自宅にて急逝 コックリル警部シリーズ |
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作家 | クリスチアナ・ブランド |
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出版日 | 1959年01月 |
平均点 | 7.50点 |
書評数 | 8人 |
No.8 | 6点 | レッドキング | |
(2024/08/02 22:16登録) 猜疑心とコンプレクスの塊のような、独りよがり老人が振りかざす遺言書の書換えが、足跡密室連続殺人を引き起し、未亡人・孫達遺族の間にわだかまる、葛藤・軋轢を焙り出してゆく。一族間のグロテスクでコミカルなやり取りに挟まれる、発作的な真情吐露の爆発と、ラストの屋敷崩壊を巻き込むカタストロフが見事。足跡トリックは・・カーがやりそうな脱力(*_*;もので、登場人物達が披露するダミー解釈のトンデモ具合の方がファンキーで良く。 |
No.7 | 8点 | ことは | |
(2021/08/09 12:53登録) 自分で勝手につくった「バークリー/ブランド/デクスター・スクール」と言葉があり、この作者たちの「仮説の構築を何度も繰り返すことを物語の面白さの中心にすえた作品群」をイメージしている。 上記作風の代表をブランド作の中で1作選ぶとすれば、それは本作になるだろう。 AさんがA’の仮説でBさんを犯人と指摘し、EさんがE’の仮説でFさんを犯人と指摘し……、と、都度「仮説の構築者」と「指摘された犯人」が違う説が繰り返される。しかも、そのひとつひとつが説得力があり、なかなか魅力的だ。 しかも、作の4分の1あたりから、それは始まる。残りの4分の3ほどが、すべて仮説の構築の繰り返しに費やされる。全体の構成を俯瞰すると、バークリーの「毒入りチョコレート事件」を彷彿とさせる。「毒入りチョコレート事件」の成功は、全体の構成を「趣向」として提示する”犯罪研究会”という設定にあると思うが、本作にも似たような”構成を提示する仕掛け”があれば、もっと評価されるのにと思う。 ただ残念なのは、最後に繰り出される真相が一番魅力的かというと、そうでもないところ。 けれど、謎解きミステリファン必読の作品と思う。 |
No.6 | 8点 | 雪 | |
(2020/02/20 07:02登録) 第二次世界大戦末期のイギリス、スワンズメア。混血の亡妻を記念して建てられた大富豪サー・リチャードの館・白鳥の湖邸〈スワンズウォーター〉では、今年も追悼の儀式が催されていた。若くして息を引きとったセラフィタの霊を慰めるため、次々に館に集ってくる人々。 だが席上リチャード卿は手に負えぬ孫どもと諍いになり、遺言状の書き換えを宣告。離れのロッジに引き上げた翌朝、ものいわぬ骸となって発見される。死因はアドレナリンの大量投与だった。 一族とは長いつきあいの"ケントの恐怖"ことコックリル警部が捜査を開始するが、事件は意外に手強い。さらに一族は愛憎混じりの疑惑に駆られお互いを告発し合い、事態は益々紛糾する。彼らの神経が張り詰め、ヒステリックな緊張が高まる中、やがて訪れる衝撃の結末とは――? 1946年発表。前作「緑は危険」同様戦時下の英国を舞台にしたもので、ブランド4冊目の長編。コックリルシリーズとしては3作目に当たります。登場人物の描き分けが素晴らしく、個々のキャラクターが非常に魅力的。検視審問や家族の逮捕、第二の殺人など煮詰まる状況の中で、疲弊した彼らが疑心暗鬼に陥りつつ仮説と告発を繰り返す容赦無さは、この作者の一連の作品のみならず全ミステリ中でもトップクラスに入るでしょう。 その反面個々の謎解き部分は弱い。的確に配置することでストーリーに寄与してはいますが、〈こうすれば一応は可能だった〉程度のものが多く思い付きの範囲を出ていません。バカミスと言われるアレはプロットと不可分なので文句はありませんが、スクラップアンドビルドがデクスター並みに充実していれば物凄い傑作になったでしょう。〈一族の根底に流れる深い愛情〉が前提にあるため、破局を齎すほどの検討はし難かったかもしれませんが、非常に惜しいです。そこらへんのアンバランスさでギリ8点。 |
No.5 | 7点 | 青い車 | |
(2016/10/24 21:27登録) 本格ミステリーとしては非常にオーソドックスな一族もの。事件自体に派手さはないものの、戦時下ならではの劇的な演出など、見せ場は多くあります。また、クリスチアナ・ブランドはどの作品でもそうですが、登場人物が生き生きと描かれています。クセのあるなしに関わらず魅力的で、最後に浮かび上がる犯人の心の陰の部分もすばらしいです。ただ、足跡トリックの弱さが唯一残念でした。 |
No.4 | 7点 | あびびび | |
(2016/10/02 22:18登録) 7点は、「かなり楽しめた」か。うーん、確かにページをめくる手は早くなったけど、本音は、「まあまあ楽しめた」の6点評価かも知れない。ただ、全体的に本格的な要素が楽しめたのでこの点数に。 最後にそれまで無能だったコックリル警部が突然の輝き。まあ、探偵役はそんな役割だろうが、それまでの容疑者家族、お互いの疑心暗鬼が面白かった。 |
No.3 | 8点 | 斎藤警部 | |
(2015/06/24 06:05登録) 詳細はなんだかさっぱり忘れてんだけど、ごちゃごちゃした話で相当面白かったのは確かなんだよ。いつか再読したいよ。 |
No.2 | 10点 | nukkam | |
(2014/08/21 16:10登録) (ネタバレなしです) 謎を巡ってああでもないこうでもないと議論するのは本格派推理小説の常套手段であり、これが巧妙だと真相に近づいているというわくわく感が高まってきたり、逆に謎が深まったりして面白さが格段に増えます。ブランドの凄いところは警察同士だけでなく容疑者同士にもやらせているところで、そこに異様な緊張感を生み出しています。1946年発表のコックリル警部シリーズ第3作の本書ではそれを家族間でやっていて、遠慮仮借なく「お前が犯人だろ」と告発し合っているのですからもう痺れます(笑)。作者得意のどんでん返しの連続に、思いもかけぬ急転直下の劇的な結末、そして最後の最後に明かされる不可能犯罪トリックと何もかもが素晴らしい演出効果をあげています。 |
No.1 | 6点 | kanamori | |
(2010/09/03 18:35登録) 親族が集まる邸宅で、遺言状を書きかえる寸前に邸主が殺されるという、クラシック・ミステリの定番のプロットで幕を開けますが、そこからの展開が一筋縄ではいかないブランドの本領発揮で、親族間での推理合戦(というか、告発中傷合戦?)が面白い。 蚊帳の外状態だった、コックリル警部の最後の推理は鮮やかですが、足跡のない殺人のトリックはバカミスのたぐいでした。 |