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ミステリの祭典

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エラリー・クイーンの新冒険
エラリイ・クイーン

作家 エラリイ・クイーン
出版日1958年01月
平均点6.75点
書評数16人

No.16 6点 文生
(2022/08/24 08:53登録)
有名な「神の灯」は、建物が丸ごと消失する謎が魅力的ですし、ミステリとしての仕掛けもよく出来ています。しかし、本書を読む以前に建物消失と聞いた段階で「もしかしたらこういうトリックではないのかな?」と思い至ってしまったので高い点数はあげずらい。その辺りはカーの「青銅ランプの呪」、ホックの「長い墜落」、ロースンの「天外消失」などと同じかな。他の短編は堅実な面白さ。

No.15 5点 レッドキング
(2022/03/16 19:36登録)
エラリー・クイーン第二短編集
 「神の灯」 一夜にして完全消失した堅固な黒い館。二重の入代りトリックと解明の「灯」・・8点。
 「宝捜しの冒険」 崖と海に囲まれた地での首飾り盗難。隠し場所と犯人炙り出しや如何に・・3点。
 「空洞の竜の冒険」 竜柄置物の解釈(神秘的-功利的-機能的)が変遷して。日本人「カギワジト(!)」 4点
 「暗黒の家の冒険」 暗闇アトラクション館での正確射撃Howに、あの識別トリックが付いて・・6点。
 「血をふく肖像画の冒険」 島暮らし画家と極美背中の女とストーカーと、血の肖像画のWhat・・4点。
 「人が犬を噛む」 野球場の毒殺トリック。因果は廻り、己に還り・・5点。
 「大穴」 競走馬が標的の射撃トリック。タイトル「Long shot=遠打ち-大穴」ダブルミーニング・・3点。
 「正気にかえる」 ボクサー刺殺事件。血は付いてないはずの犯人、不要のコート着用は何故・・4点。
 「トロイの木馬」 誰にも見つからず己に還るはずの宝石隠し場所。ただしアメフト試合に勝てたら・・5点
※これも第一篇が(中編だが)白眉。で、全体で(8+3+4+6+4+5+3+4+5)÷9=4.6666…おまけして5点。

No.14 9点 HORNET
(2021/03/16 19:55登録)
とてもよかった。これまでの方も書いているように、中編『神の灯』が世評の高い作品ということだが、それはもちろんのこと、その他の短編も押しなべて面白く、私としては「冒険」より印象に残る作品が多かった。
 後半の、ポーラ・パリスとカップルで活躍する「スポーツ・ミステリ」の連作短編が、長編との色違いが感じられて興趣が尽きない。読者として作者と推理合戦をするにもちょうどよい手応えだと思う。『人間が犬を噛む』の毒殺トリック、『正気にかえる』の、エラリーの紛失したコートから犯人言い当てるロジックなどはさすがクイーンという感じ。ラスト『トロイの木馬』は、真犯人も隠した場所もすべて当てることができて非常に気分が良かった(笑)
 クイーンの「謎解き小説」の魅力をてっとり早く堪能するには最適の一冊ではないかと思う。

No.13 4点 虫暮部
(2020/04/02 11:51登録)
 「神の灯」はホワイダニットのミステリだと思う。何故犯人はそんな現象を演出したのか? その点に於いて不出来だ。“家の消失” って、そこから人を遠ざけるのに有効かなぁ? 更に言えば、そもそも人を遠ざける工作が必要な状況か? 彼女を送り届ければ弁護士の役割は完了だから、丁重に御帰り願えばいい。犯人が “彼女を殺すことも辞さず” とのスタンスなら、あとはどうにでも出来るだろう。
 ハウに関しても、事件の様相を鑑みると、実は真っ先に思い付くトリックなのでは。ただ “そんなもの作る奴がいるか?” との常識的判断が障壁になっているのであり、作者は “いるのだ!” で押し切っているだけである。
 「宝捜しの冒険」でエラリーが仕組んだ罠と、「人間が犬をかむ」の皮肉な真相は、まぁ面白いと思った。

No.12 7点 ことは
(2019/02/02 17:27登録)
「神の灯火」は、よくできていると思うけど、世評ほどは評価しません。
エラリーの「気付き」とタイトルは、クイーンのセンスを感じさせてくれて好きだけど。
「冒険」よりはかなり落ちる印象。

No.11 8点 クリスティ再読
(2018/05/02 22:12登録)
クイーンも本作やって一区切り、と考えているのだが、この「新冒険」、「冒険」よりもずっと面白いな。あの評判の悪い第二期での最大の傑作じゃないかしら。
「神の灯火」はあとでちゃんと触れるが、ポーラ・パリス登場のハリウッドシリーズ系作品は、30年代のアメリカの都市住民のエンタメ感覚をうまくキャッチできているように感じる。小説として実に小洒落ているな。「ハートの4」とかの長編がムリして書いてる感が強かったわけだけど、最後の4短編あたりキュートにまとまった都市小説の良さを愉しめる。「トロイヤの馬」なんてそれこそ詩的正義、というものだ。最初の4本が代表するホームズ的短編からの脱皮がこの作品集の只中で行われたようなものである。
で問題の「神の灯火」だが、ライナッハは要するに「十日間の不思議」のディートリッチの原型みたいなキャラで、「奇蹟」というものの人間理性に対する在り方を問うような狙いがある。本作は大技が注目されるあたりだけど、本当は手品的な大技がミスディレクションでしかないあたりに、本作の真の価値がある。「奇蹟」という神の手品に対して、信仰と理性がせめぎあうさまを、後期クイーンは何度も繰り返すことになるのだ...

一応クイーンの真作長編+冒険+新冒険でのコンプを記念して、ベスト5を選ぼうか。「十日間の不思議」「シャム双生児の秘密」「ガラスの村」「Xの悲劇」「第八の日」。ごめんね異端なのはわかってるよ。

No.10 8点 斎藤警部
(2016/10/27 11:21登録)
ご多聞に漏れず「神の灯」の鮮やかさで遠き日の記憶は真っ白に塗りつぶされておりますが。。。。 いやどうして、他の短篇諸作も一つ残らずミステリ興味に強く訴える、佳き一冊でした。これは読まないと!

「神の灯」「宝捜しの冒険」「がらんどう竜の冒険」「暗黒の家の冒険」「血をふく肖像画の冒険」「人間が犬をかむ」「大穴」「正気にかえる」「トロイヤの馬」
(創元推理文庫)

No.9 7点 nukkam
(2016/09/11 03:41登録)
(ネタバレなしです) 1940年発表のエラリー・クイーンシリーズ第2短編集で、中編小説「神の灯」に8つの短編の計9作の本格派推理小説を収録した短編集です。本書の顔ともいえる「神の灯」は家屋消失というとびきり魅力的な謎が提示されています。トリック自体は空さんのご講評でも指摘されているように他の作家による前例があるのですが、エラリーが真相を見破るきっかけになった手掛かりが秀逸です。「宝捜しの冒険」では文字通り宝捜しのゲームが描かれ、その手掛かりが文学知識が求められているため私なんぞにはゲームへの参加感はなかったけどちゃんと謎解きにつながっているプロットはなかなか見事です。「血をふく肖像画の冒険」の奇抜な真相も印象的です。それから「ハートの4」(1938年)に登場したポーラ・パリスが再登場する作品が4編あり、それぞれ野球、競馬、ボクシング、アメリカンフットボールといったスポーツをテーマにしています。この中では「トロイアの馬」がトリックは単純ながら競技の緊迫感と謎解きのサスペンスが上手く絡み合った佳品だと思います。

No.8 7点 青い車
(2016/08/07 20:29登録)
 クイーン屈指の大トリックと緻密な伏線に、爽やかな読後感まで揃った『神の灯』。エラリーのとった心理テスト的な罠が印象的な『宝捜しの冒険』。犯人の失言とあるアイテムから紡ぎ出すロジックにキレがある『がらんどう竜の冒険』。以前も用いたアイディアを奇抜な犯行に応用してみせた『暗黒の家の冒険』。ミステリーとしては薄味でも小説として読ませる『血をふく肖像画の冒険』。毒殺トリックがユニークで、かつ論理の土台もしっかりしている『人間が犬をかむ』。こちらは銃の使い方が見どころなショートショート的作品『大穴』。意外なロジックで犯人を唯一人に絞り込むクライマックスに迫力がある『正気にかえる』。アメリカ銃~でもあった灯台下暗しな隠し場所が肝の『トロイヤの馬』。
 『神の灯』が圧倒的に世評が高いですが、個人的なベストは『正気にかえる』です。全体の水準は冒険の方が上だと思うものの、それでもこれだけの面白さを維持しているのはさすがです。

No.7 8点 ロマン
(2015/10/21 12:11登録)
「神の灯」を読んだのだが…結構力技だなという印象。しかし、題名が暗示した手掛かりなど、やはり本作は傑作だった。また、前短編集がどちらかと言えば、物証を核とした論理を主体としていたのに対し、本書は人間の動き方を重視した作品が多いように感じる。「神の灯」にしても、ある人物の○○に対する動きがヒントとなっているのだ。クイーン中後期の特徴も見られる、なかなかお得な作品集であろう。その他お気に入りは「血をふく肖像画の冒険」「人間が犬をかむ」。

No.6 7点 名探偵ジャパン
(2014/08/14 21:27登録)
長編の国名シリーズとは打って変わって、ポーラとキャッキャウフフしたり、野球観戦で応援に声を張り上げたりする、普段着のエラリーの姿が見所。

・神の灯
有名作で、トリックのネタバレを知ってから読んだのだが、それでも十分楽しめた。メイントリック以外、最後にもうひとつ逆転が控えており、明るい作風の本短編集向きのさわやかな読後感。

・宝探しの冒険
宝の持ち出し方法まで考えた隠し場所が秀逸。でもこれが成功したとして、そんなにうまいこと回収できるかなぁ?

・がらんどう竜の冒険
変な名前の日本人が出てくる。現物を見ることなく周辺状況から「それ」の状態を推理する展開が好き。

・暗黒の家の冒険
銃撃によりターゲットを殺すだけでなく、証拠を消し去る効果もあるというアイデアが面白い。

・血をふく肖像画の冒険
うーん。これはいまひとつだったかな。伝説通り肖像画に血が付く過程は面白かったけど。長編のいちガジェットとして使ったほうが映えたかも。

・人間が犬を噛む
「あれだけ」の青酸の量で致死量に至るのか? という疑問はあるが、発想と展開は面白い。試合観戦のために早く事件を片付けようとするエラリーがかわいい。

・大穴
これは犯人がいくら火器に「うとい」という設定にしても、計画がちょっとずさんな気がした。

・正気にかえる
消えエラリーの外套、そして、その外套の縫い目が引き裂かれていたということだけから犯人を言い当てる、理論派エラリーの面目躍如の一遍。

・トロイヤの馬
「宝探し~」と同じく隠し場所にまつわる謎の話。一方のチームが試合に勝たなければ宝石は手に入らないということで、犯人は応援にとても力が入ったことだろう。

創元推理文庫の本作は、初版から実に50年経過して、未だに刷り続けられている。作品としては楽しめたが、本の体裁は当時と変わらず、最近の文庫に慣れた身には、文字が小さく、読みづらかった。

No.5 5点 ボナンザ
(2014/04/08 17:19登録)
神の灯がメイン。
乱歩作品ですでに知っているトリックだが、やはりこうして原作に当たるとクイーンの偉大さが感じられる。

No.4 5点 ミステリーオタク
(2013/03/14 00:04登録)
この短編集はなんといっても神の灯だろうが、もし当事者になったら本当にこんなトリックに引っかかるものだろうか
普通の大人だったらせいぜい30秒ぐらいで何が起こったかは気づくんじゃねぇか
まぁおもしれぇが

No.3 8点 E-BANKER
(2012/05/27 21:35登録)
「エラリー・クイーンの冒険」に続く作品集第2弾。
本作は2部構成になっていて、前半は「~冒険」と同様、通常の短編。後半は後年のハリウッドシリーズの流れを汲み、助手として「ハートの4」で知り合ったポーラ・パリスとのコンビで4つのスポーツを舞台に起こる事件を解明する、という構成。

①「神の灯」=“建物が消失する謎”を解くという魅力的なプロットで有名な作品。さすがによくできているとの印象。建物消失ではやっぱり物理的トリックは不可能だろうから、どうしても本編のような解法になる。後年、本作を応用したような作品も多いが、結局は見た者の「誤認」を如何にうまく処理するかというのが腕の見せ所。そういう意味でも、本編はシンプルだがよくできてる。
②「宝捜しの冒険」=真珠の首飾りの盗難事件の容疑者たちに対して、エラリーが「宝捜しゲーム」を仕掛けるというのが本編の面白さ。まぁ、ゲームで真犯人の心理を推定するというプロット自体はありきたりとも言えるが・・・
③「がらんどう竜の冒険」=「日本庭園(樫鳥)の謎」と同様、クイーンの妙な日本人観が垣間見える作品。「ドア・ストップ」にああいうものを仕掛けるほどの空間はそもそもあるのだろうか?という疑問が湧いてきた。
④「暗黒の家の冒険」=舞台は遊園地のアトラクションとして設置された「真っ暗な家の中」。エラリーが発見するのは死亡したばかりの死体。これはクイーンらしいロジックの効いた佳作。ラストのさらなる「仕掛け」もなかなか効いてる。
⑤「血を吹く肖像画の冒険」=肖像画から人間の血が流れてきた(!)というのが本編の謎なのだが、あまり感心しなかった。特に、事件の背景というか、構図がさっぱり見えてこなかったのだが・・・
⑥「人間が犬を噛む」=舞台はNY。ワールドシリーズでのヤンキース対ジャイアンツ(当時はNYジャイアンツだったのね)が行われるスタジアム。観客席でサインをねだられていた元大投手が毒殺されてしまう。これも、実に短編らしいロジックの冴えを感じられる良作だろう。野球に熱狂するエラリーや警視、そして何より大男の部下・ヴェリー刑事(!)というのも面白い。
⑦「大穴」=タイトルどおり「競馬」に纏わる作品。「いかさま」を仕掛けようとした「ノミ師」が、逆に罠に嵌っていき、事件が起きる・・・舞台として登場する「サンタアニア競馬場」は個人的に是非行ってみたい場所。
⑧「正気にかえる」=こちらはボクシングの選手権会場が舞台。エラリーが車の中に置き忘れた「外套」が事件の鍵となるのだが、真犯人がなぜ外套を着なければならなかったのかというプロットは、どうしても「スペイン岬」を思い起こさせてしまう。
⑨「トロイアの馬」=本編はアメリカらしく、アメフトの対抗戦(?)。スター選手の妻となる娘に対し、父親が贈った高価なサファイアが試合当日に盗まれてしまう、という謎。この「隠し場所」はスゴイけど、「音」がするんじゃないか? と変な心配をしたりする・・・

以上9編。
面白い。実に出来のいい短編集だと思います。
作者らしいロジックの効いた作品が多く、またそれを明らかにしようとするエラリーも、単に推理を披露するに留まらないユーモアや仕掛けが用意されていて非常にいいです。
中では、やはり①が秀逸。「建物消失」というのは相当難しいプロットだと思うのですが、あまり長々引っ張らず、この程度の短さに留めたことも正解でしょう。
⑥~⑨のシリーズはそれぞれ「野球」「競馬」「ボクシング」「アメフト」というアメリカを代表するスポーツとミステリーとのコラボが実に新鮮。
読んで損のない傑作短編集という評価でよいのではないでしょうか。
(⑤以外はどれも水準以上の佳作)

No.2 7点 Tetchy
(2009/09/30 20:56登録)
本作の大きな特徴は2部構成になっていることだ。
前半の「~冒険」という名の付けられた一連の作品は第一短編集からの流れをそのまま受け継ぐ純粋本格推理物だが、後半の「人間が犬をかむ」からの4編はクイーン第2期のハリウッドシリーズに書かれた物でエラリーは『ハートの4』で知り合ったポーラ・パリスとコンビを組む。
つまり本作を読むことで、第1期クイーンと第2期クイーン作品のそれぞれの特色が目に見えて解るのだ。

個人的には純粋本格推理小説に特化した前半の5編よりも、後半のハリウッドシリーズの延長線上にある4編の方が好みである。
例えば「人間が犬をかむ」では野球観戦に夢中になるというエラリーの人間くさい一面が見られるし、何よりも各編でパートナーを務めるポーラ・パリスの存在が物語に彩りを添えている。

よく考えると法月綸太郎の第1短編集『法月綸太郎の冒険』も全く同じ構成だ。あの短編集も前半はロジック一辺倒の作品で後半は沢田穂波とのコンビであるビブリオ・ミステリシリーズだった。
ここにクイーンの意志を継ぐ者の源泉があったのか。ここでまた私は現代本格ミステリに繋がるミステリの系譜を発見したのかと思うと感慨深いものがある。

No.1 7点
(2009/03/02 22:40登録)
中編『神の灯』は傑作として知られていますが、方法論だけで言えば、約7年も前に別の作家が同じアイディアで長編を書いています。ただし、その長編では本作のような魔術的な効果を演出しているわけではありませんし、策略がうまくいくかどうかも疑問なところがあります。クイーンにしては珍しいことではないかと思うのですが、方法よりも効果の奇抜さが際立つ作品だと思います。
後の作品は全体的に前の『冒険』より短編小説らしい仕上がりになっているものが多いと思いますが、中でも『暗黒の家の冒険』がクイーンらしい論理を見せてくれます。『ハートの4』のポーラ・パリスが出てくるスポーツ物の中では、『人間が犬をかむ』が長編『アメリカ銃の謎』よりすっきりとまとまった解決で、おもしろいと思いました。『正気にかえる』はクイーン自身の某長編と同じ発想。

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