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ミステリの祭典

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あびびびさんの登録情報
平均点:6.33点 書評数:669件

プロフィール| 書評

No.569 8点 天国は遠すぎる
土屋隆夫
(2016/11/01 12:16登録)
土屋さんらしい、入魂の力作だと思った。後書きで、佐野洋さんが、「これほど刑事をうまく書いた作品に出合うのは初めて」と言うような書評をされていたが、アリバイトリックもさることながら、執念で捜査を続ける刑事たちの魅力があふれていた。

土屋さんの作品の中で一番好きかも知れない。


No.568 8点 時間の檻
鮎川哲也
(2016/10/24 00:11登録)
どの作品も熟成された本格もので、珠玉の名作ばかりである。鮎川さんは短編の方が無駄な中だるみがなく(失礼)濃縮されて面白いなと感じた。

ミステリマガジンの「宝石」の編集長になった江戸川乱歩さんが、立て直しのため、宝石と仲違いをしていた鮎川さんに執筆依頼したと言うのが興味深い。


No.567 7点 疑惑の霧
クリスチアナ・ブランド
(2016/10/19 23:21登録)
容疑者が一転、二転…。その中でコックリル警部はほとんど役に立っていないような気がするが、その真相は題名通り、まさに「疑惑の霧」の中にあった。

序章と最終章の繋がり。これが見事で、容疑者たちが虚々実々の駆け引きをするあたりが読みどころだが、ちょっと中だるみの感もある。


No.566 5点 ペトロフ事件
鮎川哲也
(2016/10/15 23:40登録)
終戦後、大連から日本に帰ったーという話はよく聞いた。悲惨な戦争後であり、しかも何十年前の中国だから、街も生活も悲惨だったのでは?と言う上から目線は間違いだった。挿入された地図や、街並みを見ると、パラダイスのように見えるし、魅力的だったから、思わずグーグルの地図を見た。今でも、素晴らしい海岸線が広がっているようである。

それはともかく、その中国でロシア人の殺人事件…。最初は凄く混乱した。容疑者はペトロフばかりで、区別もつきにくかった。読むうちに、なぜロシア人がたくさん住んでいたのかは歴史的背景で分かり、事件の内容もだんだん把握できた。

しかし、やはりデキとしてはイマイチのような感じを受ける。どんでん返しの犯人も、容疑者の少なさから、驚きはなかった。


No.565 7点 まるで天使のような
マーガレット・ミラー
(2016/10/15 23:28登録)
先入観はダメだ!と改めて思った。物語の進行と、最後のサプライズが、夫のロスマクと似ているような気がしたのは、おそらく自分だけだろうが(笑)。

怪しげな宗教施設と、怪しげな街、そして怪しげな失踪事件。それぞれは宙に浮いている感じで、最後に一体となり、地上に降りて事件は解決する…。

ラストページの元妻の一言がサプライズぽいが、自分的には話の途中から了解済みであり、決して驚くような結末ではなかった。が、主人公の博打うちクインが立ち直っていく姿は好みだった。自分が博打うちだったせいかも知れない。


No.564 5点 アメリカ銃の秘密
エラリイ・クイーン
(2016/10/05 01:11登録)
早くからエラリーは犯人が分かっていて、「分かっているなら教えてくれ」と、親父。「でもまだ逮捕できる証拠がない…」と引き延ばすパターン。これはどの作品でも見受けられるが、しかし、この作品に限っては大いにミステークではなかったか。

トリックにしても、状況説明にしても、紙一重の際どさがあり、全部は納得できなかった。そこで、解決編で、『これは納得するしかないだろう?どうだ!』みたいに読者を押さえつけるようなところがあり、笑ってしまった。

しかし、2万人の前で殺人と言う設定は、悪くなかった。


No.563 7点 自宅にて急逝
クリスチアナ・ブランド
(2016/10/02 22:18登録)
7点は、「かなり楽しめた」か。うーん、確かにページをめくる手は早くなったけど、本音は、「まあまあ楽しめた」の6点評価かも知れない。ただ、全体的に本格的な要素が楽しめたのでこの点数に。

最後にそれまで無能だったコックリル警部が突然の輝き。まあ、探偵役はそんな役割だろうが、それまでの容疑者家族、お互いの疑心暗鬼が面白かった。


No.562 7点 中途の家
エラリイ・クイーン
(2016/09/18 02:03登録)
ちがう視点から犯人はこの人しかいないと思ったが、後から考えると、自分が難しくしていただけで、意外と事件は単純だったなと思う。

それだけ入りやすくて、読みやすいミステリだった。

………

(ネタばれ)…自分的には、保険会社の親切な秘書が犯人とデキていて、犯人の指導のもとに役割を果たしていたものと考えていた。なにしろ、犯人は「女性」だったから。


No.561 3点 11の物語
パトリシア・ハイスミス
(2016/09/09 23:42登録)
最初の「かたつむり観察者」であきれてしまった。

かたつむりの交合が興味深く、調理せずにいると(食用)、やがてたまごを生んだ。これが幸運の兆しでいろいろ仕事も忙しくなり、しばらく目を離していて、ある日、久しぶりにその部屋に入ると、部屋はかたつむりだらけで、一匹を呑み込んでしまい、次々とかたつむりはやってきた…。そして、身動きできなくなった。

もうひとつかたつむりの物語があった。こちらはお金も暇もある学者が、ハワイ近くの島に、巨大なかたつむりがいると言う噂を聞き、発見者としての名誉を得るためにその島へ行ったが、結局はそのかたつむりに食べられてしまうと言う話。

これは、何かの比喩だと思うのだが、どこが面白いのか?カフカの小説をイメージしているのか、自分には分からない。

「すっぽん」は、子供がアパートの下階の友人に、「うちにすっぽんがいる。見せてあげる」と言ったのだが、母親がシチューにしてしまった。それで母親を殺してしまったという話。確かに熱湯に放りこまれ、死に行くすっぽんは子供には悲劇だが、元から母親はシチューにすると言って買って来ていた…。

奇妙な味のある作家であるが、日常的ではない。フランスでは、かたつむりに何か意味があるのかな?


No.560 3点 骨と沈黙
レジナルド・ヒル
(2016/09/09 22:10登録)
主人公に共感できないのだからどうしても低い点数になる。読み始めて、「これはいかん」と、投げたものの、他の本を読みつくして、読む本がなくなり、仕方なくまた読んだが、また投げ出した。

でも、この作家の代表作と言うことで、「最後まで読めば必ず良さが分かるはず…」と、手に取った。しかし、最後まで苦痛だった。苦手なフロスト警部、モース警部と似ている感じがするのは自分だけだろうか?(でもフロスト警部、モース警部は人気者である。自分の感覚が変なのだ)。

だから、この本はお薦めできないというダメだしはできない(でも彼女には言う)。




No.559 7点 招かれざる客
アガサ・クリスティー
(2016/09/08 02:28登録)
さすがうまい。実際、観劇したら、その鮮やかさに驚くと思う。

ずっとクリスティーを読んでいるものなら、犯人や結末はおのずと想像がつくので、目新しさはない。しかし、どうだろう。それでこそクリスティーではないか。極論すれば、クリスティらしい結末でなくてはいけないのだ。

そうでなくては満足できない自分がいる。


No.558 7点 エトロフ発緊急電
佐々木譲
(2016/08/29 12:42登録)
ハワイ真珠湾攻撃は、相手の目を欺くために択捉島のある小さな港に軍艦が集結し、それから火蓋が切られた…。

その情報収集にアメリカから日本語の話せるケニー・ケイイチロウ・サイトウと言う日系人がスパイとして送られる。その男は東京に潜伏した後、鍵は択捉にあるという情報を得て、北海道から択捉まで、追手を間一髪のところで避けながら択捉島にたどり着いた…。

日本人離れしたスケールの大きな話で、現代の佐々木さんとはちがうスタンスの味わい深い作品だと思う。


No.557 4点 かわいい女
レイモンド・チャンドラー
(2016/08/28 11:52登録)
フィリップ・マーロウは、「寛容」と、「忍耐」の男である。それは分かるにしても、かわいい女とされる依頼者にこれほどこけにされても、捜査を続けるものだろうか?

気持ちは分かる。引くに引けない状態になったことは認めるが、あまりにも依頼人の悪知恵が横行して、興ざめになりかねない。


No.556 6点 毒を売る女
島田荘司
(2016/08/17 23:16登録)
斜め屋敷、奇想、異邦と自分には合わなかった。島田さんの作品を書評をするのは怖い。自分の感覚がいかに鈍いのかを証明しているからだ。

表題の「毒を売る女」も、ぞっとはしたものの、自分の思い描く範疇であり、意外性はなかった。しかし、人間色々である。素直に自分の評価を記したい。


No.555 7点 天使が消えていく
夏樹静子
(2016/08/14 02:05登録)
それぞれの人物がミスデレクション。しかし、それほど謎は深くない。

本当の母親の愛情、これは素晴らしかった。女性しか書けない物語、それにつきる。


No.554 8点 遠海事件: 佐藤誠はなぜ首を切断したのか?
詠坂雄二
(2016/08/14 01:59登録)
何気ない会話と、何気ない殺人。しかし、70人は多すぎる。実際そんなモンスターがいたとしても、この話は15人ぐらいの方がリアルで驚けたのではないか?

なぜ首を切断したのか?それはモンスターならではの見解。とてもわれわれに理解できる話ではない。モンスターの佐藤誠よりも、語り手の詠坂勇二の淡々とした喋りに違和感を覚えた。

70人を殺したモンスターと、気軽に喋ってダメ出しをする?


No.553 7点 フォックス家の殺人
エラリイ・クイーン
(2016/08/14 01:50登録)
息子は、第二次世界大戦で日本兵を殺し(戦争だからやむえないのだが)、悩んでいた。父親が母親を殺して投獄したが、その血は濃く、自分も妻を殺すのではないかと…。実際、未遂に終わったものの、息子は夜中に妻の首を絞めているのだ。

若き妻は考えた。息子の精神を正常に戻すには、父親の事件が冤罪だと証明するしかないと…。そこでこの街(ライツヴィル)で数々の難事件を解いたニューヨーク在のエラリー・クイーンに依頼するしかないと…。

クイーンは、当時の人間を集めて現場再生をするが、その結果は父親が母親を毒殺したという事をより深く印象付ける結果になってしまった。しかし、「これは最初からそうなることだと思っていました」と、粘り強く説得し、あきらめない。

これは凄い推理小説だ!と思ったが、解決編で一つだけ納得が行かなかった。読み手には絶対推理できないハプニングである。ただ、これは小説の中ではご都合的(後だしじゃんけん)だが、現実なら十分あり得るのだから何とも言えない。


No.552 6点 天啓の殺意
中町信
(2016/07/25 01:49登録)
なるほど、叙述トリックの最たる作品だと思うが、これは少しやり過ぎではないか。何を言う、叙述トリックとはこういうものだ!と言われれば黙るしかないが…。特に、温泉の仲居さんとのやりとりなどはどうかと思う。

それでもお陰で、凄く印象に残る作品になった。


No.551 8点 偽りの墳墓
鮎川哲也
(2016/07/25 01:41登録)
鮎川氏の作品は、ほとんど同じ流れで、印象の薄い作品は見分けがつきにくい面もあるが、この作品はアリバイトリックが秀逸だった。

一枚の紙切れから、そこまで推理し、事件を終わらせる鬼貫警部の手腕はお見事と言うしかない。

舞台は浜名湖の舘山寺温泉。何十年間か前に、鷲津から船に乗って舘山寺温泉まで行った経験があるので、そのリアルさは半端ではなかった。その印象も影響しているかも知れない。


No.550 7点 血の絆
A・J・クィネル
(2016/07/25 01:28登録)
自分が初めて読んだ本、「ロビンソン・クルーソー」を思い出した。今まで全く会ったことがなく、国籍も違う4人(男女二人ずつ)が縁あって小さな帆船(と言ってもエンジン付き)でインド洋を航海し、手に汗を握る冒険劇を演じるわけだが、その4人に関わる人々も魅力で、最後は大円団で幕を閉じる。

ミステリにはほど遠い、純粋的な冒険ものだか、たまにはこんな本もいいかな…という感想。しかし、インド洋の真珠と言われるセーシェル諸島やモルジブあたりの魅力は半端でなく、思わず地図を広げて位置確認したが、やはり日本からは遠い。

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