吻
深水黎一郎
(2010/03/20 16:14登録)
 読んでいて悪くはないが前作のエコール・ド・パリに比べると意外な犯人ではあるがトリックは大分おちる。クラシック音楽は大好きだがイタリアオペラは言葉が分からないこともあってちょっと敬遠気味。トスカはストーリーは知っているが一度も見たことが無い。それが中心となった話なのでやはり興味がもうひとつわきにくいのも評価が低めの一因です。
 ところで作者は外国語が堪能なせいか題名が私のようなものには意味不明。ウルチモ・トルッコ、レザルティスト・モウディは何の意味か読んだ後でも分からない。ミステリーとなっております。誰か教えてくれないかなあ。


No.123 5点 写楽・考
北森鴻
(2010/03/11 22:56登録)
 北森のシリーズはほとんどが読み進むにつれて興味深くなる傾向にあるのだが、この蓮丈那智シリーズは残念ながらだんだんつまらなくなってしまった。主人公にシンパシーがわかないせいであろうか。それとも歴史や民俗学はなまじ興味を持っている分野だけにあらが見えてしまうためなのか。
 物語としての出来はそんなに悪くないと思うのですが。


No.122 6点 触身仏
北森鴻
(2010/03/08 21:58登録)
北森のメインキャストはいずれも魅力的でそれが彼の作品を好む大きな理由となっているのだが、残念ながら蓮丈那智はあまり好きなキャラクターではない。他のキャラクターがかもし出す孤独感や隠れた愛情が薄いからかもしれない。古典も民俗学も好きなテーマなので期待できそうなのだが、かなり強引なストーリー展開にはちょっとついていけないところがある。これだけの話を短編で比較的短い時間に何編もかくのは大変だったのだろう。北森の才能からすればもう少し推敲して長編にしてくれたらもっとすばらしいものとなったのではないかと思うが、若くして亡くなられたのでもはや望むべくもない。残念。


No.121 6点 ふたたび赤い悪夢
法月綸太郎
(2010/03/05 22:24登録)
全体としてみればよく練られたストーリーで悪くないと思います。今回は結末も救われる話なので読後感は悪くない。しかし作品の最初からぐだぐだと暗い話が続き、作者の根暗と気の滅入り方につき合わされうんざりしてしまう。以前に読んだときはさほど思わなかったが、10年以上たって再読した今回は変に教養があるために余計落ち込む作者に嫌気がさしたことは否めない。このあたりの話を削って長さを3分の2ぐらいにしたらきっとすばらしい本格推理小説となったに違いないのだが。


No.120 7点 ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ!
深水黎一郎
(2010/03/01 21:20登録)
すごいトリックだと思いますよ。読者が犯人といったものはまず無理なんだけどこれならまあ納得できるのではないでしょうか。作者の知力と能力にまず賞賛を。もちろんいろいろな点で無理もあるので減点もやむをえないけど最近無難にまとめた作品や無茶苦茶の作品が多いなかで出色の出来でしょう。こんな作品をもうひとつというのは難しそうだけど期待してしまいます。


No.119 7点 瑠璃の契り
北森鴻
(2010/02/27 22:27登録)
緋友禅につぐ冬狐堂宇佐見陶子シリーズの連作。相変わらず雰囲気がよくうまく仕上げてある。北森鴻は独特の世界を描き出すがそれが自分の好みと合っていればとても楽しめる。骨董は好きなのでこのシリーズは読めば必ず満足するが、ストーリーのインパクトはあまり強くない。黒髪のクピドが一番好きかな。


No.118 7点 緋友禅
北森鴻
(2010/02/27 22:18登録)
北森鴻の小説は主人公の魅力が大きな要素となっているように思える。冬狐堂こと宇佐見陶子はそのなかでも好きなキャラクター。深い情ときつい仕打ちが交差するところはなんともいえません。この連作はミステリーとしてはまずますていどだが、雰囲気と薀蓄を楽しむならとてもすばらしい。先日作者が若くしてなくなったことが惜しまれます。


No.117 5点 カンナ 戸隠の殺皆
高田崇史
(2010/02/21 09:41登録)
 カンナシリーズはいろいろな場所が舞台となっているが今回は戸隠。何度も訪れた大好きなところなので期待したが残念ながらあまりぱっとしなかった。こういった歴史推理は斬新な歴史アイデアがないと成立しにくいため、やはり量産は無理なのだろうか。推理物としても歴史物としてもインパクトに乏しくだれ気味。シリーズが出ると必ず買っていたがもう止めようかなと思えてくる。高田氏のひいきを入れてこの程度の評価です。


No.116 6点 死神の座
高木彬光
(2010/02/17 18:44登録)
 30年ぶりぐらいに読み直してみた。ストーリーはすっかり忘れて再読という感じではなくそれなりに楽しめた。逆に言えばはじめて読んだときの感想がほとんど心に残らなかった作品とも言える。
 占星術、かぐや姫のパロディー、さまよえるオランダ人、暗号解読と盛りだくさんそして舞台は昔懐かしい軽井沢とサービスがしてある割にはもうひとつ内容の濃さが感じられない。目だったトリックがなくストーリがやや単調だからなのかもしれない。推理小説としては正統的で読んでいて決して不愉快でもなく退屈でもないのでまずますといったところ。


No.115 8点 過ぎ行く風はみどり色
倉知淳
(2010/02/11 15:37登録)
 きちんとした推理がありトリックもちゃんとしている。人物もそれなりに描いてあるしロマンチックなところにも過不足ない。猫丸先輩はあまり好きな探偵ではないが、でも嫌いでもない。霊媒やそれを暴こうとする超常現象の研究者など怪しげな人物も登場しなかなか面白い。読後感も悪くない。
 要するによく出来た推理小説なのだと思う。今まで読んだ倉知淳の小説の中で一番よかった。なのに満点でないのはすべてに平均点以上といった優等生的なところでインパクトに少しかける気がするからかな。


No.114 6点 林檎の木の道
樋口有介
(2010/02/07 09:14登録)
 「ぼくとほくらの夏」とほとんど同じ感じ。登場人物も名前は違うが原則的に同じ。もちろんストーリーは違うのだが続けて読むと何だか同じ小説を繰り返し読んでいるような感じになる。シリーズものならだんだん主人公や周辺の人たちに愛着を感じるてくることも多いのだが、違う小説で同じような内容だと作者の限界を感じてしまう。
 読書感のよい小説なのだが二番煎じといった感じを受けたので評価はこの程度。


No.113 9点 エコール・ド・パリ殺人事件
深水黎一郎
(2010/01/27 23:09登録)
 面白かった。エコール・ド・パリの絵画と事件が密接に結びついていて、びっくりするような手段が用いられていたりして、そしてなによりエコール・ド・パリ派への主張のある解説にもなっていたりして、ちょっと得をしたような気分にさせられる。私は絵画が好きなのでとても楽しく読みました。

 スーチンはどうかなあ。あんなへんてこな絵を飾っていつもみていたら頭が変になりそう。佐伯も個展で沢山の作品をみたときには暗くて重い訴えが強烈でぐったりしてしまった。家に飾るならやっぱりモジリアニのほうが良いが、といういのは素人の感覚なのでしょうね。
 
 


No.112 6点 メビウス・レター
北森鴻
(2010/01/24 15:10登録)
入り組んだ構造でいろいろなトリックが盛り込まれたかなり複雑なストーリー。この頃の作者はまだ若く懸命に考えて書き込んだことは間違いないが、だからこそミステリー好きのなかでも好き嫌いが分かれそう。悪くはないと思うが、私としてはもっと後の北森の作品のほうが好きかな。


No.111 8点 ぼくと、ぼくらの夏
樋口有介
(2010/01/20 21:07登録)
こういった青春春推理小説は何といっても爽快さと若さゆえのほろ苦さにどれだけ共感できるかが私にとって大切なところ。そういった観点からするとこの小説はとても共感できる。読み始めるとなかなか止まらず久しぶりに深夜まで読みふけってしまった。作者が同世代でもありそういった共感度が高いこともあるかもしれない。
 多少の違和感は高校生でみんながタバコを吸うは酒は飲むわといったところと主人公が高校生なのに恋人に対して実にさめた冗談をしばしば口にするところ。こんなかっこいい表現はもう少し経験をつまないと出来ないような気がするのだが(まあできるひともいるかもしれない。きっとそんな子はもてたんだろうなあ)。


No.110 8点 螢坂
北森鴻
(2010/01/17 10:22登録)
 香菜里屋シリーズはきれいな表題名が多いが、「蛍坂」とはまたきれいな表題で内容もそれに劣らず美しい。「雪待人」もとても素敵だ。このシリーズのなかで最も美しい作品と思う。残念ながらその他の作品がやや落ちるので採点はこのぐらい。


No.109 8点 桜宵
北森鴻
(2010/01/17 10:14登録)
 香菜里屋シリーズで出てくる謎は殺人などのような大事件はほとんど無い。すべて店に来る人が持ち込む日常に起こりうるような出来事を常連さんたちがいろいろ推理していき、最後に名探偵の店の主人が解決するというパターンの話。連作となると途中で飽きて仕舞いがちであるが、読み進むにしたがって常連さんたちが親しく感じられ、暖かくそして孤独で寂しい世界へ引き込まれる。作者の力量が高いのだろう。ちょっとはまってしまった。
 


No.108 9点 花の下にて春死なむ
北森鴻
(2010/01/13 21:49登録)
短編連作推理ものは謎解きにかけるスペースが少ないのでどうしても問題と回答といった小説となりがちであまり好みではなかったが、この小説はとても切れ味がよくしかもかくし味も効いていて作者の力量が並々ならぬものであることを知らされた。

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