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ミステリの祭典

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魔神の遊戯
御手洗潔シリーズ

作家 島田荘司
出版日2002年08月
平均点5.86点
書評数22人

No.22 6点 メルカトル
(2017/08/23 22:20登録)
本作は御手洗潔シリーズにおける、最も異色な作品だと私は思います。理由はあとで述べます。
舞台はネス湖畔の小さな村。旧約聖書に擬えられた、魔神の仕業としか考えられないような連続バラバラ殺人事件。人間業と思えない凄まじい力で引きちぎられた猟奇的な死体。まさに島田ワールド全開な様相を呈しており、いかにもならしさは作品の出来不出来に関わらず、読む者を引きずり込まずにはいられないでしょう。しかし、どこか違和感が・・・この違和感の正体を見破れれば本作に施された仕掛けは意外と簡単に解ってしまいそうです。
他の方も書かれていますが、死体にかけられた無理な力のトリックはあまり感心しませんね。まあ島荘らしいと言えばらしいのですが。


【ネタバレ】


島荘は○○トリックは使用しないという先入観を利用したことが、先に述べた異色作と言うことになりはしないかと思います。
よく注意して読めば、このミタライはややおとなし過ぎるし、特有のアクの強さがあまり感じられません。そういった違和感に疑問を感じれば、仕掛けられたメイントリックには気付きやすいでしょう。
私は勿論騙されましたけれど。

No.21 5点 nukkam
(2015/07/12 06:44登録)
(ネタバレなしです) 2002年発表の御手洗潔シリーズ第9作の本格派推理小説で舞台はスコットランドです。魔神の伝説、魔神の咆哮、魔神に引きちぎられたような死体とスケールの大きな謎が用意されているところは島田らしいのですが過去作品、例えば「暗闇坂の人喰いの木」(1990年)と比べると作風が微妙に違います。猟奇的な殺人が起きますがグロテスクな描写は相当抑えられています。狂気描写も同様です。これを読みやすくなったと好意的に評価する人もいれば、物足りないと批判する人もいるでしょう。私は個人的には肯定派です(ただ一方で「暗闇坂の人喰いの木」にはどこか魅かれるところもあるのですが)。謎解きには不満点が多く、肝心の魔神トリックに魅力がありません。犯人の計画も随分と念を入れているのですが細工を弄し過ぎていて失敗リスクが高く、これが成立したというのはあまりにも好都合過ぎる展開にしか思えませんでした。犯人と御手洗潔の最後の問答も締め括りとしてはキレがありません。

No.20 5点 TON2
(2012/12/10 17:14登録)
文春文庫
 ミタライは御手洗ではないでしょう。
 無茶苦茶に思える証拠から、悩まずに真相にたどり着く、まさにIQ300の「神」のなせる技でしょう。

No.19 4点 seiryuu
(2010/07/16 17:30登録)
このオチはもう笑うしかない。

No.18 5点 E
(2009/12/11 23:55登録)
「いやあ、彼じゃないってバレバレでしょう」というほど彼の事を知らないので全然気づきませんでした(爆)
最初の死体発見から奇怪な謎が多かったぁ・・

No.17 6点 simo10
(2009/10/07 21:00登録)
-- ネタばれ含みます--

私は長編モノを読む時は登場人物の名前と特徴をメモするのですが、プロローグの「御手洗」と、第一章の「ミタライ」をつい別々に表記してしまった瞬間、「しまった!」と思ってしまいました。
もう少し騙されていたかったのですが、一瞬よぎった猜疑心は読み進むほどに膨れ上がっていくばかりでした。
先に「ネジ式」とか出版してくれていれば、このアクシデントは防げたのに、と思ってしまいます。
とはいえ、メインとも言えるロドニーの描く絵の謎の解決には感激しました。
この島田氏独特の「眩暈系」の謎は、私は大好きですね。
引きちぎりの謎はイマイチ。
登場人物は結構面白かったです。

No.16 7点 touko
(2009/09/27 20:18登録)
あら、やられた……セオリー通り、犯人と思しき人物は除外するとして、これだけのヒントと違和感バリバリの記述があれば、当然わかるはずの真犯人が見抜けませんでした;
脳科学の専門家という設定ではありますが、結構いい加減なのはともかく、アル中の作家のキャラやその他のキャラも立っていて、楽しめました。

No.15 5点 E-BANKER
(2009/09/19 21:24登録)
普通の作家だったらもっと高い評点でもいいと思いますが、島田氏の作品なのでこの点数です。
読んでいる間ずっと御手洗に違和感を感じてましたが、なるほどそういうラストが用意されてましたか・・・という感想です。
スコットランドの大男伝説については、某加賀美氏も作品の中で引用していましたが、加賀美氏の方がむしろ往年の島田氏を彷彿させるトリックだったような気がします。(あまり成功したとは言えませんが・・・)
やっぱり、近年の氏の作品は何か「キレ」が足りないですね。

No.14 4点 ロビン
(2008/12/13 22:16登録)
バレバレ。だって彼らしくないんだもの。あまりにも事件が幻想的すぎて、真相とギャップがありすぎるとはよく言われますが、今回はしょぼすぎる。
いろんなトリックのネタを寄せ集めただけの、二番煎じな作品だと感じてしまった。

No.13 6点 マニア
(2008/04/06 03:25登録)
どこか神秘的な雰囲気も感じられるスコットランドの片田舎で起こる連続猟奇殺人という舞台設定と、冒頭で登場する記憶に障害のある謎の多い登場人物と、島田作品らしい世界観は十分に堪能できた。他の登場人物も面白い!

ただ、そんな大がかりな設定と理解不能な謎に付けられた真相(特に死体引きちぎりトリック)はちょっとショボイ感じがして残念。犯人も分かる人にはすぐ分かってしまうかも。

No.12 8点 おしょわ
(2008/01/28 21:50登録)
家が転がってるとは・・・読んだ人にしか分かりません。
これだけでも結構いい点を稼いでいると思います。

No.11 5点 Tetchy
(2007/11/30 18:27登録)
島田氏の提唱する21世紀本格の実践作品です。
しかし今回は御手洗の魅力という物がこのシリーズを牽引しているということを再度思い知らされました。
物語の構成上、仕方がないかもしれませんが、やっぱり大人しいミタライは物足りませんね。

No.10 10点 レイ・ブラッドベリへ
(2007/09/29 23:07登録)
 文庫版が出ていたので買い求め、再読したのだが、初読の時には気づかなかったことがある。
 まず、スコットランドの片田舎が舞台であること。
 御手洗の「海外もの」で、「ハリウッド・サーティフィケイト」は、事件の猟奇性や犯人消失の謎が、いかにも現代のアメリカを思わせるものだった。また「摩天楼の怪人」は、20世紀初頭のマンハッタンでの高層ビルをプラットフォームとした謎だった。だからどちらの作品も、彼の地を舞台としたことはごく自然に思えたのだ。
 一方本作は、ユダヤ人であるロドニー・ラーヒムとその民族の神話を基調にしており、ネス湖のほとりにある寒村を舞台に、リンダやミタライが登場してきてもおかしくはない。
だが再読して気がついたのだが、時間を巧妙に織りなしたこの物語の舞台として、きっと「日本」から隔絶した異境の空間が必要だったのだ。あたかも、空間と物体を手品のように操った「占星術殺人事件」においては、昭和11年という過去の時代設定が必要だったように。

 そういえばこの作品は、死体の一部のバラ撒きという点で「占星術-」を思わせる。共に物語の前半で、登場人物たちが、あれこれ犯人像を推測する会話を交わしている。両方の作品から台詞を抜き書きすると、こんな感じだ。「犯人がホモか女だったからかもしれない」「そうか!女だ…こいつは女だぜ」「それとも女かな」「だが女、ならいいんだけどな」「子供っていうのはどうかな」

 この物語には、バーニー・マクファーレンという作家が書いた小説(なのか草稿なのか、はたまた独白なのかは不明だが)と、ロドニーの手記とが交互に配されている。そして双方の記述内容が重なる時、それまで曖昧だった事件の骨格が忽然と立ち現れる。さらにその後、ロドニーの手記に記された「12月5日の殺人」は、バーニーの記述と「1日のズレ」を生みだし、読者の思い描く予定調和を乱して、物語の進行に一条の波紋を巻き起こす。

 しばらく前に、東野圭吾さんの「容疑者Ⅹの献身」を巡り、「本格」ミステリ論争が起きたそうだ。僕は浅学のため、どのように決着したかは知らないのだが、本作についてはもう5年も前に、フリップ村上さんがこの「ミステリの祭典」の中で、同様の指摘をされている。またトリックの構造については、文庫版の解説で岩波明氏が、「本書はトリヴィアルな細部にこだわる新本格ファンをにやりとさせる試みを数多く含んでいる」「ここに至ると本格ミステリの巨人として君臨する島田氏の余裕と遊び心を感じずにはいられない」と述べている。
 僕も岩波氏の意見に与みしたい。だからこれを受け、「この作中に現れるトラ(タイガー)はE・クイーンの『Yの悲劇』に出てくるマンドリンに相当するのか。もっとも、あちらは犯人を特定する手掛かりとなるのだが、こちらの方は、キャノン村の場所をミスリードする材料となっているんだな」などということを、いろいろ想像するのはとても楽しい。

 島田さんの圧倒的な筆力が「差別」や「蔑み」に向けられると、読んでいる僕の心はそれに同化し、重く沈んでしまう。

 ところで、この文庫本には出版社の「新刊のお知らせ」が挟まれていた。そこにはこの本のタイトルと著者の名前と共に、額縁に入れられた一枚の絵画があった。そして、そこに描かれている箱庭のような風景と、どこかに可愛らしさを残した怪物の姿を見ると、「魔人の遊戯」を遊んだあの時のロドニー・ラーヒムのことが思い浮かんできて、僕の胸はひと時、熱くなるのだ。

No.9 7点 北浦透
(2005/05/01 14:05登録)
「島田荘司」の作品の中だけで採点すれば5点ぐらい。
しかし、現代のミステリー界の中で考えればこれくらいの点数が妥当。少なくとも、まともな文章と人物造形、きちんと解決はついているのだから。読み物としての水準は保っている。
色々不満はあるけれど。というより、島田さん、わざと気づくように書いたかな?

No.8 5点 さくら
(2004/03/09 23:26登録)
御手洗が大人しい&死体が泊まってる部屋のベランダにある時点で、終わった作品。猟奇事件をもう少し粘着質にすればマシになったかも・・。

No.7 8点 Take
(2002/11/18 12:58登録)
まぁいろいろ言いたいことはあるけど、面白かったしいいや。

No.6 7点 たに
(2002/11/04 00:29登録)
事件の猟奇性のワリには、暗闇坂〜ほどのインパクトを感じられなかったのは、少し残念。久々のミタライものの長編だったので、「なおゆう」さん同様、私も甘めの採点と言うことで。

No.5 6点 なおゆう
(2002/09/30 23:37登録)
うーん・・・トリック的にはありがち、というか、ヨメてしまったかな。犯行過程に穴がありすぎて、納得いかない感じ。中盤、遺体の一部が見つかっていく過程で「セルラーフォンが鳴った」という一文が反復されるのも、何だか陳腐。
事件以外の小サイドストーリーが面白かったのと、御手洗書下ろしということで、ちょっと甘めの「6」。

No.4 5点 流破
(2002/09/30 10:56登録)
御手洗シリーズを読んでる人でないと意味が分からないし、読んでいる人にはネタばればれなのが厳しい。まあ、ミステリにはよくあるトリックですね(映像化不可能!)
犯行動機もクリスティの古典作と一緒。頭のいい犯人が考えた割には穴が多い気がする。

No.3 1点 フリップ村上
(2002/09/17 21:09登録)
島田荘司いまだ浮上せず。
ていうか、こいつは第二のトリック盗用疑惑でないの、ハッキリ言って。
確かにこれなら記述者が石岡でないことに必然性はあるが、高木彬光の超有名作を露骨に想起してしまったのは私だけか? ひねりなしで一発勝負的アイディアを引用している分『夜は千の鈴を鳴らす』の五万倍(当社比)悪質な感じがする。
文中の記述から動機を推測するのが不可能。ロジックだけで犯人を特定することが出来ない等、本格を標榜するにはあまりに瑕疵が多いが、それでも《未来の記憶の再現》というのは、見立て殺人における新機軸。借り物のドンデン返しなどなくても、読物としては充分なレベルをクリアしているのに、返す返すも惜しい。というより悔しい。
21世紀のミステリに、トリックの前例云々を問題視すること自体ナンセンスかもしれないが、他ならぬ島田自身が『金田一少年』であれほど痛い目にあっているのだ。例えそこに悪意はなくとも、とうてい許される行為ではなかろう。猛省を請う!

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