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ミステリの祭典

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あびびびさんの登録情報
平均点:6.33点 書評数:669件

プロフィール| 書評

No.209 5点 春にして君を離れ
アガサ・クリスティー
(2011/06/20 23:17登録)
クリスティなのにミステリではない。今までこの本を手にした方たちはあえてこのコーナーで紹介をしなかったのではないか。

嫁いだ娘の健康状態が悪く、母親がイギリスからバクダッドまで行く。娘の健康が落ち着き、それからイギリスに帰るのだけど、当時は大陸を通って、一週間ほどの旅だった。その矢先、交通の不都合で、砂漠のど真ん中の宿に何日間足止めされる。

持って行った本はすべて読んでしまい、なにもやることがない。それで砂漠の中で今までの人生を振り返る。それはすべてが自分自身のわがまま、自己中心的な人生であることを示していた。夫も3人の子供たちも自分の事を鬱陶しく思っているに違いない。

イギリスに帰ったらまず夫に謝ろう、そして…。蜃気楼にも似たその思いが、心の中で激しく揺れて行く。

それを読者(自分自身)に例えたら、本当に怖い。


No.208 3点 毒殺魔の教室
塔山郁
(2011/06/19 14:23登録)
ミステリー大賞の優秀賞。

ある小学校の6年生の教室でリーダー的な少年が毒殺された。そのあと、クラスメイトの男子が簡単な遺書を残し服毒自殺を遂げた。

それで事件は終わったかに見えたが、後に当時学級委員を務めた女性がそれを題材にした小説で賞をとり、それを読んだその学級の先生が自分の甥に調査を依頼する。

そのあとはその事件にかかわったであろう級友たちが30年前の事件についてそれぞれが意外な証言をする。

その語り口は逆バージョンの「告白」であり、物語の内容も酷似しているので惜しい気がした。


No.207 8点 殺人は容易だ
アガサ・クリスティー
(2011/06/17 11:36登録)
「そして誰もいなくなった」とか「オリエント急行の殺人」のように大がかりなトリックではない。それゆえに知名度はないのだろうが、よく出来ている。傑作だ。

外国勤務を終えた元警官が、ロンドン行きの列車に乗る。途中、アクシデントから老婆と向い合せになるが、その老婆はある村で連続して起こった死亡事故が実はある者による殺人だと言う。しかも次の犠牲者も分かっており、地元警察では心もとないから、ロンドン警視庁へ相談しに行くのだという。

その時は話を合わせていただけの元警官は、次の日、その老婆が交通事故で死んだことを知り、しかもその後、その村で老婆が言った名前の男が事故で死んだという記事を見てしまった……。

半分くらい読んだころに、そういえばこの作品はミステリチャンネルで見た覚えが…と思い出し、だいたい犯人も見当をつけて、物語もそんな流れになったが、さすがクリスティ、最後の最後でどんでん返しを食らった。元警官が推理する容疑者がすべて犯人だと思わせる組み立ては実に巧妙だ。

素直にミステリを堪能できるお薦めの一冊だと思う。


No.206 7点 果断
今野敏
(2011/06/14 17:27登録)
相変わらず、竜崎は清廉潔白、不動心を持つ警察官の鑑である。しかし、この竜崎の態度、行動がそれまでの警察を揺るがすものとすれば、警察は魑魅魍魎の世界なのか?

ただ、今回の事件で、立てこもり犯が死んだ時に、突入したSATが撃ったのかどうか分からないなんてありえない。その他、いろいろな設定は疑問符がついた。


No.205 7点 笑う警官
マイ・シューヴァル&ペール・ヴァールー
(2011/06/12 16:27登録)
これを読めば当時のスウェーデン警察の内情が手に取るように分かる?

二階建てバスで9名が機関銃らしきもので惨殺され、その被害者の中に若い刑事がいた。その刑事は功名のため(あせり?)昔の未解決の事件に首を突っ込んでいた…。

捜査の積み重ねで次々と新事実が分かるスタイルで、読者が推理すべき展開ではないが、警察小説のはしりとして満足できる。


No.204 4点 キドリントンから消えた娘
コリン・デクスター
(2011/06/09 14:13登録)
女学生の行方が分からなくなり、2年経過してから、その娘から「大丈夫」という手紙が来る。再捜査を任されたモース警部は事件の核心をついたかに見えたが、いずれの仮説もすぐに崩れ、またしぶとく捜査、推理するといった流れは現実的ではある。しかし、最後は曖昧で、スカッとしない。

モース警部の性格そのまま、人間味は感じるが、うやむやに物語が終わったようで、これはストレスがたまるわ…。


No.203 7点 七回死んだ男
西澤保彦
(2011/06/06 16:22登録)
SFミステリというのか?確かに本格とは言えない。初めからそういう設定でやる…と決まっている?ところが凄い。

高校一年生の目線に合わせた親しみやすい文章であり、ややこしいようでややこしくない。まあ楽しめたらいいかなと思う。

ちがう設定でもう一冊呼んでみたい気もする。


No.202 4点 ルパンの消息
横山秀夫
(2011/06/02 16:30登録)
高校生が校舎に忍び込んであれこれ…という物語の流れもそうだが、確かに全体的に切れがなかった。ただ、長い間埋もれていた作品にしては高レベルだと思う。

やはり横山秀夫と言えば短編集、これに尽きるかも。


No.201 8点 偽のデュー警部
ピーター・ラヴゼイ
(2011/06/01 13:07登録)
この作家にしては珍しく?本格的なミステリではないが、映画化されたように、話の内容は魅力的でおもしろい。

大金持ちの妻は売れない女優。主人公はその夫で、妻に援助してもらい歯科医を立ち上げ、やっと軌道に乗ったところで妻の都合(ハリウッドで女優再出発)ですべてを失うことに…。

そこで自分に好意を持ってくれている女性患者と6日間の船旅の間に妻を殺害しようと完璧な計画を立ち上げるが…。


No.200 7点 見えないグリーン
ジョン・スラデック
(2011/05/31 14:17登録)
ただ漠然と、グリーンは芝生かなにかだろうと思っていたら、人物名だった。

ミステリクラブが40年ぶりに復活?と同時に三件の殺人事件が起きる。その要因は何か?というのが主題だが、古いながらも楽しめるトリックと犯人だった。

感情移入などできる物語ではないが、単純にミステリを楽しめたと思う。ベスト100には必ず入っている作品のようだ。


No.199 7点 数学的にありえない
アダム・ファウアー
(2011/05/27 10:43登録)
賭けごとが大好きな数学者ケインは、常に物事を確率的に見る。それが裏目に出て、カードゲームで大借金を作り、マフィアに追われる身となるが、彼は癲癇(てんかん)持ちで、右側頭葉に未来を予見する能力が表れた。

こう書くとすでにミステリの領域を超えているように思うが、量子物理学の説明は複雑のようで分かりやすく、次の展開が待ち遠しくなるノンストップ・サスペンス。かなり異色だが、興味深い一冊。


No.198 6点 死の開幕
ジェフリー・ディーヴァー
(2011/05/20 18:50登録)
平凡だが、度胸満点の女性(ルーン)が主人公。あるポルノ女優のドキュメンタリーを自主制作しようと追いかけるが、その女優は爆弾テロで死亡する…。

それからは犯人探しに明け暮れ、容疑者の近辺をかぎ回るが、最後にあっと驚くドンデン返し?このために作者は伏線を張り巡らす…。


No.197 5点 火刑法廷
ジョン・ディクスン・カー
(2011/05/18 10:22登録)
最後のどんでん返しが問題になりそう。確かにくどいほど伏線が張られているが、それまでの明快な推理は一体何だったのか?

これが映画、テレビだったら衝撃的でゾクッときそうだが、いかんせん書物の中ではさらに現実味がなく、あきれ果てるだけ。ただし、その文化、伝習がある国ならうーんと唸るかも知れない。


No.196 8点 五匹の子豚
アガサ・クリスティー
(2011/05/13 16:24登録)
16年も前の事件を回想して心理的局面から事件を解決に導く。以前、ミステリチャンネルでずっとボアロを見ていたせいか、俳優のスーシエばかり思い出したが、それが決して邪魔にならないのが不思議だった。

いかにも手順がクリスティーで、自分は良いミステリを読んだ…と満足した。


No.195 4点 二度目の破滅
ロバート・B・パーカー
(2011/05/12 16:35登録)
だいたいがこの作家は女性にすごく甘いが、それもハードボイルドの資質のひとつなのか?

女性探偵だから…というわけでもないが、極悪非道の闇の大親分までが素直に調査に応じるというのは現実味がない。ミステリ的な謎の部分ももうひとつ切れ味を欠いている。


No.194 6点 三匹のねずみ
エド・マクベイン
(2011/05/12 16:15登録)
フロリダのアジア人居住区でベトナム人3人が殺された。この3人はある女性をレイプした疑いで裁判にかけられたものの、無実放免になった男たちだ。

その仕返しなのか、いずれも目玉はくり抜かれ、下半身の一物も切り取られ、口に突っ込まれていたという。裁判の時、無罪判決を聞いたときにその女性の夫が、「みんな殺してやる!」と叫んでいて、すぐに事情聴取され、逮捕されたが…。

ここで敏腕弁護士の主人公が登場してこの難問にメスを入れる…。


No.193 5点 灯台
P・D・ジェイムズ
(2011/05/12 16:05登録)
周囲は断崖絶壁、唯一ある小さな港はいつも監視下にあり、他所からの侵入は無理という孤島ミステリ。

その島の灯台に世界的に著名な作家が吊るされた。犯人は旅の客4名か、宿を切り盛りするスタッフ10名あまりの中にいる…。

この作者が85歳のときの作品らしいが、細かな人物描写は優れていたものの、ミステリとしての意外性、発展性に乏しかった。アガサクリスティより、ドロシーセイヤーズ派らしい。


No.192 8点 災厄の町
エラリイ・クイーン
(2011/05/04 01:17登録)
あるインタビュー記事によると、この作品は作者のお気に入りの第3位らしい。確かに国別シリーズとはまた異なる作風で、殺人事件より、その背景、心理的描写が骨格となっている。

しかし、エンディングは確実にミステリであり、思わぬ犯人が指摘される。こんなレベルなミステリをずっと読んでいたい気もする。


No.191 6点 りら荘事件
鮎川哲也
(2011/05/02 12:55登録)
刑事が二人リラ荘に滞在しているのに、止まらない殺人。そのスピード感?がフーダニットを加速させている。

しかし終盤に探偵・星影龍三が登場するやいなや、あっさり解決して刑事二人は恥の上塗り。いろいろな伏線は後で言われれば「なるほど…」というものもあった。特にトランプのカードはうっかりしてしまう。ただ、色白の薬とかは、もうひとつ納得できない。

「黒いトランク」を含めた鬼貫シリーズの方が好きかも。


No.190 8点 九尾の猫
エラリイ・クイーン
(2011/04/30 20:03登録)
連続絞殺魔のせいでニューヨークが恐怖のどん底になり、暴動まで起きる。特別任務についたエラリー・クイーンだが、なかなか推理が進まない。

それがある事件をきっかけに物語は意外な結果を迎える。最後の最後まで読者を離さないストリーの流れはまさにミステリの王道というべきか?

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