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ミステリの祭典

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makomakoさんの登録情報
平均点:6.17点 書評数:895件

プロフィール| 書評

No.615 7点 死が招く
ポール・アルテ
(2018/12/07 21:22登録)
これはなかなか面白い。殺人の設定が異常なので、こんなばかばかしい話には付き合いきれないといった人も出てくるとは思いますが、本格物が好きな私にはとても面白くどんどん読めました。
 登場人物が少ないので犯人は用意の想像がつきそうだが、どっこいそうはいかなかった。意外な結果にびっくりでした。
 密室ものとしてトリックもまあ何とかなっとくできうる状態です。こういった作品では挿絵などがあるとさらにわかりやすくなると思います。
 本格物が好きなら楽しめると思います。


No.614 5点 静かな炎天
若竹七海
(2018/12/07 21:13登録)
 この短編集は評判が良いようです。確かに話の作りがきちんとしているし、短編の中に複雑な内容がぎっしり詰まっているといった感じなのです。
 私は人の名前を覚えるのが苦手で、最近は年のせいでさらにその傾向が強くなり、本作品のように名前だけが出てきて、その人の外見や特徴の描写が少ないと誰がどうなのかがわからなくなってしまうのです。せっかく凝った内容なのに何が何だかわからなくなってしまいました。
 葉村晶についてもなかなか魅力的なキャラクターなのですが、容貌がどんな感じなのか、スタイルはどうなのか(多分あまりすぐれないようなのですが)胸はどうなのか、足の形は良いのだろうかなど男にとってはかなり気になるところが、ほとんど述べられていませんので彼女の具体的なイメージがややわきにくいのです。
 私の記憶力が悪いのが原因と思いますが、せっかくの作品があまり楽しめませんでした。こんなに濃い内容なら長編にして、人物の描写をもっと加えてもらえたらずっと楽しめたと思います。


No.613 8点 カササギ殺人事件
アンソニー・ホロヴィッツ
(2018/11/25 19:56登録)
 久しぶりによい本格物を読んだという印象です。かなりの長編で2部構成となっており、作中作である第1部が唐突な終わり方をして、あれれと思って下巻(文庫本では上下2冊の構成なのです)を読むと、作中作は終わって急に現代のお話となってしまう。複雑なお話となってくるのですが、最終的には作中作も現代のお話も結論がちゃんと述べられている。なかなか面白いですよ。
 上巻は作中作のお話で、最初は無害な田舎の人物ばかりのように思えていたが、実はほとんどの登場人物が怪しげで、犯人の資格ありということとなったところで、名探偵は犯人を指名するといった心躍る場面に差し掛かった。ところが解決編が何者かに隠しとられている。この解決に下巻の大半が消費されるのです。これだけ長く話が続いていると鈍感な私でも犯人を推理してしまうのです。
 名探偵は意外な人物を犯人として指摘して、その理由をきちんと述べます。ああなるほどと思うのですが、この結末はほかの人が犯人でも十分に書くことができそうです。つまり名探偵の指摘は可能性を述べているだけで、その人以外は犯人であり得ないといったところが抜けているように思います。
 非常に面白いお話でしたが、多少減点としたのはこの理由によります。


No.612 6点 カーテンの陰の死
ポール・アルテ
(2018/11/05 21:12登録)
 ツイスト博士シリーズの中ではちょっと評価が低いようですが、私は結構楽しめました。全く不可能と思われる殺人事件が、時代を大きく過ぎて起きてしまう。どんなに考えても絶対無理そうなシチュエーションでの殺人事件です。確かにトリックを語られると、ああそうですか、ううーん。とはなるのですが、少なくても赤ひげ王の呪いよりは良いです。
 絶対無理そうな犯罪を見事に?解決しているのですからまあ良しとしましょうよ。
 こういったお話は好き嫌いがはっきりと分かれると思いますが、私は好みですね。


No.611 6点 錆びた滑車
若竹七海
(2018/11/03 08:13登録)
 葉村晶シリーズの最新作。このシリーズは次々と発行されるわけではなく、ぽつぽつとでも途切れることなく発表されています。地味目ですがファンがしっかりいるのでしょう(私もその一人です)。
 相変わらず葉村は貧乏で男の姿は見えません。素敵な女性なのにねえ。運は悪く今回はことにひどい。けがをして病院へ運ばれることも1度ならずあり、探偵の報酬より余分にお金を取られ、ぼろぼろのままで仕事に戻らざるを得ない。それを周囲にたたかれ、まことにお気の毒です。
 最後には真相に至るのですが、実に複雑なお話です。きちんと伏線も張ってある立派な本格物です。こういった本格物は登場人物、ことに探偵が異常な性格であることが多く、これが殺伐としたお話なのに現実感が乏しく、話として楽しめる一つの要素なのかもしれない。
 ところがこのシリーズは本格物なのに実に普通の女性が探偵なので、スラスラと読んで作者が工夫を凝らした(と思われる)伏線を読みとばしてしまう。再読にたえる良い作品と思います。


No.610 5点 赤髯王の呪い
ポール・アルテ
(2018/10/27 07:35登録)
「第4の窓」が面白かったのでさっそく違う作品をと、読んでみましたが、これはちょっと外れでした。
 はじめに、悲惨で複雑なアルザスの歴史が語られ、そこの中での不可解な出来事が赤ひげ王の呪いとして出てきます。いずれの事件も真相は究明されておらず、謎となっている。絶対解けそうもないものばかり。これをツイスト博士はちょっと聞いただけで、あっさりと解いてしまいます。


以下多少ネタバレです。

その内容たるや実にばかばかしくまじめに考えて損した気分となります。さらに主人公にかかった疑惑もあっさり解消。いくら何でもこんなに簡単に事件解決では拍子抜けしてしまう。その後のお話はまた一転急展開。フランス人のドイツ人への嫌悪感があふれ、アルザス地方のフランスから見た世界が広がります。ドイツの友人は全く違う見方をしていたなあ。アルザス出身の友人もまた全く違う見方だったなあ。などと思いながら読みました。


No.609 3点 去年の冬、きみと別れ
中村文則
(2018/10/27 07:21登録)
 こういった小説は登場人物にある程度の親和性がないと、全く楽しめないと思います。
 私には全然ダメでした。
 短い小説なのに、とても長く感じられ最後まできちんと読む気がしませんでした。
 


No.608 7点 インド倶楽部の謎
有栖川有栖
(2018/10/20 20:26登録)
 国名シリーズは短編集が多いようですが、これは長編小説です。読みごたえは十分にあり、最近の作者の充実ぶりを裏切らない出だしです。
 全体によくできた小説と思いますが、私にとっては信じがたい理由での解決、名探偵火村自身も全く信じていない理由による解決には違和感を感じました。
 すべての可能性を否定しないのが科学的といえるとは思うのですが、ここまでとなるとちょっとねえ。
 でも力作であることは間違いなく、かなり楽しめました。
 

 作者への希望。
これほど力が充実しているのですから是非学生アリスシリーズの完結編をお願いしたいですね。


No.607 7点 白の恐怖
鮎川哲也
(2018/10/14 08:50登録)
 鮎川氏は若い頃に推理小説の魅力を教えてくれた方で、新作が発表されるごとにほとんどの作品を読んだと思っていましたが、この作品はたまたま読む機会がなかったものです。今回新しく文庫化されたのでさっそく読みました。
 ああ懐かしいなあというのがまずの印象。
 私にとってはとても読みやすい。
 いかにもといった設定でいかにもといったお話がくりひろげられます。昔の私なら犯人は想像もつかないところですが、長く本格物を読んだひねくれものとなってしまったので、犯人は容易に推定できました。 
 当然作者もそのことは分かっているため、最後はほとんどの読者がびっくりするような仕掛けをしています。ただしこれは話の本筋から言うとおまけのようなもので、おまけで本体の評価はできないでしょう。
 懐かしい作家さんなのでちょっと評価は甘いです。


No.606 4点 盲目の理髪師
ジョン・ディクスン・カー
(2018/10/06 07:49登録)
 この作品は私には合いませんでした。ドタバタ劇があまりにばかばかしく、かなり非現実的で一体何が起こっているかすら不明な展開。
 これが謎に満ちたお話なら良いのですが、語っている本人が何もわかっていない状況で、それを聞いただけで名探偵がこの場の中からの推理を行うといった設定。
 こんなことってありえます?事件の次第を話している人がいろいろな人のしゃべった言葉を一字一句間違えずに覚えていて、名探偵がそこの細かい言葉から犯人を推理するなんて。
 安楽椅子探偵ものはこういった要素は必ず含まれるものですが、個々の表現から(ご丁寧にしゃべったところのページまで記載してありました)、といっても普通内容全体のことなら納得できますが、しゃべった単語からの推理となると無理がありすぎでしょう。
 


No.605 4点 牧神の影
ヘレン・マクロイ
(2018/09/22 08:36登録)
マクロイの代表作の一つとされているそうです。この小説は暗号解読とサスペンスと推理が盛り込まれた力作です。というととてもよさそうに思えましたので読んでみたのですが、うーん確かに暗号は飛躍的に進歩したようです。ポーのような暗号では現実として簡単に解読されてしまうのでしょう。だからこのような複雑な暗号作成が必要であることは認めますが、普通の読者にとってあまりにも専門的で複雑すぎます。さらに解いた暗号が当然英語になるのですから日本人にとっては二重の暗号みたいになります。英語が母国語の人なら多少はましかもしれない。
 実際何ページにもわたる暗号表が出てきて、これを複雑にいじって、となるとほとんどの人がお手上げとなりそうです(もちろん私もその一人)。途中から暗号解読のところは読み飛ばしてようやく読破となりました。
 これを読むと暗号小説は現代の時代設定では読む側がよほどのマニアでないと無理なのだとわかります。
 鉄道や飛行機を使ったアリバイ崩しなども、専門家が見たら一目でわかるし、最近のアプリならすぐ検索出来てしまいそうですが、お話の世界としての約束事みたいなものですから楽しく読めるのでは。
 主人公はこんな怖くて辺鄙なところにどうしてたった一人で何日も住むのか。私なら一日で帰ってしまいそうですが。
 丁寧に書いた作品なのだと思いますが、暗号のマニア以外はお勧めできそうもないと思います。


No.604 8点 第四の扉
ポール・アルテ
(2018/09/15 07:28登録)
 ポール・アルテは初めて読みました。フランス人でカーのファンという触れ込みどおり、怪奇趣味や、密室がてんこ盛り。
 やー、これって大好きなお話だなあ。ワクワク感いっぱい。おもしろい。
 読んでいてこれで本当にちゃんと解決できるかと心配になるほどでしたが、まあある面で解決しており、これはこれで良しとすべきなのでしょう。

以下少しネタバレを含みます。
 ただ密室の謎の一部はちょっとインチキだなあ。もともと解決していたとすべき状態をそうでないように見せかけてやっぱりことに謎ではなかったというのは
どうかと思います。さらに最後のどんでん返しはちょっとびっくりしたのですが、登場人物の最後の行動や行く末がはっきりしないところがあり、この辺りがすっきりすれば最高の点数を差し上げたいところです。いずれにせよ久しぶりに出会った本格推理小説で、作者のほかの作品も是非読んでみます。
 


No.603 6点 文豪Aの時代錯誤な推理
森晶麿
(2018/08/26 17:03登録)
 森氏の小説は初めて読みました。題名から見て本格推理小説と思って購入しましたが、内容はファンタジーに近い作品なのでしょう。
 芥川龍之介が自殺したが、その後現代にタイムスリップしたような設定です。
 羅生門が絡んだお話が展開しますが、羅生門を読んでいなくても困ることはなく、十分楽しめると思います。
 推理小説としてはちょっと甘いですが、ファンタジーの中での推理ということでしたら十分許容範囲と思います。
 読んでいると芥川の時代の人が現代に飛び込むとなるほどこんなことになるのだと納得しつつ、当時の男性と女性の関係は現代と大きく違っているのだなあと再確認されます。
 ただひとつ。最後のほうで多分河童の話のようなところが出てきますが、これは唐突で余分でしょう。


No.602 7点 そしてミランダを殺す
ピーター・スワンソン
(2018/08/13 20:13登録)
お話としてはとんでもない性格の女が次々と殺人をしていく。相手の女もとんでもない性格。主人公の女は二人ともサイコパスのようです。通常は理解不能と思われるのですが、この二人の女性が魅力的に描かれており、馬鹿な男どもは見事に引っかかり、殺しの道具とされたりさっさと殺されたり。よく考えるとひどい話なのですが、読んでいるときはあまり嫌な感じがしません。どちらかというとサイコパス的女性の考えが何となく理解できるような感じになってしまいます。
 しかも主人公は最終的にうまく切り抜けてしまうと思わせるのですが、何とな陽がいっぱい」風の終わり方をしてしまいました。いくら何でもこれで幸せに暮らしたらいかんでしょう。
 主人公に共感ができるということには決してならないと思いますが、嫌悪感を抱かずに読めてしまう不思議な小説でした。


No.601 5点 UFO大通り
島田荘司
(2018/07/22 17:10登録)
二つの中編とも常人にはとても考えられないような出来事と解決なのです。
表題のUFO大通りは常識では考えられない設定を御手洗がいとも簡単に解いてみせます。こんなお話を本格推理として成り立たせようとするとどうしても相当の無理が生じます。これしかないといった合理的な解決方法ではなく、こういったことも否定はできないといったことでもよいという建前の上で成り立っているように感じます。まさに風が吹けば桶屋が儲かるといった感じですね。
 2作目の傘を折る女は御手洗の推理過程がよく分かりそれなりに興味深いものですが、よくもこう屁理屈が思いつきしかもそれが正鵠を得ているという、いわばご都合主義的なお話ですね。
 これが面白く感じるかばかばかしいかは読者の好みの問題でしょうが。


No.600 6点 遠い国からきた少年
樋口有介
(2018/07/16 10:42登録)
 風町サエは「猿の悲しみ」で登場したキャラクターと思いますが、シリーズ化されていくようで今回もサエのお話。
 作者の作品のお楽しみの一つとして、ちょっとした合間に出てくる風景描写があるのですが、猿の悲しみではそれがちょっと不足気味で物足りなかった。それが本作は十分味わえました。
この作品は初め「笑う少年」と題していたのをこの題名としたものともことです。本作の題名のほうがずっと良いなあ。
 相変わらずサエは強くてある意味かっこよいが、私の好みとしては男の主人公のほうが作者の本領を発揮するような気がしています。


No.599 6点 古事記異聞 鬼棲む国、出雲
高田崇史
(2018/07/06 19:19登録)
 高田氏の作品は独特の歴史観からなるものが多いが、今回は古事記と出雲伝説を絡ませた、殺人事件のお話でした。
 作品の構成はQEDシリーズに近いものがあります。歴史に興味ある女性(今回は日本史学科の大学院生)と恐ろしく歴史に詳しい助教授のお話と、猟奇的殺人事件が交互に語られて、最終的にそれが結び付くといったところはまさにQEDそのものです。
 殺人事件に関しては登場人物が少ないので、犯人は誰かといった推理小説的な面から言えば謎解きの要素は少なく、本格推理から言えば禁じ手のオカルト的な要素もあるります。
 出雲のお話としては作者は以前QEDでも触れていたことがありましたが、今回はちょっと違った解釈もあります。作者の歴史観の変化なのでしょうか。でもこういった話が好きな私には結構興味津々でした。
 シリーズものとなりそうですので、次回を期待します。


No.598 3点 サファイア
湊かなえ
(2018/06/03 20:33登録)
湊氏の小説は初めて読みました。
後ろにあった解説によると湊氏は後味が悪いためイヤミスといわれることがあるとのことです。その解説者によれば、世の中そう都合よく後味の良い事ばかりとはいかないから、後味が悪いという人に説教するなどど書いてありましたが、私はやっぱり読んで最後に不快になるような小説は好みではありません。
この短編集も最初のほうは結構後味が悪い。最後のほうはまあ比較的ましはありますが、初めの何篇か読んでもうやめようと思う方もきっといるでしょう。
作者がわざわざ気分が悪くなるような結末にしているように感じるのですが、なぜそんなことをするのか理解しにくい。
この作家の小説は多分もう読まないと思います。


No.597 5点 ルパンの消息
横山秀夫
(2018/05/28 20:07登録)
 なかなかの力作です。読後感も良い。
 処女作だけあって色々と考え抜かれて色々と詰めこんでありますが、比較的すっきりとまとめてあると思います。
 ただし想定があまりに非現実的です。
 犯罪が起きてから15年経ち、時効までわずか一日という設定は絶対無理があります。こんなに容疑者をしらみつぶしに捕まえて、長々と白状させるのに、本当に一日でできましょうか。警察にこれ程の能力があるなら15年間何してたの。
 さらに捕まった方も実に詳細に当時のことを述べているけど、たとえ印象的な事件ではあったけどみんなが時間体位で覚えているのは無理でしょう。
 設定ミスと思っていたら最後にどうしてもこういった設定にしなければならなかったことがわかってきます。
 でもこれはほかの方も書いておられるように明らかに蛇足でしょうね。
 


No.596 4点 ラバー・ソウル
井上夢人
(2018/05/20 09:28登録)
これはあまりに長すぎます。ビートルズのラバーソウルにある曲名全てを入れたためこんなになったのかもしれませんが、もっと短くしてもらわないと。
 ストーカーの自分勝手な屁理屈が延々と続いて不愉快になります。読んでいて何度かやめようと思ったのですが、このままやめると余計嫌な感じが残りそうで無理やり最後まで読みました。井上夢人の作品でなかったらとうの昔に読むのをやめています。
 最後のどんでん返しがあるので、もし読まれる方は不愉快でも最後まで読んでくださいね。そうすれば多少救われますが、井上夢人のファンでないならあまりお勧めはできない。

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