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ミステリの祭典

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『クロック城』殺人事件

作家 北山猛邦
出版日2002年03月
平均点4.78点
書評数18人

No.18 4点 バード
(2022/09/22 06:47登録)
(ネタバレあり)

メインの物理トリックは中々良いを超えて非常に好み。時間を利用して断絶された空間に道を作る、なんて大仰な表現が可能でかつ鮮やかな切り口。本格ミステリと呼ぶにふさわしいトリックかと思います。
しかし、それだけに他の部分(ファンタジー的世界観、キャラクター、文章力)の力不足が顕著である。正直、妙な設定をかぶせすぎており、読みにくい事この上なかった。
以上の感想なので、全体通しての評価は残念だがイマイチ。ただし、本作者の他作品がどういった書き口かは少し気になった。

No.17 6点 人並由真
(2020/11/06 19:59登録)
(ネタバレなし)
 太陽黒点の異常で、地球の終末といわれる1999年9月。世界の各地では人類救済の大義を掲げた集団「SEEM」が強攻的な手段で、独善的ともいえる活動を行っていた。そんな中、27歳の民間探偵・南深騎(みなみ みき)は、美しい令嬢・黒鴣瑠華(くろう るか)の依頼で、彼女の自宅である不思議な城館「クロック城」に、幼なじみの志乃美菜美とともに乗り込む。幽霊「スキップマン」が跋扈するとされるその城では、やがて不可思議な殺人事件が。

 文庫版で読了。
 読む前はかなり複雑な構造の城館をなんとなくイメージしていたが、意外にシンプルな造りなのね。
 トッぽい(中略)トリックはなかなか愛おしいが、皆様のおっしゃる通り、そのあとの「なぜ(中略)」のホワイダニットの方でぶっとんだ。

 個人的には『地上最後の刑事』みたいな世界の行く末も、謎の組織の実情もどっちかというとそれほど興味を感じなかったが、主人公と(中略)の関係性だけは……という思いであった。
 ある意味じゃ、この得点だけで勝負する、減点部分は気にしない、という作者の思い切りの良さには感心する。

 私的には、後続の『アリス・ミラー』の方が、そのイカれたミステリとしてのパノラマ的な広がりゆえにさらに惹かれるが、これはこれで楽しめた。
「城」シリーズの未読の残り2冊も楽しみにしよう。

No.16 6点 ミステリ初心者
(2020/06/02 01:29登録)
ネタバレをしています。

 ”城”や”館”や”荘”などにめっぽう弱い私は、クロック城をチェック済みだったのですが、なかなか手に入りませんでした(笑)。ブックオフにはギロチン城?が売っていたので購入しましたが、城シリーズ(なのか?)ものは1作目から読みたいですよね。
 ちなみに今wikiをみたところ、本ごとに独立した物語のようですね! じゃあギロチン読んじゃおうか(笑)

 文章は非常に読みやすいです。登場人物のしゃべり方の癖やキャラクターなんかも差別化できていて、誰がしゃべっているのか混乱することはありませんでした。
 また、終末世界であり、専門用語や幽霊的な存在、軍事勢力や真夜中の鍵(結局これなんだったの(笑))と、スクウェアのRPGなみの雰囲気でした。なんだかヒロイン候補(?)もいっぱいいましたね(笑)。

 推理小説部分について。城を冠するだけあり、大掛かりなトリックが楽しめます。いくつかヒントも出ており、フェアさもあって良いです。
 私はなんとなくい時計の針を移動するトリックはわかりました。位置的に鈴が犯人だとは思いました。しかし、未音が覚醒し、真探偵として真犯人を指摘するシーンで語られた菜美の推理に対しての反証の”鈴は時計を読めない”という指摘に戦慄しました(笑)。なんでこれに気づかなかったのか…。ただ、菜美によって否定されてましたが(笑)。

 以下不満点。
・鈴は時間がわからない→からの、法医学の知識によって時間を計っていたというアイディア自体は狂っていて最高なのですが、時計が読めないのならどう動くかわからないのでは…? 読めはすれど、時間の感覚だけがないということでしょうか?
・未音の推理に対する菜美の反証は、可能性の域を出てない気がします。でも深騎犯人よりはいいかなぁ…。
・結局真夜中の鍵ってなに(笑)。誰? 世界はどうなったの?

No.15 2点 いいちこ
(2015/05/27 13:52登録)
「ゲシュタルトの欠片」「真夜中の鍵」「スキップマン」「SEEM」「11人委員会」「ドール家の遺伝子」など、風呂敷を拡げるだけ拡げた本作。
これらの謎が、ことごとく作品の急所を隠蔽するためだけに使われ、プロット・トリック・真相と関わることなく、きちんと説明されないまま終幕を迎える点が致命的。
メイントリック(上記の謎の前ではもはやメインとさえ言えないが)は、こうした壮大すぎる謎に比して如何にもチープであり、しかも上記意図にもかかわらず真相が見えやすくなっている。
メイントリックが解き明かされた後の、どんでん返しの連続や首切りの理由も、緊迫感はあるものの合理性・論理性に乏しく、ファンタジーの域を脱しない。
小さな急所を隠すためにさらけだした巨大な急所。
小さな謎の解決から生み出された小さなカタルシスと、放り出された山ほどの巨大な謎のために残る巨大な消化不良。
自ずと厳しい評価を下さざるを得ない

No.14 5点 名探偵ジャパン
(2014/07/19 09:04登録)
ノベルズ時にはトリック解明ページが袋とじされていたという曰く付きの作品。解説が有栖川ということもあって購入してみた。(解説で有栖川も、『大掛かりな物理トリックがあるので、読中パラパラとページをめくったりしないでほしい』と警告していた)
多くの方が指摘されているように、この作品のキモはその物理トリックではなく、首切りの理由のほうだ。作者は恐らく、このような理由で首を切る人物が登場してもおかしくないようにと、この世界そのものを作ったのだろう。
かつてミステリ作家は、トリック成立のために周辺環境を作ったが、今やトリックのために世界そのものを作るまでになってしまったのかと、感慨深いものがあった。
これも他の方ご指摘の通り、出てくるだけで特に話に絡んでこない謎の組織など、消化不良の感はある。(しかし、アマチュアの応募作は、それ自体で作品が完結される話が求められると思うのだが、こんな思わせぶりな消化不良の作品が受賞したというのは不思議だ)

No.13 5点 メルカトル
(2014/03/01 23:25登録)
再読です。
デビュー作だけあって、全体的に荒削りな印象を受けた。
設定が世紀末で人類が滅亡するという、例の予言のもとになされているので、警察組織は形骸化しており、その代わりということなのか、SEEMとか11人委員会とかが登場してきているが、意味が分からない。別にそれらの組織など絡ませる必然性は全くなかったと思う。がしかし、その中の各中心人物が妙に存在感を示しているので、何とも言いようがないが。
それはさておき、ストーリー的にはそれ程見るべき点はなさそうである。袋綴じされたメイントリックは、まあそれなりによく考えられているとは思うが、例のアニメのほうが先らしいので、それをヒントにしているとしたら、ちょっと噴飯ものではある。
そのトリック解明以降は、展開が二転三転し、それまでやや煩雑だった流れが突如として引き締まったものになり、面白さも倍増する感じがする。
首を切断した理由も納得というか、前代未聞であり、これには感心した。だが、殺害の動機はあまり納得のできないものとなっている。北山氏は大抵そんなものなので、今更どうこう言う必要もないけれど、そこさえ首肯できれば評価も少しは上がったとは思う。
まあ、こんなもんだろうね、メフィスト賞受賞作とは言っても。

No.12 6点 アイス・コーヒー
(2014/02/09 14:06登録)
過去、現在、未来を指し示す三つの大時計を有する「クロック城」で行われる不可能殺人と世界の終幕を描く。メフィスト賞受賞作。
世界の終わりという設定や、人面樹、壁に浮き出た顔などの毒々しい設定はそれなりの効果があったように思える。実に著者らしい世界観で、デビュー作においてもその個性が良く出ている。しかし、その設定がストーリーにつながらず、蛇足となっているのは残念。消化不良は命取りとなる。
そして本題の、不可能殺人。ノベルス版で袋とじにされたメイントリックは、「衝撃」とまではいかないがオリジナリティがあって良かった。また、首切りのホワイも傑作。ただ、ここまで来ると内容の複雑さにトリックが埋もれてしまうように思う。
また、結末にも疑問が残る。解決編以降はストーリーの展開が混沌として、明快な結末といえるかどうか微妙。北山作品の特徴でもあるがこの部分は好き嫌いが分かれるだろう。ただし、本格ミステリとしてはかなり気合が入っている。
ところで、通常時計の「4」の文字は「Ⅳ」ではなく「Ⅰ」を四つ並べた「IIII」ではないだろうか。

No.11 4点
(2012/01/24 09:51登録)
近未来小説の形式をとった謎解きミステリー。
メイントリックはけっこう好みだったりする。首切りの理由には納得もし、感心もした。
が、中盤がすこし単調なのが難点。館物なので止むを得ない面もあるが、作者はもっと手を変え品を変え、読者を惹き付けておく努力は必要だと思う。
それに、城での連続殺人に、SEEMや十一人委員会などのわけのわからん組織を絡ませて話を大きくするのは、謎解きミステリーに政界や企業、ヤクザが絡んでくる、陳腐な社会派本格ミステリーみたいに見えて、ついてゆけなかった。だから、ラストを少しひねったところで、稚拙に見えるだけで面白みはなかった。

No.10 2点 ムラ
(2011/07/18 18:22登録)
SFチックな世界観の割には犯人に至る道筋がしっかりとしていて好印象だった。
メイントリックである首無し死体の理由が特に面白い。分かりやすい図形を使ったトリックがメインだと思い拍子抜けしていた矢先に解明された事実だったので、なお面白かった。
それ以外が正直微妙だが、この首無しの理由だけでも読んだ価値はあったかな。
あの理由が考え付いたのなら、雰囲気だけのよくわからない世界よりも、ドロドロとした世界に料理してくれたほうが個人的には好みであった。それが残念。
まぁ、作者がやりたかったのかな。
しかし、これ袋とじする意味あったのかな。

No.9 7点 測量ボ-イ
(2011/03/06 14:54登録)
これは良かったです。おおいに楽しめました。
こういうトリックが嫌いでないもので(笑)。
「世界の終わり」に対する説明がない等の不満点が
なければ8~9点の評価はできたと思います。

No.8 4点 yoneppi
(2010/10/30 21:31登録)
メイントリックはともかくラストはこれでいいのか。
BOOKOFFで買ったのに袋とじがそのままだったのが最大のミステリー。

No.7 5点 seiryuu
(2010/09/23 16:33登録)
ミステリーは面白かったけどファンタジー部分がいまひとつに思えました。

No.6 5点 abc1
(2009/07/06 12:51登録)
分量的にもちょうど良く、楽しんで読めた。
でも不満もある。他の人も仰っているが、この特殊な設定があまりトリックに絡んでいないこと。世界が終わるとかいう設定意味ないじゃん? ただの雰囲気作りだったのか?
メイントリックは「ルパン三世カリオストロの城」を見て思いついたのかな?

No.5 4点 江守森江
(2009/05/24 08:51登録)
本格ミステリとして面白そうで手にした。
設定の面でミステリの良さが相殺され次はいいや!となった。

No.4 3点 いけお
(2009/02/19 00:51登録)
設定はまぁいいとしてもまとまりに欠く。

No.3 6点 ロビン
(2008/08/24 20:54登録)
正にメフィストといった作品。
トリックに関しては、あの時計の存在が終始引っかかっていたため、閃いてしまった。それよりも、作中ほとんど問題にされていなかった首切りのホワイのほうが面白かったです。

だけど、ミステリーとファンタジーの世界観が綺麗に融合できていない点が残念。
「真夜中の鍵」と「スキップマン」って一体なんだったんだ!?

No.2 8点 深夜
(2008/04/19 23:52登録)
ファンタジーの設定を借りた本格推理小説。好き嫌いあるだろうけど、個人的には魅力を感じました。ただ、このファンタジーの要素が必要かと言えばそうではない。むしろ削れる。でも、削ったら賞は取れなかっただろうな。

袋綴じまで使ったトリックは驚いたけど、通の人は見破れると思う。いかにもメフィスト賞らしいラスト(首切りの理由)も良かった。

No.1 4点 ぷねうま
(2008/01/19 07:15登録)
「あまりの衝撃のためノベルス版ではトリック解明のところから袋とじになっていた」という話を聞いてハードルがブブカクラスまで上がっていたのだが、期待に沿うほどでは無かった。
この作品、というか作家の魅力は世界観の構築にあるらしく、それが肌に合うか合わないかで評価が分かれるらしいが、僕にはあまり合いませんでした。

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