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ミステリの祭典

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思案せり我が暗号
尾崎凌駕シリーズ

作家 尾崎諒馬
出版日1998年06月
平均点5.00点
書評数2人

No.2 5点 nukkam
(2020/01/17 21:36登録)
(ネタバレなしです) わずか3作を発表した後は沈黙してしまったらしい尾崎諒馬(1962年生まれ)の1998年発表のデビュー作である本格派推理小説です。暗号ミステリーというのは謎の難易度が高く、小説としては動きが少なくなりやすくて人気の面では不利だと思いますが、それでもわざわざタイトルで暗号ミステリーだと謳っているのですから相当自信があったんでしょうね。様々な手法による解読(いや復号か?)で暗号が万華鏡のごとく変化する展開が圧巻です。私は暗号の謎解きはほとんど理解できなかったのですが、よく考え抜かれた暗号なのはわかりました。暗号談義があるのも珍しいです。また構成にも凝っていて、プロローグとエピローグで全体の90%以上を占めています。ただプロローグで物語が一段落して非常に短い中間部を挟んでエピローグに突入すると驚きの仕掛けがあるのですが、カドカワ・エンタテインメント版の粗筋紹介でこの仕掛けをネタバレしているので驚けなかったのが残念です。あとエピローグの後ろに「読者への挑戦状」を用意して謎解きはまだまだ続くという展開なのですが、これは蛇足というか空回りに感じました。

No.1 5点 こもと
(2008/02/29 22:18登録)
 仲間内では、暗号嫌いで通っている私が、タイトルに「暗号」と入った作品を手にするとは・・・(笑)
 凝ってますねぇ、えぇ、実に凝ってます。 でも、それ故に不自然な点が目立ってしまったのも事実。 ムリしてますからね、見当がついてしまいます。
 実際のところ、長編だと思っていた本が、3割読んだあたりで一旦解決した(ように見えた)時には、「え? おいおいおい、これが横溝正史賞佳作?」とショックに思ったのですが、それが趣向を凝らした構成の一幕だと解ったときには、さすがにホッとしました。
 ・・・が。 解決への運び方がやはりイマイチ。 ちょっと説明が過ぎるなぁ、と。
 大トリックの解決篇のオチは、ストーリーの中で自然に読者にわかるように織り込まれていて、読んだ瞬間に愕然とするのが理想なのに、この作品の場合は完全に「説明」になってしまっているのが、なんとも痛い。 読者側としては、説明が入らないと理解できない話(トリックであったこと自体に気づかない話)というのは、小説としての面白みに欠けるんだな。
 もっとスッキリと書いて、落として欲しかったと思うのは贅沢でしょうか?
 でも、独自の世界を持っている作家さんだと思いましたね。

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