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ミステリの祭典

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こうさんの登録情報
平均点:6.29点 書評数:649件

プロフィール| 書評

No.429 7点 本格ミステリの王国
評論・エッセイ
(2010/03/14 00:22登録)
 今回はミステリのみのエッセイで以前のエッセイ以上に楽しめました。クイーンの未発表梗概の幻の小説化の話などこれまでに出てこなかった話も興味深かったです。
 学生アリスの未発表習作も内容はともかくアリス、望月、信長、江神などのキャラクターは発表作品に近い感じがしました。容疑者グループの人間関係はおそらく「月光ゲーム」に転用していると思います。「弊履のように捨てられた」などという月光ゲームに使われたフレーズがそのまま出てくるのも愛嬌でしょう。
 江神シリーズの今後についても言及されていましたが作者が「いつまでも続く学生の物語は滑稽」とか「学生があちこちで連続殺人に巻き込まれるのは三作でも無理がある」などと考えているのは非常に残念です。滑稽でもいいので火村シリーズを中断してでも江神シリーズをもう少し書いてほしいと個人的に思ってしまいます。内容的にはそんなに量産できないシリーズなのでしょうが。
 他にも「トリックの分類」の所など面白い一冊でした。エッセイについていえば作品以上にむらがなく安定していると思います。有栖川有栖氏のエッセイは個人的に面白いのですがエッセイの出版ペースだけは早いので「女王国の城」が出るまではエッセイと火村シリーズはいいから早く江神シリーズを書いてくれ、と思っていたのを思い出します。 


No.428 6点 花の下にて春死なむ
北森鴻
(2010/03/08 01:14登録)
 このサイトで評判が良かったので手にとってみました。個人的には同作者のメイン・ディッシュ の方が好みですがこの作品の読み心地も良かったです。ただこういう作風と強烈な謎を両立するのは難しいのだろうなと感じました。表題作以外はミステリとしては少し物足りなく感じます。遅らばせながら作者の訃報を知り読み心地のいい作品がもう読めないのは残念です。
作者の御冥福を謹んでお祈り申し上げます。


No.427 7点 首無の如き祟るもの
三津田信三
(2010/03/08 01:06登録)
 このサイトで評判が良かったので手に取った作品でした。首無しトリックはひねりがなく面白くない作品も多々ある中で独創的に処理してありとても面白かったです。
 ただ読了後、トリックに必要なため特定の人物が登場しているような印象を受けてしまいます(真相のためのいくつかの伏線には大事なのでしょうが)。
 こういうトリック、真相を読ませてくれれば大満足といえる作品でした。


No.426 4点 白馬山荘殺人事件
東野圭吾
(2010/03/08 00:56登録)
 自分も読んだ時は暗号を読み飛ばしてしまいました。作品世界は本格そのものですが面白みに欠けた覚えがあります。
 現代では暗号とか出してもまともに取り組む読者が果たしてどれだけいるだろうかと考えると作者には申し訳ない気がします。


No.425 4点 濡れた心
多岐川恭
(2010/03/08 00:44登録)
 日記形式で女子高生の同性愛をテーマにした乱歩賞受賞作でした。当時としては斬新なテーマだったと思いますしこの趣向が受けたのでしょうがミステリとしては弱くこの作品で受賞できたのが不思議な気がします。


No.424 6点 海上タクシー<ガル3号>備忘録
多島斗志之
(2010/03/08 00:36登録)
 瀬戸内海で海上タクシーで生活している中年男性寺田が主人公で助手の若い女性弓とタクシー営業をしている、という設定は二島縁起と同様の短編小説です。
 ミステリとしては読者の推理が困難なものが多く物足りないのですがハードボイルドの探偵かのような主人公の人物造形が個人的には気に入っています。
 多島斗志之氏が昨年より失踪中とのニュースがあり無事に見つかることを祈っています。 


No.423 5点 カッコウの卵は誰のもの
東野圭吾
(2010/03/08 00:30登録)
 今回はテーマに対する掘り下げ方が弱いと思います。犯人像も類型作はいくつもありますし犯人側からの行動についてはかなりのご都合主義が目につきます。
 遺伝子云々のストーリーもありきたりな印象です。
 読みやすさはいつも通りですがミステリの部分は非常に既読感があり面白みはもう一つでした。  


No.422 6点 ぼくの好色天使たち
梶龍雄
(2009/12/14 00:01登録)
 戦後まもない闇市を舞台に没落華族の子息を主人公として彼の周りの友人である多くの売春婦たちの連続殺人を扱った作品でした。
 本格ミステリフラッシュバックでは梶龍雄最高傑作の触れ込みでしたがそこまで面白いとは思いませんでした。
 やはり梶作品全般に感じる主人公に対する共感がもてないのがまず一つありまた当時の売春婦という題材に対してもどうしても共感をもてないので(当時のリアルタイムの読者には想像しやすい世界だったのかもしれませんが)作品世界にのめりこめなかったです。
 個人的にはリア王、龍神池の方が楽しめましたが伏線はこの作品でも見事ですし読んでいると登場人物のほとんどが善人に感じる読み心地も悪くないです。


No.421 6点 七人の中にいる
今邑彩
(2009/12/13 23:44登録)
 数年前に読んだのですがオーソドックスな閉鎖空間内のサスペンスでありオーソドックスな犯人でした。途中で大部分の読者は犯人を予想できる内容だと思いますがストーリーは確かにそつがなくよくまとまっているなと感じました。
 難点としては主人公があまりにも独りよがりで共感が全く得られないことです。また犯人の性格設定とラストもかなり不満です。ラストもこの展開なら殺すしかないのになあと個人的には思いました。探偵役の事故もストーリー上は仕方ないのでしょうが少しばかばかしく感じます。
 特に主人公への不満点も強いですが作品そのものは楽しめた覚えがあります。


No.420 6点 他殺岬
笹沢左保
(2009/12/13 23:27登録)
 以前「真夜中の詩人」の書評の所でteddhiriさんがこの作品に言及されていたので読んでみました。
 確かに誘拐の動機としてはひねくれていますし身代金の要求ではなく5日後の殺人を宣言する展開など独創的の所もありますが主人公の直感が基本的には正解でかつ警察が見抜けないのも納得いかないところです。
 冒頭の殺人も伏線なのかもしれませんが不必要な殺人に思えやはり安っぽいサスペンスドラマ臭は否めませんがさっと読めますしまあまあ楽しめました。ただ同じく主人公の直感が気に入らないのですが「真夜中の詩人」の方が作品としては楽しめた気がします。


No.419 6点 変人島風物誌
多岐川恭
(2009/12/13 01:12登録)
 小さな島に集まる変人たちの中で集まる連続殺人事件を扱った「変人島風物誌」と誘拐された少女が行方不明に、そして21年ぶりに実家に戻るというプロローグ、エピローグがまず描かれる変わった構成の「私の愛した悪党」の2長編が収録されています。どちらも殺人が扱われているにもかかわらずやはり緊迫した雰囲気がなくのんびりした印象ですが前者は謎ときとしてしっかりした作品でしたし後者は謎ときは弱いかもしれませんがストーリーが楽しめました。
 ただ書かれた時代を考えるとかなり当時では異色だったのではと思います。


No.418 6点 人でなしの遍歴
多岐川恭
(2009/12/13 01:03登録)
 大分以前に「落ちる」の短編集を読んだことしかなかったのですが本格ミステリフラッシュバックを見て手にとってみました。「人でなしの遍歴」「静かな教授」の2長編が収録されています。「人でなしの遍歴」は何度か殺されかかった主人公が殺されるのは構わないが誰に殺されるかは知りたいと自分に恨みをもつ何人もの人間を巡礼する物語、「静かな教授」はいわゆるプロバビリティの犯罪を扱った作品でした。
 そもそも「人でなしの遍歴」は本格的要素が強くなくあまり犯人が誰かということも重要ではなさそうですし「静かな教授」も当時としては珍しいであろう倒叙作品ですがあまり真新しさは感じられません。何より両作品とも緊迫した雰囲気がなくのんびりした印象がありのめりこめませんでした。
 ただ不思議な味わいがありました。


No.417 4点 まっすぐ進め
石持浅海
(2009/12/13 00:42登録)
 ここ最近2作と違いいつもの路線に戻った作品と感じました。
沈着冷静な主人公と恋人の交流を出会いから描いていますがこれまで以上に主人公には感情移入しにくくこのキャラクターたちでそもそも恋愛模様を描くのが無理があるような気がしました。解き明かされる謎もあまり魅力を感じられず納得もしづらいです。そもそも日常の謎よりも殺人事件を扱った方が良さそうなキャラクターに感じます。
 最近2作よりはましですが初期作が懐かしく感じます。 


No.416 7点 若きウェルテルの怪死
梶龍雄
(2009/12/06 22:37登録)
 飲み屋で編集者の「私」が金谷という老人と意気投合し推理小説かもしれないと自分の古い日記を渡される。そこには旧制二高を舞台とした殺人事件が描かれていた、というストーリーです。
 難点は主要登場人物のほとんどが殺され、もしくは事故死、失踪などで舞台から消え犯人は容易に絞りこめる点と「善意の共犯者」を使っているトリックが絶対上手くいかないであろうことです。初期作に比べれば伏線はかなり露骨に散りばめられていますがそれでも全てを回収するのは難しいでしょう。作品の出来としては少し劣りますが個人的には楽しめました。


No.415 7点 葉山宝石館の惨劇
梶龍雄
(2009/12/06 22:14登録)
 作者の晩年にかかれた作品です。祖母の家に夏休みに長期休暇で滞在していた小学生の少年がメインキャラクターで滞在先近所の洋館(宝石館)で起こる密室殺人、そして連続殺人に発展してゆくストーリーが彼の日記と三人称を使い分けて進んでいきます。
 登場人物の会話、特に探偵役の女子大生と刑事の会話など文体は絶望的にだめですが、また動機はともかく安易に人を殺しすぎの所も好きにはなれませんが密室だけではなくその理由、真相と考えて作られた作品でした。
 実際に上手くいくかはともかくとして作品自体は楽しめました。 


No.414 6点 奥鬼怒密室村の惨劇
梶龍雄
(2009/12/06 22:02登録)
 乱歩賞スペシャル第一期書き下ろし作品です。太平洋戦争末期で軍人の子息がメインキャラクター、疎開先の村で起こる連続殺人事件を扱っています。
 作風は下手な官能小説プラス本格小説といった趣きで乱歩賞スペシャルでよくこれを描けたな、という印象でした。他作品同様あまり主人公に感情移入できないですが本格的構成を保っており伏線もしっかりまかれており個人的には楽しめました。ただ発表年を考えれば売れなくても仕方なかったのかな、とも思える作品でした。


No.413 5点 the TEAM
井上夢人
(2009/12/06 21:44登録)
 必ず予言が当たる霊導師の影にいる最強の調査チームという設定は恐らく霊導師のイメージに対する皮肉も込められていると思います。各話の真相、ストーリー、展開は岡島、井上作品らしかったですしすいすい読めます。
 ただ最終話で「どこに被害者がいるのか」「どこが悪いのか」とジャーナリストの妻に語らせていますが調査内容のもとに霊導師が語って真相を明かす、というスタイルそのものが本筋ではないですが個人的に好きになれません。
 2000年代に入りますます執筆ペースが落ちていますがホラーでなく本格のジャンルの作品をそろそろ書いてほしいです。 


No.412 6点 黒白の旅路
夏樹静子
(2009/12/06 21:32登録)
(ネタバレあります)
不倫相手と服毒自殺を図った主人公が失敗して目覚めると隣にナイフを刺されて絶滅した不倫相手を発見して、というサスペンス仕立てのストーリーです。
 動機については興味深いものですが当時珍しかったであろう性同一性障害を扱っていますがいわゆる半陰陽ではなく人物設定そのものが現実にうまくいくか微妙かと思いました。また死体工作もうまくいくか微妙です。
 作品構成は良かったと思います。


No.411 6点 訃報は午後二時に届く
夏樹静子
(2009/12/06 21:18登録)
 造園会社の社長大北が殺人容疑者となるが本人は間違い電話をかけてきた目の不自由な女性を助けに外出していたと主張、そしてその女性が見つからないまま本人が失踪して、というストーリーです。一見して「幻の女」パターンの作品でしかも登場人物の中の犯人はわかりやすいのが難点でまたご都合主義的なところもありますし電話のトリックはお粗末ですが一番最後のトリックの部分は良かったです。本筋には関係ない他愛ないトリックの上実際に実行しようとするイメージも湧きませんがストーリーにも合っています。ただ現代でも通用するトリックなのかはわかりません。


No.410 6点 第三の女
夏樹静子
(2009/12/06 21:02登録)
 フランス犯罪小説大賞(ロマン・アバンチュール賞)を受賞した交換殺人をテーマにした作品です。
 設定はフレドリックブラウンの「交換殺人」の様に見ず知らずの二人によるものではありますがこの作品では一夜限りの情事のカップル(男女)の設定でフランスミステリ風というにぴったりな作風でした。
 メインキャラクターである大湖の無計画な行動、また終盤登場する人物の心理など共感できかねるところもありますが作品としては楽しめました。ただ暗がりでお互いの顔がわからないという基本設定がそもそもありえない話でありそこが納得できないと楽しめないかもしれません。

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