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ミステリの祭典

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トスカの接吻
芸術探偵シリーズ

作家 深水黎一郎
出版日2008年08月
平均点6.33点
書評数9人

No.9 5点 nukkam
(2016/02/20 11:55登録)
(ネタバレなしです) 2008年発表の神泉寺瞬一郎シリーズ第2作の本格派推理小説です。「オペラ・ミステリオーザ」という副題を持ち、オペラの上演中に舞台上で歌手が殺されるという事件を扱っています。オペラに関する知識が沢山披露され、謎解きとも少なからず関連があるところが芸術探偵らしいのですが、私のように芸術と縁のない読者だと作中での瞬一郎の芸術解説や芸術論にどこまで馴染めるか微妙だと思います(それがこのシリーズの特徴だとは理解していても)。私の読んだ講談社文庫版では初版にはなかった「読者への挑戦状」代わりの「作者贅言」が挿入されていますがこれは正解でしょう。「作者贅言」で事前に与えられるヒントなしで解決に突入すると不満を覚える読者もいると思います。それだけ当てにくい真相ではあります。この「作者贅言」ではダイイング・メッセージについて「100人が100人、その解釈しかあり得ない、と思うようなものでなければならない」と書いていますが本書のメッセージの謎解きは納得する以前に、複雑過ぎてそんなの当てられないよという声の方が多いのでは(笑)。

No.8 7点 tider-tiger
(2015/11/23 12:28登録)
衆人環視の元、オペラの舞台上で殺人は行われた。
悪役の首に女優はナイフを突き立てた。引っ込みナイフのはずだったので頸動脈を狙って思い切り。ところが、ナイフは本物だった。
誰が、いつナイフをすり替えたのか? なぜ彼は殺されたのか?

少しネタバレあります

芸術論とミステリを融合したシリーズの二作目。
最後まで興味深く読めました。オペラの演出が殺人事件と絡んでくる展開なんかは良かった。小説としては満足できました。ただ、ミステリとしては問題あり。全体の構図はいいんですよ。意外性もある。ですが、警察がちょっと有り得ない見落としをしたり、動機や犯行手段が強引に思えたりと瑕疵が散見されます。
芸術部分に比べてミステリ部分には「細部に神が宿っていない」んです。
瞬一郎氏が「ホリゾントに原爆投下の映像を映し出す」演出に不自然さ、センスの悪さを感じ取ってなにかに気付いたりするなど良い点がたくさんあっただけに細部の不自然さがどうにも気になってしまいました。
特に犯人の動機が消化不良に感じられた。読み足りなかった。
真犯人の心情がもう少し丁寧に描かれていれば。瞬一郎がどのように真犯人を懐柔し、どのような会話を交わしたのかは是非とも知りたかった。また、懺悔の神さまポーズで死んだ人と彼の確執についてもう少し突っ込んで書くべきだったのでは。
それから、記者会見のシーンがぬるい。あそこはもっといい場面に出来たと思いました。もっと緊迫させて郷田氏の悪い癖が炙り出されたりしても良かったのでは。

どうでもいいことですが、あのダイイングメッセージは……死にざまを想像すると笑ってしまう。自分だったら死後にあんな情けない姿で発見されたくないなあ。

安定の乱歩賞より、当たり外れの差が大きいメフィスト賞の方が好きなのですが、この作者は中でも特に好きな一人です。
安定した文章力、興味深い芸術論、凝った構成、人間心理の不可解な部分を掬い出す(人物造型そのものは弱いと思われますが)、知的でクールな作風にあって、違和感すら覚えるウェットな読み味を残すところなどなどが好きなポイントです。

No.7 6点 E-BANKER
(2013/01/23 22:28登録)
前作「エコールド・パリ殺人事件」に続く芸術探偵シリーズの第二弾。
今回の芸術はズバリ「オペラ」。個人的には全くの門外漢ですが・・・

~歌劇「トスカ」公演の真っ只中。プリマドンナが相手役のバリトン歌手を突き刺したそのナイフは、なぜか本物だった。舞台という「開かれた密室」で起こった前代未聞の殺人事件。罠を仕掛けた犯人の真意は何か? 芸術探偵・瞬一郎と伯父の海埜刑事が完全犯罪の真相を追う。「読者に勧める黄金の本格ミステリー」選出作品~

真犯人には確かに驚かされた。
なる程! 伏線も張ってあるし、動機もまぁ理解できなくはない。
「開かれた密室」については、その惹句ほど魅力的なトリックではないし、第2の殺人で出てくるダイニング・メッセージについても「こりゃ分からんわ!」というレベル(こんな専門知識ないよ!)。
ということで、本格ミステリーとしての骨格は長短入り混じってるという評価が適当だろう。
(文庫版は「読者への挑戦」が追加されるサービス振り!)

でも本作に関しては、オペラの知識がないと面白みが半減するような気がする。
もちろん、本格ミステリーにこういう薀蓄は付き物で、作品を通していろいろな薀蓄に触れることは、個人的は楽しいのだが・・・
ただ、オペラについては知識があまりにもないし、正直、薀蓄部分に本作のかなりのウェイトが置かれている体裁になっているのが、ちょっと読んでて違和感を抱いてしまった次第。

あとは登場人物の作り込みがちょっと甘いのかな・・・
探偵役の瞬一郎にしても、変人として書かれている警部にしても、イマイチ魅力に乏しくて、どうもその辺が読後にスッキリこない理由になっているのだろう。
本格ミステリーの仕掛け自体は面白いだけに、そこが残念でならない。
(オペラって、日本でもそんなに人気なんでしょうか?)

No.6 6点 江守森江
(2010/04/21 00:37登録)
トリックよりも「操り」を逆手に取る秀逸なプロットから意外な犯人を演出するが、何とも地味な本格ミステリ。
ここに至る作風から真っ当なフーダニットは書かないだろうとミスリードされ、事件とは別次元の芸術論に引き込まれ、何気なく登場したり描かれたりする人物やさり気ないエピソードが重要な伏線だと思い至らずに(本格ミステリである事を忘れ)読了してしまった。
しかも、こぢんまりした事件の謎や意外な犯人より、断然「オペラの新解釈」や「芸術論」の方が面白い。
その点からも明らかで、本格ミステリ部分で読ませる魅力が弱いのは如何なものか?
それでも、登場人物の芸術論にかこつけた作者のミステリ論が伺え尚更楽しい。
特に「神は細部に宿る」を論じる辺りは、実に本格ミステリ的な洞察に通じていて嬉しくなる。
読者の読解レベルと解釈嗜好が問われるのが長所でもあり、大成(一般受け)を阻む致命的な欠点でもある。

No.5 6点 makomako
(2010/03/20 16:14登録)
 読んでいて悪くはないが前作のエコール・ド・パリに比べると意外な犯人ではあるがトリックは大分おちる。クラシック音楽は大好きだがイタリアオペラは言葉が分からないこともあってちょっと敬遠気味。トスカはストーリーは知っているが一度も見たことが無い。それが中心となった話なのでやはり興味がもうひとつわきにくいのも評価が低めの一因です。
 ところで作者は外国語が堪能なせいか題名が私のようなものには意味不明。ウルチモ・トルッコ、レザルティスト・モウディは何の意味か読んだ後でも分からない。ミステリーとなっております。誰か教えてくれないかなあ。

No.4 6点 シーマスター
(2009/05/13 22:25登録)
前作に続いて読んで、よーく分かった・・・この人はミステリを書きたいのではない、一般大衆を相手に独自の芸術論を披露したいがためにミステリを利用しているのだと。(もちろんココは(笑)をつけるところだよ)

ミステリとしては・・・トリックは決して低レベルなものではないが、前作以上に強引、御都合、後付け展開でとてもカタルシスを得られるものではない。また(前作でも感じたが)解かりにくいところは「図解」があってくれてもよかったのに・・・それとも意地でも文字だけで作品を完結させたいという信念でもあるのかな。

さて、この人はまだミステリを書き続けるのだろうか。それより例の演出を御自分でなさる方が・・・・・・・・そう簡単にはいかんか。

No.3 9点 abc1
(2009/04/02 13:11登録)
巻末の参考文献にはイタリア語の原書が並んでいるが、私自身オペラが好きでオペラ関係の本をけっこう読んでいるが、本書はどこにも書いていないような新情報が満載で、目からウロコが落ちる思いがした。それがミステリの構図と見事にマッチしているのだからもう文句のつけようがない。オペラ好きならば必読の書だろう。一点減点にしたのは、犯人を当てるのがちょっと難しすぎるということだ(それだけ意外な犯人ということでもあるのだが)。

No.2 6点 dei
(2008/10/16 17:17登録)
前作同様うまくまとまってる作品だと思う
この本を読んでオペラに興味がわいてしまった

No.1 6点 teddhiri
(2008/08/22 15:56登録)
 オペラにまったく詳しくないため舞台の構造がわかりにくかったことと、前作の作中論文のような読みやすさがオペラの解説に感じられなかったため全体的にあまり楽しめませんでした。ただし警部と登場人物の青年の掛け合いは変わらず楽しめました。

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