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ミステリの祭典

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makomakoさんの登録情報
平均点:6.18点 書評数:873件

プロフィール| 書評

No.113 9点 エコール・ド・パリ殺人事件
深水黎一郎
(2010/01/27 23:09登録)
 面白かった。エコール・ド・パリの絵画と事件が密接に結びついていて、びっくりするような手段が用いられていたりして、そしてなによりエコール・ド・パリ派への主張のある解説にもなっていたりして、ちょっと得をしたような気分にさせられる。私は絵画が好きなのでとても楽しく読みました。

 スーチンはどうかなあ。あんなへんてこな絵を飾っていつもみていたら頭が変になりそう。佐伯も個展で沢山の作品をみたときには暗くて重い訴えが強烈でぐったりしてしまった。家に飾るならやっぱりモジリアニのほうが良いが、といういのは素人の感覚なのでしょうね。
 
 


No.112 6点 メビウス・レター
北森鴻
(2010/01/24 15:10登録)
入り組んだ構造でいろいろなトリックが盛り込まれたかなり複雑なストーリー。この頃の作者はまだ若く懸命に考えて書き込んだことは間違いないが、だからこそミステリー好きのなかでも好き嫌いが分かれそう。悪くはないと思うが、私としてはもっと後の北森の作品のほうが好きかな。


No.111 8点 ぼくと、ぼくらの夏
樋口有介
(2010/01/20 21:07登録)
こういった青春春推理小説は何といっても爽快さと若さゆえのほろ苦さにどれだけ共感できるかが私にとって大切なところ。そういった観点からするとこの小説はとても共感できる。読み始めるとなかなか止まらず久しぶりに深夜まで読みふけってしまった。作者が同世代でもありそういった共感度が高いこともあるかもしれない。
 多少の違和感は高校生でみんながタバコを吸うは酒は飲むわといったところと主人公が高校生なのに恋人に対して実にさめた冗談をしばしば口にするところ。こんなかっこいい表現はもう少し経験をつまないと出来ないような気がするのだが(まあできるひともいるかもしれない。きっとそんな子はもてたんだろうなあ)。


No.110 8点 螢坂
北森鴻
(2010/01/17 10:22登録)
 香菜里屋シリーズはきれいな表題名が多いが、「蛍坂」とはまたきれいな表題で内容もそれに劣らず美しい。「雪待人」もとても素敵だ。このシリーズのなかで最も美しい作品と思う。残念ながらその他の作品がやや落ちるので採点はこのぐらい。


No.109 8点 桜宵
北森鴻
(2010/01/17 10:14登録)
 香菜里屋シリーズで出てくる謎は殺人などのような大事件はほとんど無い。すべて店に来る人が持ち込む日常に起こりうるような出来事を常連さんたちがいろいろ推理していき、最後に名探偵の店の主人が解決するというパターンの話。連作となると途中で飽きて仕舞いがちであるが、読み進むにしたがって常連さんたちが親しく感じられ、暖かくそして孤独で寂しい世界へ引き込まれる。作者の力量が高いのだろう。ちょっとはまってしまった。
 


No.108 9点 花の下にて春死なむ
北森鴻
(2010/01/13 21:49登録)
短編連作推理ものは謎解きにかけるスペースが少ないのでどうしても問題と回答といった小説となりがちであまり好みではなかったが、この小説はとても切れ味がよくしかもかくし味も効いていて作者の力量が並々ならぬものであることを知らされた。


No.107 7点 吾輩はシャーロック・ホームズである
柳広司
(2010/01/13 21:36登録)
パスティーシュは作者の思い入れがたっぷりと入るため、読むほうの感覚が一致しないとどうしてもしらけてしまう。この作品はよく出来ていると思うが、原作に対して私が抱いている感覚と多少異なるところもあるためかしっくりこないところもあった。面白いは面白いのですがね。


No.106 8点 深淵のガランス
北森鴻
(2009/12/31 09:28登録)
このシリーズの探偵佐月恭壱は作者の薀蓄がたっぷりと入っているにもかかわらずいやみでなく、何となく暖かくしかも覚めて孤独な興味深いキャラクター。文庫本では表題作と血色夢の二つの中篇と凍月という短編が入っているが、深淵のガランスがことに好きだ。ストーリーもよいが雰囲気も楽しめる素敵な小説だと思う。


No.105 7点 月夜の晩に火事がいて
芦原すなお
(2009/12/29 19:16登録)
作者得意の讃岐の田舎が舞台。登場人物が素直で好感が持てる。主人公ふーちゃんはちょっと気弱で心も病んでいる(ここがミミズクとオリーブとちょっと違う)が、何とか解決にたどり着くストーリー。その内容について巻末の解説者は「Yの悲劇」との関連をあげていたが、私はむしろ映画「シェルブールの雨傘」の影響があるのではないかと感じた。結構込み入ったストーリーなのにさらりと読ませるのは芦原すなおの良い所だろう。なかなかよい推理小説と思うが、あまりにも不要と思われるところが多くて結果として長すぎる小説となってしまった。ことに推理に大切な部分でとてもへんてこりんな表現しか出来ないおばさんとの会話が延々と続くのにはちょっと閉口した。これが減点でこの評価です。


No.104 7点 人形はなぜ殺される
高木彬光
(2009/12/23 19:27登録)
30年以上前に読んだ小説だが、新装版が出ていたので懐かしく購入再読した。大分昔に読んだため犯人もトリックも大半は忘れてしまって新鮮な気持ちで読んでいたが、佳境に入ったところは覚えていてはじめて読んだ衝撃はやや少なかった。密室物のほうが時間トリックより好きなので刺青や能面のほうが好きではあるが、こちらのほうがさらによく出来た小説であることは間違いなく十分に楽しめた。


No.103 2点 三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人
倉阪鬼一郎
(2009/12/23 19:17登録)
これはぜんぜん私の好みではない。トリックのみの小説は数学の問題集みたいなものだ。当然ながら登場人物の人間性など無くただの問題の数値のようなもの。トリックと伏線だけの小説とは私にとってはうそつきのいうこと長々と聞いているようなもので願い下げですな。この作者の評価が高い方もおられるがこういった小説はどうしても好みがはっきり分かれるところなんでしょう。


No.102 4点 『アリス・ミラー城』殺人事件
北山猛邦
(2009/12/15 21:00登録)
 本来推理小説は作り物ではあるが、これはちょっとひどいのでは。
 探偵たちはは人間らしい感受性なし。どうして殺されに集まってきたかも不明。
 作者はトリックはそれ自体が美しいといっているそうだが、人間をばらばらにきざんだり顔を焼いて腹を割くのが美しいと思えるのだとしたらちょっと危ない人だなあ。
 本格推理物が好みなので途中の推理などはまずまず楽しんだのだが、最後に来てまたむちゃくちゃの結論となりいやになってしまった。


No.101 7点 メイン・ディッシュ
北森鴻
(2009/12/06 08:15登録)
 連作小説なのでひとつずつがそれなりの決着がある上に全体としてのストーリが展開するのは当然ではあるが、途中の話で結論と全く違う話がでてくる。あとでそれなりに訂正されるような展開とはなっているが、ちょっとうそをつかれたような感じがした。ユーモアもあり食のこだわりもありなかなかよいのだが、同じようにユーモアと食の話を交えた芦原すなおの「ミミズクとオリーブ」を読んだ後だったのであまりの個性の違いにちょっとびっくりした。ミステリーとしてはこちらのほうが断然上。私が読んだ北森の小説はいずれもどこか寂しく孤独な感じが漂っているが、本作品は孤独感はユーモアが交えてあるだけに余計につらいところがある(これが好きな人も当然あるだろう)。


No.100 7点 天使のナイフ
薬丸岳
(2009/12/06 08:00登録)
作品が重いテーマではじめのうちは読んでいて憂鬱になるが、よく考えられたストーリー展開に途中からはひきつけられた。確かにあまりに同じ犯罪を犯した人たちがこんなに集まってくるのは不自然な感じはあるがまあよいでしょう。こういったテーマをあつかう小説はあまり好みではなく最初の部分を読んだときに読むのは止めようかと思ったが、途中からは一気に読んでしまった。社会の矛盾を訴えるような小説が好みならすごく感動すると思う。


No.99 8点 わが身世にふる、じじわかし
芦原すなお
(2009/11/27 22:00登録)
 ミミズクとオリーブシリーズも3作目となるとすんなり物語りに入り込めて独特の楽しさを味わうことが出来た。暗号トリックなどあってミステリー度は一番高そうだが、例によって名探偵の妻によってあまりに簡単に解決されてしまうので推理の楽しみはあまりない。このお話は河田と僕と妻のユーモラスな会話とおいしそうな香川の郷土料理、そしてアイデアに苦しみ締め切りに追われながらもゆったりした生活といった雰囲気を味わうものなんだろう。とても気に入っている。次が出たらぜひ読みたい。


No.98 7点 嫁洗い池
芦原すなお
(2009/11/22 12:13登録)
前作のミミズクとオリーブより多少ミステリー度は高いかな。相変わらず主人公と河田と奥さんの掛け合いがユーモラスでほんわかとして楽しい。食事や酒についても、すごくおいしそうにいただいているところがまたよろしい。毎日忙しく仕事に追われている自分にとっては、よい奥さんとよい友人に囲まれたゆっくりした素敵な生活のお相伴にあずかったようで読後感はとてもよかった。


No.97 7点 ミミズクとオリーブ
芦原すなお
(2009/11/15 10:18登録)
 この作品をミステリーとして読むともうひとつであるが、洒落た会話やふんわりとした雰囲気は好きです。名前を覚えるのが苦手な小生にとってはほとんど名前が出てこない(主人公も探偵役の奥さんも名前が出ない)のもありがたい。
 それにしてもこの奥さん素敵だなあ。友人の奥さんがこんな人なら私も酒と肴を持って押しかけそう。


No.96 7点 QED 出雲神伝説
高田崇史
(2009/11/02 20:22登録)
 久しぶりのQEDで、やはりカンナシリーズより濃い内容でそれなりに楽しめた。今までのQEDは作品ごとに独立していてどれから読んでも一応楽しめるようになっていたが、今回のはこのシリーズを読んできていないと分かりにくいところが多々ある。さらにカンナシリーズとも重なるところもありすべてを読んでいる私のような読者にとっては親しみ深いのだが、これだけ読むとちょっと理解できないところがあると思う。それにしても今回のタタルの推理はあまりによどみが無く推理の過程を楽しむといったところにかける。もう少し推理の過程を楽しみたいものだが。
 最後にきわめて思わせぶりなflumenがついており現代のタタルと小松崎のことが書かれている。ナナチャンはどうなったのだろうか。とても気になる。


No.95 6点 曙光の街
今野敏
(2009/10/18 08:48登録)
 警察小説ではあるが、かなり格闘シーンが多くバイオレンス小説といった趣のもの。この手の小説は暴力とエロに陥りがちであるが、そこは今野敏だけあって薄っぺらになりがちな内容もうまくまとめてある。
 007シリーズ(古い!)に色気を抜いて男気を加えたような作品。私はこういった小説はあまり好みではないので評価は下がるが、スカッとして読後感もよいのでこういった小説が好きならもっと高評価となると思います。


No.94 9点 監獄島
加賀美雅之
(2009/10/14 21:20登録)
 不可能と思われる密室殺人が次々と起きる。、物質トリック、心理トリックなどをこれでもかと詰め込んだ謎解きと古風な雰囲気。どれをとっても本格物が好きな読者には答えられないないではないか。トリックなども実によく考えられており、大変長い小説であるが最後まで読者をひきつける。ひとつずつ小説化すれば何冊かの長編本格推理小説が書けるところをひとつの作品にもりこんだ作者の姿勢に敬意を表したい。
 減点はちょっと無駄に長いところが見られるのと最後のシーンで探偵が犯人に拳銃を突きつけられながら長々と犯人が犯した犯罪をあきらかにしているところ。探偵に対して殺意を持っているのだから自分の犯罪がみんなにあきらかになるのをじっと聞いているとはとても不自然。
 

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