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クリスティ再読さん
平均点: 6.40点 書評数: 1381件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.1 7点 蒼ざめた馬- アガサ・クリスティー 2014/11/30 21:37
昔読み倒したクリスティを改めて再読している。

クリスティの後期って初期とは比較にならないくらい人物造形がいい。この作品はおなじみ名探偵は出ないにもかかわらず、脇の印象的な人物が再登場するのが大きな趣向になっている。

クリスティ準レギュラーのオリヴァ夫人が、要のところでいい仕事をしているし、この作品だと特に「悪の卑小さ」みたいなことがテーマになってくるわけだが、それを際立たせる凛とした雰囲気を漂わせるカルスロップ夫人がいいし、デスパード夫妻も再登場である。

ヒロインはさすがに新規キャラだが、ジンジャーもクリスティらしい勇敢なヒロインで、ありがちな嫌味を出さずに書けるのがクリスティの本当にイイところのように思う。

で、この作品はクリスティ後期に目立つノンシリーズ物。「実年齢が追いついて自然体で書けるマープル物」と「時勢の流れの中でリアルに動かしづらくなってきているポアロ物」に対して、いろいろと実験的な試みをしているのがノンシリーズ物なのかもしれない。キャラ小説としては不利なせいか、どうも人気薄に感じるが、この作品とか「終りなき夜に生れつく」とか「ねじれた家」とか、独特のドゥーミーな雰囲気が好きだなぁ。

この作品の本当の狙いは、これらのおなじみ人物たちが、クリスティには珍しい組織犯罪に対して、相互に支えあうささやかな十字軍めいた関係にあるのではないのだろうか。再登場した人々は名探偵ではないが、それぞれに「義の人」であり、それゆえにゆったりと連帯しあう。ここらへんにどうやら評者は感動したようである...

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クリスティ再読さん
ひとこと
大人になってからは、母に「あんたの買ってくる本は難しくて..」となかなか一緒に楽しめる本がなかったのですが、クリスティだけは例外でした。その母も先年亡くなりました。

母の記憶のために...

...
好きな作家
クリスティ、チャンドラー、J=P.マンシェット、ライオネル・デヴィッドスン、小栗虫...
採点傾向
平均点: 6.40点   採点数: 1381件
採点の多い作家(TOP10)
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