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[ サスペンス ]
恐怖
コーネル・ウールリッチ 出版月: 1957年01月 平均: 6.50点 書評数: 2件

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早川書房
1957年01月

早川書房
1982年09月

No.2 6点 クリスティ再読 2023/11/15 09:01
ジョージ・ホープリー名義で出版された作品。日本では営業配慮でアイリッシュ(創元)、ウールリッチ(創元以外)でとかく出版社の都合が優先するウールリッチの名義sだけど、アメリカ読者からしたらあの独特の文体からして「名義が何でも同じ人...」というのはバレバレだったんだろうなあ、とも思う(苦笑)

結婚式当日、はずみで恐喝者を殺してしまった青年は、そのまま結婚式・新婚旅行へと赴き、ニューヨークには戻らず妻と共に新婚旅行先で知り合った社長の世話になって田舎町に住むことにする。青年は自分への追手への「恐怖」に苛まれ続ける...

という話。いやこの主人公「人を殺すくらいの図太さ」がないわけ。これが話のキモになっている。このために新妻との関係もオカしくなる..というのが、ウールリッチらしい「呪われた結婚」満開。けなげに自己犠牲する妻がいじらしいが、恐怖に飲み込まれた夫はそんな妻の思いも全部踏みにじる。このウールリッチの視線に自暴自棄な残酷さを感じて、心がイタいぜ。

実は「死者との結婚」の別バージョンみたいな話だと思うんだ。あれも大それた、とはいかないプチ犯罪で得た幸せを、ちゃんと生かすだけの図太さのない女性の話だったしね。話としては「死者との結婚」の方に特異性があって面白いのだが、本作はストレートにテーマに取り組んでいる。好き不好きだろうが、評者は「死者との結婚」の方を推すなあ。

No.1 7点 Tetchy 2008/10/17 20:26
結婚を間際に控えた花婿が一夜の情事から他の女と遊んでしまう。これが彼にとって破局の始まりだった。その後彼女は彼をゆすり続け、とうとう彼は逆上し、首を締めてしまう。そしてそれから見えない警察の魔の手を恐れるようになり、辺鄙な街へ移り住んでは新たに現れる彼を取巻く不信な人物達に彼を捕まえに来た警察の一派だという見えない恐怖の手に絡まれていく。

この恐怖は私にも判る。人は何がしか社会の中で匿名性を求める。それで安心を得ているのだが、一度普通人のレールを外れると実はもうかつてのようには戻れなくなる。その事は今後も心に澱のように溜まり、折に触れ想起されるのだ。

最後のエピローグはウールリッチ特有の皮肉だ。
そう、誰もが何がしかの“恐怖”を抱き、生きているのだ。それに打ち勝つ者もいれば打ちひしがれる者もいる。
それが人生なのだ。


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