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ミステリの祭典

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makomakoさんの登録情報
平均点:6.17点 書評数:887件

プロフィール| 書評

No.307 2点 黒死館殺人事件
小栗虫太郎
(2012/12/28 21:27登録)
 日本ミステリーの評価には必ず登場するマニア必読の書であるとのことなのだそうです。ああなんとも読みにくい。わたしは薀蓄が嫌いではないのだが、こんな異常な薀蓄の塊にはうんざりです。
 作者のやりたいことは何となくわかるのですが、感覚も作品のできも極めて異端。
 いってみれば新興宗教のようなもので、のめりこんでいる人にはとても素晴らしいのでしょうが、そうでない人間にとってはなんともばかばかしい。 
 かなり辛抱して読んだのだが、結局付き合うのは時間の無駄でした。好きならともかく無理に付き合うことはないでしょう。


No.306 8点 獄門島
横溝正史
(2012/12/22 20:02登録)
 横溝氏の最高傑作と思います。学生時代(もはや40年前となってしまいました)にはじめて読んだときは見立て殺人などに対するどちらかといえば嫌悪感があり、あまり感心しませんでした。今回雑誌のミステリーランキング1位となっていたので、そんなにすごいものだったのかと古びた本を書庫から取り出して読んでみました。
 なんと面白いではないか。人間の好みは変わるもので長い年月の間にわたしも十分本格推理小説に毒されたせいか、被害者となる3姉妹にも見立て殺人の異様さにも違和感がなく、大変面白く読みました。
 映像などにも何度もなっておりそちらもみているので、だいたいの筋は覚えていてもなお面白く読めました。


No.305 7点 死の接吻
アイラ・レヴィン
(2012/12/18 19:49登録)
 なかなか面白かった。三姉妹が順番に登場して各々の特徴がきちんと書き分けられており、章がすすむにつれ違った興味を持てるよう物語の展開は素晴らしいと思います。
 物語の最初は犯人が分からないのだが、途中からは犯人がいかに追い詰められていくかを楽しむといった展開となる。そういった意味ではいわゆる本格推理小説とは異なったお話ではあるが、これはこれで興味深い。
 アメリカの女性はお世辞に弱い(どこの国でも同じか?)ようで、ハンサムな男が下調べを行って近づいたらみんなころりと陥落してしまった。羨ましいような情けないような。
 まあ世の中はこんなものなんでしょうね。
 翻訳ものがあまり好みとはいえない私が読んでも途中から止められなくなったのですから、外国ものが好きな方にはたまらないのでしょう。
 


No.304 6点 不良少女
樋口有介
(2012/12/11 23:02登録)
 柚木草平シリーズの短編集。最初の「秋の手紙」は結論がどうもはっきりしない。連作集とのことなのであとで何とか分かるかと思ったが、話は全くつながっておらず結局不明のまま。ちょっともやもやしている。「薔薇虫」はまずまずだけどなんか文章がくどい感じとなったなあと思っていたら、つぎの「不良少女」からなんだかすっきりしてきた。あとがきをみたら作者が文体を変えたとのこと。ーーなるほど。
 それでも樋口氏の小説はどれを読んでも同じようだという評判は時々耳にする。登場人物の会話に独特のシャイと粋があるせいと思っていたが、この連作を読んで気づいたのだがちょっとした切れ目の先端には必ずといってよいほど花鳥風月の描写が入る。わたしは素敵だと思うのだが、いつもおんなじ様な描写と感じる人もいるのかも知れない。


No.303 8点 夏の口紅
樋口有介
(2012/12/06 21:30登録)
 この作品は純粋なミステリーではない。一応謎は呈示され解決もするのであるが、本格もののような謎解きを楽しむものではない。氏独特の雰囲気と青春の空気を味わうといった趣の内容。
 解説によると樋口氏が一番書きたいものをというリクエストに答えた作品とのことである。なるほどと納得できるできばえ。
 読後感もよく素敵な小説です。


No.302 8点 幻の女
ウィリアム・アイリッシュ
(2012/12/02 14:54登録)
 翻訳ものが苦手なわたしですが、この作品はとても楽しめました。さすが不朽の名作といわれているだけのことはあると思います。翻訳文もこなれていてよかった。
 読み始めるとなかなか止められない。
 最初はこんなストーリーは分かりきった話になってしまうのではと心配?もしたのですが、どうしてどうして息をのむ展開となる。 古い友人のために一肌脱ぐといった男気のある人物が登場して、大いに感激。友はこうでなくては!とお話に没頭。
 ところがところが、とんでもない方向へ話が展開していく。真相はいかに--。
 結構なトリックなども使ってあるし、わたしなど全く結末がわかりませんでした(まあだいたいわからないんだけどね)。
 ただ、本格物として読むとなんだか「あとだしじゃんけん」みたいなところはあるのですが、良しとしましょう。
 幻の女の正体は多少肩透かしのような感じはしますがこんなものでよいのでしょう。
 とにかく最近読んだ翻訳小説の中で一番熱中したものでした。


No.301 7点 江神二郎の洞察
有栖川有栖
(2012/11/28 21:50登録)
 学生アリスが好きなわたしにとってはとても楽い作品でした。長編で語られなかった推理小説研究会の日常が分かってくる。推理小説研究会ってこんなことをして遊んでいたんだ。
 短編連作のようになったいるのだが、すべてが本格推理ものではなく(本格ものもあるが)推理のお遊びや大学生活を垣間見ているうちに彼らの1年が過ぎマリアが入部してくる。
 はっきり言って途中はちょっと退屈なところもあるのだが、最後の「蕩尽に関する一考察」などは実に後味がよく気持ちよく読み終えることができる。
 学生アリスが好きな人は必読でしょう。


No.300 6点 謎解きはディナーのあとで
東川篤哉
(2012/11/24 17:51登録)
 東川氏の作品の中では特に優れているともいえないが、なぜかとてもよく売れて作者の名前が急にメジャーとなっためでたい作品。 個人的好みからいうと氏の作品はもっと優れたものがあると思うのですが。
 売り方と表装がうけたのでしょうかね。
 ドラマ化されたけどこちらはユニークな設定がばかばかしく見えてしまってぜんぜんよくなかった。ミステリーのドラマ化はよくされるのだが、まず原作より面白いものにお目にかかれない。
 原作のほうがよいのでドラマをみてつまらなかった人もぜひ読んでみてください。
 これを期に作者の作品を読む人が増えればよいですね。ユーモアと本格を組み合わせた東川氏作品のファンの一人として願っています。


No.299 7点 魔女
樋口有介
(2012/11/07 20:58登録)
本格推理としてはちょっと弱い。伏線は張ってはあるが、この展開で犯人を理論的に指摘することはまず無理でしょう。多分作者は本格者というより文学とミステリーを融合させた作品を目指しているのではないかと思います。そういった目で見るとなかなか素晴らしい。文章は相変わらずうまく話の展開も興味深いものがある。
 樋口作品の楽しみのひとつとして登場人物(ことに女性)が魅力的であることが挙げられると思います。本作品でもみかん(女の子の名前です)や瑞穂などはとてもユニークです。瑞穂などは現実にお付き合いするのは願い下げではあるが、本の内でなら楽しい。


No.298 7点 月への梯子
樋口有介
(2012/11/01 21:47登録)
本格推理としてはちょっと甘いが、好きな小説です。樋口氏は推理小説は文学性を犠牲にしてもプロットとトリックという姿勢はとらないようで、ちょっとした切れ目に必ず美しい描写が入り、それがとてもよい雰囲気をかもし出す。作者は近年の作品になるほど洒落た会話に加えてこういった素敵な文が入り、読んでいてとても気分が良い。
 本作品は登場人物もとんでもない人が大半であることが分かってくるのだが、決して感じが悪くなくやさしい内容であることが好ましい。
 最後は結構ひねりが効いており読後感も悪くない。


No.297 6点 長いお別れ
レイモンド・チャンドラー
(2012/10/28 17:18登録)
 どうもこの話は私にはあわない。登場人物がなんでこんなに暴力的でわざととしか思えないほど相手を挑発しているようで。さらに相手がひどく怒りっぽくすぐにナイフなどを持ち出したりして。
 読み始めはマーロウという人物がバカに見えて仕方がなかった。
 もうちょっと丁寧にやればこんな目にあわなくてもすみそうなのにねえ。
 そんなわけでこの長い話を読みきるのにかなり努力が必要でした。ことに最初のあたりでは何度かもう読むのを止めようかと思ったほどでしたが、評判の名作なのできっと面白くなるだろうとがんばって読むことになりました。
 わたしは初めのうちマーロウという主人公にはじめはぜんぜん感情移入ができなかったのです。自分に素直でなくわざと嫌われるようなせりふを吐き、すぐに暴力沙汰となる人間は現代の日本人からはあまり好まれないのでは。
 読み進むにつれて何とか彼がキライでない程度にはなりました。
 それにしても50年代のアメリカは飲酒運転は容認され、警官の暴力などはぜんぜん気にされていない世界であったのだ。
 日本の官憲が暴力的であったというけどアメリカもあんまり変わりなかったのかも知れない。
非常に評価の高い作品にあまり低い点数をつけるのは気がひけますが、わたしなりの感想ということでご勘弁を。


No.296 8点 枯葉色グッドバイ
樋口有介
(2012/10/19 08:03登録)
 樋口氏の小説はいつも無頼(古い!)な感じと、暖かさと皮肉と洒落たセンスが感じられ、ストーリーよりそちらの方面に惹かれて読んでしまうこともあるのですが、この作品はかなりしっかりと筋書きだててあり、作者のも述べているように終わりまできっちり書かれている。
 主人公がホームレスまで落ちぶれた敏腕警官というのもちょっと極端な設定に思えますが、読んでいくとぜんぜん気にならなくなる。
 ストーリも二転三転して最後はきっちりとどんでん返しとなっており、この作者らしく無謀に走りやすい吹石夕子にもちゃんとお手柄をあたえているのがなんとも優しい。
 ちゃんと終わりまで書いてくれたので文句は言えないのだが、これはこれでちょっとくどい感じというのは読者のわがままでしょう。
 とにかくとてもよかった。


No.295 6点 鋏の記憶
今邑彩
(2012/10/19 07:48登録)
 超能力をミステリーに仕立てると何でもできてしまうので、本格物としては掟破りふうなのだが。
 この作品のように物に触るとそのものに関連した昔の記憶が分かる能力がある女の子がいたら、まず事件の起きた部屋へ連れて行ってつぎつぎと物に触ってもらえば、まずどんな難事件も即座に解決してめでたしめでたし--。などと気難しいことは言わないで読めば結構楽しめます。
 最初の三時十分の死などはきちんとトリックも仕掛けてありなるほどと思わせます。ただ早苗ちゃんはちょっとかわいそうだなあ。
 最後の猫の恩返しはなかなか良い。何となくほっこりした気分になれました。


No.294 7点 虹果て村の秘密
有栖川有栖
(2012/10/12 14:09登録)
 子供向けのミステリーということなのでそんなに奇抜なトリックや残酷なシーンはない。トリックも平易で分かりやすい分ミステリーを読み慣れた読者には不満足かも知れない。密室トリックの初歩の初歩なのだろうが、本格ものを初めて読む読者にとっては素晴らしいトリックに違いない。
 読んでいると作者のミステリーへの愛着や子供にミステリーの素晴らしさを紹介しようという暖かさは十分に伝わってくる。
 登場人物間の会話の面白さは(有栖川氏の小説を読む際に最も楽しみにしていることの一つです)たっぷりで後味もよく、なかなか面白かった。










No.293 6点 復讐の女神
アガサ・クリスティー
(2012/10/08 07:32登録)
 最初の出だしはナカナカですが、皆さんが述べているように話のテンポが遅くやや退屈なところがあるのは否めない。さすがのクリスティーも年をとるとなかなか切れ味の良い話を作り出すのは難しいのかとも思ってしまう。
 だいたいミスマープルシリーズはあまり奇抜なトリックなどは少なく全体として退屈になりそうな話を、意外な犯人と巧みな筆で興味深く読ませるものと思っているが、本作品は若干テンポが悪い。
 さらにこの話だと、旅を依頼した死せる大富豪はほとんど真相をつかんでいた?さらに被害者となった女性は真相に気づいていたのにどうして黙っていたのだろうかなどと、若干矛盾を感じるところもあるのでちょっと評価が低い。
 皆さんより多少評価がよいのは多分自分が年をとり、何となくマープルさんに共感できるようになってきたせいかもしれない。


No.292 6点 カリブ海の秘密
アガサ・クリスティー
(2012/10/02 20:35登録)
 翻訳物があまり好きではない。翻訳文が苦手な上に登場人物がとんでもないやつであることが多く(最近では日本の小説でもしばしば見かけるが)ぜんぜん共感できない。さらに名前が覚えられない(これは単にわたしの脳の老化かもしれないが)、男か女かも時々不明となる。こんな読者ではまず外国物は楽しめないことが多いのだが、クリスティーはかなり好きです。
 シリーズではポアロの方が好みでですがミスマープルもなかなか面白い。
 本書はマープルもそして作者も大分年寄りとなって話が丸くなっていると思いますが、さすがはクリスティーで犯人は以外できちんと論理的でもある。
 大きな山場がないがそれなりに読みやすく退屈はしない。


No.291 6点 珈琲店タレーランの事件簿
岡崎琢磨
(2012/09/26 18:00登録)
 書店の入り口に山積みされていたのでなんとなくビブリア古書堂の事件手帖(これは好きなシリーズです)に似た感じに思えて購入した。
 内容はビブリアと似ているところもあるが、違いもはっきりしており(登場人物の個性が相当異なる)二番煎じ的な物ではないとしましょう。
 謎は小粒でもちろん殺人事件のような凄惨なものは全くない。謎ときはまずまずかな。連作風であるが、全体として一つの話となっており、結末はまあハッピーエンドなのでしょう。
 ストーリの途中にやや不明のところがあるが、全体として平明で読んでいやな感じはない。
 あまり評価があがらなかったのは主人公の男性があまりに腰抜け(こういった男は嫌いだ。)なところ。
 主人公の女性もまあ魅力的といえるが、大分暗くちょっと鬱陶しい感じが否めない。
 この手の話は主人公がいかに魅力的かが大きな要素となると思います。
 まあ悪くはないがすごく感心もしないといったところでした。


No.290 6点 プリズン・トリック
遠藤武文
(2012/09/22 13:07登録)
 初めの交通刑務所の話はちょっと驚きました。どうやって取材したか不明ですが、刑務所ではこんなこととなっていたとはぜんぜん知りませんでした。あまり異議が出たという話がないので多分事実なんでしょう。
 問題は話が進んで途中ぐらいから視点がつぎつぎにずれて、名前を覚えるのが苦手なわたしには誰が何をやっているかわからなくなってしまった。これってちょっとひどいと思います。
 途中で止めようかと思ったが、ラストのトリックが素晴らしいとの論評があるのでとにかく最後まで読んだ。
 うーんなるほど。ぜんぜん見通せなかった。
 あまり読後感がよろしくない終わり方だけどまあ納得。

 最後に一つだけ。
 遠藤さん首に静脈注射ってしたことありますか?血管は太いのでさせそうだけど相手が動くと案外難しいのですよ。注射をうったことがない人に極度の緊張下でそううまく打てますかどうか。


No.289 5点 グラスホッパー
伊坂幸太郎
(2012/09/08 17:50登録)
 はじめはやたら現実感のない殺人が出てきたりして、とても嫌な感じでした。こんな本もう読むのをやめてしまおうかと思ってもいたが、まあ手元に他に読むものもなかったのでしかたなく読んだ(重傷の活字中毒の兆候ですな)。
 途中からはまずまず納得できる内容となってきたので読むこと事態は苦痛ではなくなったのだが、だから面白く読んだというほどではなかった。名前を覚えるのが苦手なわたしにとって蝉だの鯨だの覚えやすい登場人物なのがまあよかったといえばよかった。
 要するにわたしの肌に合わない小説でした。


No.288 7点 黒猫館の殺人
綾辻行人
(2012/09/08 17:39登録)
 これが出た20年程前に読み、当時は館シリーズとしてはもうひとつの感があった。今回再読してみたが、トリックなどたいていは忘れてしまうわたしでもさすがにこのトリックは覚えており、ついでに犯人も不思議に覚えていたのになかなかおもしろかった。
 たくさんの伏線が張ってあり、まあフェアといえばフェアでもありといった作者の苦心の跡がしのばれて楽しめた。 
 まあ本格物の中毒症状がひどくなったということかもしれませんが。

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