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ミステリの祭典

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天啓の殺意
「散歩する死者」改題

作家 中町信
出版日1982年06月
平均点6.65点
書評数17人

No.17 6点 nukkam
(2024/06/02 17:41登録)
(ネタバレなしです) 1982年に「散歩する死者」というタイトルで発表された本格派推理小説で、私は作者の晩年に改題改訂された創元推理文庫版(2005年)で読みました。この時期の作者は読者を騙す技巧を凝らした作品が多い印象がありますが本書もその典型で、「模倣の殺意」(1973年)に匹敵すると思います。犯人の細工があまりにも手が込んでいて不自然感がないわけではありませんが、謎解きにこだわりぬいた本書の場合はそれも大きな弱点には感じませんでした。リアリティを重視した社会派推理小説の方がお好みの読者にはお勧めはできませんけど。

No.16 5点 虫暮部
(2024/03/16 12:53登録)
 全編にまたがるトリックには見事に引っ掛かった。拍手を送りたい。
 一方、事件の様相は入り組んでいて疑問が残る。
 普段は東京で暮らす知り合い同士が偶然、福島県でニアミスしている。こういう偶然は嫌い。現実にはありえても、ミステリで用いると御都合主義に見えると言う意味で。
 そして、エピローグの手紙に書かれている、“あなたが○○殺しの犯人であることを見抜いていました”――犯人と○○殺しは表面上無関係である。どうやって見抜いたのか。

No.15 7点 測量ボ-イ
(2022/12/17 09:00登録)
この作者の作品は、いつも楽しませてくれます。
今回も読み応え十分でした。
犯人はすれっからしの読者ならわかるのでしょうが、
なるほど、今回はそうきましたか…
平成以降なら結構あるパタ-ンですが、これは昭和
の作品なので、時代を先取っているものです。

No.14 7点 パメル
(2019/06/11 18:12登録)
TSUTAYA書店員が、本当に面白いと自信をもってオススメできる作品を、装丁やコピーを変えて展開するプロジェクト「TSUTAYA既刊発掘プロジェクト」に選ばれた作品。
推理作家の柳生から持ち込まれた犯人当てリレー小説。柳生の問題編に対し、タレント作家の尾道に解決編を書いてもらい、その後に自分の解決編を載せる。作家同士の知恵比べをしようという企画が、思わぬ方向に展開へと惹きつけられる。
二転三転する構図に、ミスリードも実に巧妙。叙述トリック小説と知っていながら、しっかり騙されてしまった。ご都合主義と思える点もあるが、ストーリー自体は、とても面白かったのでこの点数。ただ、改題する前のタイトルが「散歩する死者」だったそうですが、なぜそのタイトルだったのかは、今ひとつピンと来ない。

No.13 6点 あびびび
(2016/07/25 01:49登録)
なるほど、叙述トリックの最たる作品だと思うが、これは少しやり過ぎではないか。何を言う、叙述トリックとはこういうものだ!と言われれば黙るしかないが…。特に、温泉の仲居さんとのやりとりなどはどうかと思う。

それでもお陰で、凄く印象に残る作品になった。

No.12 5点 りゅうぐうのつかい
(2016/06/20 17:38登録)
落ち目の推理作家が犯人当てリレー小説の原稿を推理雑誌の編集者に持ち込んだ直後に失踪。編集者は、その原稿が過去に起こった事件そのままであることに気づき、その真相解明のために調査に乗り出す。
作中にその原稿を取り込んだプロットが面白い。事件関係者相互の関係性の構築が巧妙。旅情性もあって、とても読みやすい作品だ。
『捜査』の章の最後まで読むと犯人がわかってしまうが、「この人物に本当に犯行可能なのか?」と不思議に思い、ページを繰りなおしてみた。確かに非常に意外性のある真相ではあるが、インチキすれすれというよりも、インチキそのものとしか思えない記述には、評価を下げざるをえない。

(ネタバレ)
犯人は、亀岡、片桐、尾道の3人にニセの顔を見られている。それなのに、この3人に真相解明のために聞き取り調査を行っているのはやりすぎだろう。特に、亀岡は客の顔を1度見たら忘れない優れた記憶力の持ち主なので、すぐに気づかれてしまう危険性が高いはずだが。
また、犯人が柳生の原稿を読んだ際に、「この小説のストーリーによく似た作品を、なにかで読んだことがあるような気がしたのだ」と感じ、過去の新聞記事を調べる記述があるが、いくらなんでもこれはひどすぎる(自分が実際にやった犯罪なのだから、すぐに気づくはずのこと)。

No.11 6点 メルカトル
(2016/06/03 22:23登録)
なるほどそう来たか、とは思う。確かに叙述トリックには違いないが、それほど騙された感は覚えなかった。30年前なら手を叩いて喜んだかもしれないが、もっと鮮やかな叙述ものを沢山経験してしまったため、この程度では大したカタルシスは得られない。そんな体質になってしまった自分が恨めしい。
それにしても原題の『散歩する死者』の意味がいまいち読めない。作者がお気に入りのタイトルだったらしいが、死者が散歩するとは一体どういう・・・。
平均点が高いのでもっと期待していたが、やや裏切られた感は否めない。しかし、意外に読みやすかったし、プロットの妙というのか、その辺りはよく練られていたと思う。

No.10 8点 斎藤警部
(2016/01/12 18:07登録)
便宜と混濁を兼ね備えた不思議な登場人物表(あれ?○○レベルがごっちゃになってないか・・?)の企みは。。と思えばその謎はすぐ解決。いや、その安心感にこそ何か企みでも潜んでいないか。。。 序盤を読み進めば早くもモヤモヤのドミノ倒し。浮かび上がる先駆者オーラには気品あるほくそ笑みが光っています。

アンバランスの仮面を被ったバランス、その構成の妙、分割の妙、それは叙述の妙。同じ中町叙述でも「模倣」の如く結末反転で物語が萎んでしまう(実像が幻影より小さい)ケースとは逆にむしろ物語が何段階か膨らむ(実像が幻影より大きい)構造になっているのが素敵。どちらも知的興味レベルでは同等の大範疇に整理されるものの、気持ち(エモーション)の問題としてはやはり、後者の突き動かされる感動にこそより惹かれる評者であります。

乱暴に纏めてしまえば某著名作の真相隠匿方法を複雑化した、って事なんだろうけど、実際そうだと思うけど、そんな簡単な物言いだけでは到底済まされまい。読んでみなけりゃその真価は味わい得ない。やっぱり小説だから。

そうそう、大事なこと言い忘れる所でしたが本作品にはちょっと驚きの「意外な探偵役」趣向がありましたね。しっかり伏線張ってるのが(当たり前の事とは言え)ニクい。
7.74点相当の8点。

No.9 7点 ボナンザ
(2014/04/08 01:19登録)
帯の、模倣の殺意以上というのはともかく、それに匹敵するできなのは間違いない。

No.8 7点 蟷螂の斧
(2013/11/07 15:45登録)
作中で、「アクロイド殺し」や「Yの悲劇」に触れていたことに納得。本作のプロットの妙については、折原一氏の作品群よりも年代的に先行している点で評価したいと思います。

No.7 6点 アイス・コーヒー
(2013/09/28 14:14登録)
ミステリ作家の柳生が考えた作家同士の犯人当てリレー小説。しかし、その問題編は半年前に実際に起こった殺人事件と同じものだった…。「散歩する死者」改題。

「模倣の殺意」で話題の著者が得意の叙述トリックを存分に使った作品。ただ、温泉や推理小説作家が出てくるシナリオが「模倣」に酷似している。登場人物が多いため、それぞれにもう少し個性があればなお良かったと思う。
トリックについては、まんまと騙されたが、著者が仕掛けた伏線のほとんどに気付いてしまったのであまり気持ちのいい騙され方とは言えなかった。「模倣」もそうだが著者は伏線のひそませ方がわかりやすすぎるようだ。
ラストの展開や終わり方は鮮やかだったので、その点は評価したい。また、動機も極めて論理的で納得のいくものだった。

No.6 7点
(2013/09/18 10:08登録)
作者からすれば、大胆に読者を騙せて、ほんとうに気持ちのいいことでしょうね。

本書は、読者が謎解きに参加できる本格推理小説というよりも、たんなる驚愕ミステリーという気がします。この作品の注目点は、その驚愕を生み出したプロットにあります。
その驚愕とプロットには最高の興奮をおぼえました。こんなことに興奮するなんて、まだまだ、ヒヨっ子ですね。

ところで、この犯人、ちょっとやりすぎでは? しかもあの程度のことが発端だから、尋常ではありません。そういう心理状態だったということでしょうか。
まあ、リアリティのなさについては言わぬが花ですね。


(最後にネタバレ)

叙述トリックといっても種々雑多。この用語は推理小説界では一般化しましたが、本作に対してはピンときません。どちらかというと、プロット・トリックです。
本作のプロット・トリックは究極のすご技だと思います。でも感心したのは、そのトリックを読者に登場人物の言葉をかりて説明したこと。こんな技もあるのですね。こんなことができるということは、やはり異端の叙述トリックなのでしょう。このトリック開示がなかったなら、わけがわからないまま終わっていたはずです。
また本書では、登場人物の推理作家が自身の作品を読ませて、犯人に犯行をやらせています。リアリティのなさの極致ですが、実はこれもお気に入りです。

No.5 6点 haruka
(2013/07/05 00:56登録)
「模倣の殺意」と同様、フェアにかつ大胆に伏線を張っているが、だまされました。ただ「模倣の殺意」と同様、ご都合主義は否めない。

No.4 8点 E-BANKER
(2013/06/21 21:34登録)
1982年に「散歩する死者」として発表された作者の第六長編を改稿、改題したのが本作。
最近、なぜか「模倣の殺意」が文庫売上のベスト5入りするなど、思わぬプチブーム(?)を巻き起こしている作者・・・果たして本作はどうなのか?

~スランプに陥った推理作家・柳生照彦から持ち込まれた犯人当てリレー形式の小説。柳生の書いた問題編に対し、タレント作家の尾道由紀子に解決編を書いてもらい、その後に自分が解決編を発表する。要するに作家どうしの知恵比べをしよう・・・という企画は順調に進行するかに思えたが、問題編を渡したまま、柳生は逗留先から姿を消し、しかもその小説は半年前の実在の事件を赤裸々に綴ったものだったのだ! 全面改稿の決定版~

これは快心の出来ではないだろうか。
「模倣の殺意」(旧題:「新人賞殺人事件」)もそれなりのレベルなのは間違いないが、プロットの巧さと終盤&ラストのサプライズ感では本作が大きく上回っているように思えた。
(だったら、これもベストセラーになるのかもね・・・)
作品の性格上、あまり書くとネタばれの危険性が伴うので難しいが、要は「何重構造」になっているのかということではないか。
私個人では、終盤に突入するまでてっきり「三重(さんじゅう)構造」になっているのかと思っていたのだが・・・

読了してよくよく考えてみると、折原一の諸作に数多く接してきた身としては・・・
「本作のプロットって、折原が手を変え品を変え、やってた奴じゃないか(特に初期)!」ということに遅まきながら気付くのだが・・・
これはかなり高レベルの「手(騙し)」だろう。
その「騙し」を支えているのが、大ラス近くになって登場する「ある人物」の存在と推理。
これには大抵の読者が「こうきたか!」と唸らされることになるのでは?
(「作者あとがき」を読むと、このポイントこそがまさに本作のプロットの出発点だったとのことで、個人的にも納得)

書評もちょっと興奮気味になってしまったが、それだけ出来がいいということをお察しいただきたい。
難点を挙げれば、リアリティ(ここまでやるかという意味で)になるのだろうが、これは言いっこなしだろう。
折原だと若干(?)クドくなってしまうところを、割とさらりと上品に書いているところがウケる要因かもしれないな。
(同じく、作者あとがきで、氏の奥様が『・・・あなたの処女作や初期の作品、あなたが死んだ後で、きっと評価される日が来ると思う・・・』と言ってたとあるが、奥様慧眼です!)

No.3 8点 まさむね
(2012/11/11 22:30登録)
 氏の長編6作目である「散歩する死者」(1982年初版)を全面改稿し,改題のうえで文庫化されたものだそうです。
 前半の端正さから一転する後半部分が読みどころ。ちょっとゴチャゴチャして混乱しつつの不思議な爽快感。個人的には嫌いではないです。敢えて多くを語らず「いろんな意味で,面白かった」とだけ述べさせていただきましょう。

No.2 6点 いけお
(2012/11/05 12:51登録)
各種技巧をバランス良くまとめた完成度の高い作品。

No.1 8点 dei
(2007/11/20 20:52登録)
久々に驚きを味わえる作品と出会えた
読みにくい文章だったのが残念

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