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ミステリの祭典

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ジェノサイド

作家 高野和明
出版日2011年03月
平均点7.82点
書評数17人

No.17 10点 rosebud
(2024/11/06 08:24登録)
<多少のネタバレ ただし大勢には影響ないと思う>
私は本格派ミステリーよりどちらかというと冒険小説・エンタメ系が好きでこの作品はど・ストライクだった。今まで和製冒険小説はあまり読んでいたのだが、この作品は海外の冒険小説と同じ感覚で読むことができた。と言いたいところだが、それ以上だった。詳細の評論は他の人が行っているので私は思ったことを。
・作者が様々なジャンルの学識を駆使して作り上げている。普通はそういうのは鼻に突く場合が多いのだが、物語に厚みを加えている。例えば理学的な記述の部分も文系の私には何がなんだが分からないのだが、なんか妙なリアリティがあって面白かった。そもそも、イェーガーの息子の難病は架空の病気で実際にはないようだ。
それに加え作者の政治哲学なども盛り込まれているが、私は同調した。
・小説でも映画でもこれが一番重要なのだが、キャラクターが立っている。傭兵部隊4人のキャラはもちろんだが、研人と相棒になった韓国人も良かった。個人的にはルーベンスが最も好きだ。主人公たちとは敵対する実行機関のトップでありながら、主人公たちに同情的で複雑な立場にいるところが、なんとも言えない面白さがあった。
そしてハイズマン博士も。

私はこの手の小説は先の展開を早く知りたいので、なるべく速読をするのであるが、この作品に関しては読むペースを敢えて落とした。なぜかというと前半から名場面、興味ある描写が目白押しで出てくるのである。わざとペースを落とし噛みしめるように読むことにしたのである。

もう大昔にフレデリック・フォーサイスの「ジャッカルの日」を読んで、読後大きな満足感があったが、この作品はそれ同等、いやそれ以上の満足感があった。

この作品は個人的に生涯ベストい入る作品となった。

No.16 7点 パメル
(2022/03/04 08:31登録)
二年半の時間を取材と執筆に費やして書き上げた筋金入りのエンターテインメントの力作。
アフリカでは不治の病を抱え余命わずかの息子を持つアメリカ人の特別部隊出身のジョナサン・イエーガーが、高額な治療費を稼ぐために謎と危険の多い任務に参加する。アメリカ大統領とその側近が、国家への脅威および全人類絶滅を招く恐れのある新種の生物が、アフリカで確認されたとの機密情報を仕入れ、そ対策を練り実行する。日本では、創薬科学を専攻している大学院生の古賀研人が、急逝した父親が極秘に遺していた謎の研究を引き継ぐ。これらのストーリーが交錯し、壮大なストーリーへと突入する。
アフリカの地では、アクションシーンが迫力満点で日本の舞台では、逃亡劇的なサスペンスシーンが繰り広げられる。そして、実際に世界各地で行われていた民族的な大虐殺が話に絡み、社会問題が提起される。
研人が周囲の人たちと交わす会話や、薬を作り出す過程で馴染みのない理系的専門用語が、かなり多く使われるので戸惑うこともしばしば。作者もかなり勉強したようで、ゲノム、創薬、ウイルス、社会人類学、医学、政治、進化などの知識量に圧倒される。
「正しい負け方を選ばねばならん」という素敵なセリフがあるが、これに気付いている人間が、ほとんどいないということが不幸の連鎖を引き起こすし、戦争がなくならない一つの理由でもあるのだと感じた。また、そのほかにも心に響くセリフがあった。決して読みやすくはないが、スケールの大きなエンターテインメントとして楽しませるだけではなく、様々なことを考えさせられる作品であった。

No.15 8点 メルカトル
(2021/11/17 22:40登録)
急死したはずの父親から送られてきた一通のメール。それがすべての発端だった。創薬化学を専攻する大学院生・古賀研人は、その不可解な遺書を手掛かりに、隠されていた私設実験室に辿り着く。ウイルス学者だった父は、そこで何を研究しようとしていたのか。同じ頃、特殊部隊出身の傭兵、ジョナサン・イエーガーは、難病に冒された息子の治療費を稼ぐため、ある極秘の依頼を引き受けた。暗殺任務と思しき詳細不明の作戦。事前に明かされたのは、「人類全体に奉仕する仕事」ということだけだった。イエーガーは暗殺チームの一員となり、戦争状態にあるコンゴのジャングル地帯に潜入するが…。
『BOOK』データベースより。

ハリウッド映画のスペクタクル超大作を観終えた様な達成感があります。単行本で590頁が税込み1770円はお買い得?ですね。まあ今なら古書店で税込み220円で買えると思いますが。それにしても、これは正に一冊で二冊分の内容が詰め込まれてると言って良いでしょう。それでいて、構成プロット共にほぼ完璧で、例えば敵兵の細かいエピソードに至るまで過不足なく描写されており、アメリカ政府のネメシス作戦を遂行する4人の傭兵チームと、二つのPCを基に新薬開発を託された研人の二つの支流が、やがて一つの大きな本流を作り出していく様は見事の一言に尽きます。

本作を読む前、アフリカを舞台にした傭兵たちの冒険譚だと何となく想像していましたが、それは大きな間違いでした。勿論その要素も有ります。しかし、日本、アメリカのホワイトハウス、アフリカのコンゴ共和国と世界を舞台に、それぞれの地で活躍する登場人物たちが何とも人間臭く、又生き生きと描かれており私の想像を大きく上回る壮大な人間ドラマに仕上がっていました。
『このミス』1位も十分頷ける充実の内容でお届けする、大スケールの冒険小説。理屈抜きに楽しめるエンターテインメントであり、ミステリやサスペンス要素もスパイス程度には効いていると思いますね。

No.14 8点 YMY
(2020/01/21 20:34登録)
死んだ父からのメールを発端に、創薬科学を学ぶ日本人大学院生と米国人傭兵の人生が交差する。かつて内向きの日本人には手が届かなかったフレデリック・フォーサイス風の情報小説が、力量ある作家の手にかかれば、今やごく自然に書かれることを示した。
このワールドワイドな物語が評判を呼んだのは、私たちの興味や現実の在り方が的確に捉えられているからに他なるまい。

No.13 8点 sophia
(2018/06/12 19:43登録)
えらい作品を読んでしまった。どこまでが本当でどこからが虚構か分からないです。特に理系部分。東野圭吾が「超理系殺人事件」で言ってたのってまさにこの作品ですね。結構な斜め読みで読みましたが、それでも読了に5日かかりました。スケールも地球規模でとにかくすごい作品なのは確かです。タイトルから想像できる通り残虐描写もありますが、アフリカって現実でもこんなんなんでしょうねえ・・・

No.12 7点 いいちこ
(2016/07/26 14:39登録)
多くのみなさんが指摘されているとおり、ハリウッド映画を彷彿とさせる、緻密でスケール感のあるプロット、高いリーダビリティは評価。
一方、本サイトの位置付けから詳細な言及は避けるが、作者の歴史観に裏打ちされた極端な人物造形やエピソードの挿入には、強く違和感が残り非常に残念な印象

No.11 8点 E-BANKER
(2015/03/19 21:10登録)
2010年4月~2011年4月、『野生時代』誌にて連載された後に発表。大きな話題となった作品。
日本推理作家協会賞、山田風太郎賞受賞。その年の各種ランキングでもトップに推された超大作。

~イラクで闘うアメリカ人傭兵と日本で薬学を専攻する大学院生。まったく無関係だったふたりの運命が交錯するとき、全世界を舞台にした大冒険の幕が開く。アメリカの情報機関が察知した人類絶滅の危機とは何か。そして合衆国大統領が発動させた機密作戦の行方は? 人類の未来を賭けた戦いを緻密なリアリティと圧倒的なスケールで描ききり、その衝撃的なストーリーで出版界を震撼させた超ド級エンタテイメント!~

やはり評判はダテではなかった。
その圧倒的なスケールと緻密なプロットには素直に敬意を表したい。
日本、アメリカ、コンゴという三つの舞台で別々に進行するストーリー。
やがてそれは「進化した超人類」というキーワードで結び付けられていく・・・
特にコンゴでの現地兵士たちとの戦いは圧巻の一言。
「まさかここまで酷いのか・・・」と絶句せざるをえない世界が容赦なく描かれている。

個人的には古賀研人というキャラクターに惹かれた。
科学者である父親を軽蔑しながら、自身も薬学の世界に身を置く矛盾。死んだ後も父親の業績を軽んじてきたが、ふたりの子供の命を救うべく命を賭けた新薬開発に心血を注ぐことになる・・・
(父親への捻れた思いって何か分かるよなぁー)
ラストはご都合主義的な展開なのだが、そんな感想は超越してとにかく「手に汗握る」という感覚を久し振りに味わった。

本作を評価しない方は、「まるでハリウッド映画のような娯楽志向的作品」と思われるのだろう。
確かにそれはある。
多分に映像的でビジュアルを意識したプロットなんだろうと思う。
まぁでもそれこそが作者の目指す方向性なのだろう。
とにかく時間を忘れて作品世界に没頭させた筆力や展開力は賞賛に値する。
未読の方は時間のあるときに一気読みしてはいかがでしょうか。

No.10 9点 itokin
(2014/11/20 12:42登録)
アフリカ、アメリカ、日本で物語が同時進行するスケールの大きな物語なので展開が興味深かったがいずれも全編迫力満点で構成、表現力に感心させられた。オリバーストーン監督の近代史を全編テレビで見たがその時、少なからずアメリカという大国の正義の戦争にに衝撃を受けたが、一人の人間に巨大な権力を与えることがいかに危険かということを高野さんも指摘されてるんだなと思った。スケールが大きすぎるので一部ご都合主義も見えるが一読をお勧めする。(推理協会賞受賞作)

No.9 8点 あびびび
(2014/10/20 17:51登録)
実にスケールの大きな物語。アフリカでの大量虐殺は予想以上に陰惨で、読むだけで吐き気を催すほど。また、アメリカ大統領(たぶん親子のあの…)の混迷ぶりも不気味だった。

あのふたりはいったいどうなるのだろう?トム・クルーズあたりこの作品を映画化してくれないだろうか?

No.8 8点 白い風
(2012/11/19 23:25登録)
殺害を計画するアメリカ政府、謎のミッション地コンゴ、そして日本の一大学院生の3つが同時進行していきワクワク感もありました。
人類絶滅要因を記した『ハイズマン・レポート』や新薬創製『GIFT』などミステリ的要素よりSFっぽい内容でしたね。
映画化されると面白そう!
ただし、日本映画レベルじゃなく、ハリウッド作製がいいね!(笑)
ただ、題名「ジェノサイド」が語るように大量殺戮のところは万人受けはしないとは思うけど、この作品には必要かもね。

No.7 8点 ムラ
(2012/11/10 04:08登録)
実際に起こっている戦争の悲惨さや、不治の病と闘う人たちと化学者の葛藤。そのリアルさが溢れていたから、本当に起こってもおかしくないという説得力が凄いあった。
少し専門分野的な話が多かったかなと思うけど、戦地で戦うイエーガーと不治の病の薬づくりに挑む古賀というまったく別種の話を同時並行しつつ、しかもどっちも勢いを落とすことなく最後まで読み終えるような内容には素晴らしいとしかいいようがない。もちろんルーベンスサイドの話もわくわくしながら読めた。
SFとしても読めるし、ハリウッドみたいなアクション物しても読めるし、謎を探求するミステリとしても読めるエンタメ性のある一冊でした。
欲を言えば「エマ」の正体で驚きが欲しかったかな。あとはバーンズの人間描写も。

No.6 5点 ある
(2012/08/13 23:06登録)
私の知識不足のため,専門用語の多さが少し疲れました。科学的な知識が多少なりともある方であれば,もっと楽しめたのだろうと思います。

良くも悪くもハリウッド映画にありそうなお話でしたが,きちんとまとめている点には好感がもてます。

No.5 6点 touko
(2012/08/01 20:52登録)
スケールの大きな国際謀略冒険SFバイオサスペンス。

アメリカの学校で映画製作を学んだ経歴もある作者だけあってか、ハリウッド娯楽大作映画のノリで、万人がハラハラドキドキ楽しめそうではあるのですが、キャラ造形が陳腐というのか、戯画化通り越して、時々ギャグ漫画みたいになっているのが、個人的には鼻につきました。
特にブッシュもどきのアメリカ大統領なんか、やりすぎで、アメリカの風刺コントみたいなんだもの(最期なんて、ドリフのタライが落ちてくるコントじゃないんだから……笑)。

上記大統領にに限らず、全体的に善玉、悪役をはっきりさせるために、極端なキャラづけがなされてしまったんでしょうか……どうも興ざめしてのめりこめず。

超人類の描き方も、今時さすがにこれはアナクロすぎでは……私もkanamoriさんと同じく、小松左京の60年代の作品等を思い出しましたもん。
私の場合は、思い入れがないためか、ノスタルジーではなく、50年前の作品よりテーマとかも古臭く感じるのはどうなの? とか思っちゃいましたが(^_^;)

もっとも、小松左京はその時代に即したシビアな文明批評が売りの作家だったけれど、これはどっちかというとソウヤーとかの楽天的リベラル系SFの系譜なのかなあ?? ソウヤーみたいな科学色の強いハードSFでは全然ないけれど。

同じ時期に書かれ、似たような題材を扱っていても、今日的な問題意識のあった伊藤計劃の善悪二元論では割り切れない「虐殺器官」(テーマ先行で物語性はイマイチでオチも弱いかも)とは好対照。

とはいえ、スピーディかつ派手な展開の目白押しで、だれる部分もなく、大風呂敷広げてもちゃんとまとめているし、目新しさはないものの、職人的な娯楽作品としてよく出来ているんじゃないでしょうか。

No.4 8点 HORNET
(2012/03/25 07:13登録)
 新薬研究者であった亡き父の研究を引き継いだ(というか手渡された)大学院生が,その研究にまい進するうちに,それがコンゴ紛争地帯での秘密作戦,合衆国政治,そして人類存続の問題にまでつながっていく。ネットを介したリアルタイムの戦場とのやりとり,国を越えた人々の熱いつながりなど,いろんな側面から存分に楽しめる。
 主人公と,李正勲とが協力して困難に立ち向かう姿がいい。世界規模のスケールの大きな舞台と,それを描く精緻な構成,作者の作品にかける意気込みが見事に昇華している。読後感◎。

No.3 9点 haruka
(2012/01/24 20:24登録)
壮大なスケール、精緻極まるプロット、心を揺さぶる人間ドラマ、難解さを感じさせないストーリーテリング、どれをとっても一級品のエンターテイメント。一部で偏った歴史観に批判があるようですが、個人的にはステレオタイプのホワイトハウス含め、物語を盛り上げるためのエッセンスと解釈しました。むしろ、残虐な殺戮シーンや現世人類の愚かさを描きながら、二人の若い科学者が決意を新たにするラストシーンに作者の強いメッセージを感じました。

No.2 8点 kanamori
(2011/08/17 13:42登録)
地球規模で展開される骨太の冒険サスペンス。
アフリカの密林での戦闘アクション、創薬化学とタイムリミット・サスペンス、ホワイトハウスが関わる陰謀もの、”無限に発達した道徳意識を持つ”未知の生物など、詰め込み過ぎとも思える様々な要素が徐々に収斂していく構成力が秀でていて、評判どおりの圧倒的な面白さで堪能しました。
織り込まれているメッセージはやや陳腐かもしれないが、学生時代に嵌った「神狩り」シリーズや小松左京「復活の日」などの初期作に通じる懐かしさも感じさせてくれた。

No.1 8点 isurrender
(2011/07/30 02:47登録)
非常に面白かった
SF色は強いが、ロジカルな展開だし、なんといってもスリル満点
ミステリとしても優れた作品であると思う

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