皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
Tetchyさん |
|
---|---|
平均点: 6.73点 | 書評数: 1602件 |
No.342 | 1点 | 黒衣婦人の香り- ガストン・ルルー | 2008/09/12 20:09 |
---|---|---|---|
疲れた…。
古典ミステリ独特のもったいぶった云い回しで、もう何が何だか解んなかった。 しかし、フランスミステリは一人二役、二人一役のトリックがよっぽど好きなのだろう。 ルパンシリーズもこの趣向は多いし。 しかしルルーの作品は前作、前々作に関わった人物、込められたエピソードが次作、次々作へと持ち越されるのが特徴のようだ。 推理小説という1作完結型の様式に人物又は挿話を以って一大相関図を描こうという狙いらしいのだが…。 私としてはご容赦願いたい。 |
No.341 | 6点 | 騎士の盃- カーター・ディクスン | 2008/09/11 20:21 |
---|---|---|---|
これはもしかしたらカー版“日常の謎”ミステリ?
本作の狙いは非常によく解る。こういう趣向は非常に好きだ。 ただこの密室の謎は現代人では解らんぞ! それが非常に残念だ。 |
No.340 | 7点 | 赤い鎧戸のかげで- カーター・ディクスン | 2008/09/10 13:59 |
---|---|---|---|
なんとカーによる怪盗対名探偵物。
登場する怪盗はアイアン・チェストなる盗みの現場に鉄の箱を携えた盗賊という、いささか風変わりな怪盗。 この理由がなんともカーらしい。 恐らくこのトリックを思いついて、どうにか使いたいので、こういう怪盗を設定したというような作品なのだ。 でも終始作中で展開されるドタバタ喜劇といい、この陳腐なトリックといい、ある意味、実にカーらしさに溢れた1作である。 |
No.339 | 5点 | 魔女が笑う夜- カーター・ディクスン | 2008/09/08 20:22 |
---|---|---|---|
カー版コージー・ミステリとも云うべき、ストーク・ドルイドという小さな街で起こる小さな事件の物語。
で、本作の真相と云えば、いささか首を傾げざるを得ない。 肝心の動機が曖昧だからだ。 なぜ犯人は悪意のある手紙を出し続け、また密室状態でジェーンに深夜後家が逢いに行ったのかの理由が全く見えない。 HM卿の奥さんの名前が判明したのだけがマニア向けの収穫か。 |
No.338 | 6点 | 青ひげの花嫁- カーター・ディクスン | 2008/09/07 13:57 |
---|---|---|---|
この頃のカーのストーリーのアイデアは特筆物で今回もその例に洩れない。
新進気鋭の演出家の許に送られてきた匿名の脚本を契機に、俳優に田舎の町に行かせて、ロージャー・ビューリーなる殺人鬼になりすまして、殺人鬼の心理を摑ませようというのである。 で、こういう作品に例に洩れず、この俳優がまさか・・・という展開を見せ、ページを繰る手を止まらせない。 でもその後がなんか煩雑な感じだ。特に結末が通俗小説風になり、ガッカリだ。これもカーならではのサービス精神なのだろうが。 そして死体の隠し場所は誰もが考えつつも、小説としては使わないだろうというアイデアを使っているのがカーらしいね。 |
No.337 | 7点 | 青銅ランプの呪- カーター・ディクスン | 2008/09/06 21:07 |
---|---|---|---|
カーがエラリー・クイーンとミステリについて語り明かした末に行き着いた最高の謎、人間消失に挑んだのがこの作品。
失踪事件は2つ発生するが、第2の事件の犯人の意外性・動機ともに素晴らしい。 しかしメインの失踪事件の真相はいただけない。以下、大いに真相に触れる。 エジプトのミイラの呪いが無意味であることを証明するために敢えて自ら失踪して、数日後に現れてみせるという逆説めいた真相は面白いが、家政婦の下働きの娘に化けて、やり過ごしていたというのは多分私が日本人であるからそう思うのだろうが、やはり素直に首肯しづらいものがある。 確かに貴族と下民という階級格差の激しいイギリスでは確かにゲストは召使い達などに目を配りもしないだろう。 それは解るのだが、彼女をよく知る人物が常に屋敷にいて、それに気付かないというのは(しかもその男ファレルは彼女に心底惚れているのである)いささか現実味が無いように感じる。 例えば文中に、 「時々、目の端にヘレンの似た姿がよぎる。しかしそこに目を向けてみるといるのはこの屋敷の従業員ばかり。どうやら私も幻覚を見るまでになってしまったらしい」 などという一文でも入れていれば、なるほど流石はカー!と納得は出来るのだが。 いやあ、ちょっと勿体無い力作である。 |
No.336 | 7点 | 爬虫類館の殺人- カーター・ディクスン | 2008/09/05 20:04 |
---|---|---|---|
哀しいかな、このメイントリックは某藤原宰太郎の推理トリッククイズに問題の1つとして丸々ネタバレされていたわ。
あのシリーズってまだ本屋に売っているのか? 絶版である事を祈る! 題名は微妙に間違えている。厳密に云えば殺人が起きるのは館長の家であり、爬虫類館ではない。 原題の“He Wouldn’t Kill Patience”を訳す方が非常にマッチしているのだが、もうこの題名で有名になってしまったなぁ。 |
No.335 | 6点 | 仮面荘の怪事件- カーター・ディクスン | 2008/09/04 20:17 |
---|---|---|---|
泥棒の正体が館の主である事からすぐに盗難による保険詐欺という趣向が想起され、それが確かにミスリードとなっているのは、さすがはカー!といったところか。
しかし、前述のように真犯人の正体に関してはいささか際どすぎる。特に思うのは、死体が血にまみれるほどの出血をして、あれほど動き回れるだろうかという点だ。 確かに作中ではスポーツ万能の偉丈夫と描かれているが、胸を刺殺されて医者にもかからずにそのまま滞在し、あまつさえビリヤードなどにも興じているというのが納得できない。 また事件に一番最初に気付くのが真犯人であるというのはまだしも許せるが、深手を負って2階へ窓からロープでよじ登るというのも、ちょっと無理すぎないか? しかしカーは読者サービス精神旺盛だね。HM卿がものすごいパフォーマンスを披露してくれてる。 |
No.334 | 7点 | 読者よ欺かるるなかれ- カーター・ディクスン | 2008/09/03 13:42 |
---|---|---|---|
作品の題名にこういう挑戦的な題名をつけていることからも作者の自信が窺えるが、そのとおりこの真相は解らなかった。
かなり奇抜なアイデアだが基本的にこういうの大好きなので、満足はした(麻耶雄嵩氏の諸作のようだ)。 本作では同一時間に離れた場所に出現し、殺人を犯すという趣向が盛り込まれてあるが、これが双子のトリックではないことは明言しておこう。 しかし双子ではないという真相を超えるものであるかは別問題で、それが私には逆に物足りなかった。 |
No.333 | 9点 | ユダの窓- カーター・ディクスン | 2008/09/02 22:54 |
---|---|---|---|
HM卿が被告側弁護人として法廷に立ち、既に容疑者は逮捕されているという、シリーズの中でも異色な幕開け。
物語は終始法廷で展開するというのがまず面白い。 そして裁判が進むにつれて解けていく謎。 特に10章あたりからは謎が加速度的に解けていく。 確かにこれは傑作。 ただ唯一、「ユダの窓」の正体が私にはカタルシスをもたらさなかった。 |
No.332 | 5点 | 孔雀の羽根- カーター・ディクスン | 2008/08/31 19:38 |
---|---|---|---|
カーには珍しく「この章には、重要な記録が読者の前に提供される」なんて付いており、しかも最終章に至っては32もの手掛かりについてそれぞれが文中で表現されているページ数まで記載されている。
つまりこれはカー版読者への挑戦状だったわけだ。 でもこれは解けんぜよ(←どこの方言?) 本作も事件の発端に無理を感じ、まさにトリックのために作られた設定という不自然さがある(独身の若い男性が遺言状なんて書くだろうか?)。 あとサプライズで乱歩の某有名短編と同様の趣向があるのには笑った。やっぱあの2人は似た者同士だったのか。 |
No.331 | 3点 | パンチとジュディ- カーター・ディクスン | 2008/08/30 18:56 |
---|---|---|---|
題名の「パンチとジュディ」はドタバタ喜劇の人形劇の名前に由来する。つまり物語のメインの設定である“L”の正体探しは実は実体のない事件だったということを現している。
つまり、今回のカーがこの作品でやりたかった仕掛けは物語の設定自体がトリックだったというものだが、それがために色々盛り込みすぎて、つくり過ぎたという感が否めない。 作中で扱われている遠距離で起きた2つのストリキニーネによる毒殺の謎が非常に魅力的なのに、これがなんと真相としては単に物語の添え物に過ぎないというのに驚いた。 作品の力の入れどころを間違えているようにしか思えないんだけど・・・。 |
No.330 | 9点 | 白い僧院の殺人- カーター・ディクスン | 2008/08/29 20:39 |
---|---|---|---|
久々に本を読んで「あっ!」と声を上げてしまった。
各種推理クイズ本にもネタとして挙げられている本書のトリックだが、そんなことはすっかり忘れてしまっていて、18章の最後の一行を読んだときには霧が晴れる思いがした。 しかし、訳が古すぎる。名作なのに勿体無い。 点数はこの驚きに敬意を表して、ちょっとオマケした。 |
No.329 | 8点 | 遠きに目ありて- 天藤真 | 2008/08/28 20:29 |
---|---|---|---|
身体障害者が主人公というミステリだが、当時友人の仁木悦子氏に触発して書かれたらしい。
そして80年代当時、社会が身障者に対して決して優しくない(雇用問題やノー・バリヤフリー)ことを声高に語るのではなく、あくまでソフトにミステリに織り込んでいる。 しかしそんなことを差っ引いても十分面白い連作短編集だ。 手元に本がないので、題名が解らないが、山に住んでいる乞食のような男が証言者として出てくる1編が妙に印象に残っている。 何故だか解らないのだけど・・・。 |
No.328 | 8点 | Xの悲劇- エラリイ・クイーン | 2008/08/27 18:55 |
---|---|---|---|
正直、犯人の名前を読んだ時は、最初拒絶反応を起こした。
ちょっとありえないだろう、と。 しかし、後の推理で明かされるロジックの素晴らしい事! 3つの殺人が描かれているが、謎解きのロジックは2番目の殺人が好きだ。 この作品への点数はそれが大半を占める。 あとタイトルの『Xの悲劇』もきちんと意味があって付けられているのが最後の最後で解る。 特段、すごいものではないが、記憶に残るエピソードである。 |
No.327 | 7点 | プレーグ・コートの殺人- カーター・ディクスン | 2008/08/26 21:48 |
---|---|---|---|
この作品はさすがに世評高いだけあって、楽しめた。
ただやはりあのトリックはかなりアクロバティックで無理を感じた。 でも明かされる人間関係の複雑さはなかなかに面白い。 事件の裏側にこれほど込み入った役割分担があったのには驚いた。 その辺の微妙なバランス感覚を愉しんだ。 |
No.326 | 2点 | 弓弦城殺人事件- カーター・ディクスン | 2008/08/25 19:49 |
---|---|---|---|
カーの、無駄に長いという悪いくせが出た作品。
屋敷の見取り図はせめて欲しい。 登場人物の配置が全く解らん。 |
No.325 | 5点 | 赤後家の殺人- カーター・ディクスン | 2008/08/24 13:54 |
---|---|---|---|
人を殺す部屋とか昔の毒針仕掛け箱の話などガジェットは非常に面白いのだが、いかんせん冗長すぎた。シンプルなのに、犯人が意外なために犯行方法が複雑すぎて、犯人を犯人にするがためにこじつけが過ぎるような印象を受けた。
第1の殺人ベンダーの毒殺方法は非常に面白く、これぞカー!といった感じだが、やはり犯人の協力者であるベンダーがトリックを労してまで「後家の部屋」に入ろうとした根拠が強引であるという思いが拭えない。過去に過ごした4人が全て絶命しているという部屋にいくら友人の頼みとはいえ、自ら進んで入ろうとするだろうか? 拍子抜けしたのが、H・M卿が最後に真相を話すにいたって、どの辺で犯人がアーノルドであると解ったという問いに、初めて会った時にと答えた事。それだったら第2の殺人を食い止められただろう!! |
No.324 | 7点 | 第三の銃弾<完全版>- カーター・ディクスン | 2008/08/23 21:40 |
---|---|---|---|
登場人物たちがそれぞれ何らかの嘘をついていることで殺人計画が予想外の方向転換を余儀なくされた結果、2発の銃声に3種類の銃弾が発生するという奇妙な事件を招く。
この、どうにもすわりが悪い状況設定を最後に論理で解き明かしていくのは素晴らしい。 今回の作品の特徴として、新たな事実が発覚するにつれ、また新たな謎が生まれる畳み掛け方が絶妙だった。 銃声2発に対し、犯人から発射された銃弾は1発→現場で発見された別の銃の意外な持ち主→遺体から摘出された銃弾がその2丁の拳銃のどれでもない第3の銃弾だった→第3の銃の意外な発見場所→奇妙な窓の足跡→第2の殺人の発生、と謎また謎の連続である。 犯人も意外で、云う事ないのだが、窓の足跡については蛇足であると感じた。他者へ疑惑の目を向けるための工作だったが、開かない窓から脱出する足跡という謎は魅力的だったものの、その存在を十分に納得させるだけの論理性は薄弱だと感じた。 これさえなければ私の中でカーの代表作となる作品になっただろう。 |
No.323 | 7点 | エジプト十字架の秘密- エラリイ・クイーン | 2008/08/22 15:20 |
---|---|---|---|
アメリカの東半分をエラリーが犯人を追って駆け回る云わば「動のクイーン」が本書のウリとなるだろうか。
T型の十字架に磔にされた首のないT型の死体という今までにないショッキングな見立て殺人が、本作の、シリーズから一歩抜け出ようとする作者の強い意志を感じるのはよいとしても、首なし死体の首のない理由がごく単純だったのが、ちょっと残念。 しかし今回も挑戦は敗北。あの太字の一行に「参った!」と唸らされた。それでもやはり不満はある。 なぜトマス・ブラッドは犯人とチェッカーをやるために、家族のみならず、執事ら使用人らも含めて人払いしたのか? またスティヴン・メガラの殺害について、桟橋にあったボートを盗んで犯行に及んだ事までは解っているが、どうやってその桟橋まで犯人は侵入できたのか?まだ警察はブラッドウッド界隈を見張っており、メガラが犯人をおびき寄せるべく、警察に警護を解くようにいった事実は、この犯人は知りようがないではないか。つまりこの犯人はそれまでブラッドウッドのどこに潜んでいたのかが全然解らない。 この辺が曖昧なままで終わってしまった。それだけが残念! |