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ミステリの祭典

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makomakoさんの登録情報
平均点:6.17点 書評数:895件

プロフィール| 書評

No.595 5点 誘拐犯はカラスが知っている
浅暮三文
(2018/05/20 09:19登録)
 天才動物行動学者が主人公で、動物の生態から犯罪を紐解くというかなりユニークなお話です。
 無理がある設定とは思いますが、読めばそれなりに面白い。7つの短編で全体として連作風となっています。最初の2つの話はかなり興味深いのですが、あとはもう一つかな。
 動物の生態について興味深いお話がちりばめているのですが、鳥が名画の作者の区別ができるぐらいまではびっくりでよいのですが、真贋がわかるとなるとちょっと本当?となってしまいます。
 主人公のもう一人の女性はこてこての関西弁。作者が関西人なのでこういったこととなったのでしょうが。
 私は若い頃大阪にしばらく暮らしました。当時関東の言葉でしゃべられると気取ったかなり違和感がある感じを受けたのですが、この設定は関東なのでここで、こんなこてこての関西弁でしゃべられると、ちょうど関西の方が大阪で関東言葉でしゃべられた時のような違和感があると思います。関西落語や吉本みたいな感じ。
 大阪で聞く関西弁は好きなのですが。
 関西なまり程度だときっともっと可愛い感じアップしそうです。


No.594 6点 心に雹の降りしきる
香納諒一
(2018/05/05 17:15登録)
色々な事件が起き、二転三転どころではない展開があるが、推理の要素はあまりなくハードボイルド警察小説というところでしょうか。
 こんな警官は許されるのかなあとも思いますが、まあ、ありということで読まないとやってられないかも。
 お話が二転三転するうちに犯人もいろいろ見つかり、でもなかなか真の解決ではない。サービスてんこ盛りというより詰め込み過ぎというべきと感じました。
 主人公があまり好きではない。ことにはじめのうちはいやなやつ。ここで読むのやめようかと思うほど。でもこの手の小説は読んでいくと普通はああいいやつなんだと思えてくるのですが、それがなかなか思えない。警官が唯一頼っている被害者から金を巻き上げるなんて最低。後でいくら良いように描いてもこんな最低のことをするようではしょせんダメでしょう。


No.593 7点 感染領域
くろきすがや
(2018/04/21 18:53登録)
 この作品は第18回「このミステリーがすごい」の優秀賞受賞作品です。東大出身の二人でひとつのなまえの作者として応募したとのことです。
 さすが東大出身だけあって話の内容がインテリ風。ウイルスのお話が中心となるのですが、高学歴集団には変な人がいっぱいいるなあと思わせます。
 お話の内容はウイルス学の相当専門的なところまで踏み込んだものなので、ウイルス学に興味がある私にとってはなかなか面白い。そういうといかにも難しそうですが、全くこういったことがわからなくても楽しめると思います。
 登場人物のキャラが立っていてこれも興味深い。
 ことに女性の里中は切れて冷たく、しかも有能で特別の癒し方をしてくれる(読んでのお楽しみ)素敵な女性です。
 この人がかかわるお話を是非また読みたいものです。


No.592 6点 あなたは嘘を見抜けない
菅原和也
(2018/04/15 12:28登録)
 大胆不敵な題名で、これはきっと騙されるだろうと思って読みましたが、やぱり見事に騙されました。
 なるほど、こうきたか。一応伏線らしきものも張ってありまあフェアーな方でしょうね。 メインの登場人物がちょっと神経質すぎるけどまあこういった人が主人公でないとお話が始まらないのだからよしとしましょう。
 それならもっと良い評価のはずなのですが、残念ながら開かれた密室の解決方法が納得できないままで終わっています。
 これってちょっとインチキじゃない。たぶんこの方法は無理です。そうするとこのお話は根本的になり立たないこととなってしまうのです。
 もうちょっと納得のいく方法での解決が欲しかったなあ。


No.591 5点 沈黙する女たち
麻見和史
(2018/04/15 08:15登録)
 この小説は出だしが好きではないです。死体愛好者が廃屋で死美人の写真を撮るというシーンは、上手に描ければ耽美的になるかもしれませんが、作者はそこまで筆が上手でないため、いやらしい感じが否めませんでした。
 途中からはあまり感じのよくない元刑事とメインキャラクターの元新聞記者が活躍することとなります。そのあたりはまずまず。
 でも本格推理とすればトリックはほとんどなく、犯人も一定のところまで見当がついてしまいます。後は作者がこの範囲の登場人物ならどの人を犯人としても成り立ちそう。サスペンス小説というべきでしょう。
 すごさはなくとても面白いというところまではいかないが、時間つぶし程度に読むならそれなりに良いと思います。


No.590 5点 特捜7 銃弾
麻見和史
(2018/04/10 21:24登録)
この作品は水葬の迷宮と改題されました。改題された後の作品を読んだ感想です。
両肩から切断された警察官の殺人事件が起き、拳銃が盗まれその拳銃で次々と殺人が起きる。実は20年ほど前にも同様に肩から切断された事件が起きていた。
なかなか魅力的な謎です。
登場人物もよく描かれており、謎の解明もあまり無理がない。警察小説なので、名探偵は出てこずお話はゆっくりと進んでいく。
悪くはないですね。でもこれだといったインパクトも少ないかな。だからとても面白かったというまでには至りませんでした。

以下ちょっとネタバレです。
私としては事件が解明されると、どうしても両肩切断のところが引っ掛かります。このお話の状態で両肩切断(関節から切り落とすなら離断ですが)を行うのは大変すぎますね。私は仕事の関係で経験がありますのでこれははっきり言えます。瀕死で重傷の素人には無理です。
従ってこのお話は現実としてほとんど成り立たないこととなります。
残念だなあ。これさえなければもっと高い点数があげられたのに。


No.589 5点 毎年、記憶を失う彼女の救いかた
望月拓海
(2018/04/04 17:23登録)
 記憶喪失というのは時々取り上げられるジャンルで、一定の作家、読者にとっては興味深い物と映るのでしょう。
 本作品では周期的に記憶を失うという変わった設定の女の子をどうやって救い出すかといったお話とおもっていたら、途中で相手の男のことが語られるにつれこみいったお話となってくる。
 興味津々の方も結構おられると思いますが、私はこの主人公の女性のキャラクターが好きでないので、読んでいてうっとうしくてたまらなくなった。
 よくこんなうっとうしいやつと付き合うねえ。
 もちょっとかわいい女性の主人公だったら、結構評価が高かったのに。


No.588 6点 迷路荘の惨劇
横溝正史
(2018/03/31 19:57登録)
 久しぶりに横溝氏の作品を読みました。私の若い頃には氏はまだ存命で「病院坂」などはリアルタイムで読んだ世代です。
 何十年ぶりに読むとやっぱり時代を感じますねえ。でも古き良き時代といった感じもしないでもない。
 物語には八つ墓村のような地下の洞窟が出てくるは、死体がネズミにかじられるはなかなかおどろおどろしい。
 さらに密室も出てくるし。密室トリックはちょっとしょぼいが、現実的トリックでこれは本当にやれそうです。
 こういった風にサービスてんこ盛り風ですが、やや無駄に長いところは否めません。切れ味がちょっと悪いが、でも結構面白いですよ。


No.587 4点 聖女の毒杯
井上真偽
(2018/03/04 18:16登録)
 前作が面白かったのですが、今回は私にとっては外れでした。
 前作と同じ傾向ではあるのですが、出てくる仮説がくだらないので、それをどうのこうのといっても屁理屈の繰り返し。
 こういった作品はもうたくさんで、最後のほうは退屈してしまいました。
 本格推理というべきかもしれませんが、くだらない理屈遊びに突き合せれたといった印象でした。


No.586 5点 倒叙の四季 破られたトリック
深水黎一郎
(2018/02/28 20:50登録)
これはあまり好きではありません。
ことに残酷とかいやな場面が多いといったことはなく、深水氏の作品らしく精緻できちんとした構成になっているとは思うのですが、私にはピンときませんでした。
その一つとして、これを読んだらマネをする人がいるかもしれないといった危うさがあるからかもしれません。
犯人に全くシンパシーがわかない(まあ普通殺人者にシンパシーがわくようでは困るとも言えますが、それにしてもなのです)。倒叙法で上手に犯人を描くとこんな風になってしまうのかもしれません。


No.585 7点 その可能性はすでに考えた
井上真偽
(2018/02/24 21:08登録)
このお話は結構好きです。
作者は今までの推理小説にはない切り口で、でも本格物であることは間違いないといった、極めて新鮮な方法でのお話です。
とても答えが無理と思われるような状況を作り出し、とんでもないような発想で回答を導き出し、さらにそれを否定してしまう。
くだらない理屈がばかばかしいほど述べられたお話と思われる方もあるでしょうが、それを感じさせないような登場人物のキャラクターが立っており、私は面白く読みました。
続編も出ているようなので、読んでみることとします。


No.584 5点 ずっとあなたが好きでした
歌野晶午
(2018/02/24 20:56登録)
こんな表題で歌野氏の作品なのですから、きっとすごいどんでん返しがあるのだろう、と思って読みました。当然単なる恋愛小説のわけないよね。
それにしても連作というにはあまりにつながりがなさそうなお話が並んでいるので、どうなることかと心配もしました。
最後はやっぱりといった感じでしたね。あんまり驚くことはなかった。
それにしても長いなあ。
好きな話もあるが、はっきり言って興味なさそうな話も結構ある。
連作と信じていなければ途中で放り出していたかも。
私としてはもうちょっと短くしてほしかった。


No.583 6点 恋と禁忌の述語論理
井上真偽
(2018/02/03 07:58登録)
 数理論理学という分かったような分からないような方法で物語を検証するという、確かに今まで読んだことも考えたこともない推理小説でした。
 この理論だけでやられたら読む気がしないこと請け合いですが、硯さんなる女性探偵の魅力といかにも凡人(でも秀才だな)の詠彦君の掛け合いが面白く、へんてこな数式がたくさん出てきても読むのにさほど不都合ではありませんでした。
 でもこんな屁理屈をこねくり回して実際の事件の検証をするといいうのはさすがメフィスト賞受賞作品。
 理屈の割には解決が人間的なところがよいですね。
 ただしほかの方も指摘されていたように、本格推理小説としてはトリックが甘いところがあります。これ程の理論で勝負しているのですから、偶然に頼っているトリックは無理があるとされてしまいそうです。


No.582 5点 遠まわりする雛
米澤穂信
(2018/01/28 17:50登録)
 古典部シリーズは3部までは続けて読んだのですが、この作品は短編集ということもあって何となく読まずにいました。
 今回久しぶりにこの古典部を読んだのですが、設定をかなり忘れてしまっていて、初めのうちはちょっと変な感じでしたが、読み進むにつれだんだん思い出してくると違和感はとれました。
 でも肝心の内容はミステリーとしてはかなり薄味。大したなぞもなければ鮮やかな解決もない。
 古典部シリーズの愛読者にとっては登場人物たちの厚みが増して一層楽しく読めるようになるのでしょうが、このシリーズを読んでいない読者がこれ単独で読むとしたらかなり平凡なお話でしょうね。
 


No.581 5点 死と砂時計
鳥飼否宇
(2018/01/13 20:11登録)
 5点としたのは一番最後の確定囚アランイケダの真実がよかったからで、私の採点はこれがなかったらさらに低い点数となったと思います。
 皆さんが評価されている魔王シャヴォ・ドルマヤンの密室は残念ながら絶対成り立ちません。発想としては面白いのですが、この方面の仕事をしている私にとって現実にはこれはあり得ないことがわかってしまっているので、がっくりです。
 こんなことが成り立つとよかったのですがね。
 2番目のチェンウェイツのお話もまずむつかしそうですね。これ程の人望があって国家からにらまれるほどの人物なら、こういったことにはなりそうもないように思います。
 後の話はぼちぼちですが、最後のアランイケダはどんでん返しにびっくり。
 鳥飼氏もなかなか人が悪いことがわかりました。


No.580 8点 屍人荘の殺人
今村昌弘
(2018/01/03 10:19登録)
 これは面白かった。久しぶりに一気読みしました。まさに読み始めたらやめられないお話です。
 映画作品と現実(お話の中の現実ですが)が同一視されるなど、かなり無茶な設定があるのですが、これがほとんど気にならない。作者の力があるのでしょう。
 このお話はいかにも続編が書けそうです。
 期待しています。


No.579 6点 蘇る殺人者 天久鷹央の事件カルテ
知念実希人
(2017/12/31 10:57登録)
 このシリーズは名探偵で医師の天久があまりにも傍若無人で、なじみにくいところがありますが、今回はなかなか凝ったお話で、それなりに楽しめました。
 こんなストーリーは医者ならではでしょう。途中で何となく犯人はわかってしまいますが、からくりはめったなことでは分からない。
 それにしても天久は言葉使いが悪すぎ。私にはちょっと気になるといった程度ではないのです。
 でもこのシリーズの初めのころよりだんだんお話が優しい感じとなってきているのは好感が持てます。
 最後はなんだか優しい気分で、読後感は良いです。


No.578 5点 名探偵の証明
市川哲也
(2017/12/30 09:19登録)
 はじめはなかなか面白いのです。
 引退同然に引きこもっている名探偵が蜜柑花子というダサい名前の高校生名探偵と対決。ところが、蜜柑は名探偵屋敷の大ファンだった。
 そしてとんでもない密室殺人が勃発。とても解けそうもないとおもわれた。

以下ちょっとネタバレ。読まれてもトリックなどが開かされているのではありませんので大丈夫と思いますが。

 さんざん考えて屋敷は真相を解き明かすが、実は蜜柑はすぐに解いてしまっていた。屋敷がなかなか解けないのでヒントめいた言葉を出していたことがわかり、引退することとした。
 これで終わりのようだが、なぜか未だ終了までかなりページがある。
 ただ、いろいろな話が続くのですが、まあ最後のほうはあまりぱっとしない。
 密室トリックも絶対無理がありますね。どんなに練習してもこうはいかんよ。


No.577 5点 アンデッドガール・マーダーファルス1
青崎有吾
(2017/12/26 20:04登録)
 推理小説はしょせんほとんどありえない世界のお遊びといってしまえばそれまでなのですが、私は現実との交差点が乏しいお話はあまり好みではありません。
 このお話はあり得ない設定のルール上で起きうる推理小説ということになるのでしょうか。
 作者の青春推理小説に非常に期待していたものとしては、違和感がぬぐえませんでした。


No.576 4点 神の時空 前紀 女神の功罪
高田崇史
(2017/12/20 19:58登録)
 神の時空はもう終わったのだが何故か新しいのが発行された。みると前記と書かれている。確かにこのシリーズはなぜこんな話が始まったのかがよくわからないところがあるので、きっとそのためのものだろうと思い購入しました。
 ところが話の始まりを示すような展開はあまりなく、シリーズの中心となる人物も最後にちょろっと出るだけで、全くの期待外れでした。本に入っていた栞に登場人物の説明があるのですが、これら人物は全く出てこず以後の話のために作った栞を流用しただけという手抜き。
 こんなことしていてよいのでしょうか。
 このシリーズが好きな読者でも買って読むほどの価値はなさそうです。

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