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[ 短編集(分類不能) ]
自殺室
(ポケミスの短編集)
コーネル・ウールリッチ 出版月: 1979年12月 平均: 6.00点 書評数: 1件

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早川書房
1979年12月

No.1 6点 クリスティ再読 2023/11/21 13:48
すでに「913号室の謎」で書評があるんだけど、困ったな。あちらはあくまでハヤカワの世界ミステリ全集第4巻に「幻の女」「死者との結婚」と合本で出た「913号室の謎」の話で、この項はポケミスNo753「自殺室」の評ということにしよう。ちなみに創元では「アイリッシュ短編集3」に、また集英社文庫で「ホテル探偵ストライカー」に本編は収録されている。人気作である。しかも創元が村上博基なだけであとはすべて稲葉明雄の訳。

で、稲葉明雄といえばウールリッチの名訳者のわけで、「ぎろちん」に続く稲葉選で独自コンパイルの稲葉ウールリッチ短編集。「私が死んだ夜」「もう探偵はごめん」と続いていく。ちなみに「ぎろちん」と本書が「稲葉由紀」名義。

わたしとて処女ではなかったので、最初の夜の彼の真実と口説のテクニックが、思わず呻きをあげさせられるほどの、味わいぶかいものであったことが感得できたのだろう。もうこの上は、べたべたにくっついて、貢いで貢いで、押しかけ女房をきめこむ外あるまい。

と女性に仮装して稲葉氏がウールリッチに「恋」している「ぎろちん(1961)」の「あとがき」を、評者面白がって「女装訳」って評したんだが、「野性の花嫁」や「運命の宝石」が紹介されて晩年のウールリッチの困った状態が知られるようになった本書の頃(1963)では「五〇年代になると、もうだめだ」と百年の恋も醒めた模様で、

異性にかんしては愛という言葉を深刻に思いまどうくせに、仕事になると、簡単に愛という言葉を使えるのも変な話である。

と女装もどうやら剥げてきたような書きっぷりである(苦笑)

うんまあ、それでもウールリッチのパルプ作家時代の短編「殺しの足音」「眼」に、中編規模の「913号室の謎」だから、コテコテのウールリッチ節とまではいかないが、クールでスピーディなパルプ・ストーリーだ。「眼」(「じっと見ている目」)は「黒いカーテン」の後半のアイデアの原型。「殺しの足音」はホテルの掃除婦のオバサンの裏表の話で皮肉な面白味。
「913号室の謎」は一種の密室トリックだけど、ホテルの特定の部屋で次々と起きる自殺事件を、ホテル付きの探偵ストライカーが解明する話。自殺しそうにもない幸せそうな男が連続で自殺するから、ホラーテイストがあるわけで、ホラーに寄せれば、エーヴェルスの「蜘蛛」とか乱歩の「目羅博士」とかそういう話になる。探偵役のストライカーにハードボイルド風の味わいが少しだけあるのがいいあたり。トリックはカーの某作にもちょっと似てるかな。
でこのホテルが「聖アンセルム・ホテル」なのが晩年作を読んでいたらちょいと感慨。「聖アンセルム913号室」のわけね。


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