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ミステリの祭典

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makomakoさんの登録情報
平均点:6.17点 書評数:887件

プロフィール| 書評

No.587 4点 聖女の毒杯
井上真偽
(2018/03/04 18:16登録)
 前作が面白かったのですが、今回は私にとっては外れでした。
 前作と同じ傾向ではあるのですが、出てくる仮説がくだらないので、それをどうのこうのといっても屁理屈の繰り返し。
 こういった作品はもうたくさんで、最後のほうは退屈してしまいました。
 本格推理というべきかもしれませんが、くだらない理屈遊びに突き合せれたといった印象でした。


No.586 5点 倒叙の四季 破られたトリック
深水黎一郎
(2018/02/28 20:50登録)
これはあまり好きではありません。
ことに残酷とかいやな場面が多いといったことはなく、深水氏の作品らしく精緻できちんとした構成になっているとは思うのですが、私にはピンときませんでした。
その一つとして、これを読んだらマネをする人がいるかもしれないといった危うさがあるからかもしれません。
犯人に全くシンパシーがわかない(まあ普通殺人者にシンパシーがわくようでは困るとも言えますが、それにしてもなのです)。倒叙法で上手に犯人を描くとこんな風になってしまうのかもしれません。


No.585 7点 その可能性はすでに考えた
井上真偽
(2018/02/24 21:08登録)
このお話は結構好きです。
作者は今までの推理小説にはない切り口で、でも本格物であることは間違いないといった、極めて新鮮な方法でのお話です。
とても答えが無理と思われるような状況を作り出し、とんでもないような発想で回答を導き出し、さらにそれを否定してしまう。
くだらない理屈がばかばかしいほど述べられたお話と思われる方もあるでしょうが、それを感じさせないような登場人物のキャラクターが立っており、私は面白く読みました。
続編も出ているようなので、読んでみることとします。


No.584 5点 ずっとあなたが好きでした
歌野晶午
(2018/02/24 20:56登録)
こんな表題で歌野氏の作品なのですから、きっとすごいどんでん返しがあるのだろう、と思って読みました。当然単なる恋愛小説のわけないよね。
それにしても連作というにはあまりにつながりがなさそうなお話が並んでいるので、どうなることかと心配もしました。
最後はやっぱりといった感じでしたね。あんまり驚くことはなかった。
それにしても長いなあ。
好きな話もあるが、はっきり言って興味なさそうな話も結構ある。
連作と信じていなければ途中で放り出していたかも。
私としてはもうちょっと短くしてほしかった。


No.583 6点 恋と禁忌の述語論理
井上真偽
(2018/02/03 07:58登録)
 数理論理学という分かったような分からないような方法で物語を検証するという、確かに今まで読んだことも考えたこともない推理小説でした。
 この理論だけでやられたら読む気がしないこと請け合いですが、硯さんなる女性探偵の魅力といかにも凡人(でも秀才だな)の詠彦君の掛け合いが面白く、へんてこな数式がたくさん出てきても読むのにさほど不都合ではありませんでした。
 でもこんな屁理屈をこねくり回して実際の事件の検証をするといいうのはさすがメフィスト賞受賞作品。
 理屈の割には解決が人間的なところがよいですね。
 ただしほかの方も指摘されていたように、本格推理小説としてはトリックが甘いところがあります。これ程の理論で勝負しているのですから、偶然に頼っているトリックは無理があるとされてしまいそうです。


No.582 5点 遠まわりする雛
米澤穂信
(2018/01/28 17:50登録)
 古典部シリーズは3部までは続けて読んだのですが、この作品は短編集ということもあって何となく読まずにいました。
 今回久しぶりにこの古典部を読んだのですが、設定をかなり忘れてしまっていて、初めのうちはちょっと変な感じでしたが、読み進むにつれだんだん思い出してくると違和感はとれました。
 でも肝心の内容はミステリーとしてはかなり薄味。大したなぞもなければ鮮やかな解決もない。
 古典部シリーズの愛読者にとっては登場人物たちの厚みが増して一層楽しく読めるようになるのでしょうが、このシリーズを読んでいない読者がこれ単独で読むとしたらかなり平凡なお話でしょうね。
 


No.581 5点 死と砂時計
鳥飼否宇
(2018/01/13 20:11登録)
 5点としたのは一番最後の確定囚アランイケダの真実がよかったからで、私の採点はこれがなかったらさらに低い点数となったと思います。
 皆さんが評価されている魔王シャヴォ・ドルマヤンの密室は残念ながら絶対成り立ちません。発想としては面白いのですが、この方面の仕事をしている私にとって現実にはこれはあり得ないことがわかってしまっているので、がっくりです。
 こんなことが成り立つとよかったのですがね。
 2番目のチェンウェイツのお話もまずむつかしそうですね。これ程の人望があって国家からにらまれるほどの人物なら、こういったことにはなりそうもないように思います。
 後の話はぼちぼちですが、最後のアランイケダはどんでん返しにびっくり。
 鳥飼氏もなかなか人が悪いことがわかりました。


No.580 8点 屍人荘の殺人
今村昌弘
(2018/01/03 10:19登録)
 これは面白かった。久しぶりに一気読みしました。まさに読み始めたらやめられないお話です。
 映画作品と現実(お話の中の現実ですが)が同一視されるなど、かなり無茶な設定があるのですが、これがほとんど気にならない。作者の力があるのでしょう。
 このお話はいかにも続編が書けそうです。
 期待しています。


No.579 6点 蘇る殺人者 天久鷹央の事件カルテ
知念実希人
(2017/12/31 10:57登録)
 このシリーズは名探偵で医師の天久があまりにも傍若無人で、なじみにくいところがありますが、今回はなかなか凝ったお話で、それなりに楽しめました。
 こんなストーリーは医者ならではでしょう。途中で何となく犯人はわかってしまいますが、からくりはめったなことでは分からない。
 それにしても天久は言葉使いが悪すぎ。私にはちょっと気になるといった程度ではないのです。
 でもこのシリーズの初めのころよりだんだんお話が優しい感じとなってきているのは好感が持てます。
 最後はなんだか優しい気分で、読後感は良いです。


No.578 5点 名探偵の証明
市川哲也
(2017/12/30 09:19登録)
 はじめはなかなか面白いのです。
 引退同然に引きこもっている名探偵が蜜柑花子というダサい名前の高校生名探偵と対決。ところが、蜜柑は名探偵屋敷の大ファンだった。
 そしてとんでもない密室殺人が勃発。とても解けそうもないとおもわれた。

以下ちょっとネタバレ。読まれてもトリックなどが開かされているのではありませんので大丈夫と思いますが。

 さんざん考えて屋敷は真相を解き明かすが、実は蜜柑はすぐに解いてしまっていた。屋敷がなかなか解けないのでヒントめいた言葉を出していたことがわかり、引退することとした。
 これで終わりのようだが、なぜか未だ終了までかなりページがある。
 ただ、いろいろな話が続くのですが、まあ最後のほうはあまりぱっとしない。
 密室トリックも絶対無理がありますね。どんなに練習してもこうはいかんよ。


No.577 5点 アンデッドガール・マーダーファルス1
青崎有吾
(2017/12/26 20:04登録)
 推理小説はしょせんほとんどありえない世界のお遊びといってしまえばそれまでなのですが、私は現実との交差点が乏しいお話はあまり好みではありません。
 このお話はあり得ない設定のルール上で起きうる推理小説ということになるのでしょうか。
 作者の青春推理小説に非常に期待していたものとしては、違和感がぬぐえませんでした。


No.576 4点 神の時空 前紀 女神の功罪
高田崇史
(2017/12/20 19:58登録)
 神の時空はもう終わったのだが何故か新しいのが発行された。みると前記と書かれている。確かにこのシリーズはなぜこんな話が始まったのかがよくわからないところがあるので、きっとそのためのものだろうと思い購入しました。
 ところが話の始まりを示すような展開はあまりなく、シリーズの中心となる人物も最後にちょろっと出るだけで、全くの期待外れでした。本に入っていた栞に登場人物の説明があるのですが、これら人物は全く出てこず以後の話のために作った栞を流用しただけという手抜き。
 こんなことしていてよいのでしょうか。
 このシリーズが好きな読者でも買って読むほどの価値はなさそうです。


No.575 6点 探偵が早すぎる
井上真偽
(2017/12/17 11:19登録)
 推理小説の名探偵は事件発生を防げないという、本格推理小説のお約束事を破ったお話です。
 犯罪を犯そうとする人が次々と登場しいろいろなトリックが出てくる。名探偵はそれを事前に見破ってたくらんだ犯人へしっぺ返しする。なかなか面白い発想です。
 一応長編小説ですが、連作小説を組み合わせたような形態です。犯罪をたくらむ人物たちは、およそ人間的感情を持たない異常な人ばかり。狙われる人物は逆に感情が先走る普通のお嬢様。親戚が全員これほど多分先天的に異常な家族にひとだけまともな人間が生まれるだろうかなどとなどは思わないで読んでいけば、作者の切れ味の良い頭から作り出されたお話はまあ楽しめます。
 でもやっぱり推理小説のお約束が外れるというのは若干変な感じがしました。 銭形平次が投げた銭が外れて犯人が逃げましたといった感じです。


No.574 6点 QED ~ortus~ 白山の頻闇
高田崇史
(2017/12/07 21:30登録)
 もう終わってしまったと思っていたQEDシリーズが新たに出たということでさっそく読みました。
 QEDの愛読者なら奈々ちゃんのその後と学生時代に出会えて楽しいのですが、
そうでないならなんだか七めんどくさい屁理屈と、それを無理やり事件と合わせた内容と感じるかもしれません。
 ずっとこのシリーズを楽しんできたものにとってはそれなりに楽しめました。


No.573 5点 白い僧院の殺人
カーター・ディクスン
(2017/12/03 08:59登録)
 この小説はかなり読みにくくちょっとずつ読んでいくとなんだか意味不明となりちょっと前から読み返す、といった読み方で何とか読破しました。翻訳のせいかもしれませんが、ほかの評価にも出ていましたが、見取り図のようなものがあればもっとわかりやすかったと思います。
 江戸川乱歩が密室トリックとして評価していたとのことです。確かに雪に囲まれた密室で、足跡は発見者のものしかないとなると不可能犯罪この上ないのですが、種明かしされると拍子抜けするほど簡単な方法。でも確かにこれで無理なく密室は出来上がるのでしょう。


No.572 6点 風ヶ丘五十円玉祭りの謎
青崎有吾
(2017/11/19 08:34登録)
この短編集は作者の体育館の殺人、水族館の殺人を読んでからでないと、興味が半減しそうですので、まずこれらを読んでから手にされることをお勧めします。勿論最新作の図書館の殺人を読んでからでもよいです。大変すばらしい作品ですので本格物が好きな方は読んで損はないと思います。
 話がこれらの登場人物のキャラクターの深掘りといった趣もあるので、読んでからだと、なかなか面白く読めます。
 謎解きとしては大したことはなく軽いお話です。したがって無理な推理などと野暮なことは言わないで読みましょう。
 いつのまにか袴田妹の柚乃ちゃんがかわいくなっています。扉の絵も素敵です。こんな感覚で読むのならそれなりに面白い。
 本格推理の希望の星の作品だと思って読むとちょっと拍子抜けしそうです。


No.571 7点 図書館の殺人
青崎有吾
(2017/11/12 12:24登録)
 このシリーズも3作目となり、登場人物のキャラクターが読み初めからわかってくるにつれ、より楽しめるようになりました。
 天馬の推理は今回もさえて、悩みながら少しずつ真相に迫て行く姿はまさにクイーンといったところでしょう。さらにひとめ見て色々なことを当ててしまうのはシャーロックホームズみたい(この作者だと「みたく」)でもありますね。
 3作続けてこういった作品を書けるというのは本当にすばらしい才能と思います。
 次作がとても楽しみです。
 ただし気になっている点もあります。
 ほかの方も書いておられるように犯人が意外過ぎて、犯行に至る現実味が乏しくその後の態度もこんな状態でいるはずもないところです。いくら理論的に詰めていったといっても、この人がやったとしたらその後もっとおかしくなるんじゃないかなあ。勿論推理小説なので、態度様相の変化で簡単に犯人がわかってはいけないのではありますが、ちょっとひどすぎるように思います。この傾向はこのシリーズ1作目からも感じていたものですが、今回が一番ひどかった。
 もうひとつ。
 会話や描写が「いまふう」なのはある程度認めますが、「いまふう」というのは後の世代の人が読んだら古臭く感じるような表現となりそうです。関東の方言のような「みたく」もやめていただきたいですね。この作家は将来推理小説の古典となりうる作品を書き上げる可能性を秘めていると思いますので、あえて苦言を呈しておきます。


No.570 6点 幻夏
太田愛
(2017/11/11 08:11登録)
 かなりの力作でした。冤罪による被害があからさまに描かれて入れ、日本の司法に対する大いなる不信を描き出していると思います。
 ただ全体にとても暗い。冤罪による家族の悲劇を描いているのですから暗くなるのは当然といえますが、それにしても暗い。救いようがない。
 読んでいると気分が落ち込みます。
 私はあまり好みではないですが、社会問題を考えるといった方にはとても良いのかもしれません。
 文章はそれなりに練れていると思いますが、気になる表現がところどころあります。
 ことにいけないのは主人公の一人の警察官である相馬が、「刑事課から交通課に左遷された」はいただけませんね。なんと解説の佐久間文子さんも同じように書いているのですが、交通課って刑事課より下で左遷なんだ。今度交通課の人が取り締まりやっていたら「あんたは刑事課から左遷されたの?」って聞いてみよう。
 


No.569 6点 サナキの森
彩藤アザミ
(2017/11/03 20:16登録)
 いきなり古い文体のお話が登場して、すぐ後から現代語となるといった展開はそれほど珍しいものではないと思いますが、されをうまく絡ませて展開しているところはなかなか良かったと思います。
 主人公が女性が書く女性で、セックスアッピールに乏い。こんな女性はわかっている男から見ればいじらしくて魅力的なのですが、もう一つそれが伝わってきません。対する美少女も目が真っ赤で気味悪いなんて。男が書けば絶対そんなャラクターにせず、奔放な美少女にするところでしょうがねえ。
 密室事件としてのトリックは単純で、確かにこういった小説を読みなれている人にとっては種がわかりやすいようにも思いますが、私としては興味深く読みました。次作に期待します。


No.568 8点 水族館の殺人
青崎有吾
(2017/10/30 20:25登録)
 作者は平成のクイーンといわれているそうですが、この作品を読むとまさにクイーンですね。
 たくさん登場人物が出てきて、ほとんど完全犯罪みたいで、手がかりは実に小さなところからであり、探偵が少しずつ論理を積み上げてついに犯人指摘に至るといったところはクイーンそのものといった感じ。
 さらに若き現代日本人が書いているので、感情の移入がしやすく、はるかに読みやすい。登場人物も探偵はともかく相手役の柚乃ちゃんなんかはかわいいねえ。ファンになってしまいました。
 こういった作品はきっと書くのが大変だと思いますが、作者は前作の体育館の殺人よりさらに強烈な殺人現場を用意したうえで、さらに精緻な論理をくみ上げています。すごい才能だと感じました。

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