home

ミステリの祭典

login
追想五断章

作家 米澤穂信
出版日2009年08月
平均点6.33点
書評数21人

No.21 7点 ミステリーオタク
(2024/06/20 22:19登録)
 古書店アルバイトの主人公がある人からの依頼により、ある故人が書いた、同人誌などで少数の人にしか読まれていない昔の5つの掌編小説を探し回っていく話だが、小説はいずれも「リドルストーリー+切り離された1行の解答」になっているのが何ともユニーク。
 主人公は探し求めるうちに依頼の枠を越えて、作者の人生、人間性、重大な疑惑と関連した作品群の意図と家族との繋がりにまでも踏み込んでいく。
 
 特段に感心したところはなかったが奥が深く、良し悪しはともかく綺麗に纏まったヒューマンミステリだと感じた。

No.20 7点 ぷちレコード
(2023/05/30 23:07登録)
叔父の古書店で店番をしている青年が、客に頼まれて奇妙なアルバイトを引き受ける。依頼人の父親が生前に書いた五つの短編小説を探し出す仕事である。
そのうち四編は古い同人雑誌などの載っているのが見つかったが、なぜかいずれも結末の一行を伏せたリドル・ストーリーになっていた。調査を続けるうちに、彼は未解決のまま終わった「アントワープの銃声」事件に行き当たる。二十二年前のその夜、依頼人の両親の間にいったい何があったのか。真相はその最後の一行に隠されている。
小説の中に別の小説を組み入れて、異なった時制の物語を同時進行させる手法は珍しくない。しかし、このように五編の「小説中小説」が緊密に組み合わさってひとつの物語を構成するミステリは、あまり無いのではないか。

No.19 8点 ʖˋ ၊၂ ਡ
(2021/06/14 16:11登録)
5つのリドルストーリーの意外な繋がりと、そこに秘められた意味をたった一行の結末で知る時に物語がひっくり返る。本好きにはたまらない要素たっぷりの一冊。少し湿り気を帯びた主人公の造形がリアルで、彼の行き先がとても気になった。

No.18 6点 パメル
(2020/03/16 09:45登録)
主人公は伯父の家に居候し、彼が経営する古書店でアルバイトしている菅生芳光。ある日、北里可南子という女性が訪れ、父親の参吾が書いた五つの短篇を探しているという。各篇を見つければ報酬を支払うという言葉に魅了され、芳光は仕事を引き受けることに。
わずかな手掛かりから、一篇一篇を探していく芳光。見つかった短篇はどれもリドルストーリー、つまり事の真相や主人公の決断など、肝心な結末を明確にせず、判断を読者の手に委ねる小説となっている。
この五篇が非常にバラエティに富んでいる。ルーマニアやインド、中国、ボリビアなどを舞台に、そこに伝わる奇妙な話や不可思議な出来事が語られていく。イマジネーション豊かなこの五篇が一度に読めるだけでも、かなり満足度が高い。
芳光の思い、可南子の思い、参吾の思い。謎が少しずつ解かれていくにつれ、それぞれの胸のうちが複雑に絡み合っていく。その心理の動きも丁寧に描かれている。そして最後までたどり着いた時、謎が解明されたという爽快感だけではなく、深くて重い余韻が残されることになる。ただ、真相が容易に予想できてしまう点は残念。

No.17 9点 sophia
(2018/05/03 23:20登録)
単行本でわずか230ページほどの作品ですが、そう感じさせないほどに密度の濃い作品でした。リドルストーリーという物を逆手に取った展開は見事。米澤作品の中では「折れた竜骨」に次ぐぐらいの出来ではないでしょうか。難を言えばタイトルですかねえ。堅苦しくてとっつきにくい。でもむしろこれがいいのかなあ。しかし全体に流れる物悲しさが何とも言えませんね。登場人物はみんな不幸ですし。

No.16 9点 邪魅
(2017/02/18 02:01登録)
氏の長編だとこの作品が一番好きですね
5つのリドルストーリーに焦点を当てた本作、成程よくよく考えていけば確かにそういう風に捉えることも出来るのだというのを初めて知ったときは鳥肌ものの衝撃でした

No.15 7点 青い車
(2016/09/25 21:31登録)
 一見、何の意味もなさそうな小説の数々が次第に謎を大きくしていき、最終的に一本の線でそれらが繋がるプロットがユニークで面白いです。文章もこれまで以上に重すぎず軽すぎず、ちょうどいい塩梅で洗練されている印象を受けます。難を挙げるとすれば、登場人物が主人公を含めなんだか没個性的でぼやけた気がなくもないところがあります。

No.14 4点 風桜青紫
(2015/12/19 09:07登録)
なんか予想に反したオチとかがあるかと思えばそんなことはなかった。導入部の発想なら本ミス大賞の候補になっても違和感はないんだけど。作中作のリドルストーリーもみみっちい自称文学だし、こんなもんに感心してるのはよほど普段文学に触れない輩だろう。文章と話のスジはまともなので4点にしておく。

No.13 5点 ボナンザ
(2014/11/12 20:52登録)
リドルストーリーを扱った佳作。
結末が予想できてしまうのがやや難点ですが、面白い試みだと思う。

No.12 7点 mohicant
(2012/10/16 23:40登録)
途精緻な本格ミステリというのも嘘ではなかった。

No.11 5点 黒い夢
(2012/10/11 07:51登録)
物語の構成が面白かったです。
真相についてはそこまで驚きはありませんでしたが、登場人物の複雑な思いが読んでいて感じ取れる作品だったと思います。

No.10 5点 E-BANKER
(2012/05/27 21:47登録)
2009年発表。その年の各種ランキングで高評価を得た長編。
5つのリドル・ストーリーをめぐる不思議な味わいのミステリー。

~大学を休学し、伯父の古書店に居候する菅生芳光は、ある女性から死んだ父親の書いた5つの「結末のない物語」を探して欲しい、という依頼を受ける。調査を進めるうちに、故人が20年以上前の未解決事件「アントワープの銃声」の容疑者だったことが分かり・・・。
5つの物語に秘められた真実とは? 青春去りし後の人間の光と陰を描き出す、作者の新境地~

なかなか「凝った」作品だなぁという印象。
まずは、プロットそのものが面白いとは思った。
5つのリドル・ストーリーが過去の未解決事件につながり、最終的には親子、そして夫婦の間の微妙な関係を炙り出す・・・
そして、主人公自身も何だか謎多き人物で、依頼を受け調査を行いながら、自身の人生も見つめ直すことになっていく。
まぁ、ロジック重視のミステリーにはない味わいではあります。

ただ、やっぱり個人的には好みでない。
結局、何が本作の「謎」だったのか?
5つの結末のない物語と、それに付随すると思われる結末の1行の符号そのものが謎なのか?
過去の「アントワープの銃声」と現在の関係が「謎」なのか?
全てが中途半端なままラストになだれ込んだ感じがしてしまった。
(主人公の伯父や母親も謎めいて書かれているが、それに対する解答は結局なにもなかった・・・)

リドル・ストーリーらしく、後は読者の想像にまかせる、ということかもしれないが、
なんか、モヤモヤしてしまう。どうしても。
(巻末解説では、「アントワープの銃声」事件と、現実の某有名事件との類似が指摘されていたが、あまりピンとこなかった・・・)

No.9 5点 3880403
(2011/04/16 03:18登録)
途中のストーリーとその結末のメモを楽しみに読み進めていた。
ラストのラストはさほど驚きは無かった。

No.8 8点 HORNET
(2011/01/10 16:02登録)
 物語の結末自体は途中から予想が出来ました。ただしそれは事件の真相という点だけで,5つのリドルストーリーの仕組みということではありません。本筋においては謎を担う役割になっているそれぞれのリドルストーリー自体もそれ単体でなかなか面白く,二重においしい気がしました。よく考えられた作品だと思います。

No.7 7点 まさむね
(2010/09/11 11:09登録)
仕掛けの一部は確かに分かりやすいものの,全体的に面白い試みではある。その点は大いに拍手を送りたい。
ちなみに,作中の5つのリドルストーリー自体が,何気に良い。特に,最後のリドルストーリー「雪の花」などは,本作品の真実とも相まって,何と言うか,一回り深いリドルストーリーに仕上がっている。文学のかほりすら漂う。(ちょっと言い過ぎかな?)

No.6 5点 kanamori
(2010/07/12 21:05登録)
結末が伏せられた5つの物語という構成は面白いと思いましたが、仕掛けが見え透いているのでラストの”回答”に驚きはありませんでした。
読み心地のいい文章の割に、リーダビリティはちょっと落ちます。

No.5 5点 yoshi
(2010/03/18 12:52登録)
面白い試みだと思います。
ただこのリドルストーリーの作者の心境に、いまいち共感できませんでした。彼は真実を知らせたかったのか知らせたくなかったのか? アントワープでの事件の真相も、割と想定の範囲内だった気がします。

No.4 6点 おしょわ
(2010/01/24 22:45登録)
狙いは非常に良いだけにもう一歩踏み込んでひねって欲しかった。

No.3 6点 あるびれお
(2009/11/09 23:58登録)
残された5つのリドルストーリーとそれとは切り離された1行の結末という仕立てから、物語全体の構造は、確かに早い段階で察しがつきました。それを気づかれてなお読書に引きずり込むだけのパワーがあったら良かったのになあ、と感じます。

No.2 5点 江守森江
(2009/11/07 19:01登録)
大人になりきれない主人公が居候先の古本屋でヒロインから依頼された5つの遺された断章(小説)を探す話。
その断章が過去の事件を暗示させるリドル・ストーリーで、ヒロインに遺された「結末の一行」と併せ挿入される。
リドル・ストーリーに「結末の一行」が遺されている事に違和感を感じ、早い段階で作者の狙いが察せてしまった。
更に、プロローグと合わせ過去の事件の真相にも到達した。
リドルと仕掛けミステリの融合を試みているが、このやり方だと狙いが透けるジレンマが生じる。
作者らしい主人公を突き放した筆致はリドルに合っているだけに残念。
※余談
出版後のインタビューで作者は、連載と順序を替えて加筆して仕掛けを施したと語っていた。
余計な事をしなければリドルとして良いデキだったと思うのだが・・・・・。

21中の書評を表示しています 1 - 20