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ミステリの祭典

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こもとさんの登録情報
平均点:6.60点 書評数:86件

プロフィール| 書評

No.66 7点 すべての美人は名探偵である
鯨統一郎
(2008/05/09 13:05登録)
 主役は、静香と東子(はるこ)のダブルキャスト?
 いやいや、やはり主役は「邪馬台国~」でその女王様度を世に知らしめた、早乙女静香でしょう。 いえ、活躍するのは確かに東子なんですけど、やっぱり主役は静香なんだな(笑) たぶんこれはもう、作者の手を離れて、キャラクターが一人歩きしている状態か、と。
 たとえ東子が徳川家光の謎を解き、ずいずいずっころばしの謎を解こうとも、また、ミスコンにどれ程の強敵が現れようとも、静香のかっとばした性格の前には、謎解きなんてほんの小さな次元に過ぎない・・・そう思わされてしまう。 怖いミステリだと思う(笑)


No.65 8点 螢坂
北森鴻
(2008/05/02 01:17登録)
 シリーズ3作目ですから、今やすっかり、私も『香菜里屋』の常連気取り。 私の為の空きのスツールが用意されているような、そんな気分になっています。 「マスター、あの席いつも空いてるけど、誰のため?」っていうような、常連さんとマスターの謎を提起する会話が聞こえてきたら素敵です(←オイ)
 さて今作ですが、特に表題作・・・いいですね、これ。 何がいいって、やはりラストのオチが利いています。
 ミステリというジャンルは、基本的にトリックに気を取られてしまいがちで、ともすれば、作家の文章力や、「小説」であるという部分が二の次になってしまう一面があると思うんですね。 だからこそ、作品自体に幅を持たせ、余韻に浸れる「ミステリ『小説』」って、なかなか出合えるもんじゃないって、私としては喜んでしまうワケです。
 馥郁たる香り漂う、極上のミステリだと思います。


No.64 5点 イン・ザ・プール
奥田英朗
(2008/05/01 02:46登録)
 このシリーズが、「ミステリ」という括りになるのか、いささか疑問を抱く。
 確かに、楽しい作品ではあったと思う。
 ただ、伊良部のキャラが現実離れし過ぎていて、私には入り込みにくい世界だった。 それ故に、せっかくの「読み易い文章」という長所も、「印象に残りにくい」というマイナス方向に向かってしまったという、なんたる勿体無さ。
 しかし。
 「オモシロイ」との誉れ高いこの作品に対して、相当、辛口なこと言ってますね、ワタシ。 スミマセン。


No.63 8点 桜宵
北森鴻
(2008/04/28 22:49登録)
 ひとまず、今の私にとって理想の男性は、工藤さんですね(いや、のっけからソレかい!/笑)
 「香菜里屋」シリーズの第2短編集ですが、今作も粒揃いです。
 短編集となると、大抵、「表題作が一番良かったな」と思うのが常なのですが、今回は『十五周年』のラストシーンでやられました。 工藤の温かな人柄が、行間にあふれすぎですから。
 そして、ミステリ的要素としては、『約束』が一番楽しめたというところでしょうか。
 私の中でこのビアバーは、ノーマン・ロックウェルが描く絵の造りなんですが、白い縦長の提灯だけが、なかなかイメージにはまらなくて困っています(笑)


No.62 8点 花の下にて春死なむ
北森鴻
(2008/04/28 22:13登録)
 「とっておき」という言葉を口にする時、私は少しの誇らしさと、「秘密にしておけば良かった」というささやかな後悔の念、そんな二つの感情に襲われる。 そしてきっと本書を読めば、ビアバー「香菜里屋(かなりや)」に集う常連客の中にも、それは見え隠れする感情だとわかっていただけると思う。
 ビアバー「香菜里屋」を舞台に、マスター「工藤」を探偵役に配した、安楽椅子モノで構築された世界は、本当にお見事。 工藤が供する極上のメニューと、気の利いたサービス・・・一言で言えば「居心地の良い」こんな空間に身を置いて、小さな謎と向かい合うことが出来れば、それはもう至福の時と言えるでしょうね。
 度数の違う4種類のビールと、マスターの人柄、そして6つの謎・・・すべてに「酔える」連作短編集です。


No.61 6点 君の望む死に方
石持浅海
(2008/04/08 00:46登録)
 前作『扉は閉ざされたまま』の面白かった点として、私は真っ先に、犯人と探偵役の息詰まる攻防を挙げたと思う。
 「こんなキッカケで人まで殺すか?」という動機や、トリックがどうのこうのという、ツッコミ処は確かにあったのだが、両者の互角とも言える頭脳戦(心理戦)が、そんな問題は些細なことだと思わせる程の最大の見所で、高得点をつけた一冊だった。 当然、今作も主役が碓氷優佳ということで、期待は高まる。
 さて今作も、作品中に漂う『緊張感』という点で言えば、前作に引けはとらないと思う。
 しかし、今作の優佳のスーパーウーマン振りは、ちょっといただけない。 犯人が常に一歩先を行く優佳に追い詰められていく、一番楽しめたはずの部分-優佳が結論に達するまでの過程-が、今作の場合、どうしても、抜け落ちている気がするのだ。 つまり、途中で勘ぐる様子もなく、いきなり謎を解いてしまうのだから、過程を楽しみたい私としては、納得がいかない。
 今回の戦いは、わずかに優佳が先を行っているというような互角なものではなく、明らかに、数歩先んじている、大人と子供の戦いを見ているようだったことも、非常に残念だ。
 でも、石持氏は大好きなので、次回作も大いに期待しているのだが(笑)


No.60 7点 青空の卵
坂木司
(2008/03/31 22:04登録)
 ワタクシなどは、なかなか良い短編集に出合っちゃったかもなんて思ってますが、よそさまの総合書評ページでは、この本は何気に男性同士の恋愛のジャンルにカテゴリされてるようで、そのテのジャンルがお好きな女性の書き込みが多いことに、苦笑いしてしまう。 この二人、萌えちゃうような関係に見えてしまうんでしょうか?(笑)
 私としては、日常の謎系のミステリとして面白いものだと思っているし、成長していく二人の関係が強固でいて、脆そうな面が気にかかる。 こうして書きながらも、相反する言葉だとわかっているけれど、「強固」という円と「脆さ(脆弱?)」という円を2つずらして書いた時に重なる部分に二人はいるような気がして、目が離せなくなる。
 いや、しかし、毎話必ずと言ってもいい程出現する、坂木の涙のシーンは、水戸黄門の印籠タイムを思い出させるんだけどね(笑)


No.59 9点 占星術殺人事件
島田荘司
(2008/03/23 12:15登録)
 読了までに、苦節2年!(笑) というのも、やはり最初の手記が退屈なのが、反則ですから。

 退屈な部分を読む → 挫折する → 間が空く → (内容も忘れたことだし)気分一新で読む → 同じ辺りで挫折する → 間が空く → (内容も忘れたことだし)気分一新で読む → 同じ辺りで挫折する → 間が空く → (内容も忘・・・ エンドレス(笑)

 こんな状態が2年ほど続いたので、今では「あの退屈な手記こそが、作者が仕掛けた最大の罠だったのではないか」とさえ、疑っています(いや、そんなはずない/笑)。 でも「あの読みづらい退屈な手記を乗り越えたものだけに、すばらしいトリックの褒美をあげよう」という・・・驚きを二倍にする効果を存分に挙げていると思んですよね、悔しいですけど(笑)


No.58 10点 アクロイド殺し
アガサ・クリスティー
(2008/03/13 07:18登録)
 私の場合は創元推理文庫で読んだので、『アクロイド殺害事件』でしたね。
 軽い気持ちで手にしたハズのこの本でノックアウトされてしまうという、いわゆる「ミステリの洗礼」を、十代の時に受けまして(笑) 以来、長きに亘ってミステリを読み続けているワケなので、私にとってこの本の影響力の大きさは、計り知れないものがある。
 ラストの純粋な驚きと同時に、「この人だけは犯人であって欲しくなかった」という切ない気持ちは、今でも形容し難い。
 私はこの本で、『ヴェロナール』という名の毒薬が存在することを知った。


No.57 6点 ターン
北村薫
(2008/03/12 07:51登録)
 一作目の「スキップ」にも共通するのだが、主人公の潔さがとても良い。 もちろんその中には、時間に置いていかれた自分の境遇に対する、愚痴、不満、もどかしさ等が混在する。 でも、自分の状況を受け入れて道を拓こうとする、前向きな姿勢が素敵なのだ。
 気になるのは、ラストシーンの曖昧さ。
 電話をかけてきたような男性が身近にいたら、私だってそりゃ惚れるよ、絶対(コラ!)


No.56 9点 古い骨
アーロン・エルキンズ
(2008/03/05 14:24登録)
 「ミステリ・ファン」を自称する身ですから、「小さな手がかりを積み重ねて謎を解く」という王道を行くスタイルには、やはり痺れます。 
 今作は、人類学教授ギデオン・オリヴァーを主人公に据えるという、その設定が上手いですね。 古い人骨が時代背景や人物を語り、ギデオンがその声を聞き、事件を解決する・・・これを「推理」小説と呼ばない人がいるであろうか、否、いない。(特に意味はないが、使ってみたかった反語/笑)
 「スケルトン探偵シリーズ」の名を世に知らしめた一冊です。 ロジックに酔いたい方は、ぜひ。


No.55 9点 Yの悲劇
エラリイ・クイーン
(2008/03/04 00:02登録)
 海外の、いわゆる古典と言われるミステリは大好きだ。 話に馴染むまでの間は、幾度となく登場人物紹介ページを開いて、人物を確認することになってしまうという・・・海外作品独特の面倒な作業ですら、楽しいと思う。
 ただ唯一、この『Yの悲劇』だけは「翻訳本ではなく、原書で読める自分でいたかった」と、今も思う。 既読の方なら意味がお解かりいただけると思うが、原書で読んでいなければ、このミステリの本質・・・本当の面白さがわかっていない気がするのだ。


No.54 9点 時計館の殺人
綾辻行人
(2008/03/03 11:38登録)
 綾辻氏の館モノは、文庫本よりも、ノベルスの装丁がとても印象的。 このシリーズは全作品、スライドのような写真の構図が洒落ていて、数十年が経過した今も、古臭いイメージは微塵も無い。 故辰巳四郎氏はホントに良い仕事をしていた方だと思う。
 そんな素晴らしいデザインの中、この『時計館』にはすごい帯が付いていて・・・「神か悪魔か綾辻行人か!」はインパクトが絶大だった。 なんともすごい推薦文だと思うが、この頃は私も、ホントにそんな気分だったから許せたものだ(笑)
 館が、まさに『時計館』であることに意味がある作品。 綾辻作品の中で、衝撃こそ『十角館』に劣るものの、荒削りだったデビュー作に比べ、作品としての完成度はこちらが高いように思う。 「綾辻氏の代表作は何だ?」と問われたとしたら、私はこの二つのどちらを挙げようか、相当悩むに違いない。


No.53 3点 地獄の奇術師
二階堂黎人
(2008/02/29 22:31登録)
 結構厚めの本である上に、文章が肌に合わないので、読了までにかなり日数がかかっていたと思います。 正直言うと、この作品は、私はパスです。
 『探偵小説』というコトバも雰囲気も、私はもちろん嫌いじゃないし、江戸川乱歩作品も結構読んできたつもりではいますけど、これはちょっといただけないかなぁ。 時代にこだわりすぎと違いますか?(まぁ、作者のペンネーム自体、こだわりが感じられますけど)
 作者がずいぶんたくさんの本を読んでいらっしゃるのはわかるのですが、作品引用しすぎじゃないか、と。 読んでる間中、気分が悪かったです。 注釈だらけで文の運びも悪くなってるので、読み辛いことといったらもう。 盛り上げたいシーンも、「なんと!」とか「刹那!」とか・・・勘弁してください(泣)
 結末も、「こらこら、ちょっとそりゃないだろう?」と思わず声に出してしまうもので、これ以降、二階堂作品には手を着けていないのですが、二階堂氏って人気ありますよね? 一作で判断しちゃいけないでしょうか?


No.52 5点 思案せり我が暗号
尾崎諒馬
(2008/02/29 22:18登録)
 仲間内では、暗号嫌いで通っている私が、タイトルに「暗号」と入った作品を手にするとは・・・(笑)
 凝ってますねぇ、えぇ、実に凝ってます。 でも、それ故に不自然な点が目立ってしまったのも事実。 ムリしてますからね、見当がついてしまいます。
 実際のところ、長編だと思っていた本が、3割読んだあたりで一旦解決した(ように見えた)時には、「え? おいおいおい、これが横溝正史賞佳作?」とショックに思ったのですが、それが趣向を凝らした構成の一幕だと解ったときには、さすがにホッとしました。
 ・・・が。 解決への運び方がやはりイマイチ。 ちょっと説明が過ぎるなぁ、と。
 大トリックの解決篇のオチは、ストーリーの中で自然に読者にわかるように織り込まれていて、読んだ瞬間に愕然とするのが理想なのに、この作品の場合は完全に「説明」になってしまっているのが、なんとも痛い。 読者側としては、説明が入らないと理解できない話(トリックであったこと自体に気づかない話)というのは、小説としての面白みに欠けるんだな。
 もっとスッキリと書いて、落として欲しかったと思うのは贅沢でしょうか?
 でも、独自の世界を持っている作家さんだと思いましたね。


No.51 3点 名探偵に薔薇を
城平京
(2008/02/28 20:03登録)
 『名探偵に薔薇を』-今作の名探偵とは瀬川みゆきを指すと思うんですが、私の一番苦手なパターンかな、と。 それは、作者が『名』探偵を前面に押し出しすぎるということ。 手前味噌じゃないですか?
 これが、御手洗やポワロという強烈なキャラの持ち主なら、その人物の余りある個性として、受け止めることができるのですが。(いや、受け止めることができるどころか、逆に好きな位) でも、個性に乏しい普通の人でしかない探偵役が、自分自身が『名』探偵であることを苦悩するという文章は、なんともはや・・・正直、読んでいて疲れます。 だって、名探偵であるか否かは、読者が決めることだと私は思ってますからね。
 構成は2部構成になっていて凝ってますので、そのへんは楽しめるようになっています。 ただ、勘の良い読者には気づかれてしまうトリックでしょうね。


No.50 4点 封印再度
森博嗣
(2008/02/28 19:44登録)
 どの視点から評価しようかと迷う。 ・・・で、トータルで見るとこの点数。
 言葉遊びのセンスの良さが窺えるタイトルは、秀逸。 読後に、このタイトルの意味が理解出来る。
 トリックも、私の読んだ森作品の中では最高傑作だと思う。
 ただ、この作品の採点に私が何を躊躇っているかと言うと、「文章が鼻につく」・・・コレです。 まぁ、森氏の個性と言われればそれまでですが、読むのが相当辛かった。 萌絵ちゃんの行動にも呆れたし、マニアさんの仰る通り、ホント後味が悪かった。
 当時の私には、ノベルスの帯に書かれていた京極氏の推薦文、「ごちそうさま。」の方が印象的だったりする。 ・・・騙された気もするけど(笑)


No.49 8点 螺旋館の殺人
折原一
(2008/02/28 00:21登録)
 私にとって折原作品は、読み易いし、この筆の速さでコンスタントに一定の水準以上の作品を世に送り出してくれるので、結構好きなものなんですが、「大の折原ファンです」と仰る方にはあまりお会いしたことないですね。 位置づけとして、私のように「あ、結構好き!」という方が多いせいではないでしょうか?
 それはたぶん、今の時代、折原氏の手法が、読者に浸透してしまっているせいかな、と思う。 みんな騙されまいと、身構えて読んじゃってますよね。 だとすれば、非常に勿体無い読み方だと思うんですね。 妙に疑ったりせず、私のように素直に騙されると楽しいです(笑)
 私がこの本を読んだ20年前は、綾辻氏の館シリーズが脚光を浴びていまして。 初めて手にした折原作品の作風なんて、知るはずもなく読んだおかげで、非常に楽しめました。 「この人、綾辻氏に負けてないぞ?」と嬉しく思ったことを覚えています。
 折原作品には、シリアスタッチのものとコメディタッチのものとありますが、私はこの本のようにシリアス系が好みですね。 やはり氏が主に使うトリックの持ち味が生かされると思うので。
 しかし、折原作品を読む上で、私にも悩みが一つあって。
 タイトルが似ていたり、内容が似ていたり、改題されていたり・・・というものが多いせいで、購入の際、既読か否か判断出来ず、同じ本を購入していたりするのです・・・(ホントに好きなのか?)


No.48 7点 斜め屋敷の犯罪
島田荘司
(2008/02/23 14:28登録)
 以前読んだ本の中で、鯨氏が「バカミスは褒め言葉だ。 『よくこんなことを思いつくなぁ』という作品に与えられる、賞賛の言葉だ」と言っていたと思う。
 なるほど・・・それならば私は、島田氏の書いたこの作品こそが、その最高峰だと賛辞を送りたい。
 昨今流行の「バカミス」を、時代に先駆けて書いておられたとは・・・さすが、我らの島田氏。
 でもね、御手洗さん、登場遅すぎですよ(笑)


No.47 10点 異邦の騎士
島田荘司
(2008/02/23 02:19登録)
 トリックがどうのとか、筆力がどうのとか・・・とやかく言わない。
 ミステリというジャンルの本で、私が初めて「泣いた」作品・・・この一言に尽きる。
 これから読む方には、ある程度、御手洗作品を読んだ後で、本書を手に取られることをお勧めします。

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