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ミステリの祭典

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フォックス家の殺人
エラリイ・クイーン、ライツヴィルシリーズ

作家 エラリイ・クイーン
出版日1957年01月
平均点7.00点
書評数16人

No.16 9点 じきる
(2023/01/04 23:53登録)
パズラーとしてだけで見るなら、クイーンにこれより凄い作品は幾つもありますが、個人的に偏愛しているので大甘評点。
家族ドラマとミステリが融和した物語が本当に素晴らしく、エラリイの活躍ぶりも良い。大好きな作品です。

No.15 7点 makomako
(2021/02/11 16:15登録)
 このお話は10年以上前にあった女性の死亡事件ですでに有罪確定している夫の罪の見直しをエラリーが依頼されるといった内容。
 10年以上たっているのだからエラリー得意の細かいことまで検証するといっても無理なことが多いように思うが、なぜか登場人物の皆さん印象が強烈であったせいか事件の詳細までよく覚えている。まあ都合の悪そうなところは忘れたということにもできるので、お話を書く方は都合がよいかもしれない。
 登場人物は少ない。
 犯人探しとしてはとても限られた人物だけなので簡単そうなのだが、なかなかそうはいかない。
 さすがクイーンといったところではありますが、結論から言うとちょっと肩透かしな感じを受けました。こういった結論しかないのではないかとも思っていたのですが。
 もちろん推理小説として立派なもので、読みやすく楽しめることは請け合いでしょう。

No.14 7点 虫暮部
(2020/06/26 12:00登録)
 後出しの情報が色々出て来たりして、パズラーとしてはいまひとつ。“調べる過程”の物語としては面白い。しかしこの設定なら“いつ毒が混入したか”と言う不可能性をもっと強調したほうが良かったんじゃないの。それでは謎が簡単過ぎる?

 ACのアレに、アニマルつながりで元ネタを示して挑戦している?

No.13 7点 HORNET
(2020/05/05 17:38登録)
 12年前に起きた殺人の真相を探るという1点だけで書き上げられた長編なのだが、作りがシンプルだからか、間延びする感もなくテンポよく楽しんで読めた。12年前の事実を子細に再現し検証するというエラリイの再捜査は地道だが、可能性を一つずつ潰していくその過程は、クイーン作品本来の魅力であるロジックが前面に出ており、退屈さを感じさせなかった。
 次々に殺人事件が起こるでもなく、「12年前の1件の殺人事件」1本で興味を尽きさせないのは、本作がパズラー一辺倒ではなく、ライツヴイルの人間模様やフォックス家の家族関係という面にも物語の興趣を割いている点にある。それが「ミステリだけでは味気ないから、プラスアルファの味付けとして」上乗せしたものではなく、事件の背景として、物語の一部として分かつことができないものとして描かれているところが、トータルとして読後の満足感を非常に高めてくれた。
 うーん…、私はライツヴィルシリーズでは「災厄の町」よりもこっちのほうが好きかな…。

No.12 6点 レッドキング
(2019/10/13 16:31登録)
「殺人が行われた。」「Aには犯行が可能だった。」「A以外には犯行は不可能だった。」「したがって犯人はAである。」・・・完璧な密室のごとく組み立てられた完璧なロジック。
だが探偵には「密室のトリック」を破る様に「ロジックのトリック」を破ることを要求される。よくできた「密室」が、結局は作者が読者を騙す「叙述トリック」であるように、この作品の「ロジック」も巧妙に読者を欺く「叙述トリック」により構成されている。
そして「本格ミステリ作家」エラリイ・クイーンには、そうした「欺き」でさえも「フェア」であることが要求される。ここでの叙述は「フェア」か?自分は「OK」だった。

No.11 6点 斎藤警部
(2019/05/29 23:47登録)
なんですかこの “無限大に拡がり過ぎて解は不能ならぬ不定です” の有様を逆から見たような結末は。 本作まさか ”何を評してもネタバレ” というコンセプトのもとに逆算して作られてないか? 後期クイーン問題どころじゃないんじゃないか(笑)? などと、不思議に奥深さを感じさせるが、感じさせるだけのようでもある一篇。 このコンセプトで、短めとは言え長篇に仕立てた事こそトリックというか、ミソなのかも? 逆エディプスコンプレックスみたいな蛮説をエラリィが持ち出したのは印象的だった。 なんだか青臭くとも不思議に頼れそうなエラリィ。 ふむ、締めづらい。 ♪ Fox hunting on a weekend ..

No.10 6点 クリスティ再読
(2017/05/06 13:46登録)
皆さん言うように地味な良作なのは確かだ。エラリイのスタンスが「公正」なあたりに、本作は一番の魅力がある。
本作、ベトナム戦争以前の「ベトナム症候群」モノだったりする...「正義の戦争」だったとしてもコワれる人は壊れるわけだ。なので丁寧に書かれた「一家族を通してみる社会小説」としての印象は非常によく、フォックス家の家族に嫌な印象を受けるキャラがいない(悪役の薬剤師とかおせっかい老女とかも、単に卑小なだけだし)。
だから着地点は何となく想像がつくんだけども、その結果ミステリ+小説としての出来は肩透かし。結局「虚構のハッピーエンド」みたいなことになって、評者は「これでいいのかなぁ?」と生温かな結末に若干モヤモヤする。強いて比較すると、クリスティだと「無実はさいなむ」あたりに近い家族小説なんだけど、ここで比較したらクリスティの家族幻想の無さ加減がひどく過酷に感じられる...
証拠の後出しに見られるように、クイーンのパズラー性に対する関心というかコダワリみたいなものが、本作だと後退しちゃった気もする。タイトルは原題・訳題ともにちょっと反則だと思う。もう少しなんとかならないか(原題もちょっと訳しづらい...The Murderer is a fox 殺人者はキツネだ、じゃ締まらないし)。感覚的には7点つけたらヨイショ、というくらい。

No.9 7点 ボナンザ
(2016/10/13 20:58登録)
ライツヴィル2作目。テーマは単純だが、所々にクイーンらしい論理立てが見られる。手がかりが後出しだったり(読者への挑戦状はないが)、真相が微妙だったりといった不満を差し引いても十分良作。

No.8 7点 青い車
(2016/09/27 21:33登録)
 今日ポケミス版で読了しました。つい昨日書評したバークリーの『服用禁止』と同じ毒殺もので、しかも12年前の事件を捜査する設定のためかなり地味めの作品です。しかし、犯人は彼で間違いないとしか思えない事件をどうひっくり返すのか、先が気になり一気に読み切ってしまいました。そしてやはり被疑者の容疑を否定する手際の見事さはさすがクイーンです。クライマックスでの盛り上がりも、派手さというよりドラマとしての味で満足させてくれます。前作『災厄の町』よりもとっつきやすく、推理にも重きを置いている分よりエラリー・クイーン的かもしれません。本当に奥の深い作家です。

No.7 7点 あびびび
(2016/08/14 01:50登録)
息子は、第二次世界大戦で日本兵を殺し(戦争だからやむえないのだが)、悩んでいた。父親が母親を殺して投獄したが、その血は濃く、自分も妻を殺すのではないかと…。実際、未遂に終わったものの、息子は夜中に妻の首を絞めているのだ。

若き妻は考えた。息子の精神を正常に戻すには、父親の事件が冤罪だと証明するしかないと…。そこでこの街(ライツヴィル)で数々の難事件を解いたニューヨーク在のエラリー・クイーンに依頼するしかないと…。

クイーンは、当時の人間を集めて現場再生をするが、その結果は父親が母親を毒殺したという事をより深く印象付ける結果になってしまった。しかし、「これは最初からそうなることだと思っていました」と、粘り強く説得し、あきらめない。

これは凄い推理小説だ!と思ったが、解決編で一つだけ納得が行かなかった。読み手には絶対推理できないハプニングである。ただ、これは小説の中ではご都合的(後だしじゃんけん)だが、現実なら十分あり得るのだから何とも言えない。

No.6 10点 nukkam
(2016/05/16 02:14登録)
(ネタバレなしです) 1945年に発表された本書は、架空の町ライツヴィルを舞台にした作品としては「災厄の町」(1942年)に続く作品で、内容的にも互角の傑作です(エラリー・クイーンシリーズ第17作)。有罪判決が出て一応の解決を見た事件をエラリーが再調査するというプロットはアガサ・クリスティーの名作「五匹の子豚」(1943年)を髣髴させます。登場人物がよく描けていてホームドラマとしても大変良くできていますし、事件の真相についてのクイーンの推理もお見事としか言いようがなく、鮮やかなどんでん返しから粋な終わり方に至るまでの展開には文句のつけようもありません。本書以降のクイーンは本格派推理小説としての水準が大きく落ちてしまい、しかも他人による代作もいくつかあるなど個人的にはクイーンは「残念ながら本書で一流作家時代は終わってしまった」と思っています。

No.5 8点 ロマン
(2015/10/22 21:22登録)
推理小説としては非常にシンプルかつ地味。クイーン流の論理的な推理は確かに見られるのだが、初期~中期の作品ほど緻密であるものとはとてもじゃないがいえない(19章結尾の訳注が特にそれを印象づけている)。ただ結末の意外性は良い意味で期待を裏切らなかった。犯人のいない殺人。結局のところフォックス家に救いがあったのかなかったのかは読者に委ねる、というのがクイーンの真意なのかもしれない。

No.4 6点 了然和尚
(2015/03/23 13:25登録)
空さんも書かれていますが、クリスティーの五匹の子豚と同一テーマで、読み比べるとクイーンの作風が出ていて勉強になります。水差しの手がかりが後出しに示され、本格推理としてどうかと思うのですが、同じタイミングで真相の手がかりも示されているので、本格を投げ出しているわけではないようです。結末にはいろいろ意見があるようですが、結局身内に真相を打ち明けるのは、その後の苦悶を考えると非情かと思います。
金田一耕助の礒川警部やDrフェルのハドリー警視のように、真相を聞いても「あっそう」で終わらしてくれる相棒がいれば、話が軽く収まってよかったのですが。

No.3 7点 Tetchy
(2012/07/19 21:15登録)
戦争後遺症で神経を病み、ついに妻をその手にかける寸前にまでなったライツヴィルの英雄デイヴィー・フォックスの、自らを“生まれながらの殺人者”という烙印を無くすため、過去に起きたデイヴィーの父親の妻殺しの罪を晴らすのが今回のエラリイ・クイーンの謎解き。

地味な展開なのに読ませる。後半の二転三転する展開の読み応えといったら、数あるクイーン作品の中でもトップクラスではないか。
そして二転三転する捜査の末、明らかになる真相とはなんとも云えない後味を残す。これはクイーン自身の手によるあの名作の変奏曲でもあると解釈できる。

しかし問題はこの作品が絶版で手に入らないことだ。これほど読ませる作品なのに。戦争後遺症に冤罪といった社会的テーマに、人間ドラマが加わり、更には本格ミステリとしてのロジックの面白さも味わえるという作品。
今回偶々、市の図書館にあったので読むことができたが自分の手元に置いておきたい作品だ。近い将来の復刊を期待してこの感想を終えることにしよう。

No.2 5点
(2009/07/15 21:34登録)
クイーンは『ドラゴンの歯』発表後考えていたプロットを『そして誰もいなくなった』に先取りされてショックを受けたそうですが、本作も10年以上も前の殺人事件の再調査ということでは、本作の2年前に書かれたクリスティーの『五匹の子豚』と共通する作品です。しかし、クリスティーほど多彩な容疑者たちは登場しませんし、解決のひねりもありません。非常に地味でストレートな作品です。
『災厄の町』系統のテーマ性重視作品ということで、再びライツヴィルを舞台に選んだのでしょうか。
ただし、本作でのエラリーの推理の後の「解決」選択には疑問を感じました。ある意味ごまかしてしまったことになると思うので、それで本当の問題解決になるのか、そこに疑問を感じてしまったのです。点数が低めなのはこの部分のマイナス1点。

No.1 7点 mini
(2008/11/02 11:48登録)
後期クイーンと言うとライツヴィルものが一つの柱だが、ライツヴィルものとしては順番で「災厄の町」と「十日間の不思議」の間に挟まれた第2弾が「フォックス家の殺人」である
「災厄の町」が題名に”町”と入っているように地方都市の季節の移ろいや情緒は感じられるが基本的には館ものなのに対して、「フォックス家」は何々家という題名の割にはいわゆる館ものでは無くて家族の絆がテーマである
事件は過去に起こった一件だけと地味な展開に終始するので、ケレン味ばかりを求める読者向きでは無いが、ミステリーにケレンが絶対必要とは私は思わないし、地味には地味なりの良さがある
私は”地味”という語句を悪い意味として使用したくない
一般にライツヴィルものの代表作とも云われる「災厄の町」は真相も見え見えで後期クイーンの狙いが必ずしも成功していないが、「フォックス家」の方が人間ドラマと謎解きの融合が上手くいってる気がする
多分クイーン好きな人には評価低いだろうね、クイーンとか好むような人はこういうの求めてないんだろうしね
しかし私には、「災厄の町」よりも「フォックス家」の方が後期ならではの良さが出ている気がするんだよなぁ

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