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ミステリの祭典

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カリブ海の秘密
ミス・マープル

作家 アガサ・クリスティー
出版日1971年01月
平均点5.91点
書評数11人

No.11 6点 虫暮部
(2023/10/06 13:05登録)
 ことミステリの場合、ネタの使い回しに対しては視線が厳しくなりがちだが、私はACの手癖と言うか “良くやるパターン” に関して目くじらを立て過ぎていたかと少々反省している。
 作中に於ける犯人や手掛かりの配置が旧作に幾らか似ていると、そのマイナス評価ばかりに囚われて他の楽しめる部分を逃していたかもしれない。そういう部分は作者の得意技だから多用されるってことでいいのかもしれない。本作も、読む順番が違ったらもっと高評価だった気がする。

 西インド諸島のどこかの国と言う舞台設定にはあまり効果を感じず。ミス・マープルが翁にあしらわれる場面は新鮮。人違い殺人は余計なエピソード、もしくは発生が遅過ぎるのでは。
 かつてエスターの夫が事故死しているとの話に、“あ、実はこれが殺人で伏線か。見え見えだぜ” と思ったんだけどなぁ。

No.10 6点 人並由真
(2022/06/02 14:48登録)
(ネタバレなし)
 肺炎を生じた老嬢ジェーン・マープルは、心優しい甥レイモンド・ウェストのはからいで、西インド諸島(カリブ海)にある「ゴールデン・パーム・ホテル」で静養していた。ケンドル若夫婦が経営するそのホテルでミス・マープルは十人以上の宿泊客となじみになるが、その中のひとりで元軍人の老人バルグレイヴ少佐が、自分は殺人者を知っていると語る。少佐はその殺人者の写真を見せようとしたが、途中で何かの理由で表情を変えて中座した。やがてミス・マープルは、ホテルに急死者が出たとの知らせを聞く。

 1964年の英国作品。ミス・マープルものの第九長編。
 大昔の少年時代にたしか一度読んでいると思うが、ストーリーも犯人もトリックも完全に失念しており、ほぼ初心で読了。何十年前に購入したポケミス(1973年の再版)で今回も読んだ。

 ポケミスで本文が200ページちょっとという薄目の作品だが<その人物は何を見て(あるいはなんで)表情を変えたのか>という謎のフックに始まり、クリスティーらしい持ち技はそれなりに豊富。
(それだけに犯人は伏線から察しがついたハズなのに、最後まで気が付かずに終わってしまった。不覚。)

 ただ犯人の設定からすると、この人物かなりリスキーなことを平然としていたような気がする。もちろんあんまり詳しくは書けないが。
 あとあの人物が(中略)という形で(中略)を秘匿していたというのは、いささか作者のチョンボだよね。まあ当人のキャラクター設定で、そういうこともやりそうな人物として造形してあるのは、ベテラン大家の上手さではあるけれど。

 枯れてきた感じもする時期の作品だが、同時に書き手の円熟ぶりも実感させて、プラスマイナスで佳作。これで『復讐の女神』(こっちは完全に未読)も読める。
 未刊行の「Woman's Realm(「女性の領域」の意味か)」の内容も気になるねえ。どこかに梗概くらい残ってないのだろうか。不勉強にして聞いたことがない。

No.9 5点 レッドキング
(2020/09/13 20:58登録)
二人の女を殺した男の噂を喋る老人が、ふと前方の「何か」に眼を留め、驚愕の表情で口を閉ざす。老人の視線の先には、曰くありげな二組の夫婦が。そして老人はその翌日急死する・・。カリブ海西インド諸島のリゾートホテルを舞台にした連続殺人事件。義眼をキーにした左右のロジックが事件を解き明かす。

No.8 5点 ボナンザ
(2019/08/26 10:53登録)
後期の佳作。手掛かりは結構はっきり示されているので、推理は可能だが、確信もっていえるかは微妙。

No.7 6点 nukkam
(2016/09/06 19:06登録)
(ネタバレなしです) 1964年発表のミス・マープルシリーズ第9作にあたる本格派推理小説です。大勢のリゾート客が訪れる西インド諸島を舞台にしており、もう少し異国の雰囲気が描けていればなあとは思いますがミステリーとしてのツボはしっかり抑えてあって1960年代の作品の中ではいい出来映えだと思います。作中でミス・マープルが「こんな簡単なことなのに」と述懐していますが、私は過去の作品で使われている騙しのテクニックにまたまたやられてしまった自分を再発見する羽目になってしまいました。

No.6 6点 了然和尚
(2015/12/17 12:14登録)
前半はクリスティーものあるいは翻訳物の特色として、やたらカタカナ名前が乱発し、しかも本作は登場人物紹介が関係者11名がひとくくりで「帯在客」となってたりします。比較的早く事件が起こるのが救いですが、なんかアウェー感みたいな読みにくさです。(マープルの心情?)それが、中盤からスピードアップして、ぐんぐん面白くなり300ページとは思えない充実感で終わります。この立体感を感じる構成がどこまで作者の意図なのか偶然なのか興味のあるとこです。平凡な内容にもかかわらず、比較的皆さんの評価が高いので、作者の実力なんでしょうね。

No.5 6点 クリスティ再読
(2015/11/22 22:16登録)
評者意外に本作の批評は難航したんだ...後期クリスティは好物なんだけども本作の意義ってもう一つ説明しずらいんだよね。
どうもこういうことなんじゃないかと思う:後期のクリスティって「これがどういう話なのか」の手のうちを明かさずに進行して、登場人物たちは正直に問題をなかなか打ち明けてくれない。そこらへん「お話のご都合主義」に沿っていなくて、誰がキーパーソンなのか全然わからないように進行するわけだ。
だから登場人物たちは皆暗い内面を抱えたまま、断片的にしか事情を明かしてくれないまま、マープルは登場人物が喋った内容よりも、ちょっとした「感触(Tact)」みたいなことをベースにいろいろと想像していくことになる....不透明な人々が不透明なままに交錯するドラマみたいなことになるわけだ。で、本作だと特に、SEXの問題がその背景にいろいろと絡んでいるわけで、クリスティって言われるほどに「ヴィクトリア朝的」でもないわけである....
というわけで、本作はパズラー的に読むと全然面白くないと思うけど、そういう不透明な登場人物たちや、それを断罪するマープルの非情さとか考え合わせると、ハードボイルドと呼べるような感覚があるように思える。まあ、本作よりも続編の「復讐の女神」の方がずっとこの感覚は苛烈になるので、併せて読まないとダメな気もするね。

No.4 7点 あびびび
(2013/12/28 11:42登録)
ある人物を見て驚愕の表情、それが死に至る原因となるのはクリスティーの常套手段?だが、当然のごとくその相手が誰だか分からない。

西インド諸島のリゾートホテルで起こる事件はどこか開放的で大胆だが、立場も行動も犯人らしくない人間が犯人なのはいつもの通り。それでいて読む人を飽きさせず、ついつい朝まで読ませてしまうストリー進行はさすがの手腕だと思う。

No.3 6点 makomako
(2012/10/02 20:35登録)
 翻訳物があまり好きではない。翻訳文が苦手な上に登場人物がとんでもないやつであることが多く(最近では日本の小説でもしばしば見かけるが)ぜんぜん共感できない。さらに名前が覚えられない(これは単にわたしの脳の老化かもしれないが)、男か女かも時々不明となる。こんな読者ではまず外国物は楽しめないことが多いのだが、クリスティーはかなり好きです。
 シリーズではポアロの方が好みでですがミスマープルもなかなか面白い。
 本書はマープルもそして作者も大分年寄りとなって話が丸くなっていると思いますが、さすがはクリスティーで犯人は以外できちんと論理的でもある。
 大きな山場がないがそれなりに読みやすく退屈はしない。

No.2 6点 E-BANKER
(2010/06/25 22:43登録)
ミス・マープルもの。
静養先の東インド諸島にあるリゾートホテル内で殺人事件に巻き込まれて・・・という展開。
「最初の被害者が”誰”を見て驚いたのか?」「ホテルオーナーの妻の奇妙な行動の理由は?」という2点が本作品の大きな謎として立ち塞がります。
まぁ、真相はそれほど突飛なものではなく、納得できる「意外な犯人」が指摘されるわけですが、本来なら完全に脇役的な役柄の登場人物が妙に出番が多いなぁ・・・と思ってたら「やっぱり」という感じでした。
あと、翻訳ものとしては抜群の読みやすさですね。

No.1 6点
(2009/07/09 21:28登録)
高血圧で死んだと思われた昔話好きな少佐が見たものは何だったのか、要するにそれだけの単純な問題のはずなのですが、これがなかなかわからないようにミスディレクションが工夫されています。
誰もが疑わしく思えてくるように話を組み立てておいて、解説されてみると確かにそれ以外に考えられないと納得させるオチをつけるところ、さすがと言うべきでしょう。後半になって、最初から計画されていた殺人が次に起こるのではないかというサスペンスも出てきます。第3の殺人のある意味甘さは、クリスティーらしい話の決着のつけ方だな、とも感じました。

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