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ミステリの祭典

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そして夜は甦る
沢崎シリーズ

作家 原尞
出版日1988年04月
平均点6.33点
書評数21人

No.21 3点 レッドキング
(2022/07/11 18:11登録)
デビュー作とな。出てくる固有名詞は「リアル」な物が多いが、主役の探偵はじめ、デカ・ヤクザ・記憶喪失男・弁護士・経営者一族(あの○○グループモデルであろう)・文士政治家と大俳優の兄弟(当然にあの兄弟モデル)・水商売女・・尽くが、類型的で薄っぺらく「リアリティ」に欠けて・・欠けてていいが、魅力が無い。失踪したジャーナリスト・謎の記憶喪失男・謎の死体を巡る進行形事件と、過去の都知事選怪文書・銃撃事件(これも2022年7月現在の元首相射殺事件に比べると・・)の連結は、面白くないことはないが、解明されたWho・What真相は、捻りがあまく見え透いてる。

No.20 6点
(2021/04/01 00:16登録)
 私立探偵・沢崎(ポケミス版では「澤崎」)初登場のシリーズ第一作。1989年度第2回山本周五郎賞の候補にも挙げられた(なお受賞作は吉本ばなな『THUGUMI つぐみ』)。処女作らしからぬ完成度と、チャンドラーの世界を完璧に現代日本に移し替えたその手腕は高く評価され、マニアを含む一般読者の人気も高い。いわゆるバブル期に発表されたものだが、国産ハードボイルドの完成型として確実に里程標となる作品である。
 文章は先達の矢作俊彦に比べるとやや生硬。ポケット・ミステリ版「著者あとがき」には執筆中常に手元にHPB版『さらば愛しき女よ』を置き、これと同じ27字×18行の字組みでタイプし両者を比較することにより、量的にチャンドラー読者の許容範囲に近づけるよう配慮した、と記されている。良くも悪くも推敲に推敲を重ねるタイプで、それ故生真面目過ぎてユーモアや遊びの少ないところは不満。もっとも氏の著書を熟読するのは初めてなので、今後これがどうなってゆくのかは分からないが。
 ストーリーは一つの大きな企みにもう一つの集団が影響されて新たな企みが発生。思いもよらぬ展開に最初の集団が追い詰められ、蹉跌と誤算から生じた苦し紛れの策謀に、記憶喪失の男と彼に協力するフリーライター、加えて主人公・澤崎が巻き込まれていく。なかなか凝ったプロットだが、ミステリとしては一応筋書き通りに進んでいた計画が、駒の感情の縺れから、精密機械が砂を噛んだように狂ってゆくところが面白い。アクシデント込みでなんとか纏めはしたものの、シチュエーションの逆転に気付いた澤崎の洞察により事件の構図は見抜かれ、真犯人の目論見は瓦解する事になる。

 私は新宿に戻るまで、愛情や真実や思いやりのほうが、憎しみや噓や裏切りよりも遙かに深く人を傷つけることを考えていた。商売柄、喜びを分かち合えない者たちの離反を見るのは日常茶飯事なのだが、苦しみもまた分かち合わなければ癒されず、むしろ増大するものらしい。

 ある種の哀しみを湛えた前者の結末に比べると、後者の計画はやや蛇足。効果は挙がったものの集団の纏まりを欠いて収拾しきれず、こちらも後になるに従い齟齬につぐ齟齬。発想もややチープで〈そんなに上手くいくかねえ〉という気がする。
 丁寧な長篇だが、そんな訳で採点はやや辛めの6.5点。ただしパズラーへの拘りはかなり強い。

No.19 7点 tider-tiger
(2019/08/16 20:21登録)
前に書評した『私が殺した少女』とは違ってプロットに許せない瑕疵はなく、文章もこちらの方が落ち着いているように思います。この人は時間をかけて何度も何度も推敲しないとダメなタイプのようですね。
なんとも言えない古めかしさ、閉塞感のある作品ですが、少なくとも古めかしさに関してはまったく気にならないので、本作は素直に楽しめます。
既読は三作ですが、そして夜は甦る>さらば長き眠り>私が殺した少女、ですね。

最初と最後だけ登場する男が美味しい所をかっさらっていく。さらにいくつかのセリフ。チャンドラーファンなら『長いお別れ』か『さらば愛しき女よ』を連想するのではないでしょうか。それを高らかに宣言したうえでやっているわけですから、大した度胸です(褒めています)。
チャンドラーよりもしっかりとしたプロットを組みつつ、こんな具合にチャンドラーからちょこちょこ頂きもする。
チャンドラー本人が読んだら意外と高評価しそうな気もします。

三大疾病といえば「癌」「心疾患」「脳卒中」ですが、小説の登場人物では「脳腫瘍(癌といえば癌ですが)」「白血病(これも癌かな)」「記憶喪失」あたりの罹患率が異様に高い傾向があります。本作では……ちょっと安易ではないかと感じた次第です。
しかし、あの兄弟はどう考えても実在のあの兄弟でしょう。そんなに悪い人たちだったのか。

No.18 4点 パメル
(2016/01/13 01:02登録)
改めて自分はハードボイルドは苦手という事を思い知らされた
カッコイイ台詞や行動がどうしても鼻につく
煙草一本吸うだけの描写でなぜかキザに感じてしまう

No.17 10点 Izumi
(2015/07/12 18:24登録)
早川書房への持ち込み原稿が即採用されたという、和製チャンドラー原りょうのデビュー作。
ハードボイルドファンなら、冒頭の探偵沢崎と事務所を訪れた謎の男とのやりとりを読むだけで痺れてしまうだろう。タフでキザな孤高の探偵がロサンゼルスでもサンフランシスコでもなく新宿にいるというだけで感慨深いものがある。
複数の人間から舞い込む同一人物の失踪探しが、やがて都知事狙撃事件にまで関係していくという綿密なプロットも魅力的。
国産ハードボイルドを読むならばまずはこの一冊からという傑作。

No.16 6点 E-BANKER
(2013/07/03 22:00登録)
1988年発表。私立探偵・沢崎シリーズの第一作目。
作者の作品なら、もちろん直木賞を受賞した「私が殺した少女」なのだろうが、やはりまずはこちらから、というわけで読了。

~西新宿の高層ビル街のはずれに事務所を構える私立探偵・沢崎のもとへ海部と名乗る男が現れた。男はルポライターの佐伯という男がここへ来たかどうかを知りたがり、二十万円が入った封筒を沢崎へ預けて立ち去った・・・。かくして沢崎は行方不明となった佐伯の調査に乗り出し、事件はやがて過去の東京都知事狙撃事件の全貌へとつながっていく・・・。活きのいいセリフと緊密なプロット。チャンドラーに捧げられた記念すべき長編デビュー作!~

『チャンドラーに捧げる』という心意気が何よりも素晴らしいではないか?
個人的にも、トップ・オブ・ハードボイルドといえば「チャンドラー」だと思っているので、そこは素直にうれしいのだ。
セリフ回しや表現方法などは、チャンドラーっていうか訳者・清水俊三の文章を読んでいるような錯覚に陥った。
まるで、F.マーロウが新宿の裏通りで跋扈しているような感覚・・・いいよねぇ、痺れた。

ただし、そういう風に感じたのは中盤まで。
紹介文のとおり、沢崎は、あるルポライターの蒸発事件に始まる陰謀に徐々に巻き込まれているわけなのだが・・・
中盤以降は、複数の事件が絡み合いながら複雑化していく過程が描かれる。
この辺から、スピーディーで活きのよかったテンポが鈍ってしまい、それに伴って読む方のテンポも降下していく。

まぁ、単なるハードボイルドではなく、謎解きミステリーとしてのプロットも十分に加えているという点は評価していいのかもしれないが、ちょっと複雑化しすぎたかな。
特に終盤~ラストは、急展開やらドンデン返しやらが続き、ドタバタして終わったなという感じがした。
せっかくの作風&雰囲気なのだから、もう少し落ち着きのあるラストを味わいたかったなぁ・・・
それがやや残念。

評価はちょっと辛口かもしれないけど、期待の裏返しということ。
でも、まぁ読み応えは十分の作品。

No.15 6点 VOLKS
(2011/04/03 14:37登録)
久しぶりの再読。
沢崎シリーズは好きなのだが、この作品にはあまりのめり込めないのは何故か、と思っていたら、なるほど、他の方の書評を読んで気付いた。
犯人側に魅力がない、のだ。

No.14 8点
(2011/01/19 10:18登録)
20年ほどまえに「私が殺した少女」を読んで以来の原作品です。そのときは忙しすぎたのか、気になることでもあったのか、乗り切れず途中で放置してしまいました。だから、著者作品は初めてみたいなものです。

チャンドラーに捧げるなんて、なかなか言えませんよね。自信の表われでしょうか。でもこの献辞にふさわしい出来ばえだと思います。チャンドラーをはじめ数々の海外作品を読んできて、完璧を目指して書いたデビュー作という感じがします。
文庫本の裏表紙の紹介には、「いきのいいセリフと緊密なプロット」とあります。
文章、特にセリフについては申し分なしです。一方のプロットは細やかすぎてテンポが遅いのではと感じましたが、最後まで読んでみると、これが凄い。中盤までは事実関係が交錯する複雑なストーリー(でも書き方がうまいせいか読みにくくはなかった)ですが、後半からラストの締めくくりまでで、それらが本当にうまく生かされています。この後半は絶品。最後の1行まで上手さが光っています。
これだけプロットが精緻に練られていれば、チャンドラーをまねた似非ハードボイルドにはあたらないのでは。むしろ、本格ミステリ風味の和製本格ハードボイルドといったほうが適切です。いや、本書こそが王道を行くミステリーなのではとも思っています。
それにしても主人公の沢崎の推理力は本格ミステリの探偵なみです。これにも脱帽。同じ沢崎シリーズの「私が殺した少女」も早く再読?したいですね。

本書に合わせて書評もハードボイルド文体でカッコよく書こうと思っていましたが、結局いつもどおりになっていしまいました(笑)。

No.13 6点 E
(2009/10/31 21:32登録)
初原りょう氏作品沢崎シリーズ。
何気なく聞いたことがあるタイトルだったのですが、やっと手に取る事となりました。
ハードボイルド探偵ですね。最後に驚きの真相が待っている訳ですが、何となく淡々と平坦な路を辿ってきた感じ。
彼の過去"渡辺"が気になるなぁ・・・

No.12 8点 frontsan
(2008/12/08 11:48登録)
沢崎シリーズの、最初の作品です。「私が殺した少女」を読んでから、こちらを読んだのでひどく後悔しました。これから読まれる方は、発表順に読まれることをお勧めします。

No.11 2点 とろろ
(2008/07/12 20:19登録)
必死にチャンドラーの真似をしているのは愛嬌があるが、如何せん内容が全く伴っていない。

No.10 7点 いけお
(2008/03/18 23:04登録)
テンポもよくクオリティの高いハードボイルドだと思う。
既読のこうゆう系統の作品では一番よかった。

No.9 10点 Tetchy
(2008/03/18 22:48登録)
意外とみなさんの評価が低いのにビックリ!
デビュー作にしてこのクオリティにまず瞠目。
チャンドラーの諸作を読んでいるとところどころニヤリとする演出が散りばめられている事が解ります。
とにかく名文、美文のオンパレード!
この良さ、解らない人たちが可哀想。

No.8 6点 ギザじゅう
(2005/03/01 16:06登録)
錯綜したプロットが光った佳作。本格的視点から見ても満足のいく作品ではある。が、この「洒落た会話」とやらについていけない。

No.7 8点 ZERO
(2004/11/07 02:21登録)
複雑なプロットと洒落た会話。まさにチャンドラーの直系でしょう。直系過ぎるのが気になりはしますが、そんなのは瑕じゃありません。この作品の登場人物の設定が実在の人物を予見していたことが証明するように、小説としてのリアリティも充分です。喋り過ぎな感のある日本のハードボイルドよりも僕はこちらのほうが好みですね。

No.6 7点 どんたま
(2004/11/04 22:27登録)
今となっては古くさいのかなあ、私は好きなのだが、確かにこんな超人的な私立探偵いるわけないんだが、文章もしびれるんだが若い人には理解できないのかなあ。

No.5 6点
(2004/06/25 22:13登録)
疲れた

No.4 4点 ろん
(2003/07/22 10:27登録)
正直、あまり面白くなかったなぁ・・・。
結構ハードボイルドも好きだけど、なんか乗り切れなかった。

No.3 7点 小太郎
(2003/04/02 00:37登録)
コテコテのハードボイルド、この文体、最初はわらってしまいました。

No.2 4点 美来
(2002/06/12 11:45登録)
探偵があんなことを依頼人に言って、商売になるのが不思議。一昔前のハードボイルドだなぁと感じました。

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