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ミステリの祭典

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鏡は横にひび割れて
ミス・マープル

作家 アガサ・クリスティー
出版日1964年01月
平均点6.58点
書評数19人

No.19 6点 文生
(2024/04/13 09:30登録)
事件のシチュエーションがミステリーあるあるパターンなので犯人はすぐに見当がつきました。一方、分かりやすいフーダニットに対してホワイダニットはなかなか巧妙。パーティーでの毒殺で意外な動機といえば同著者の『三幕の殺人』を彷彿とさせますが、それとは全く異なる意外性を演出してみせたのが見事です。ただ、これは晩年のクリスティ作品全般にいえることですが、とにかく展開が単調すぎて退屈。特に、ミスマープルものはその傾向が顕著でそこが個人的には評価を下げる原因となっています。

No.18 6点 虫暮部
(2023/09/14 13:28登録)
 これはACの良くあるパターンじゃない? しかもタイトルが大胆に “ハイここ注目!” と告げていて、サーヴィスし過ぎ。
 私は推理などしていない。単に、AC作品を或る程度読んだ経験上、諸々の要素の配置が判っただけ。
 “あ、これが動機か” と気付いた時点で未だ半分以上ページが残っており、第二の殺人が起きるような話じゃないし、作者がそれをどのように埋めたのかと言う興味で読み進む。
 うーむ、成程そうやってカムフラージュするか。愛だなぁ。暴走だなぁ。どこまで結託していたのかは藪の中だけど、そんなグレーな結末もいいんじゃない。どっちにせよ一蓮托生なんだから。

No.17 7点 ALFA
(2023/01/25 11:04登録)
二つの側面を持つ作品である。以下ネタバレ気味です・・・

一面はホワイ&フーダニットの謎解きミステリ、もう一面は女優マリーナ・グレッグの悲劇。
そして厄介なことに前者より後者のほうが圧倒的に素晴らしい。
マリーナは中盤まで登場しないが、周辺の人物たちへの尋問によって彼女の半生が浮び上がる。クリスティお得意の手法。
一方ミステリとしてはシンプルな構造である。メインの殺人は序盤に起こる。あとは尋問が続き中盤は冗長。終盤の事件は口封じに過ぎないと推測がつく。これはむしろ短編向きのプロットかもしれない。

ミステリ部分をうんと軽くしたら、ウェストマコット名義の名作になったのではないだろうか。

No.16 4点 レッドキング
(2019/09/12 19:47登録)
ほぼ一気読みできる位に読みやすいアガサ・クリスティのミステリの中にあって、珍しく「退屈さ」を感じてしまう作品。このネタは短編でまとめてほしかった。

No.15 7点 take5
(2019/08/03 01:50登録)
クリスティーさすがです。72才で書いたなんて。
作中のミス・マープルが、社会の変化へ対する心持を語りますが、クリスティー自身の心境がユーモアに交えて伝わってくるようです。
フーダニットがワイダニットの隠れ蓑になっているあたり、読み終えてから改めて上手さに感服しました。
クリスティー女史の書く主人公の女優に共感する女性読者と、夫に共感する男性読者が共存しているのではないでしょうか。

No.14 7点 E-BANKER
(2019/07/20 16:44登録)
ミス・マープルものの長編としては「パディントン発4時50分」に続く八作目。
変わりゆくセント・メアリ・ミード村が事件の背景となる作品。
1962年の発表。

~穏やかなセント・メアリ・ミードの村にも都会化の波が押し寄せてきた。新興住宅地がつくられ、新しい住人がやって来る。間もなくアメリカの女優がいわくつきの家に引っ越してきた。彼女の家で盛大なパーティーが開かれるが、その最中、招待客が変死を遂げた。呪われた事件に永遠不滅の老婦人探偵ミス・マープルが挑む~

いかにもクリスティ・・・という感想。
確かにこれならマープルものの代表作という評価が相応しいかもしれない。
大女優が主催したパーティー、大勢の、そしてどこかに秘密を抱えた招待客という道具立てが本格ファンの心を大いにくすぐる。

最後まで楽しい読書になったわけだが、ふと考えてみると、プロットとしてはごく単純というか、ほぼワンアイデアといってもいい。
“ホワイ・ダニット”が本作のメイン・テーマだろうが、ここをいかに隠蔽するかが作者の腕の見せどころ、ということ。
ただし、この「隠蔽」する方法というのがさすがというか、尋常ではない。
読者としてはどうしても“フーダニット”に目を奪われ、「アイツか、はたまたアイツか・・・?」と推理していくんだけど、そこはマープル女史の言葉を借りれば「自明」ということ。
あの登場人物のたった一言がすべてを解明する“ワンピース”になるのだ。そのカタストロフィこそが本作の白眉。

ただ、全体としては粗さも目立つ。
第二、第三の事件はいわゆる「口封じ」のためでしかなく、単なる添え物にしかなっていないことや、数々の登場人物たちも“賑やかし”的な役割が殆どで、事件と有機的に絡んでくる割合は少ない、などが目に付いたところ。
その辺りはやはり、ポワロものの代表作に比べれば評価を下げざるを得ないかな。
でもまぁさすがだね。
意味深なタイトルも良い。準佳作という評価でいいでしょう。
(ここまで事件が頻発するなんて、「呪いの村」って呼ばれても不思議ではない気が・・・)

No.13 7点 斎藤警部
(2018/06/12 22:50登録)
ホェンダニット応用編、いつ●●が成立したか(長期と短期の噛み合わせ)。
忘れ得ぬ犯人像、鮮烈な動機。危険な含みのエンディング。

意外なタイミングの連続殺人に僅かの蛇足感もありますが、”村”やマープル達に訪れた経年変化の描写と合わせ技で、短篇で光りそうなワンアイディア(と呼ぶには残酷過ぎる背景だが)を長篇で活かす構成要素としてしっかり機能したと言えましょう。

間違い無く、味わいの一篇です。

No.12 6点 りゅうぐうのつかい
(2016/07/22 17:52登録)
パーティーの席上で起こった毒殺事件。被害者が飲んだのは、自分のグラスを落として割ったため、女優からもらったグラスの酒であり、それに毒が入れられていた。犯人が狙ったのは被害者なのか、女優なのか。当時現場に居合わせた関係者の目撃証言、2人を取り巻く人間関係を中心に捜査は進められていくが、やがて、第2、第3、第4の事件が起こる。
マープルものには、論理性を期待してはいけない。その推理は、過去の経験や人間観察による知恵に基づいて組み立てられた仮説であって、本事件もそう。ある人物の性格が事件の引き金になっている点が、クリスティーらしい。
捜査の課程で、女優を取り巻く過去の人間関係や様々な謎が明らかになっていくが、中でも大きな謎は、女優が被害者の話を聞いていた時の"鏡が横にひび割れた"ような茫然自失の表情。この謎に関しては、女優が黙して語らないままなので、真相はなかなか見えてこない。さらに、目撃者の証言などに2つの勘違いがあって、真相をより見えにくくしている。このような隠し方がクリスティーの巧妙なところなのだろう。
マープルの最後の説明だが、第2、第3の事件には触れられていない。この2つの事件で殺された2人がどの程度のことを知っていたのかは謎のまま。第2の事件の被害者を殺す必要があったのだろうか。

No.11 8点 青い車
(2016/07/17 21:27登録)
 動機の謎一本で勝負しているため、下手をするとかなり薄味になりかねない構成です。ですが、そういう意味では、本作はかなりよくできていると思います。犯人側のドラマと濃密に関係した虚しくいじらしすぎる動機で、美しくも哀しい余韻が後を引きます。村の住人たちの会話という本筋とはまったく関係ないパートも楽しめます。あと、印象的なタイトルも興味を惹かれていいですね。

No.10 6点 nukkam
(2016/06/13 02:30登録)
(ネタバレなしです) 1962年発表のミス・マープルシリーズ第8作で、1960年代のクリスティーを代表する作品とされています。ホワイダニットを重視した本格派推理小説と評価されることも多いですが、犯人の正体を最後まで隠したフーダニットでもあります。ただ被害者がなぜ殺されたのかが謎解きの中心となっているので、犯人当てを期待する読者は動機に比べて機会や手段についての探求が少ないと感じるかもしれません。また謎解きプロットとしては中盤まで盛り上りを欠き、ミス・マープルも日常生活描写の方が目立ってしまうほどです。しかし締めくくりはなかなか印象深いものがあり、事件の悲劇性の演出が見事です。推理物として弱くてもちゃんとアピールポイントがあるところはさすがに巨匠といったところでしょうか。

No.9 8点 クリスティ再読
(2015/12/13 20:13登録)
本作はたった一つのキーワードが分れば、真相なんて自動的に出てくるような、あえて言えばパズル的な作品でもある。勿論それがキーワードであることを目立たないようにいろいろ細工してあるのがクリスティの腕なんだが....実は評者、本作を高校生くらいのときに初読して、そのキーワードを推測できてしまった、という懐かしい思い出がある。
中高生のミステリファンなんてのは、作家を自分とはかけ離れた教養と能力の持ち主だなんて崇拝しかねないものだが、本作によってある意味そこらへんを見切れたような気がするんだ...そういう自分の記念的な意義があるため、今回再読を楽しみにしていたんだ。だから評価甘いと思うよ。
うん、再読したが..シンプルな作品だなぁ。でも、事件がセント・メアリー・ミードの変化(新興住宅地化とか...)の中にうまく埋め込まれ、マープル自身が感じる老いと世話係との葛藤など、楽しめる(若干ミステリ外の)要素が豊富にあって単純に読み物として楽しい。直前の「ポケットにライ麦を」とか「パディントン」とか「ネメシス」につながるマープルの苛烈さが本作は薄く、「書斎の死体」とか「予告殺人」あたりの雰囲気に近い。そういえば本作以降、全部旅行先の事件だから、最後のセント・メアリー・ミード物なんだ....自分のそれと、物語舞台のクロニクルと重ね合わせてちょっと感慨。

No.8 7点 了然和尚
(2015/11/25 12:43登録)
探偵は間違ってはいけないというのが私の好みですが、マープルは早々に真相の線を否定します。前にもマープル物でこのパターンがあったので、今回も怪しいなと思い、まあ楽しく読めました。マープル婆さんは、史上最高の素人探偵の称号が似合いますね。(プロにあるまじき思い込み)
本作の犯人は、上記の罠をかいくぐればすぐにわかるわけで、動機の意外さが売りです。過去の無意識の加害者と復讐というのは、いいテーマですね。
「会話中の人物の話の内容で顔色が変わったが実は肩越しに何かを見つけて驚いた」という話はよくあるのですが、これをひっくり返して「うわの空で会話中の被害者の肩越しにないにかを見て驚いたと思ったら、驚いたのは会話の方だった」 過去の作品前提ですがいい発想ですね。

No.7 7点 makomako
(2015/08/08 07:40登録)
 クリスティーが70過ぎて書いた小説だけあって、話の組み立てや展開についてはよくできた小説と思います。相変わらずの意外な犯人や、意外な動機。それらをきちんと散らばらせてくれているのですが、やっぱり犯人は分からなかった。だからといって無理な話では決してなく、ミスマープルが謎を解いてくれるとなるほどと納得できます。
 私として多少評価が低めなのは、ミスマープルの話なので当然ではありますが、日常の平々凡々たる描写が結構多い(ここが魅力だという方も多いと思いますが)。私としてはちょっと退屈といった感がぬぐえません。探偵としてはポアロよりミスマープルのほうが好きなのですが、話としてはポアロ物のほうが好みかもしれません。

No.6 5点 ボナンザ
(2015/06/27 16:58登録)
マープルの長編では予告殺人と並ぶ良作。
印象的なタイトルだが、内容もそれに劣らない。

No.5 7点 蟷螂の斧
(2014/03/05 14:27登録)
マープルものの最高傑作との評が多いので拝読。女性心理がうまく描かれたホワイダニットものですね。伏線はかなりあるのですが、その先(真相)までたどり着きませんでした。著者72歳の時の作品とのことで感心しました(老齢の遊び心も描かれています)。

No.4 7点 あびびび
(2012/01/06 11:42登録)
地味な事件だが、これだけの題材をミステリに仕上げるクリスティーの手腕はさすがと言える。

これは映画化されていて「クリスタル殺人事件」という題名。出演者が凄く、エリザべステーラーにロックハドソン、キムノバック、トニーカーチスと、この手の映画としては凄いメンバーだが、あまりヒットはしなかった。

というのも華やかなハリウッドスターが競演するような内容ではなく、小説でしみじみ人間の心理的葛藤をなぞる物語だと思う。

No.3 6点 kanamori
(2010/06/20 17:47登録)
映画は見ていないけれど、伏線のアレが出てきた段階で「何故?」がなんとなく分かってしまいました。
ホワイダニット一本勝負の作品ですが、それでも結構面白く読めた記憶があります。
ミス・マープルものでは比較的好きな作品です。

No.2 8点 mini
(2008/11/02 10:51登録)
「火曜クラブ」は短編集だから別格とすると、ミス・マープルものの長編代表作は一般に「予告殺人」と言われているが賛成できない
マープルもの長編の代表作の1つと思うのが「鏡は横にひび割れて」なのである
「鏡」は動機が謎の中心で、動機と犯人が不可分なので動機が分かれば即犯人も分かる
読者によってはこうしたホワイダニットだけに特化したを好まないかもしれないが、好みの問題と動機の真相が優れているかどうかは全く別の問題であって、ホワイダニット型だから好きじゃないと言うのは個々の嗜好だから仕方が無いが、動機の真相が優れているのなら積極的に評価したい
「鏡」の動機は謎解きとしても素晴らしいもので、人間心理の洞察とも言える余韻と深みがあり、ホワイダニット型の最高峰と言ってもいい

No.1 6点 ElderMizuho
(2008/02/05 01:33登録)
個人的にこういう動機勝負の作品は好みではないんですごめんなさい。トリックも糞もないですよね・・。
これはミステリではありません。
出来自体はいいと思います。昼ドラ向け

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